2013年9月18日
#346 長野 直樹 『覚悟を決めて』
今シーズン開幕戦、初キャップ初スタメン初フル出場、2戦目もスタメンでフル出場し初トライを挙げた長野選手。3年目にして突然登場したウイングのホープに、現在の心境と目標を語ってもらいました。
◆イメージがはっきりしている
—— トップリーグ開幕戦で、初先発初キャップを獲得しましたね
今シーズンが始まる前に、「開幕戦に出場する」という目標を掲げました。春シーズンからその目標に向けて取り組んでいたので、気持ちの準備は出来ていました。1年目、2年目の時は、開幕戦という目標ではなく、漠然と試合に出場するという目標を掲げていたと思います。
—— 2年目までと3年目とでは、気持ちの面で何か違いがあったんですか?
今年は覚悟を決めてやると考えて取り組み、開幕戦で出場することを目標に掲げました。まずその目標を達成できなければ、次のステップには進めないと思っていました。
—— 開幕が近づくにつれて、手応えは感じていましたか?
網走合宿はサバイバルというテーマで、開幕戦に向けたセレクションを兼ねた合宿でした。合宿中の練習試合でも出場するチャンスをいただき、その中で結果を出せたと思うので、その辺りからは開幕戦に出場出来る可能性があるんじゃないかと思い始めていました。
—— その他に、これまでの自分とは違う部分はありますか?
僕の強みはスピードなんですが、その強みが最大限発揮出来るプレーや場面について、これまでは漠然としたイメージしかありませんでした。今年はそこが明確になっていて、この場面ではここに走ったら抜けられ、自分の強みを発揮出来るというイメージがはっきりしているので、あとはその機会を試合の中で探してプレーするということが出来ています。
—— どのようにして、そのイメージを持つことが出来るようになったんですか?
試合の映像などを見て、自分で気づいたところもありますが、周りの方々からのサポートが大きかったと思います。コーチとのミーティングや小野澤さんや有賀さんから助言をいただいたことが、1つ1つ繋がり合って、イメージを持つことが出来るようになったんだと思います。
経験を積んだこともあると思いますが、これまでは良い状況でチャンスをもらったとしても、それに対応するだけのスキルがなかったり、ラグビーの理解度が低かったりしたと思います。
—— 同期の中で先に試合に出ていた選手もいますが、2年間トップリーグの試合に出られなかったという経験も、今シーズンのエネルギーになっているんじゃないですか?
それもあると思います。先ほど覚悟という話をしましたが、覚悟を決めることが出来たのも、1年目、2年目の悔しい経験があったからだと思います。
正直、試合に出られなかった期間は、いつも前向きでいることは難しかったですね。ネガティブになったしまった時期もありました。僕の場合は、周りの方から「諦めずにやっていれば、必ずチャンスは来る」と言ってもらっていました。ポジティブに考えて自分の力で這い上がって来られればカッコ良かったですが、僕の場合は周りの方からのサポートしていただいていたので、本当に感謝しています。
◆次のプレーはどうするか
—— 開幕戦の試合中はどういうことを考えていたんですか?
自分の1つ前のプレーについて、一度振り返って考えてみて、次のプレーはどうするかということを考えていました。試合中に喜んだりする余裕はありませんしたね(笑)。開幕戦ということもあり、今年のチームの勢いを決める大事な試合だったので、なんとかチームの勝利に貢献しようという想いだけでプレーしていました。
—— 緊張はしましたか?
やはり緊張はしましたね。試合前の入場までは落ち着いていたんですが、試合が始まった瞬間は独特の雰囲気を感じて、その時は緊張しました。ただ早い段階でボールを持って走れたので、すぐに緊張は取れました。
—— 自分の中での出来はどうでしたか?
満足は出来ていないですね。サントリーのウイングは、トライを獲りきることも大切ですが、ボールを活かすことが大事だと思っています。開幕戦ではボールを活かせない場面があったり、勝負をしてノックオンをしてしまったりしていたので、サントリーのウイングとしてやってはいけないことをやってしまいました。そのことをすごく反省しています。
—— 開幕戦の内容に自分で点数をつけるとすると何点くらいですか?
難しいですね(笑)。50点くらいだと思います。試合前に受けたアドバイス通りに実践出来た部分もあるので、そういうところは良かったと思います。ウイングとして出来なかった部分があるので、その部分を差し引いて50点です。
—— 試合後には、初キャップを獲得した嬉しさはありましたか?
キャップを獲得した嬉しさよりも、開幕戦はやはり独特の上、チームの勢いをつける大事な試合なので、まずは勝利出来たことで安心しました。
—— 試合後には多くのメディアから取材を受けていましたね
話題の半分は、読売ジャイアンツの長野と僕が似ているということでしたね(笑)。あとは中学時代に足が速かったという話題で、1割くらいが初キャップの話題だったと思います。
◆2戦目で真価が問われる
—— 開幕戦を経て、次の試合に向けてはどういう思いで練習に取り組んだんですか?
直弥さん(大久保監督)からは「最初の試合は良い緊張感があるから、それなりのプレーは出来る。大事なのは2戦目のパフォーマンス。2戦目でしっかりと実力が出せるかどうかで、真価が問われる」と言われました。そういう気持ちを持って、第2節のトヨタ自動車戦に臨みました。
—— 2戦目では初トライを獲りましたね
嬉しかったですね。形はどうであれ、しっかりとスコア出来たので、ウイングとしての役割は果たせたと思います。あの試合では、その他にもチャンスがあり、相手キックオフ後に50mくらいゲインしたんですが、ディフェンスに囲まれてターンオーバーされてしまいました。あの時は、トライを獲りたいという気持ちが前に出過ぎてしまい、スピードコントロールが出来ていませんでした。
—— 2試合目の出来は、開幕戦と比べてどうでしたか?
55点くらいです。トライを獲れたということで、プラス5点です(笑)。まだ出来た部分と出来なかった部分が半分ずつくらいですね。
—— 2試合を経験して、課題は何だと思いますか?
僕の武器はスピードなんですが、そのコントロールが出来ていません。これまでは全てを100%で走ってしまっていて、その後ターンオーバーされてしまったりしていました。先ほど話した50mゲインした時も、サポートを待たずに勝手に走ってしまいました。もちろんトライを獲る時は100%で走るんですが、プレーの中では80%でプレーしなければいけない時もあるので、そこでのスピードコントロールがもっと上手くなれば、良いプレーが出来るようになると思います。
—— 外から試合を見ていた時と、実際に出場した後では、自分の中で違いはありますか?
大きく違う部分では、自覚や責任ですね。ただ試合に出られなかった2年間は大事にしたいと思っていて、試合に出られなかった2年の間で、試合に出たらこういうプレーをしようと考えたことを実践していきたいと思います。
◆積極的にトライを
—— 若手メンバーとして、他のメンバーにも後に続いて欲しいですよね
そもそも僕が後に続いている立場なので、そういう想いはないです(笑)。1、2年目でまだ試合に出ていない選手の気持ちはよく分かるんですけど、時にはネガティブになってしまう時もあると思います。そこでしっかりと我慢して取り組んでいれば、必ずチャンスは来るということを伝えていければと思っています。まだ偉そうなことは言えないですが、試合に出られていない選手の気持ちは分かりますし、僕も先輩方からサポートして頂いたので、そういう選手のサポートが出来ればいいなと思っています。
—— 今シーズンの目標は何ですか?
開幕戦出場の他に、トップリーグ全試合出場という目標も掲げているので、そこに向けて取り組んでいきたいと思います。チームとしては3年連続2冠獲得を目標にやっていきます。
—— トップリーグ全試合出場を達成するためには何が必要だと思いますか?
サントリーのウイングとしてやるべきことが出来て、トライを獲れるウイングはチームに勢いを与えると思うので、積極的にトライを狙って行きたいと思います。ディフェンスについては、まだまだ勉強しなければいけないことが多くて、経験を積むことで理解できるようにはなってきました。
—— ファンの皆さんに向けてメッセージをお願いします
どんな時でも応援してくれることは嬉しいんですが、活躍していない時でも多くの方が応援してくれていたので、まずはその人たちにお礼を言いたいですね。スピードを活かして、独走してのトライを期待されていると思うので、これからそういうプレーを見せられるように頑張りたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]