SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2012年12月12日

#308 フーリー デュプレア 『チーム15人にとって何がいちばん良い判断か』

とても優しそうでありながら芯が強く見える。そのたたずまい自体が、まさにスクラムハーフ。サントリー躍進の大きな原動力となっている世界一との呼び声高いスクラムハーフが、ラグビーとサントリーを楽しそうに語った。

◆プレースタイルを向上させていかなければいけない

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—— サンゴリアスで2年目のシーズンですが、日本でのプレーはどうですか?

日本でプレー出来ていることをすごく楽しんでいます。チームもすごく良い状態ですし、自分自身もチームに貢献出来ているのでとても楽しんでいます。サントリーでプレー出来ることも、日本での生活もとてもハッピーです。

—— サンゴリアスでも、まだまだ自分自身が成長しようとしているように感じます

自分のキャリアの中で、「常に向上心を持っていたい」と考えていますし、その周りの選手も一緒に成長していけるということが大事だと考えています。

僕が日本に来て驚いたことは、サントリーのチームのみんなが向上心を持っていて、もっともっと成長したいという意識がとても感じられることです。こういうチームの環境も僕の更なる向上心に繋がっていると思います。

—— 日本に来て何かギャップを感じたことはありますか?

日本のラグビーはテンポが速いので、ハーフバックとしてサントリーのスタイルでプレーするということは、エリアによっては、自分のプレースタイルを更に向上させていかなければいけないと感じました。南アフリカでは、ゲームをコントロールするというところがメインにのプレーでした。

プライベートについては、南アフリカとの違いという部分では、家族と一緒に過ごせる時間がたくさんある点です。日本のライフスタイルは自分に合っていると思うので、すごく住みやすいと感じています。

—— 日本に来るきっかけは?

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「2011年のラグビーワールドカップが自分の中でのターゲットで、そこでラグビーは一線から退いて違う道に進もう」という事も視野に入れて考えていました。これまで南アフリカやオーストラリア、ニュージーランドなどでプレーしてきて、ラグビーから離れて違う経験を積みたいという思いもありました。

そんな中で、エディー(日本代表ヘッドコーチ)がサントリーの監督をしていて、エディーからの助けや誘いもあって、サントリーでプレーするという選択をしましたが、それは難しいことではありませんでした。それにラグビー以外のこともエディーや他の人から学ぶことがあると思ったので、日本に来ることを決めました。

—— 日本に興味を抱いたところはどこですか?

ラグビーに関しては、若手選手などを指導したいという思いがありましたし、ビジネスという部分でもとても興味がありました。

—— 2015年のラグビーワールドカップは目標ではないのですか?

2年前に日本に来ようと思った時に、2011年のワールドカップが最終ターゲットと決めており、今の段階では次のターゲットは特に決めていません。今の自分の状況はすごくハッピーですが、この先はどうするかまだ分かりません。

◆自分のやるべきことをやればいい

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—— あらゆるプレーが素晴らしいと感じますが、特にキックについてはどのくらい練習したんですか?

若い頃には常に練習をしていました。スキルを磨いて自分のものにしていけば、ある程度は出来るようになります。どの選手にも、「このプレーは完ぺきにしたい」という思いがあると思いますが、僕も常に完璧にしたいという思いで練習をしていました。それに、自分の中で改善すべきところがあれば、毎日毎日練習をしましたし、若い頃にハードワークをしてトレーニングをしていた成果が出ていると思います。

—— 得意なプレーは何ですか?

判断力と、フォワードとバックスの連携を取ってキックを上手く使うところだと思います。いちばん大事なこととして、自分の判断だけではなく、チーム15人にとって何がいちばん良い判断かを決めることが自分の強みだと思います。

—— チームの中でいろいろな選手に教えていますが、例えば日和佐選手には何を教えていますか?

日和佐にはゲームコントロールとキックを重点的に教えています。以前に比べると、そのポイントは凄く上達しています。昨シーズンの日和佐は、常に速いパスを出していましたが、昨シーズンの最後と今シーズンを比べると、良いコントロールが出来るようになりましたし、ここぞというタイミングでキックが使えるようになってきているので、ゲームコントロールとキックという部分では、日和佐は上達していると思います。あとはディフェンスの時のポジショニングです。チームにとってどこでディフェンスをすれば良いかを考えて動いているんですが、そこも上手く機能していると思います。

—— どのように指導すれば良くなっていくんですか?

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キックについては、ある程度簡単に教えられるんですが、例えば、僕がスタンドオフになったつもりで、スクラムハーフはどのようにラインを判断すべきかを教えたりします。あとはゲームコントロールで言えば、試合の映像を見たり、チームトレーニングの中で、毎日という訳ではありませんが、ポイントを絞って教えています。

—— デュプレア選手も誰かに指導を受けてきたんですか?

指導を受ける時もありました。ブルズに18歳で入って、自分に必要なスキルを練習して、ブルズにとって必要なシステムを構築してきました。必ずストラクチャー(組み立て)の部分でチームの中にスタイルがあるので、それに対してどうすればいちばん貢献出来るか常に考えて動いてきた結果が今だと思います。

日和佐は僕になる必要はないですし、他の世界的に有名な選手にならなくてもよくて、自分のやるべきことをやればいいと思います。その中で、他の選手の良いところを盗んで自分のものにしていくことが大事だと思います。

◆父親がブルズでプレーしていた

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—— 何歳からラグビーを始めたんですか?

8歳です。父親がブルズでプレーをしていたので、小さい頃から近くにラグビーボールがある環境でした。「僕も父親みたいになりたい」と思ってラグビーを始めたので、ラグビーをすることは楽しかったですね。

父親がナンバー8でプレーしていたので、僕もラグビーを始めた時は8番でプレーしていました(笑)。けれど、僕はそこまで体が大きくはなかったので、途中でポジションを変えました。

—— ご兄弟は?

6人兄弟です。兄が4人、姉が1人で、僕は一番下です。一番上の兄は48歳で、その下が47歳、45歳、30歳、姉は32歳です。小さい頃は、親が5人いるような感じでした(笑)。

—— ラグビー選手として生きていこうと決めたのはいつですか?

特にこの時期に決めたというタイミングはありません。僕が入った大学はブルズとのコネクションがありましたが、そこから10年間もプロとしてプレー出来るとは思ってもいませんでした。ブルズで何年もプレーした後、スプリングボクス(南アフリカ代表)に選出された時に、プロ選手としての自覚を持ちました。

—— ブルズに入って、お父さんが喜んだんじゃないですか?

すごく喜んだと思います。

—— ブルズの選手として、お父さんを超えたと思いますか?

父親がプレーしていた時代とはまったく違っていて、父親はアマチュア選手で、仕事をしながらプレーしていました。周りの人からは、僕の父親も良いプレーヤーだったと聞いています。父親は代表選手としてはプレーしませんでしたが、ブルズの中では、代表に選出されるべきだったのに、選出されなかった選手と言われています。だから、僕が南アフリカ代表に選ばれた時は、凄く喜んでくれました。

◆普段のプレーをする

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—— ラグビーの魅力は何ですか?

チームメイトとプレーをするということです。ラグビーはプレー中でもプレー以外でも、友達をたくさん作ることが出来て、交友関係が広がります。その中で良いプレーをすると、チームとしても良い結果を得ることが出来ます。

—— 今後はどのような道に進んでいこうと考えていますか?

まだ具体的には決まっていませんが、今後2年くらいまでにはどうしていくかを決めたいと思います。将来的にはコーチをしたいと思っています。ビジネスでも金融など、いくつか興味を抱いていることがあるので、ビジネスを始める前に勉強をして、取り組んでいきたいと考えています。

—— 今まででいちばん印象に残っている試合は?

幸運なことにたくさんプレーをさせてもらっている中で、2007年のフランスでのラグビーワールドカップのイングランド戦です。イングランドとはグループリーグで戦い、その後決勝戦でも戦いました。あとは代表50キャップ目のオーストラリア戦。そしてブルズでは2009-2010シーズンのスーパーラグビーファイナルと、2009年のカリーカップファイナルです。全ての試合がビッグゲームで、記憶に残る試合でした。

—— 大事な試合に臨む時には、何にいちばん気をつけていますか?

特にリラックスすることを心掛けています。特別なことを考えず、普段のプレーをすることを考えています。選手によって違うと思いますが、僕は毎試合同じプレーを同じレベルでプレーすることを目標にしているので、ビッグゲームであろうとなかろうと、プレーの一定性を大事にしています。

—— 定性あるプレーをするためのコツは何ですか?

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毎試合同じように準備をすることと、トップリーグのファイナルでプレーするにしても、サテライトリーグでプレーするにしても、プレーの一定のレベルをきちんと考えて、しっかりと準備をすれば、良いプレーが出来ると思います。その時のシチュエーションによって、良い時もあれば悪い時もあるかもしれませんが、なるべく一定に保とうとする意識が大事です。

—— 自分の性格はスクラムハーフに合っていると思いますか?

キックがもっと良ければ、スタンドオフでもプレーするチャンスがあり、スタンドオフでも楽しいと感じたと思いますが、スクラムハーフとしてゲームをコントロールすることが、自分の性格には合っていると思います。代表に選ばれたばかりの頃は、どちらかと言うとボールを出すことを意識していましたが、今のスクラムハーフは判断力を問われてきていて、そこが自分でも楽しい部分です。

—— デュプレア選手は怒ったら怖いと思いますが、あまり怒っている姿を見せないですね

怒ったら怖いと思います(笑)。怒るべき時には怒りますが、たいていは自分をコントロールしています。根本的にチームのためにベストでいたいという思いがあるので、どうすればベストでいられるかを考えてそうしています。チームとして必要であれば、何でもしたいと思っています。

—— サントリーは良い方向に進んでいると思いますか?

もちろん。監督やキャプテンが変わったことで、プレシーズンは大変な時期もありましたが、シーズンがスタートした時から比べるとチームも良くなりましたし、チームが毎試合良くなっていくことを掲げているので、良い方向に進んでいると思います。

—— 今シーズンの目標は?

昨シーズンよりももっと良くなることです。そしてシーズンの最後に2冠を達成するという目標に向かって、手助けが出来ればと考えています。

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(通訳:白倉綾子/インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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