SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2013年7月17日

#338 柳原 瑞樹 『今年はチャンスがある』

入部3シーズン目を迎える柳原瑞樹選手、SPIRITS OF SUNGOLIATH初登場です。苦闘の2年間を乗り越え、3年目にして見えて来たやるべきラグビーの形。強力なライバルが揃うスクラムハーフとしての、新シーズンに懸ける意気込みを聞きました。

◆やるべきことが見えてきた

スピリッツ画像

—— ワールドカップ優勝チームや日本代表チームのスクラムハーフなど、チーム内には素晴らしいスクラムハーフがいますね

1、2年目はそういう選手たちと戦えるところまで行っていなかったと思います。1、2年目はプレーしていても、試合に出られるというイメージがあまり湧きませんでした。その中でサントリーラグビーをちょっとずつ理解してきて、3年目になって自分がやるべきことが見えてきたと思います。自分にもやれることがあって、今年はチャンスがあると思っています。

—— 理解してきたこととは?

ゲームに対する理解度です。いちばん把握していなければいけないのは、サントリーの強みを出すためにどう持って行かなければいけないかというところで、それはゲームナレッジが高くないと出来ません。1、2年目はそこがポカンとしたままでイメージ出来ていませんでしたが、3年目でその部分が分かってきています。

—— 1、2年目はどんな状態でしたか?

練習について行くだけで必死でした。1年目はエディーさん(ジョーンズ 前監督/現日本代表ヘッドコーチ)にコテンパに言われました。ここでは言えないようなこともたくさん言われました(笑)。まだやれるレベルじゃない、努力しなきゃ、もっとやらなければ、ということを教えてくれたんだと思います。僕はついていくのが精一杯で、これが日本一のチームなんだと思っていました。

—— そういう状況の中、周りの人たちは?

話を聞いてくれる先輩が周りにいてくれたことが大きくて、1人では乗り切れなかったと思います。敬介さん(沢木 前コーチ/現U20日本代表ヘッドコーチ)に助けられました。僕が落ち込んでいると「男の子だろ。シュンとしているんじゃなくて、なにくそと見返してやるのが男の子だろ」と奮い立たせてくれました。

会社の同期も応援してくれました。「試合に出るなら応援に行く」と言われて反面プレッシャーでもありましたが、温かさというか選手としてリスペクトしてもらえていると感じていました。

—— 3年目で分かってきたというところは?

去年の最後の方のサテライトの試合で、自分が何をしたら良いかが見えてきました。それまでと違って、試合を楽に進められる感覚が出て来て、周りも「最近いいよね」と言ってくれるようになって、それらがリンクしてきたので「間違っていないのかな」と思えるようになってきました。敬介さんからは「まだまだや」と言われましたが、そういうお兄さん的な存在です。調子には乗らせないという部分があると思いますが、凄く温かさを感じます。

—— そういう時期に沢木コーチはU20代表ヘッドコーチになりましたね

3年目で敬介さんがいなくなって、自分に矢印を向けなければダメになると思っています。言ってくれる人がいなくなって、自分で考えてやらなければなりません。ちゃんとやらないと、変な方向へ行ってしまうなと思っています。

◆簡単じゃない

スピリッツ画像

—— あらためて社会人1、2年目を振り返ってどうでしょうか?

今までのラグビー人生で、試合に出られないという状況はありませんでした。ですから社会人になった時も、フルで出られなくても数試合は出られるのではと思っていました。でもサントリーに入ったら分かりました。「あ、違うな、簡単じゃないぞ、今までとは違う」と思いました。実際に入ってみてその違いは凄いものでした。

大学ではゲーム理解度よりも、個々に光るプレーがあったら、面白いねと言われます。そのまま使われて定着してしまうというところがあります。でも社会人は、スキルも違うしコンタクトも出来て、プレーが速くて、ゲーム理解度もあります。そこが大きく違いました。

—— ラグビー人生のスタートは?

6歳です。父親がラグビーをやっていて、法政大学までやっていたそうなんですが、それでラグビースクールに入れられました。青森県には4つぐらいしかラグビースクールはありませんが、そのうちの八戸ラグビースクールというところです。

父親の転勤で岩手から八戸に引っ越して、すぐ小学校入学でしたので、友達は0の状況。それでラグビーをやって、友達づくりという感じでした。僕が言うことを聞かないということもあったと思います。それでラグビーをやらせてみたら良いんじゃないか、ということだったようです。

—— やってみてどうでした?

1回目の練習でハマりました。いきなりやらされましたが、人を抜く感覚が凄く面白くて、「凄い!何だこれ?」と思いました。

—— 家族構成は?

両親と、姉が1人います。姉は歳が離れているので、お母さんが2人いる感覚です。

—— 他のスポーツはやっていましたか?

ずっとテニスと野球は続けていました。中学に入って自分で選んで、テニス部に入りました。ラグビーは部がなかったので、スクールで続けました。ポジションはスタンドオフでしたが、パスをするよりも自分で抜いていく方が好きでした。

◆日本一のチームでやってみたい

スピリッツ画像

—— では高校からラグビー部に?

はい、高校は八戸西高校でした。部活でラグビーが出来ることが楽しくて、学校の授業が終わって練習出来ることが嬉しかったです。1年生でスクラムハーフになって、レギュラーだったんですが、スタンドオフをずっとやりたいなと思っていました。キックを蹴ったり、自分でも走ったり出来ますし、トライに直結しているところが好きでした。

大学(日体大)でも1年ではスタンドオフもやっていました。2年からスクラムハーフ専任となりましたが、この2年の時の対抗戦で3位になりました。明治と慶応を破ったんですが、大学時代は好き放題やらせてもらっていました。

2年生の時の4年生に大好きな先輩方がたくさんいて、一緒にラグビーをやっていて面白かったですし、一生懸命勝ちたい気持ちを全面に出してラグビーをして、結果が出たことが凄く良かったです。その時の4年生には、リコーの3番の柴田和宏さんや、パナソニックのセンターの大澤雅之さんがいました。

大学時代は副キャプテンもやってキャプテンをサポートしましたが、そういう中でも好きにやらせてもらいました。大学で好きにやっていたことが良くなかったかもしれなくて、それで通じると思ってしまっていました。そしてラグビーをやるんだったら、高校でも大学でも優勝したことがないので、日本一のチームでやってみたいと思い、サントリーに入るチャンスがあるのなら1回チャレンジしたいと思っていました。

それに加えてサントリーは仕事もさせてもらえるということで、親からも1回は社会に出ないとダメだという話をずっとされていたので、サントリーに入ることになって、「どれぐらい日本一のチームでやれるのか?よし、やってやろう」という気持ちでした。

—— サントリーに入ってみて何が違いましたか?

今から考えると大学では好き勝手にやっていたと言えます。好きなものを食べて、ラグビーの時間はラグビーをちゃんとやっているから他は好きなことをやっていてもいいだろう、という考えでした。社会人では、ラグビーでも自分の役割を理解して、チームプレーをして、1人1人が働くことでチームがひとつになっている訳で、それと比べて大学時代は、ベクトルがラグビーに向いていない行動をしていたと思います。

今は仕事中もハイドレーションを考えて水分を摂ったりして、午後の練習に備えています。休日にはしっかりと休み、食べものも次の日の練習を考えて食べるようにしています。

◆スピードとストロング

スピリッツ画像

—— 自分をどんなタイプだと思いますか?

真面目なんですが、オフィシャルになるとオチャラケることが多いので、損をしているのかなと思うことがあります。外に向けてはオチャラケを出すのでそう思われがちですが、長くつき合ってくれている人たちは、本当はそうじゃないことを分かってくれていると思います。

そこのところは、「姉にも直した方が良いよ」と言われています。母は甘やかす方ですし、父も「お前はそれで良い」と言うんですが、姉は客観的に見てくれていて、第一印象は大事だから直すべきと言ってくれます。サントリーでは、正直これまでは周りがどう見ているかということまで気にする余裕はありませんでした。

—— 抜く面白さからラグビーの楽しさは変わって来ましたか?

サントリーのラグビーがちょっと分かってきている状況であり、もう少しストレングス&コンディショニングを高められれば、僕自身のスキルを使って、スピードとストロングを伸ばしていけるのではないか。そうなったら良いだろうなと、そこが楽しみです。

—— スクラムハーフの先輩たちのアドバイスは?

フーリー(デュプレア)は一緒にビデオを観てくれたり、試合が終わった時にもすぐに色々と言ってくれるんです。日和佐さんは練習中に、「あれは良い、あれはあかん」とか言ってくれます。

フーリーの凄いところは、グラウンドを平面で見ていないところです。上から見ている。例えばスタンドで見ていたら、あそこが空いているとか見えると思いますが、フーリーはグラウンドレベルにいてそれが見えているんです。経験として「このシチュエーションだとここが空いているんじゃないか」ということが分かるんだと思います。そしてそこを見るから、実際に空いているのが見える。

—— そのフーリーと自分を比較するとどうですか?

フーリー・デュプレアが100だとしたら、僕はたぶん20ぐらいです。まだまだフーリーと一緒にプレーしたいですし、一緒にやって、レビューして、試合を見て吸収して、自分でもやってみたいですね。勉強して、自分でも気づきがあった時に完璧に出来るようにスキルを磨いておきたいです。気づいてから練習したら時間がかかりますから、事前にシミュレーションして、いざ気づいた時にすぐ出来るようにしておきたいと思います。

◆必死に泥臭く

スピリッツ画像

—— 自分の長所は?

運動量だと思います。そしてゲームの理解度を高めて、危機管理能力が高くてピンチの時にそこにいるフーリーのような力を身につけたいと思います。そういう予測は経験に基づいていると思うので、今は運動量でカバーするしかありません。経験を積んで、それが読めるようになっていきたいと思います。

ですから今は運動量が必要な局面で、強い部分が出せなければ意味がありません。筋力のストロングの部分でも負けないで、スクラムハーフNo.1になりたいです。そのためにストレングス&コンディショニングのトレーニングも大事だと思っています。

—— 今シーズンの目標は?

サントリ公式戦出場3試合以上。綺麗なラグビーではないですけれど、必死に泥臭くやっていきたいです。3年間やって来たことは間違っていないと思いますし、運動量とストロングの部分を皆さんに見て欲しいと思います。

—— 沢木前コーチに今見てもらったら何と言われると思いますか?

「良くなっているけれど、まだまだやることあるでしょう」と言われるのではないかと思います。

—— それに対してどう答えますか?

「今年は見てろよ」という感じです。

スピリッツ画像 スピリッツ画像

(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

一覧へ