SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2013年1月23日

#313 小澤 直輝 『いつ試合に出ても大丈夫』

2年目のリーグ戦最終節に、トップリーグデビューをスタメン&フル出場で果たした小澤直輝選手。支えてくれている人たちへの感謝の気持ち、ラグビーへの熱意、そして2年間で得た自信と今後の展望について語るうちに、インタビューは1時間を超えました。

◆最初から集中出来ていた

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—— リーグ戦最終節の神戸製鋼戦で初キャップ&フル出場を果たしましたね

もちろん緊張はしましたが、試合前も試合後も、家族や友達からメッセージをもらいましたし、試合中はチームメイトが凄くコミュニケーションを取ってくれたので、支えられていると感じました。凄く感謝しています。

—— ご両親は観戦に来てくれましたか?

両親は神奈川に住んでいるんですが、神戸まで見に来てくれました。試合前に両親は、「いつも通り思いっきりやれ」と言ってくれました。

—— ご兄弟は?

年子の姉が1人いて、バレリーナをやっています。姉はバランス感覚が良いんですが、僕はあまり良くないですね(笑)。母親が神奈川で「高澤加代子モダン・バレエスタジオ」というバレエ教室をやっていて、最寄駅は小田急線の中央林間駅です。ぜひよろしくお願いします(笑)。

—— サテライトや練習試合と比べて、トップリーグでの試合は何が違いましたか?

緊張感やコンタクトが違うと感じました。コンタクトを繰り返すことで、どんどん体力が消耗していき、試合の最後の方になると、そのコンタクトの差が身体に効いてくるので、試合終了あたりでは疲れてしまっていました。コンタクトの違いに加え、普段と違う緊張感があったので、余計に体力が消耗したのかもしれません。

試合に臨む時は、ガチガチになるほど緊張していたわけではなく、程良い緊張感がありました。試合に入る時は、いつも通り自分の強いプレーを心掛けて、最初のボールキャリアやコンタクトでは思いっきりいこうと考えていました。最初から集中出来ていたことは良かったと思います。

—— 80分間を通しての出来はどうでしたか?

まだまだ課題はあると思います。タックルミスをすることもありましたし、もっともっと伸ばせる部分はたくさんあると思います。どのプレーでも速いセットが大事になってくるので、そこが自分の中での課題だと思います。倒れてから起きるまでの意識を変えるだけでも違ってくると思うので、そこの意識を更に高めていきたいと思います。

あと試合を通じて思ったことが、アタックにしてもディフェンスにしても、周りから凄くコールを掛けてくれて、そのコールに合わせて自分がどの位置にセットするべきかを考え動いていたので、やりやすさを感じました。僕自身もアタックでどの位置に立つかということを明確にして、良いシェイプが出来ていたところもあったので、そこはこれからも継続していきたいと思います。

◆家にラグビーボール

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—— 出身は神奈川県のどこですか?

大和市になります。

—— 何歳からラグビーを始めたんですか?

中学1年生からラグビー部に入りました。中学、高校と桐蔭学園でラグビーをやりました。ラグビーをやるために桐蔭に入ったわけではなくて、桐蔭に入ってからラグビーを始めようと思いました。なぜラグビーをやろうと思ったのかあまり覚えていなくて、ラグビーを始める前は水泳とサッカーをやっていました。

僕が小さい頃には家にラグビーボールがありました。別に父親がラグビーをやっていたわけではないんですが、たぶん僕にラグビーをやらせたかったんだと思います。5歳くらいまでは父親とラグビーボールで遊んだ記憶はありますが、それ以降はラグビーボールで遊んだ記憶はありません。小学校の時は結局ラグビーをやらなかったんですが、無意識のうちにラグビーをやろうと思っていたのかもしれません。

—— サッカー部や他の部活を選ばなかった理由は?

サッカー部に入ろうとは全く考えませんでした。たぶん小さい頃の意識がラグビーを始める上で、6~7割くらい影響していると思います。あとは中学1年生の時に同じクラスになった友達がラグビーをやっていて、その友達の影響もあると思います。

—— 実際にラグビーをやってみてどう感じましたか?

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自分に合っていたと思います。僕の性格はあまり荒々しくはないんですが(笑)、体に傷が出来ることに違和感はありませんでした。中学の監督は自由にやらせてくれる監督で、もちろん大変な練習もありましたが、楽しさを教えてくれる監督でした。そのおかげで高校でもラグビーを続けようと思えたんだと思います。

—— ラグビーの楽しさを感じた一番のポイントは?

当時は体をぶつけることが楽しいという感覚はあまりなくて、チームプレーが楽しかったですね。サッカーもチームプレーのスポーツだと思いますが、ラグビーの方がよりチームプレーが必要だと思うんです。日頃からのチームメイトとの交流や練習中のコミュニケーション、みんなで練習していると感じることが楽しかったんだと思います。

—— 当時のポジションは?

最初はスタンドオフをやりました。でも、キックとパスがあまり上手じゃないと周りにバレてしまい(笑)、スタンドオフとしては致命的だったので、中学3年生の頃にスタンドオフからセンターに変更しました。当時は体も細くて、背が高い方だったんです。そして、中学の終わりくらいにセンターからロックに変わりました。

—— バックスからフォワードに変わってどう感じましたか?

あまり記憶にないんですが、パスが得意ではなかったので、パスプレーよりも自分でボールを持ってプレーする方が多いロックになって良かったと思いました。

◆初めての花園はガチガチ

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—— 高校ではロックをやったんですか?

高校では、ロックとフランカー、ナンバー8をやりました。高校では中学と同じグラウンドを半分ずつ使って練習をしていましたが、高校の練習は中学の練習よりも大変でしたね。高校になると、他の中学から入ってくる選手もいて、練習の雰囲気が中学とは全く違いました。他の中学から入ってきた選手は、ラグビーに対して貪欲でしたし、ラグビー歴も長くて、強くて上手い選手が多かったんです。そういう選手が入ってきたことによって、僕も強くなりたいと感じて、ウエイトトレーニングもするようになりました。

—— 何年生から試合に出ていたんですか?

2年生からです。2年、3年の時に花園にも出場することが出来ました。高校生の時は花園が全てという雰囲気があったんですが、2年生の県予選前の合宿で、足の骨折という大きな怪我をしてしまったんです。結局県予選には間に合わなかったんですが、必死でリハビリをして、花園で試合をすることが出来ました。初めて花園のグラウンドに立った時は、ガチガチに緊張していました(笑)。

—— 花園で印象に残っていることはありますか?

2年生の頃は、5番で出場していたんですが、あまりボールを持つ選手ではなくて、ボールを持たない時の動きを意識してプレーしていました。3年生の時は、2年生での経験もありましたし、怪我もなかったので、高校最後と考え思いっきりプレーしていました。3年生では7番で出場し、ボールを持って、ガンガン体をぶつけていくプレーをしていました。

プレースタイルが変わったのは、3年生になって体を大きくしたこともありますし、先輩たちが抜けて、誰かがそういうプレーをしなければいけない状況だったこともあります。

—— 2年生と3年生の時の成績は?

2年生では準優勝し、3年生ではベスト4でした。どちらも負けているので、悔しかったんですが、2年生の時は試合に負けたことと先輩がいなくなることで、凄く悔しかったことを覚えています。3年生の時は、前の年に準優勝だったので、優勝を目指して出場してのベスト4止まりだったんですが、2年生で負けた時よりも落ち着いていたと思います。3年生の時に負けた相手が、新田(浩一)がいた東海大仰星でした。めちゃくちゃ強かったですね。

2年連続で花園に出場し、どちらも準決勝までは進んでいたので、自信にはなりました。そこから大学でも続けようという気持ちになりました。

◆更に自信がついた

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—— 大学は慶応大学ですね

慶応大学から誘っていただいたこともありますが、高校の監督はどこから誘いが来ているということを選手には言わずに、まずは選手にどこの大学に進みたいかを話させるんです。そこで監督に慶応に行きたいという話をしました。1つ上の先輩が慶応に進んでいて、慶応の試合をよく見ていましたし、先輩たちが頑張っているという話を聞いていました。そこで慶応に行きたいという気持ちになりました。

—— 大学のラグビーは高校までのラグビーとは違いましたか?

慶応は伝統校なので、その伝統をすごく感じました。大学でのポジションは基本的にはナンバー8でしたが、1年生の最後の頃はロックで試合に出ていました。2年生からはレギュラーとして試合に出ていました。

—— 大学時代に印象に残っていることは?

高校時代よりも更に自信がついたと思います。特にフィジカルの面では自信がつきました。よく他の選手から「ウエイト好きだろ?」と言われますが、嫌いではないですが、特に好きというわけではありません。筋肉量をつけて体を大きくした方が強いという感覚があったので、他の選手よりもウエイトはやったと思います。大学時代は、ただその感覚だけでウエイトをやっていました。だからスピードが遅くなるということは全く考えませんでしたね。

試合で言えば、僕が3年生の時に対抗戦で、リーグ戦最後が早慶戦で、その試合に勝てば優勝することが出来たんですが、その試合に引き分けてしまい2位でした。そして僕が4年生の時は、明治に負けていて、最後の早慶戦に勝たなければ優勝のチャンスがなくなる状況で、早稲田には勝つことが出来て、慶応、早稲田、明治が1敗で並んだんですが、結局早稲田が優勝で、慶応は2位でした。2年連続で2位だったので悔しかったですね。

—— リーダーはやっていましたか?

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キャプテンは竜太郎(竹本)で、僕は副キャプテンでした。副キャプテンの主な仕事は竜太郎のサポートですが、チーム全体となると選手が多すぎて対応出来ません。チームにはキャプテンや副キャプテンを含めた幹部と呼ばれる選手が4人いるんですが、その幹部だけでもチーム全体を見ることが難しいので、4年生全員で協力してチーム全体を見ていました。

4年生全員がそれぞれの立場で後輩たちに気を配っていましたし、自分たちのやるべきことも全うして、チームとしての指針になれていたので、チーム全体が上手くまとまっていたと思います。

—— チーム全体で何人くらいの選手がいたんですか?

4年生だけで43人いて、チーム全体だと160~170人くらいいましたね。かなりの大所帯だったので、練習する時は、チーム別に時間を分けて練習していました。僕がいた時は6~7チームとリハビリチームに分かれていて、試合に出るためには、上のチームに入ることを目指していかなければいけません。

シニアチームというチームがあるんですが、例えば、シニアチームが最初に練習したら、その後に他のチームが練習をするので、他のチームにいる後輩たちとはグラウンド上で関わりがなくなってしまいます。だからシニアチームの思いや考えを、他のチームにいる4年生がしっかりと後輩たちに伝え、まとめてくれていたので、良いチームになれたと思います。

—— チーム毎にコーチは違うんですか?

コーチは一緒なので、全てのチームを見るコーチは大変だったと思います。

—— 4年間を通して見ると、悔しい思いの方が強いんですか?

悔しいですね。勝った試合のことも覚えていますが、負けた試合のことの方が強く印象に残っています。

◆強みよりも弱みを感じた

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—— 社会人でもラグビーを続けると決めたのはいつ頃ですか?

大学3年生だったと思います。

—— 社会人でラグビーをすることに不安はありませんでしたか?

全く不安がなかったわけではありませんが、サントリーで同じ大学の先輩がしっかりと活躍されていて、更に仕事もしっかりやられていると聞いていたので、ためらいなどはありませんでした。

実際にサントリーでラグビーをしてみて、毎回の練習に臨むに当たって、しっかり集中して臨まなければ練習についていけないと感じますし、練習が激しい分、集中していないと怪我をしてしまったりすると思います。

—— サントリーに入ってみて、いちばん凄いと感じたところはどこですか?

管理体制だと思います。選手1人1人の強さはもちろんですが、その選手を管理しているところが凄いと思います。管理されていることによって、選手1人1人の意識も高くなって、管理されていない所でも意識が高くなり行動出来ていると思います。

—— サントリーでラグビーをしてみて、改めて気付いた自分の強みなどはありますか?

強みよりも弱みを感じさせられました。フィジカルに関してはある程度は自信もありましたが、大学と社会人では全く違いました。それに外国人選手も凄い選手がたくさんいて、高い姿勢で体をぶつけたら、全く前に進めないですし、ボールのもらい方1つ取っても、大学とは違うと思いました。

—— 1年間サントリーでやってみて、2年目の今年、自信は取り戻せましたか?

サントリーはどの選手が試合に出ても、同じサントリーのラグビーが出来ることが強みなので、どの選手がいつ試合に出てもサントリーのラグビーが出来るように準備していると思います。2年目になって、僕もいつ試合に出ても大丈夫と言えるようにはなったと思います。1年目の時は、その自信はありませんでした。

—— 1年目と2年目で変わったところはどこですか?

チームでの理解度が上がりましたし、春から激しいトレーニングをしてきたことによって筋肉量やフィットネスも上がっているので、それが自信に繋がっていると思います。そこは3年目になった時には、更に自信になっている部分だと思います。

◆ディフェンスが課題

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—— 今の自分の強みはどこですか?

ゴーフォワードの部分です。前に出る力を売りにしています。ただ社会人ではパワーだけでは前に出られないので、ボールをもらう時のスキルをもっと成長させていかなければいけないと思っています。ボールともらう時の姿勢やタイミング、走り込む角度によって、前に出られる距離が全く違ってきます。高い姿勢のままボールをもらったら、外国人選手相手だと、僕なんかは片手1本で止められてしまうと思います。ボールのもらい方次第で、次のプレーの幅が広がるので、面白いと感じます。

大学の時は深い位置でボールをもらってからスピードを上げていましたが、今はボールをもらう時にアタックするコースに入ってスピードを上げることに気をつけています。スピードを上げた状態でボールをもらおうとするとハンドリングエラーも起きやすいので、速くセットし落ち着いて上がって、ボールをもらう時にスピードを上げるようにしています。

あとは規律を持ってプレーすることでスペースも生まれてくるので、そこを更に理解することによって、より自信をつけることが出来ると思います。今まで、アタックのことしか話していないですね(笑)。僕の課題はディフェンスです。ディフェンスで相手からボールを奪わなければアタックには繋げられないので、ディフェンススキルもレベルアップさせなければいけないと思っています。

タックル自体のスキルをアップさせて、速いセットや周りとのコミュニケーションを取り、チームディフェンスをすることが大切です。

—— これからの目標は?

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2つトロフィーを獲りたいですし、その瞬間にグラウンドに立っていたいです。そのためには、自分の強みであるゴーフォワードのプレーを継続することと、ディフェンスやブレイクダウン、サポートのプレーをもっともっとアグレッシブにチャレンジしていくことだと思います。

—— 2年目でトップリーグデビューしたことは、自分の中のスケジュール感ではどうですか?

もちろん1年目からトップリーグでプレーをしたいという思いはありましたが、ここからだと思っています。

—— 試合中にどういったプレーを見て欲しいですか?

ボールキャリアと、これから仕事量を増やしていくので、そこを見て欲しいですね。僕は体が大きくはないので、もっともっとワークレートを上げていかなければいけないと思っています。

—— 自分の性格はどういう性格だと思いますか?

基本的には穏やかですが、負けず嫌いでもあります。両親は穏やかどうか分かりませんが、僕が小さい頃は厳しかった記憶があります。別にやんちゃな子供だった記憶もないんですが、よく怒られていましたね。あとは神経質ではないですが、綺麗好きだと思います。

休みの日とかは外に出ることが好きですね。練習が終わった後に、少し時間がある時は、家で本を読んだりゆっくりしています。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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