SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2013年5月22日

#330 竹下 祥平 『ディフェンスの手が出せないところを走りたい』

サンゴリアス若手のひとつの大きなチャンスである"ニュージーランド・ラグビー留学"に、今春、辻本雄起選手とともに参加した竹下祥平選手。期待される若手として何を体験し、何を持ち帰ってきたのか?これまでのラグビー人生を振り返りつつ、社会人2年目を迎えたホープとしての意気込みに迫ります。

◆生活の一部にラグビーが

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—— ニュージーランド留学をしましたが、留学するメンバーに選ばれた時はどう思いましたか?

多くの選手がいる中で、ニュージーランドに留学する2人に選ばれて、凄く嬉しかったです。正直、僕が選ばれるとは思っていなくて、本当に驚きました。

—— これまで海外でラグビーをした経験はありますか?

高校1年生の夏に半月間だけ、僕たちの代24人が、全員でニュージーランドのクライストチャーチに行かせてもらいました。2年生、3年生は菅平で合宿をしていて、先輩たちが合宿をしている間に、1年生はニュージーランドでラグビーをするんです。

ニュージーランドでは常に団体行動で、クライストチャーチの高校の寮の中で生活をしていたので、海外に来ているという感覚は、あまり感じませんでした。

—— 今回のニュージーランド留学はどうでしたか?

新鮮な環境でラグビーをさせてもらい、ホームステイ先がサントリーのグループ会社のフルコアの社員の方の家で、ホストファミリーの方々には凄く良くしてもらいました。

ハリケーンズのアカデミーの選手と一緒に練習する場を設けてもらい、朝の7時から練習をして、その練習が終わった後に、フルコアで仕事をさせてもらい、仕事が終わったら辻本さんとジムでトレーニングをしていました。

今回のニュージーランドでは、自分で自分の事を管理しなければいけなくて、サントリーでのラグビーは恵まれた環境だ、ということを改めて感じました。

—— ホストファミリーはどういう人たちでしたか?

彼はオーストラリア人で、彼女がニュージーランド人なんですが、2人は結婚している訳ではなくて、パートナーという形で一緒に暮らしています。本当に良くしてもらえて、気を遣っていただいたと思います。

—— ニュージーランドの生活で気に入ったことはありましたか?

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生活の一部にラグビーがあり、僕が行ったところはウエリントンと言って、ハリケーンズのホームタウンの街です。週末になるとソワソワし始めて、「今週は試合があるね」と言って、ずっとラグビーの話をしていました。試合会場に応援にも行って、試合後みんなでご飯を食べながらラグビーの話をして、会話をするとラグビーの話になっていました。ラグビーをやっていない人でも、ラグビーの話をしたり、試合をテレビで見たりして、日本では考えられない環境だと思います。

—— ラグビーについてはどうでしたか?

基本はウエイトとスキル練習をしていたんですが、掘り下げていくとサントリーと同じことをしていると感じました。サントリーの練習の方がハードだったかもしれませんが、アカデミーにいる選手は、1人1人のフィジカルやポテンシャルが高くて、1対1の部分で凄く勉強になりました。

—— アカデミーにいる選手は、竹下選手よりも若い選手が多いんですか?

18歳の選手などもいて、僕はアカデミーの中ではかなり上の歳になります。ハリケーンズに入るために、1人1人がハングリーにトレーニングに取り組んでいて、一緒に練習をしていてその気持ちが伝わってきましたし、そういった環境の中でもラグビーを楽しんでいるとも感じました。僕より若い選手が多い中でも、そういう気持ちの部分で勉強になりました。チームの中で、トレーニングをやらされているのではなくて、自ら取り組んでいる環境がありました。

—— アカデミーには何人くらいの選手がいたんですか?

20人くらいだったと思います。僕が留学している間で、アカデミーで一緒にトレーニングをしていたある1人の選手がハリケーンズに入ることになり、チームのみんなでお祝いをしました。ハリケーンズと契約をしたその選手は、プロップなんですが、フィールドプレーが上手い選手で、ハリケーンズと契約をする前に出た試合を見ていて、周りの選手とは違うなと感じられる選手でした。

◆体が一回り大きくなって

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—— 2カ月間の留学で、自分のどの部分が一番成長したと思いますか?

体が一回り大きくなって帰ってくることが出来ました。留学中は自分の時間を持つことが出来て、その時間で辻本さんとウエイトを中心にトレーニングをしたことで、体が大きくなったと思います。ウエイトに集中してトレーニングをしていました。

留学する前は、接点の部分で当たり負けしたり、押されたりすることがありましたが、サントリーに戻ってきてからは接点の部分で対応出来るようになってきていて、留学の成果が出ていると思います。

—— もともと接点が課題だと思っていたんですか?

1年目の時は接点で負けてしまっていて、体を大きくしなければいけないと思っていました。今回、留学というチャンスをいただけたので、思い切って体を大きくしようと思いトレーニングをしました。だた、まだまだ目標には達していないので、これからもトレーニングをしていかなければいけないと思っています。

—— 体を大きくするには食事も大事ですが、何か気をつけていますか?

もともとはあまり一気に食べられないので、こまめに食事を摂るようにしています。肉が好きなんですが、脂肪がつきやすい体なので、脂肪をつけずに筋肉をつけるように努力しています。

—— 子どもの頃は太っていたんですか?

幼稚園の頃は太っていましたが、ラグビーを始めてからは太らず、体型をキープしています。

◆本気で勝ちに行くこと

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—— 何歳からラグビーを始めたんですか?

6歳から草ヶ江ヤングラガーズというチームでラグビーを始めて、中学校までは同じスクールでラグビーをしていました。それから東福岡高校、法政大学と、ラグビーを続けてきました。

—— ラグビーを始めるきっかけは?

父親が少しラグビーをやっていて、親の勧めでラグビーを始めました。ラグビーを始めた頃はスクールに行くことが嫌でした(笑)。

—— ラグビーが面白く感じたのはいつ頃ですか?

中学3年生の冬からです。小学校でラグビーを辞めようと思った時期もありましたが、小学6年間を一緒に過ごした仲間がいて、「もう3年間、一緒に頑張ろう」と言われたんです。「小学校の半分の期間なら」と思い、中学でも続けることを決めました(笑)。

中学3年の冬に、九州の選抜に選ばれて、高いレベルでラグビーをする経験が出来、その時に一緒にいたのが、山下昂大(コカ・コーラウエストレッドスパークス)で、一緒にラグビーをすることで、ラグビーの面白さに気づきました。

小学校の時は、遊びという感覚が少しありました。それが本気で勝ちに行くことを経験し、ラグビーのチーム力の素晴らしさを感じたんです。小学校まではチームのためにプレーをしたつもりでしたが、どこかで自分のためにプレーしていて、それが九州選抜に選ばれたことで100%チームのためにプレーすることを学びました。その時に一緒にプレーしていた多くの選手が東福岡高校に進学をしたので、同じような環境でプレーしたいと思い、東福岡高校に進学することを決めました。

—— 当時のポジションは?

中学生の時は12人制で、フォワードはプロップ、フッカー、ロックで、バックスはハーフの役割をする選手がいるんですが、パスをする人とスクラムにボールを入れる人が別にいて、僕はスクラムにボールを入れるハーフをやっていました。そのポジションはローバーと言って、6番なんです。

—— ローバーをやる選手は、何が得意な選手が多いんですか?

スクラムにボールを入れたら、そのままバックスのラインに入れますし、ハーフからボールをもらえるので、攻撃の起点になる選手です。僕は足もそこまで速くなかったですし、パスも上手くはなかったんですが、ローバーをやらせてもらっていました(笑)。

◆お前はフルバック

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—— 高校ではどのポジションだったんですか?

高校でフルバックになり、高校3年間はずっとフルバックでした。高校に入ったばかりの頃は、実はフランカーをやりたかったんです。監督にそのことを伝えたら、「いや、お前はフルバックだ」と言われ、何も言い返せずに、ずっとフルバックをやりました(笑)。

—— フルバックでプレーしてみて、どうでしたか?

難しい部分もありましたが、当時は自分の周りにスペースがなければ走れなかったので、キックを蹴られてからのカウンターが面白いと感じました。

—— これからフルバックでプレーしていく、と決めた出来事などはありましたか?

フルバックをやっていこうという決意はありませんでしたが、高校生になるとフォワードの身体の造りが、自分とは違うと感じたので、バックスでプレーしていこうと思っていました。

—— フルバックとしてどこを伸ばしていこうと考えていましたか?

僕の持ち味はカウンターだと思っていたので、走ることを意識して、フィットネスを鍛えていました。僕よりも足が速い選手はたくさんいますが、自分も遅くはないと思っていて、ある程度のスピードで長い距離を走れることを武器にプレーしていました。

—— 高校での成績は?

各年代で九州代表に選んでもらえて、高校ジャパンにも選んでもらいました。僕が1年生で、高校の先輩に宮本賢二さんがいたんですが、賢二さんが3年生の時に花園に出場しました。その時はリザーブでの出場でした。

2年生からは15番となり、花園で準優勝し、3年生の時に優勝しました。花園で優勝はしましたが、あまり自分に自信を持っていませんでした。ラグビーは15人の競技で、1人だけ凄い選手がいても勝てないスポーツだと思っています。だから、2年で準優勝、3年で優勝出来たことは、仲間に恵まれたからだと思っています。あと、練習の時間は長くはありませんでしたが、短い練習の中で、高校生にしては高い強度の練習をしていたと思います。

—— 大学での練習と比べてどうでしたか?

練習の大変さで言えば、高校の方が大変だったと思います。ただ、法政大学に入ったら、賢二さんがいて、日和佐さんもいて、練習についていくことに必死でした。

3年生になって、後輩を引っ張っていかなければいけないという自覚が目覚めました。後輩たちの見本になれるように、練習後に残って個人練習をする姿を見せようと考えていました。

◆体で引っ張っていた

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—— 大学はどうして法政大学に行こうと思ったんですか?

高校の監督である谷崎先生(重幸)が法政大学出身で、あと賢二さんが法政大学に進学していたんです。賢二さんのアドバイスもあり、法政大学に進学することを決めました。そして、賢二さんがサントリーに入ったので、僕もサントリーに行きたいという思いがありました。

—— 大学進学で初めて福岡を出たんですか?

初めて福岡を出ましたが、福岡を出ることにあまり抵抗はありませんでした。少し言葉の壁はありましたが、すぐに慣れました(笑)。

—— 大学では何年生から試合に出ていたんですか?

1年生から試合に出させてもらっていました。

—— キャプテンやバイスキャプテンの経験はありますか?

高校3年の時にバイスキャプテンをやり、大学ではキャプテンをやりました。

—— 練習の姿勢などを評価されて、きっとキャプテンに指名されたんですね

そういう姿を見ていてくれた仲間やコーチ陣が評価をしてくれたのかもしれません。

—— キャプテンをやってみて、どうでしたか?

部員が100人くらいいたんですが、100人を同じ方向に向かわせるのは難しいと感じました。例えば、試合に出られないことで、自分は関係ないと思ってしまう人を、試合に出られない中で、どうやってチームのためと思わせられるかが、本当に難しかったですね。そういった選手とは1対1で話し合いをすることもありましたが、4年生でそういう思いになってしまった人にやる気を持たせることは大変でした。

4年生は最後の年になるので、多くの人がチームのためにという思いで取り組んでくれましたが、更に難しかったのが、1年生ですね。1年生で試合に出ている人もいる中で、試合に出られない人は、自分は関係がないという思いを表現するまでではありませんが、感じていることが分かりました。

—— 体で引っ張るタイプのキャプテンだったんですか?

あまり話すことが上手くないので、体で引っ張っていたと思います。ただ、大学時代は怪我が多く、100%チームのために出来たかと考えると、出来たとは言えませんでした。

—— キャプテンをしたことで得たことは何ですか?

チームを見る視野が広がったと思います。3年生までは、あまり周りを見ることが出来ていませんでしたが、キャプテンになったことで、各学年の選手だったり、チーム全体の雰囲気を見られるようになりました。それまではチームの中でプレーしていたのに、チーム全体を見られていなかったと感じました。

—— 大学時代で一番印象に残っていることは何ですか?

後悔の方が強く残っています。高校時代、大学時代、サントリーでの練習を比べると、大学時代はもっと出来たんじゃないかと思います。今振り返ると、キャプテンをやったことで、チームのことを考えるようになりましたが、もっと自分の事も考えても良かったんじゃないかと思います。

◆やるしかないという気持ち

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—— サントリーでの練習はどうですか?

練習をして、自分にはどこが足りないのかを的確に指摘してくれるので、1つ1つステップアップしていけるように取り組んでいます。

—— 社会人でのラグビーを続けようと思ったのはいつ頃ですか?

高校の時から社会人でもラグビーを続けようと考えていました。大学になってからは、九州の会社に就職しようかとも思いましたが、ラグビーをやるのであればレベルの高いチームでチャレンジしたいと思い、サントリーに入ることを決めました。

—— サントリーに入ってみてどうですか?

想像を遥に超えるレベルの高さでした。練習強度の高さ、1人1人の接点での強さなどを感じ、練習についていけるかと不安になりました。最初は不安な気持ちがありましたが、自分が選んだ道ですし、素晴らしい環境でラグビーをさせてもらっているので、やるしかないという気持ちに変わりました。

—— いつ頃から社会人でも通用するかもしれないと感じるようになりましたか?

それはまだまだ感じていません。課題はフィジカルなので、その部分を改善しなければ、通用するとは思えないと思います。ニュージーランドに留学したことで、少しは自信を持つことが出来ましたが、まだサントリーに戻ってきてから試合をしていないので、何とも言えません。これから自信をつけられるようにしてきたいと思います。

—— いつ頃、課題が改善出来そうですか?

「今シーズンにでもやるぞ」という気持ちが強いですね。

—— 2年目のシーズンとなりますが、1年目とは違った思いはありますか?

新たに入ってきた新人の中で、同じポジションの選手が2人いるので、負けられないという気持ちになりますし、今のサントリーでは、ウイングはかなりの激戦区なので、その激戦区の中で戦っていくという気持ちです。

—— ウイングで勝負していく上で、持ち味はどこになりますか?

チームの中でも運動量は高い方なので、運動量が持ち味になると思います。

—— 今シーズンの目標は?

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開幕戦のメンバーに選ばれたいという気持ちでトレーニングに取り組んでいます。あとは怪我をしない体を作っていきたいと思います。

—— 自分はどんな性格だと思いますか?

大人しい性格で、あまり怒ることもないと思います。あとは、何かを始めたら、最後までやり遂げたいと思う性格です。悲観的な性格で、よく「自信を持て」と言われます。昨シーズン、よく言われたのが、「自信の無さが顔に出てる」と言われました(笑)。そんなつもりはないんですが、他の人が見れば、そういう顔に見えたのかもしれません。これからポーカーフェイスの練習もしなければいけないですね(笑)。

—— 兄弟はいますか?

姉が2人います。小さい頃は、よく姉に鍛えられました。高校生くらいからは姉にも可愛がられ、末っ子だから、表情にも出てしまうのかもしれません(笑)。表情だけでも相手チームのプレッシャーになると思うので、これから変えていきます。強そうな表情をしている先輩が、サントリーにはたくさんいるので、見習いたいと思います。

—— 今感じるラグビーの面白さは?

そこは中学3年の冬に感じた部分と変わっていないと思います。高いレベルの環境の中で一緒にラグビーが出来ることが面白いところですね。違う性格の15人が同じ目標に向かっていき、その中でチームが1つになっていくと感じることが、ラグビーの面白さだと思います。チームのためにと思ったら、体を張ることが出来ますし、これまで逃げていた人がタックルに行けば、すぐに分かるスポーツだと思います。

—— 体をぶつけることは好きですか?

好きとは言えないですね(笑)。ただ、チームのためにやらなければいけないことだと思います。アタックで言えば、相手に触られないように抜いていきたいですね。例え触られたとしての、相手に真正面に当たらないように走っています。

理想のプレーは、ディフェンスの人と人の間で、手が出せないところを走りたいですね。高いレベルになると、なかなかそういうプレーは出来ないので、高いレベルでもそういうプレーが出来るようになりたいです。小野澤さんが、そういうプレーをされると思うので、色々と教えてもらっています。

—— 他に参考にしている選手はいますか?

長友さんは、体の使い方が上手いと思います。あの体の使い方は凄いと思うので、参考にさせてもらっています。

スピリッツ画像

(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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