SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2013年5月 8日

#328 野村 直矢 新選手会長『全員が誇りとモラルを持つチームに』

サンゴリアスの中核を担う8年目を迎える選手たちのうちの1人。歴代最も若くして5代目の選手会長に就任した野村直矢選手に、グラウンド内外でのリーダーシップ発揮に期待がかかります。本人の意気込みを聞いてみました。

◆チームとしてルールや規律

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—— 選手会長に就任しましたが、その経緯を教えてください

ある日、監督と耕太郎さん(田原/マネージャー)に呼ばれました。選手会長の就任の依頼で、その場で、「光栄です。やらせてもらいます」と返事をしました。昨シーズンはグループリーダーをやらせてもらい、今シーズンからは、昨シーズンの選手会長であった元さん(申騎)がコーチになったので、引き継ぎました。

—— 元先輩からは何か話はありましたか?

元さんからは、今でも色々とご指摘を頂いています(笑)。事前に、「次はお前」という話は何も有りませんでした。

—— 選手会長としての役目は何ですか?

サンゴリアスが強くなり始めてきたのは、チームとしてのルールや規律があったり、サンゴリアスの選手としてのモラルを持っている選手が多くなったからだと思います。僕は、そのレベルを更に上げていきたいと思っています。選手全員がチームの事を考えて行動出来るチームにしたいと思っています。

具体的には、使ったものは片づけるとか、疲れていても飲んだペットボトルをそのままにしないとか、汚いところを見つけたら掃除をするとか、本当に基本的な事ですけど、選手全員がそれを出来るチームにしたいと思います。本当に辛い練習をやっている最中でも、周りの事を考えられる選手、「誰かがやるだろう」とは思わず、気づいたらすぐに行動出来る選手を、更に増やしていきたいですね。

昔に比べると、徐々にそういうチームに近づいてきていると思います。僕も以前は、自分の事しか考えていませんでした。今は選手の意識と行動が変わってきているからこそ、勝つ事が出来ているんだと思います。

—— サンゴリアスが変わってきたのはなぜですか?

エディーさん(ジョーンズ/日本代表ヘッドコーチ)が気づかせてくれた部分が大きいと思います。初めの頃は、本当に厳しく言われました。最初にグループを作った時には、練習でチーム分けをして、何かの勝負をするためだと思っていたんですが、全然違いました。合宿などで行うチーム対抗の練習では、グループに分かれて戦うことはありますが、その時でもチームワークは生まれますし、「なぜ負けたのか、どうすれば勝てるかの」を少ない人数の中で考えて、実践しています。それが大きくなってチームでも同じような事が出来るようになっているんだと思います。

◆考え方は年々レベルアップ

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—— 入部した時は同期が9人いて、今は6人、他の年代と比べても同期が多いと思いますが、それについては?

入部当初と比べて、同期がいちばん変わったと思います。最初、独身寮に住んでいた時は、一緒の寮に住んでいるにもかかわらず、グラウンド以外では会わず、一緒にご飯に行くこともありませんでしたが、今は一緒に過ごす事が凄く多くなりました。

その変化も、エディーさんがサンゴリアスに来てからだと思います。試合の前の日には、同期全員でご飯を食べに行ったり、試合の後にもご飯に行ったりするようになりました。それに、今では同期と毎日メールでやり取りをしています。

選手としては、同期のみんなは良い選手だと思いますが、精神的にも大人になってきたと思います(笑)。ラグビー以外のクラブハウスでの生活や、後輩の事を考えるようになってきていると感じます。僕らが1年目の時は、大学時代ある程度活躍をしてサンゴリアスに入ってきた選手が多かったので、我が強くて、自分の事だけを考えていたと思います。

—— 今の若手選手は、1年目からなかなか試合に出ることが難しくなっていると思いますが、どう感じていますか?

僕らや先輩たちが頑張っているから、若手の壁になっているのかもしれませんが、若手は先輩よりも良いプレーをしていかなければ、ずっと試合に出られなくなってしまいますね。

確実に今の若手選手は、僕らが若手だった時よりも練習はしていると思いますし、それによってレベルも上がっていると感じます。僕は昨シーズン7試合くらいしか出場出来ませんでしたが、若手が僕らの代を超えられないのは、積み重ねてきた経験の差だと思います。

この歳になると、年々体が強くなるということが難しくなってきますが、ラグビーに対する考え方は年々レベルアップしていると思います。

◆嬬恋合宿は凄く大事

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—— 選手会長としての役割は、グラウンドの外の方が多いんですか?

グラウンドの外でも気に掛けなければいけませんが、グラウンドの中でも規律を守ることは一緒だと思います。僕は今シーズンから選手会長ですが、今のサンゴリアスは、規律を守れない選手を見つけたら、誰だろうと周りの選手が言って教えることが出来るチームだと思います。

ただ、言うばかりの選手じゃなくて、行動で見せられる選手であることが大事になります。だから、僕はグラウンドでも常に立っていたいですし、周りの選手だけではなくて、自分に対しても規律やルールに厳しくしていきたいと思います。

今シーズンもグループリーダーは4人いるので、僕は各リーダーに細かな教育についてはある程度任せて、僕が気づいたことを各リーダーに話をして、それを各リーダーが自分たちのグループに落とし込んでいくようにしています。逆に各グループから上がってきた意見などを各リーダーがまとめて、僕に話をしてもらうようにしています。そして、僕からスタッフに話せる環境を作るようにしています。

—— 新選手会長として、今シーズンの山場になると思うポイントはどこになりますか?

まずは5月の嬬恋合宿です。1年目の選手にとっては初めての合宿で、嬬恋合宿からチーム練習に入っていくので、最初の山場になると思います。各グループのコアになる選手には、1年目の選手に対してサントリーの文化などを話してもらって、サントリーの選手としての自覚を持ってもらうような合宿にしていきたいと思います。嬬恋合宿は凄く大事な合宿です。

あとはチームソーシャルも色々と行っていきたいですね。選手会長として、昨シーズンと比べて何に関してもクオリティを更に上げていきたいと思っています。新しい選手会長として、オフの時から何か新しいことをやらなければいけないんじゃないかと考えてきました。まだ具体的にはアイディアがなくて、これから更に考えなければいけないんですが、まずは今までやってきたことのクオリティを上げたいと思います。

昨シーズンの納会の時にコーチから1人1人にターゲット表が配られて、そのターゲットをクリアしなければ、次のシーズンのスタートラインには立てず、練習には参加できないと言われました。だからオフであってもクラブハウスに行ってトレーニングをしていたんですが、多くの選手がクラブハウスでトレーニングをしていました。その結果、選手全員がそれぞれのターゲットをクリアして、全員がチャンピオンチームとしての自覚を持っていると感じました。その中でも更に出来ることがあると感じたので、もっともっとクオリティを上げていきたいと思っています。

◆ファンダメンタルスキルを上げていく

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—— 昨シーズン7試合出場という結果については?

不満ですね。シーズン途中でコンディションを崩してしまったこともありますが、一昨年のシーズンはリーグ戦で6試合の出場でした。昨シーズンはウインドマンス前の7試合に出場して、一昨年のシーズンはウインドマンス後のリーグ戦6試合に出場したんですが、ウインドウマンス前の試合に出ていたか、後に出ていたかで、そのシーズンの印象が全く違います。

—— 昨シーズンの結果から、今はどのような準備をしているんですか?

コンディションを気にしながら徐々に上げていって、みんなと同じく嬬恋合宿で良いスタートが切れるように準備しています。

—— 多くの試合に出場するためのポイントは?

絶対に怪我をしないことです。それと、ファンダメンタルスキル(基礎スキル)を更に上げていくことだと思います。パス、キック、タックルと、ビッグプレーではなくて、1つ1つの基本的なプレーを高いレベルで出来るプレーヤーになりたいです。

—— 理想の選手像はありますか?

そういう理想はありませんが、トゥシ(ピシ)のプレーを見ていると、大きなミスがないと思います。僕は熱くなりすぎてしまい、プレーや判断のミスをしてしまうことがありますが、トゥシは冷静にプレーしていると思います。

ラグビーを知らない人が見ても分かるミスをトゥシはしないと思いますし、そういうプレーがサントリーのラグビーをする上で大事なことだと思います。サントリーはボールを動かしますし、アタッキングラグビーで常にボールをキープしなければいけないんですが、そういう時にファンダメンタルスキルのミスが起きると、チームにリズムが出なくなってしまいます。

そういうプレーをするためには、プレーのスキルも大事ですが、意識してプレーすることも大事です。体力がキツくなった時にでも、その意識を途切れさせないようにしなければいけません。

—— 今シーズンの目標は?

昨シーズンよりも多くの試合に出て、優勝することです。全部の試合に出たいとは思いますが、チームから必要とされて、試合に出られるようにしたいと思います。

◆もしキックをすることになれば

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—— 野村選手はキックが得意ですが、今のスタイルでは、キックをすることが少なくなっていますね

今のサントリーのスタイルに誇りを持っているので、キックが少ないことについては何も感じません。以前、よくキックをしていた時は、一か八か的なロングキックをしていました。ただ、今のサントリーには、そういうプレーは全く必要ないですね。

今のサントリーにはボールをキープできる能力があると思いますし、わざわざキックをして相手ボールにする必要がないんです。今考えると、なぜキックをしていたのかと思いますよ。もちろん試合の展開や時間、リーグ戦かトーナメント戦かなど、いろいろな状況を考えてキックを選択する場合もあると思います。もしキックをすることになれば、70m飛ばします(笑)。

—— 今、思うラグビーの面白さはどこですか?

僕はサントリーのラグビーが面白いと思います。僕らの攻め方があって、その時の状況に応じて、選手たちでコミュニケーションを取って判断してアタックしていくことが凄く面白いんです。そのスタイルで結果も出てきていて、相手チームも必死になってサントリーを倒そうとしてきていますが、それ以上のクオリティでプレーが出来れば、また今シーズンも面白くなると思います。

今のサントリーのスタイルのベースにあるのが、規律であったり、クラブハウスでの生活なんだと思います。クラブハウスでの生活がグラウンドに繋がっていると思いますし、グラウンドでの姿勢がクラブハウスでの生活にも繋がっていると思います。

—— 以前に比べて、選手同士のコミュニケーションは増えているんですね

確実に増えていますし、まだまだ増やせると思っています。選手会長として、各グループリーダーと共に、その部分を増やしていきたいと思います。

—— 選手会長として、必ず成し遂げたいことは何ですか?

僕はサントリーの社員として、ラグビー部に誇りを持っています。誇りを持っているからこそ、規律やルールが守れると思います。選手全員がサントリーの選手として誇りとモラルを持つチームにしたいと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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