2013年1月30日
#314 トゥシ ピシ 『ファーストプレーから120%の力』
スタメンでは試合開始直後から、そして交替で入った時はその瞬間から、常にフルパワーでグラウンドを躍動するトゥシ・ピシ選手。来日4年目にして初めてのロングインタビューに応じたピシ選手は、ホットで野性味溢れるプレーとは対称的にクールでクレバーな語り口。ピシ選手の新たな一面をお届します。
◆プレーで気をつけていることは3つ
—— スタメンでも途中出場でも素晴らしいパフォーマンスを発揮していますが、試合に向けてどういう準備をしていますか?
サントリーは凄く良いチームで、誰が出場しても変わらずにサントリーのラグビーが出来ることが強みです。基本的には個人的な準備ですが、チームのために準備をして試合に臨むことが大事なので、それが良いパフォーマンスに繋がっているんだと思います。
ファーストプレーから自分の120%の力が出せるのは、準備によるものです。チームに自分の力を捧げるという気持ちを持っているので、その気持ちが試合でのメンタルやフィジカルに繋がっています。それこそがサントリーだと思います。
—— サモア代表チームやハリケーンズ(スーパーラグビーに参戦しているニュージーランドのチーム)でも同じ気持ちでプレーしているんですか?
チームに捧げるという気持ちは一貫性を持たなければいけない部分なので、どのチームでプレーするにしても同じです。選手も違えば、プレースタイルも違いますが、試合に向けて準備をするという個人的な部分に関しては、どのチームでも変わりません。
—— どういうことに気をつけてプレーをしていますか?
3つあります。ボールをキャッチしたら自分の体を真っ直ぐにすること、必ず基本的なプレーを遂行すること、そしてゲームコントロールです。それはこれまで指導してもらったコーチからも学んだことですし、自分の経験からこの3つに気をつけるようになりました。その中でもエディー(ジョーンズ)から学んだことが大きいと思います。自分がレベルアップしてきた人生を振り返ってみると、エディーの影響が大きかったと感じます。
—— サントリーに入る前に、エディーさんから指導を受けたことはありましたか?
日本に来る前は、エディーから指導を受けたことはありませんでした。日本に来て、エディーの指導でトレーニングに取り組む姿勢が変わりましたし、エディーは成功の秘訣を知っています。エディーは世界で見ても稀に見る素晴らしいコーチだと思います。
◆ピシはファシ
—— 自分はどういう性格だと思いますか?
家族と一緒の時間を共有することが好きです。練習中は凄く真剣に取り組んで、練習が終わればいろいろなことを楽しみたいですし、他の選手と一緒に楽しむことが好きです。
—— お子さんを大事に育てていると感じますが、自分自身もご両親に可愛がられて育ったんですか?
大事に育ててもらいました。僕の人生の中で、一番大切な人たちです。トゥシという名前は、僕の父親の親友がトゥシという名前で、そこから名前をつけてくれました。トゥシという名前は、サモアではほとんどいない名前で、ピシという名前も珍しいです。
—— 「ピシ」と言うと、日本では叩く音などの擬音に使うんですよ
サモアでは、その音のことを「ファシ」と言います(笑)。
—— 何歳からラグビーを始めたんですか?
5歳からラグビーをしています。
—— 日本の生活はどうですか?
日本に来て4年になりますが、日本の生活は凄く大好きです。僕の妻も日本が大好きですし、日本人はみんな親切で、必要とされるのであれば出来る限り長く日本に住みたいと思っています。
◆準備を頑張ったご褒美
—— ラグビーの面白さを感じる時はどういう時ですか?
試合はもちろん大事ですが、試合に臨むまでの時間がタフで大変で、それが僕にとって凄くやりがいに感じますし、楽しいと感じます。準備を頑張ったご褒美として試合に出られると思っているので、試合に向けた準備が一番楽しいですね。前の試合で気づいた自分の弱点を改善することも、もちろんありますが、基本的にはいつも同じ方法で試合に向けた準備をします。
—— いつも同じ方法で準備をすることが大事なんですか?
そうです。ある一定性のルーティーンを持って試合に臨まなければ、試合中にプレッシャーを感じた時に、瞬時に判断することが出来なくなってしまいます。
前の試合の自分を超えるためには、良い準備が大事になります。良い準備が出来ているからこそ試合で良いパフォーマンスが発揮出来ます。準備の段階からしっかりと考えて取り組まなければ、向上していかないと思います。
—— 考えることが好きですか?
いつもラグビーのことを考えています。そして自分の知識を他の選手にも伝えていければ良いと思います。
—— 今後の夢は?
もっともっと良いプレーヤーになって、自分の中でのベストなプレーヤーになりたいですね。ダン・カーターやジョニー・ウィルキンソンなど世界には偉大なプレーヤーがたくさんいますが、誰かと比べるのではなく、自分にチャレンジして、自分を高みに持って行くことを常に考えています。
—— ラグビーの魅力は何ですか?
いろいろな選手とコミュニケーションを取ってプレー出来ることと、みんなで1つのチームを動かして強くしていくというチームプレーの部分です。1つのチームになることは、サントリーの文化にもありますが、全員が1つになってお互いを尊敬しあうことが凄く大事です。
—— ファンの方々にメッセージをお願いします
雨の日でも、どんな状況でも試合を見に来てくれてありがとうございます。自分たちがやらなければいけないことは、ファンの皆さんの前でチャンピオントロフィーを掲げることだと思います。それがチームにとっても大切なことなので、その姿を見せられるようにしっかりと勝ちたいと思います。
きっとファンの皆さんはエキサイティングなラグビーが見たいと思っていると思うので、僕はファンの皆さんが見たいと思うようなラグビーに貢献するプレーをしたいと思います。
(通訳:白倉綾子/インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]