2013年9月11日
#345 ニコラス ライアン 『次は100キャップ、そして優勝』
今シーズンの開幕戦で、いきなりトップリーグ通算1000得点の大記録を樹立したニコラスライアン選手。87試合目での達成は、単純計算で毎試合11得点以上を記録し続けてのもの。継続する秘訣と、次の目標に向けての意気込みを聞きました。
■ジャパンラグビートップリーグ 通算得点ランキング(2013年8月30日現在)
1位:ニコラス ライアン=1007点
2位:デイビッド・ヒル(東芝ブレイブルーパス)=756点
3位:田邉淳(パナソニックワイルドナイツ)=752点
4位:五郎丸歩(ヤマハ発動機ジュビロ)=689点
5位:河野好光(リコーブラックラムズ)=555点
◆安定させることにプライド
—— トップリーグのリーグ戦通算1000得点達成、おめでとうございます。
ありがとうございます。
—— 通算得点ランキングを見ると、2位とはかなりの差が開いていますね
あと2~3年間で、400、500得点くらいは取りたいね。
—— 試合後の記者会見で、大久保監督と真壁キャプテンが、1500、2000得点を目指して欲しいと言っていました
頑張ります(笑)。頑張るしかないですね。
—— 昨シーズンは1000得点まであと5点でリーグ戦が終わったんですが、1000得点を達成しておきたかったですか?
ゲームの結果の方が大切だと思っていたから、特に考えていませんでした。リーグ戦最後の試合で5点取れたら嬉しかったと思うけど、最優先はチームの結果とパフォーマンスです。
—— 1000得点は、毎年安定してたくさんの得点をしてきたから達成できた記録ですよね
あまり怪我もしなかったので、コンスタントに得点が取れたと思います。体のサイズもあると思うけど、怪我をしない理由のひとつは、フィットネスレベルがいつも安定していることだと思います。オフシーズンもフィットネスレベルが下がらないように、毎日練習して、良い調子をキープするようにしています。特に歳を取ると、調子をキープすることが大事ね。あとは親から受け継いだジーンズ(遺伝子)もあると思います。だから、僕の息子にもチャンスがあると思う(笑)。
—— 長い間、安定させることは大変ですよね
毎日の練習や試合毎に安定させることに対して、プライドがあります。
◆大きなチャレンジ
—— 昨シーズン、キックのフォームを変えましたが、それは大きなチャレンジだったんですか?
大きなチャレンジでしたが、1つのポイントだけ変えたので、大きく崩れることはないと思いました。フォームを変える前は、キックが安定していなくて、他のキッカーを見ながらフォームを変えるか迷いました。違うフォームでキックを練習している間に、楽なフォームでのキックを見つけて、そこから練習を繰り返して、自信を持った時に試合で使いました。
—— 開幕戦での最初のキックは、ミスキックとなってしまいましたが、あの時の心境は?
練習の時のキックは上手くいったけど、試合で蹴ったら「あれ、なんで~」って(笑)。そして、次のキックを、練習通りに蹴るように考えました。自信を持って、自分を信じることが大事。
—— これまでの中で、一番記憶に残っている試合は何ですか?
優勝した時は、全部すごいと思う。昨シーズンも、その前のシーズンも、1回目のトップリーグチャンピオンになった時も覚えています。優勝はその試合だけじゃないから、そのシーズン全てがすごいと思う。
—— プレーに関して、印象に残っていることはありますか?
あまり覚えてないですね。いちばん大切なことは安定することで、1プレーだけじゃダメね。毎試合、毎シーズン、良くなっていきたい。
—— ニコラス選手が日本で初めてプレーした時と、今とでは、どこが成長したと思いますか?
サントリーの文化と環境が、全然違います。練習方法も変わりましたし、ウエイトやスピードトレーニングも個別でのトレーニングをしています。チームのみんなが、ラグビーに対してプロフェッショナルになったと思う。だから、コーチが変わっても、チームは変わらないね。
個人としては、自分の信じること、自分の仕事がはっきりしたと思う。僕が自分の仕事をしっかりやれば、他のみんなも自分の仕事をしっかりやるから、チームのパフォーマンスも良いね。それがサントリーラグビーで一番大事なこと。今のサントリーは個人のビッグプレーに頼らない。選手1人1人が自分の仕事をしっかりやれば、サントリーのラグビーが出来るようになっている。
—— 今のチームでの役割は何だと思いますか?
Go Forwardとコミュニケーションね。バックスとフォワードと繋げることと、あとはディフェンスで、特別なことはないと思う。
◆自分とチームメイトを信じること
—— 今のサントリーのラグビーは楽しいですか?
すごく楽しい。ボールによく触れるし、それに勝っているからね(笑)。
—— これだけサントリーが勝っている理由は何だと思いますか?
常に成長し続けていること。同じことをやっていてはダメで、毎年良くなっていかないといけない。個人としても、チームとしても良くならなければいけないけれど、どうすれば良くなるかを考えるのは難しい。
チームの勝つ文化、勝ちたいという想い、自分とチームメイトを信じること、それが選手1人1人出来ることが、勝つことの理由かもしれないね。
—— 世界のレベルと比べて、今のサントリーのラグビーはどう思いますか?
すごくハイレベルだと思います。細かく比べると、体のサイズは世界の選手とは違うけど、日本の中ではサントリーはプロフェッショナルなチームだと思います。
—— ニコラス選手の次のターゲットは何ですか?
次はトップリーグ100キャップね。そして優勝です。試合では、15mのライン以内のキックは90%、それより遠いキックは85%をシーズンのアベレージにしたい。
—— サントリーの中で、他にキックが上手いと思う人は誰ですか?
晃征(小野)、啓希(宮本)、トゥシ(ピシ)かな。
—— 引退後に何がしたいかという考えはありますか?
まだ何をするかは分からないけど、コーチングはしたいと思っています。
—— ファンの皆さんにメッセージをお願いします
選手は一生懸命練習してプレーしていますので、勝っても負けてもサポートをお願いします。頑張ります。
「祝・1000得点」(開幕戦後の記者会見にて)
■大久保直弥監督
トップリーグで初めての偉大な記録だと思っています。僕も選手時代に一緒にプレーしていましたけれど、彼は本当にプロフェッショナルな選手で、なおかつプレーすることに対して常にハングリーな選手なので、今も若い選手に対して良いお手本になっています。最近は漢字も上達して、より日本人らしくなっていますので、まだまだ次は1500、2000得点を目指して、やってもらいたいと思っています。
■真壁伸弥キャプテン
単純にうらやましいなと思います(笑)。トライやポイントを取るポジションにいない私は1000得点という数字は考えられません。ライアンの練習や試合への素晴らしい姿勢を見ながらいつも一緒にプレーしていますが、今後1500、2000得点と頑張ってほしいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]