SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2013年1月16日

#312 金井 健雄 『他の選手を勇気づけられるプレーをしたい』

昨シーズン終了を待って怪我の手術をし、リハビリを経て今シーズン後半にカムバックした金井健雄選手。静かに復帰して、黙々と自分の役割に取り組む金井選手に、シーズン大詰めを迎えての意気込みを聞きました。

◆最後までグラウンドに立っていられる身体

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—— 大学(慶大)最終シーズン以来の大きな怪我ですか?

はい、自分の中では、あまり怪我が多いとは感じていませんが、前回の怪我が2007年で、今回が2011年で、ワールドカップイヤーに怪我をしています。あと3年は怪我をしないと思うので、ラッキーです(笑)。

今回の怪我は去年の11月13日に仙台で行われたNTTコミュニケーションズ戦で、前半で怪我をして交替した時のものです。怪我をした瞬間に、靭帯が切れる音が聞こえたので、「これは無理だな」と思いました。それから手術やリハビリを行い、復帰後初先発したのは、偶然にも今シーズンのNTTコミュニケーションズ戦でした。

基本的には怪我には強い方なんですが、怪我をする時は結構重症になってしまいます。ラグビー以外での怪我は、野球や柔道をやっていた頃に鎖骨を骨折したことがあります。野球では、僕は左利きなので、右手にグローブをはめていて、そのグローブを踏んでしまって、そのまま倒れて鎖骨を折りました。

—— 左利きなんですね

字を書くのもボールを投げるのも左なんですが、ラインアウトのスローイングは右です。ボールを投げるのは、どちらの手でも比較的同じようには投げられます。

—— 今回のリハビリは大変でしたか?

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実際に手術をしたのは3月の終わりだったんです。11月に靭帯を断裂したんですが、まだシーズン中だったので、靭帯が断裂した状態でトレーニングをして、試合に出ようとしました。試合に出る準備はしていたんですが、肉離れなど他の怪我も重なって、結局試合に出られないままシーズンが終わってしまい、シーズン後に手術を受けました。

手術を受ける前のリハビリは、「もうやるしかない」と腹を括ってやりました。手術後は、田代さん(アスレティックトレーナー)や牧さん(理学療法士)と相談をしながら、一緒にリハビリをしました。復帰はシーズンが始まってからになってしまいましたが、リハビリを始める時に「シーズンの最後までグラウンドに立っていられる体にしよう」と話をしてリハビリをしていました。

—— 他の選手はリハビリが大変と言いますが、金井選手はどうでしたか?

リハビリはラグビーとは違って単調な動作で、みんながラグビーをしている姿を見ながらリハビリをするので、精神的に辛くなるんだと思います。僕もストレスは溜まりましたが、そのストレスが爆発するほどではありませんでした。

—— そのストレスはどうコントロールしたんですか?

良いプレーをしている姿や最後までグラウンドに立って優勝に貢献するというイメージを持ってリハビリをしていました。

—— 怪我は完全に治ったんですか?

怪我をした部分は問題ないんですが、患部をかばっていた部分に少し痛みがあるので、完全に治ったとまでは言えない状態です。ですが、しっかりとプレー出来るまでに1年と言われていましたし、今はプレーも良くなってきているので、怪我の状態と共にプレーも成長していると感じています。

◆プロップはプロップらしく

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—— サンゴリアスに入って、いちばん多くプレーしているのは何番ですか?

圧倒的に1番です。3番はBチームでしかプレーしていませんし、2番は1年間で1~2試合だと思います。

—— ポジションにこだわりはありますか?

試合に出られれば、あまりこだわりはありません。

—— 好きなポジションは?

どこでも好きですよ。言い方が悪いですが、1番は楽です。1番は自分の好きなようにプレーが出来るんです。2番は動けるし、計算されるポジションなんですが、プロップは動けないイメージがあるので、あまりプレーに関わって来なくてもいいような配置になっているんです。でも、実際はその配置にしっかりとはまることで、オフェンスでもディフェンスでも、より効果的に他の選手がプレー出来るようになるんです。

だからプロップはプロップらしくプレーしなければいけないと思います。例えば、スクラムやラインアウトでは自分の責任を全うして、もしスクラムが押されて、相手選手に走られてしまったら、何のためにいるのかと思われてしまいます。その他は、ディフェンスラインやラックでの仕事があります。ラックではしっかりと人数を見たり、ボールキャリア―にならなければいけません。

良いポジションには走っているのに仕事が出来ていないとか、状況の見極めが出来ていなかったり、立ち位置に立てていないとか、動き出しが遅いとか、そういうプレーで選手によって差が出てきます。

—— プロップとして仕事が出来るコツは何ですか?

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状況を見て判断を速くすることだと思います。僕はあまり足も速くないので、出来る限り速めに動き出して、目的の場所にセットするようにしています。もちろん動き出した後に、状況によっては途中で止めることもあります。

あとはディフェンスでは、相手の攻撃を見て、このあと順目(ボールの展開方向をブレイクダウンの次の攻撃も同じ方向へ展開すること)なのか、逆目(順目の逆で、ボールの展開方向をブレイクダウン後に逆の方向へ展開すること)なのかを判断することや、しっかりと立ち位置に立てているのかとか、もし相手が逆サイドに人数が残っていたら、周りとコミュニケーションを取って、しっかりとディフェンスをすることを心掛けています。

—— そういうプレーが自分の特徴だと思いますか?

そうですね。人を活かしつつ、しっかりと自分を出せるところが特徴だと思います。自分がプレーするのに、最善の方法が取れるようにしています。そういうプレーが連動していって、1つのまとまりになっていくんだと思います。

その他に、他の人が動きやすいように自分も動くというプレーも大事で、そのためには自分のことを15分の1の駒として見られるかどうかだと思います。チームとして15分の1の役割を果たすことは最低限の責任であって、その上で、チームが勝つために状況に応じたプレーをしていくことが大事です。

自分のことを15分の1として見ていたとしても、15分の1がただ集まっただけではチームとして「1」(15分の15)にはならないんです。15分の1+15分の1と足していくことで、初めて1になるので、15分の1を繋ぐ「+」のプレーが必要なんです。具体的にはコミュニケーションであったり、相手を見ての判断というのが「+」のプレーになります。

◆ディフェンスがいても前に出る

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—— 今シーズンのトップリーグでの復帰戦はいつですか?

ウインドウマンス明けの第9節のNTTドコモ戦でリザーブで出場しました。そして次の東芝戦と2試合連続でリザーブに入って、第11節のNTTコミュニケーションズ戦では先発に復帰しました。ウインドウマンス中の練習試合でも試合に出ていたので、調整は上向きに来ています。

—— 怪我の前と比べてどうですか?

怪我をする前はずっと良いイメージを持っていたので、まだまだ追いついてはいないですね。ただ、数値的に見ると、怪我の前に近い状態ではあるので、そこを上手く伸ばしていきたいと思います。あとは、昔の映像を見ると、もっとボールキャリアーで前に出ていたので、そこを伸ばしていきたいと思います。

—— これからも1番でプレーしていきたいですか?

今は1番を与えてもらっているので、1番で頑張りたいと思います。

—— これからどういうプレーヤーになっていきたいですか?

ディフェンスの間を抜けていくプレーも良いですが、プロップとして、フォワードとして、ディフェンスがいても当たって前に出るという基本的なプレーをして、他の選手を勇気づけられるプレーをしたいと思います。

—— スクラムについてはどうですか?

徐々に上向きに来ていると思います。前半戦はプレッシャーをかけられることが多かったんですが、後半戦は逆にプレッシャーをかけて、相手の球出しを乱せるようになってきているので、良い流れが出来ていると思います。

—— たまにフッカーをやりたくなる時はありませんか?

やれる時があればやりますという感じです(笑)。

◆試合の理解度を伸ばす

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—— プレーオフを戦うにあたって気をつけていることは何ですか?

プレーオフで戦うところに照準を置いてやっていますが、プレーオフでは1つ1つのセットプレーが凄く大事になってくると思うので、セットプレーをしっかりと安定させて、尚且つ相手にプレッシャーを与えられるようにして、そこから良い流れを作っていければと思います。

—— プレーオフを戦うコツはありますか?

相手には勢いがあるので、そこでいかにその勢いを抑え込んだり、受け流したりすることが大事なので、その時の状況を読んで、ここではギリギリのプレーはしない、というような判断を心掛けてやっていきたいと思います。

—— 話を聞いていて、頭を使ったプレーを心掛けているように感じます

体だけでは他のメンバーに負けてしまうので、他の選手が気づかないようなプレーをしていかなければいけないと思っています。

—— そういったプレーで参考にしている選手やチームはありますか?

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海外のチームの映像などを見て、参考にしている部分もありますし、それに自分で経験したことを加えてプレーしています。そこから新しいことにチャレンジしたりもしています。

—— 復帰してから何か新しいことにチャレンジしましたか?

スクラムについては、試合中でも組み方を新しくしています。試合の映像も、自分のプレーの部分だけではなく、自分が出場しなかった試合や、他のチームの試合映像などを見て、「自分だったらこうしていく」ということを考えています。そこから相手チームのフィジカルなどを計算して、どういうプレーをすれば良いかを考えます。

自分の中ではまだまだ伸ばせる要素がたくさんあると思っていて、フィジカルを伸ばしつつ、試合の理解度を伸ばしていければ、体が続く限りは成長していけると思います。

—— 今後の目標は?

プレーオフは、負けたら終わりになるので、負けられない状況の中で、チームがプレッシャーに打ち勝てるような手助けをしていきたいと思います。実力通りにならない世界もあるので、良い結果になるように、しっかりやっていきたいですね。

—— チャンピオンチームとして、相手を受けてしまうという状況はありませんか?

練習中から受けたら終わりということを擦り込んでいくことも必要なんですが、試合中にどうしても受けてしまうところがあるので、耐えるところは耐えて、攻める時は攻めるという切り替えをしっかり出来るようにならなければいけないと思います。どこに気の緩みが出るか分かりませんが、今のところは問題ないと思います。

—— 個人としての目標は何ですか?

プレーオフや日本選手権に向けて、どこまで出来るかということをターゲットにしています。ボールを持つこともタックルすることも好きなので、しっかりと相手にプレッシャーをかけられるようにしたいですね。あとはプロップでもしっかりとラグビーが出来るというところを、観客に観せたいと思います(笑)。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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