SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2013年4月24日

#326 大島 佐利 『開幕戦メンバーに選ばれることを目標に』

成田秀悦選手と共に、サンゴリアスの“セブンズ”の顔となった大島佐利選手。3月には香港、東京と続くセブンズワールドシリーズに日本代表メンバーとして出場しました。リオデジャネイロオリンピックから正式種目となるセブンズについて、そしてサンゴリアスの一員として新シーズンへの意気込みを聞きました。

◆ボールをキープ出来なかった

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—— 今回の香港セブンズと東京セブンズには、サンゴリアスから成田選手と共に出場しましたが、この大会の位置付けから教えてください

香港セブンズと東京セブンズは、セブンズワールドシリーズという世界9カ国の持ち回りで行われる大会の1つで、香港が6カ国目で、東京が7カ国目でした。東京の後にスコットランドのグラスゴーで行われ、最後がロンドンで行われます。その他には、オーストラリア、ドバイ、南アフリカ、ニュージーランド、アメリカで行われてきました。

セブンズワールドシリーズでは、コアチームと呼ばれる16チームがいて、日本はそのコアチームには入れなかったので、香港大会と開催国として出場した東京大会しか参加出来ませんでした。香港セブンズでは、コアチーム昇格を懸けた大会へ出場するための予選会も兼ねていて、その予選会で上位4チームに入れば、来シーズンのコアチームを決めるための入れ替え戦に参加する権利が獲得出来たんですが、日本は準々決勝でグルジアに負けてしまい、入れ替え戦に出場する事が出来ませんでした。

香港で行われた予選大会は、4カ国が3つのグループに分かれて試合を行い、勝ち点や得失点差などで、プールごとではなく予選大会参加国全体で順位をつけます。上位8カ国が決勝トーナメントに進めることになっていて、日本は全体の2位で決勝トーナメントに進みました。決勝トーナメントでは、プール分けは関係なく、全体の順位によって、トーナメント戦のどこに入るかが決まっていて、日本は準々決勝でグルジアと対戦する事になったんです。

■香港セブンズ(HSBCセブンズワールドシリーズ・コアチーム昇格に向けた予選大会)試合結果

<プールF>日本、グルジア、ブラジル、ジャマイカ
第1戦(3/22) ○日本 17(前半5-10 後半12-0)10 ●ブラジル
第2戦(3/23) ○日本 43(前半31-0 後半12-0)0 ●ジャマイカ
第3戦(3/23) ○日本 26(前半14-7 後半12-0)7 ●グルジア

準々決勝(3/24) ●日本 0(前半0-10 後半0-7)17 ○グルジア

※詳細については「7人制ラグビー公式サイト」をご覧ください

—— 来シーズンもセブンズワールドシリーズには参加出来ないんですね

来シーズンも同じで、東京セブンズとコアチーム昇格へ向けた予選大会に出場する事になると思います。そういう意味で今回、来シーズンに向けて必ず勝たなければいけない試合で負けてしまいました。プール戦ではグルジアに勝つことが出来ましたが、準々決勝では完封負けで、そこがチームとしての弱さだったと思います。あとセブンズは試合時間が短いので、どちらが先に流れを掴めるかが重要ですが、一貫性を持って試合に臨めなかったことが敗因だと思います。

—— プール戦ではやりたいことが出来ていんたんですか?

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やりたいことも出来ていましたし、獲るべきところでトライが獲れていました。それが準々決勝では対策を練られたことと、僕らがボールをキープ出来なかったために負けてしまいました。

—— ボールがキープ出来なかった原因は何ですか?

ディフェンスにおいてタックルミスをしてしまったり、組織的なディフェンスでミスをしてしまい良いディフェンスが出来ませんでした。あとアタックに関しても、自分たちの思っている形での攻撃が出来なかったので、そこからターンオーバーされてしまうことがありました。

—— プレー中の手応えはどうでしたか?

コアチームとの入れ替え戦への出場権を取れなかったことは悔しいですが、個人としては戦えるという手応えはありました。グルジアにも勝てると思っていました。

—— 改めて15人制との一番の違いは何ですか?

スペースが広い分アタックがしやすいというのはもちろんで、1人1人が孤立しやすい分、個々の基本スキルやチームとして意図したアタックが出来ているかということが重要になります。

僕個人としては、ブレイクダウンが一番苦労しました。香港や東京の大会から、ルールの解釈が少し変更となり、ブレイクダウンが起きた時にプレーヤーがやらなければいけないアクションを、より大袈裟に、より正確に行わなければ反則を取られてしまうようになりました。

タックルをした後に相手を離すアクションを大袈裟に行わなければいけませんし、アタックの時のブレイクダウンで、プロテクトする時に少しでも前のめりになって頭が下がってしまうと、反則となってしまいます。

—— セブンズの経験は15人制に活かせそうですか?

活かされてくると思います。ブレイクダウンに関しては、本当に勉強になりました。

◆良いブレイクダウンを作ってトライを獲る

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—— セブンズ日本代表の強みはどこですか?

日本の戦い方は、意図した所に、意図した形でボールを運んで、良いブレイクダウンを作ってトライを獲ることです。意図したブレイクダウンを何回も作って、最終的に空いた所を攻めることが、日本の戦い方で、その戦い方で試合をすることが出来たと思いますし、それが強みだったとも思います。

—— チームとしての戦術が大事になってきますね

試合前には、どこにどういう形でボールを運ぶかというミーティングを数多くやりました。

—— その日本の戦い方は、他のチームとは違う戦い方なんですか?

例えば、フィジカルが強いニュージーランドやフィジーは、どちらかと言うと、ブレイクダウンを作らずに個々の能力で戦っている感じがします。僕らは、他のチームと比べると個人の力でボールを運ぶ力はなかったと思うので、ブレイクダウンを作って、組織でトライを獲ることを念頭に置いてプレーしていました。その分、他のチームよりも走らなければいけないので大変ではありましたし、精度の部分でもまだまだ足りないと感じました。

—— 香港で悔しい思いをしてからの東京セブンズだったんですね

チームとしては切り替えようと話をしていましたが、やっぱり悔しさはありました。ただ「せっかく東京で試合が出来る大会なんだから、自分たちが主役になれるくらい日本のファンに僕らを見てもらおう」という話を繰り返して、気持ちを切り替えて東京セブンズに臨みました。

—— 東京セブンズでは、かなり厳しいプールに入りましたね

日本以外のチームは、全てコアチームでワールドシリーズを戦っている国だったので、かなり厳しい戦いではありました。

—— コアチームのカナダ、ポルトガルにも勝ちましたが、手応えはありましたか?

正直、僕の中では細かい部分に関して手応えを掴みました。具体的にはボールキャリアやブレイクダウンの部分ですね。僕は、日本が意図した形でボールを持っていければ世界とも戦えると、全試合で感じました。ただその中でも負けた試合では、ちょっとしたところで僕らの弱さが出て、今回の結果に繋がったと思います。

—— 東京セブンズでは何位になるんですか?

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16チーム中14位です。目標としてはベスト8でしたが、果たすことが出来ませんでした。ただ実はプール戦でフランスに勝っていれば、ベスト8が確定していたんです。だからフランスに負けた時は悔しかったですね。

フランスに負けてからは、チームとして気持ちを切り替えて、「自分たちのセブンズをみんなに見てもらおう」という気持ちでプレーしていました。今振り返ると、自分たちのセブンズを見せられた部分もありますし、まだまだ力不足と感じた部分もありました。

—— 試合をしていて観客の反応はどう感じましたか?

多くのお客さんがジャパンコールをしてくれて、それが僕らのモチベーションになったと思います。

■HSBCセブンズワールドシリーズ 東京セブンズ2013試合結果

<プールC>ニュージーランド、フランス、カナダ、日本
第1戦(3/30) ○日本 14(前半7-0 後半7-10)10 ●カナダ
第2戦(3/30) ●日本 5(前半5-17 後半0-24)41 ○ニュージーランド
第3戦(3/30) ●日本 7(前半7-17 後半0-7)24 ○フランス

<ボウルトーナメント>
準々決勝(3/31) ●日本 14(前半7-19 後半7-3)22 ○ウェールズ

<シールドトーナメント>
準決勝(3/31) ○日本 19(前半7-10 後半12-5)15 ●ポルトガル

<シールドトーナメント>
決勝(3/31) ●日本 14(前半7-17 後半7-10)27 ○カナダ

※詳細については「東京セブンズ2013公式サイト」をご覧ください

◆低いプレーや相手の先を取るプレー

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—— 香港、東京と試合をしてみて、個人としての手応えはありますか?

ブレイクダウンの話になってしまいますが、ブレイクダウンでは全てのチームと戦えると思いました。ニュージーランドやフランスといったフィジカルの強いチームと対戦して思ったことが、フィジカルが強い相手でも日本の低いプレーや相手の先を取るプレーが出来ていれば、十分に戦えると感じました。逆に日本のプレーが出来なかった時には、確実に負けるとも感じました。持続力、継続力、精度が今後の課題だと思います。

—— 持続力、継続力、精度の中で、一番重要だと思うのはどれですか?

僕は精度だと思います。一貫性を持ったプレーが出来なければ、世界とは戦えないと思います。

—— セブンズの面白さはどこですか?

15人制に比べてボールが動きますし、日本はブレイクダウンを多く作ることを考えてプレーしていたので、僕がボールを持ち込んでブレイクダウンを作り、そのボールが綺麗に出て良い形で味方がトライを獲ってくれた時は面白いと感じますね。15人制と根本的には一緒なんですが、セブンズではより面白さを感じましたね。

—— セブンズ日本代表としての目標は何ですか?

ワールドシリーズのコアチームに入ることが目標です。コアチームに入ることによって、オリンピック出場が近づいてくると思います。あと来年のコアチーム昇格に向けて、今年の6月に開催されるワールドカップで1つでも上の順位になることが目標です。

—— 6月にセブンズのワールドカップ、そしてトップリーグと続きますね

僕はサントリーの選手ですし、サントリーの選手としてトップリーグでの試合に出ることが大事だと思います。ただもしワールドカップの代表に選んでもらえるのであれば、セブンズでも頑張りたいと思います。

—— 選手としてセブンズの未来はどうなっていくと思いますか?

まだ日本は発展途上だと思います。プレーの方向性もこれから発展していかなければいけないと思いますし、プレー自体もこれから成長していかなければいけません。アメリカやニュージーランドは協会とプロ契約をしたセブンズ専門の選手がいますし、日本代表もこれから日本に合った形で取り組んでいかなければいけないと感じます。

◆考えてプレーしていることを表現する

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—— サンゴリアスでの新シーズンに向けての目標は何ですか?

昨シーズンはトップリーグの試合に1試合も出場出来ず悔しい想いをしたので、今は開幕戦のメンバーに選ばれることを目標にやっています。そのためにはプレーの精度を上げて、しっかりと考えてラグビーをしていかなければいけないと思っています。

考えてラグビーすることは、昨シーズンからずっと言われていたことで、色々と考えながらプレーをしているんですが、まだ判断の精度が足りなかったり、考えてプレーしていることをいかに試合で表現するかが大事だと思います。

—— 考えるプレーとは具体的にはどういうプレーですか?

プレーしながら試合全体を見て、サントリーのアタックをするためにはどう動かなければいけないのかを考えなければいけませんし、自分が良い形でボールをもらうために、どう人を動かすかというところを考えなければいけないと思います。

—— 現状では、どのくらい出来ていますか?

良く言って、まだ50%くらいしか出来ていないと思います。まだまだやるべきことはたくさんあります。ただいきなり出来るようにはならないので、1つ1つの練習を積み重ねていくしかないと思います。自分の試合映像を見て振り返ったり、世界の素晴らしい選手のプレーを見て、そのプレーを真似してみたりして、1つ1つ勉強していくしかないと思っています。

—— 新シーズンに向けて、大島選手のセールスポイントはどこですか?

運動量とアタックで勝負していきたいと思います。ゲインが出来て、トライが獲れる選手になりたいと思っているので、そういうところを見て欲しいと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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