2013年2月20日
#317 竹本 隼太郎 特別編 『今まで積み上げてきたものを発揮することにフォーカスして決勝に臨む』
激しいトップリーグを全勝で制して先ず1冠。目標の2冠に向けて、大事な一戦となる日本選手権準決勝のパナソニックワイルドナイツ戦。このファイナルラグビーの戦い振りについて、怪我でリハビリ中の竹本隼太郎前キャプテンに、試合を観戦しながら聞きました。
◆試合前「STILL HUNGRYでやれるか?」
—— 足の怪我の状態は?
治る期間が短くなることはありませんが、順調に回復していますし、リハビリで普段鍛えられていない部分が鍛えられているので、いい感触を掴んでいます。怪我をする前よりも強くなって帰ってくることは間違いないと思います。チームに合流できるのは6月~7月くらいになると思います。
—— これまでスタンドから試合を見ることがあまりなかったと思いますが、今シーズンはスタンドから試合を見ていてどうですか?
試合に出ている選手のことを、よくやっていると感心しながら見ています。意識して見ている部分は、同じポジションの選手と、チームの意志が分かるようなプレーをチェックしています。
—— 今、竹本選手に代わってN0.8で出場している西川選手のプレーはどう思いますか?
良いと思います。僕がチームに戻った時に西川からポジションを奪わなければいけないので大変ですが、大変なのが楽しいんです。だから西川にはもっと良くなって欲しいですね。その方がチームにとっても良いと思います。
僕は正当な競争をして、考えられることを尽くして成長して、それで試合に出られないのであれば、喜んで試合に出ません。それくらいの気持ちで準備をしています。
—— 今シーズンのサンゴリアスの良さは、どこにありますか?
フィットネスとフィジカルを継続して強化出来ているところと、組織的なアタックシェイプも良くなっていて、ディフェンスも良くなっていて、全体的にレベルアップしているところだと思います。更にもっと良くなれると思います。
—— 日本選手権準決勝のポイントは何ですか?
ハングリーに1年間やってきて、ここから「STILL HUNGRY」でやれるかどうかというところと、勝つことと去年の自分たちを超えるということが、しっかりとコミットメント出来るかというところが、プレー以外にも考えなければいけないところだと思います。
ファイナルラグビーなので、1点差でも勝てばいいんです。まずはセーフティーリードを保って試合を運ぶことが大切で、今日の試合は"入り(はいり)"が大事です。過去のリーグ戦のパナソニック戦の試合内容や結果を考えてみても、試合の"入り"が大事になってくると思います。
◆前半開始「西川の足腰の強さがあってのトライ」
—— 選手がグラウンドに出てきて、いよいよキックオフですが、この時の選手の心境は?
パナソニックのキックオフで試合が始まるので、レシーブでボールをキープすることに集中します。そして、キープしたボールを継続して、良いリズムを作りたいと考えます。
—— 試合開始からまだ1分も経過していませんが、小野選手がノックオンしてしまいました
出来れば、試合の最初は固くプレーして、ミスを防ぎたいですね。ただ、どうしてもミスはしてしまうので、そこからリカバーして、同じことを繰り返さないようにチームで動くことが大事です。
—— 前半2分、パナソニックがペナルティゴールで3点を先制しました。サンゴリアスとしての"入り"方はどうですか?
出来れば、先制点を許すことは避けたいですが、次はキープして自分たちのペースに持っていくことが大事です。
—— 前半10分が経過して、3点をリードされています
先制攻撃で最初の20分でリードしたいですけれど、これからですね。これからの10分で攻めて得点をするか、相手のスタミナを奪い取るようにしたいですね。最初の20分は攻撃的にいきたいです。
—— 前半17分、2本目のペナルティゴールを決められて6点差になりました
サントリーにミスが続いてパナソニックペースで進んでいます。パナソニックを相手にする時は、ゴール前でのペナルティは避けなければいけないので、そこのマネジメントをしっかりしなければいけません。
このパナソニックペースを変えるためには、次のプレーに集中することだと思います。今のプレーでは、スクラムになった瞬間に、ゴール前ですから確実にスクラムを組むコールが、必要だったと思います。「いつもとは違うんだぞ」というコミュニケーションが大事ですね。
—— 前半20分、西川選手がトライを取りました
パナソニックのディフェンスも良かったんですが、良いシェイプが作れれば前に出られますし、このトライもその結果だと思います。西川に関しては、先ほど8単(※No.8がスクラムから出たボールを持ち出してアタックすること)でタッチに出てしまったミスを、良いプレーで取り返すという形で、自分の責任を果たしていると思います。
しかもこの試合、サントリーは最初のチャンスをしっかりとトライに繋げました。前半20分で、攻めるという面では良いトライだと思います。今のトライは、西川の足腰の強さがあって、立っていられたからこそトライに繋がったと思います。
—— ニコラス選手のペナルティゴールです。風が強いので村田選手がボールを手で支えていますが、普段からこういう練習はするんですか?
練習はしていませんが、キックしようとしてボールが倒れて時間が過ぎてしまったら、ペナルティゴールが蹴れなくなってしまうので、風が強い日はあのようにボールを押さえることをします。
今のペナルティゴールは外れてしまいましたね。今のは「決まればラッキー」というキックでしたね。ペナルティゴールを狙うのではなく、タッチに出してもう一度チャレンジして、トライを取る可能性もありましたが、風が強いとは言えゴールポストの真正面だったので、結果的に決まりませんでしたが悪くない判断だと思います。
◆前半終了「ボールをキープして良いアタック」
—— 前半最後もサンゴリアスが攻めましたがパナソニックのディフェンスも良く、前半を終えて7対6です
パナソニックのディフェンスも良いですが、前半最後はボールをキープして良いアタックをしてくれたと思います。それに前半でスタミナを出し切ったわけではないので、前半の勢いを維持して、後半最初の10分でアタックを見せて欲しいと思います。
—— 前半は圧倒的な風下でのプレーとなりましたが、やはり風下は不利ですか?
不利ですね。キックゲームで負けますし、ゴールキックも入りにくいです。その中でリードして前半を終えたので、良い展開だと思います。
—— 両チームともノックオンが出ていますが、ノックオンをしないコツなどはありますか?
やはり100%以上のものを出そうとするとミスが多くなるので、ビッグプレーをやろうとしないとか、ミスをした後は基本的なプレーを忠実に行う、という意識が大事だと思います。
◆後半開始「村田のトライは抜く時のステップと抜いた後のスピード」
—— 後半13分、ニコラス選手がペナルティゴールを決めて、4点差に広がりました
まずは8点差をつけて、その後は15点差と、セーフティーリードにいきたいですね。
—— 前半23分、村田選手がトライしました。攻めてはいてもなかなか攻めきれていなかった中で、村田選手が抜けましたね
攻めていてなかなか取り切れないという難しいシチュエーションで村田がトライをしてくれて、試合に出ているメンバーは凄く気持ちが楽になったと思います。今のプレーはディフェンスを抜く時のステップと抜いた後のスピードで、パナソニックの田邊選手を振り切ったところが良かったですね。
—— 後半はサンゴリアスのペースで試合が進んでいます
前半は風下で耐えていましたが、選手のコンディションも良いですし、もともとスタミナもあるので、後半は風上ということとスタミナの影響で、良いエリアマネジメントと良い精度で、プレー出来ていると思います。
こういう状況の時に気を付けることは、得点をした後のキックオフでしっかりとボールをキープすることです。敵陣でプレーして、セーフティーに試合を進めたいですね。
—— 劣勢から挽回するトゥシ選手のロングキックでしたね
こんなに見事なキックは、なかなか見られませんよ。
—— 後半32分、先ほどのキックに続き、敵陣10mライン付近からトゥシ選手の見事なドロップゴールが決まりました
アドバンテージを活かした良い判断でした。もしドロップゴールが外れたとしても、敵陣で攻めることが出来る状況で、ドロップゴールが決まって良かったです。トゥシは今調子が良いので、いいですね。
—— 後半残り5分、パナソニックのバツベイシオネ選手に抜け出されてトライを取られてしまいました
綺麗に2人抜かれてしまったのは残念です。残り5分を切って10点差なので、敵陣でプレーを続けるために前でプレッシャーをかけ続けて、穴がないようにディフェンスし続けて欲しいと思います。
—— 後半残り1分を切ったところで、ニコラス選手が正面からのペナルティゴールを決めて、13点差に広がりました
ここまで来たら、時間を上手く使って、マイボールキープとディフェンスのクロージングが大事です。
◆試合終了「前半によく耐えたことが勝因」
—— 試合が終わりました。23対13と、最終的にはダブルスコアとなりましたが、試合を振り返ってどうですか?
試合の立ち上がりはミスがありましたが、全体的に集中力が高かったと思います。もちろん課題はありますが、修正出来たところもあったので、良い試合でした。試合までの準備と頑張りが良くて、今日の試合に勝利することが出来たと思いますし、前半によく耐えたことが勝因だと思います。
次は決勝になりますが、最後の1週間だから頑張るのではなくて、今まで積み上げてきたものを発揮することにフォーカスして、良い準備をして、決勝に臨んでもらいたいと思います。そのために僕もしっかりとサポートしたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]