2012年10月 2日
#298 鈴木 亮大郎 SOS8人目 『体を張れる選手になりたい』
「サントリーサンゴリアスに今までいなかったタイプ」という小野澤選手が愛情を込めて言う。新人だけれど新人らしくない面構え。ところが話してみると意外な一面が・・・。今年の新人デビュー第1号を果たした鈴木選手の魅力に迫りました。
◆相当緊張していた
—— 2試合連続でベンチ入りし、2試合目でついにトップリーグデビューを果たしましたね
時間は短く、あまり実感はないのですが、貴重な時間帯で出させていただき、試合をしていて楽しくて、試合が終わった瞬間にもっと試合に出たいという気持ちになりました。そしてもっと長い時間使ってもらうために、もっと努力しなければいけないという思いが湧いてきました。これからもリーグ戦は続きますが、まだまだ足りない部分があるので、これからも努力してメンバーに選ばれるようにしたいと思います。
—— 緊張はしましたか?
いつ交替するか分からない状況で、時間が経つにつれて今日も出場出来ないと思いかけていたんですが、いざ自分の名前を呼ばれた時は緊張しました。そしてグラウンドに入る時は、相当緊張していたと思います。
—— あまり表情に出ないタイプですか?
あの時は緊張でキョロキョロしていたと思います(笑)。いつも試合に出ている人からは、「お前、緊張してるな?」って言われたので、表情に出てしまっていたんだと思います。
—— 学生の時から試合の時は緊張していたんですか?
学生の時も緊張していました。1年生の時はあまりメンバーにも選ばれなかったんですが、選ばれた時はかなり緊張しました。2年生になると少しは慣れてきたと思います。
—— サントリーでも試合に出続けると慣れるでしょうか?
慣れるといいんですが、まだまだ緊張すると思います。
—— 緊張する方なんですね
緊張しいですね。緊張していても弱気になることはないですし、逆にやってやろうという気持ちになります。緊張感がないと、あまり良いパフォーマンスを出すことが出来ません。
◆スクラムが一番楽しい
—— 出身地は?
岩手県の滝沢村というところです。いま練習場が一緒の日テレ・ベレーザの岩清水さん(梓)も同じ滝沢出身で、祖母の家が近いんです。けど、岩清水さんはあまり長くいたわけじゃなくて、話したことはないんです。僕は中学校まで岩手にいて、高校からはハタケさん(畠山)と同じ仙台育英高校に行きました。
—— ラグビーはいつ頃から始めたんですか?
中学1年生から始めました。小学校の時はサッカーをやっていたんですが、当時は体が大きくて、監督からもラグビーを勧められたり、中学のラグビー部の監督からも誘ってもらったりしていました。中学のラグビー部は、とりあえず体の大きい生徒を集めたような部で、それで誘われていたんです。
—— そこでサッカーを続けようとは思いませんでしたか?
中学に入った後、最初はサッカー部の見学に行っていたんですが、サッカーを続けようという気持ちにならなかったんです。そこでラグビー部の見学に行ったら楽しかったんです。
—— 何が楽しかったんですか?
パスが上手く通ったり、閃きでやったプレーが上手くいって、褒められた時は楽しかったですね。中学の時は体重が70kgくらいだったので、ステップを踏んだり、ボールを持って走っていました。今は体重が重くなってしまったんですが、当時は足も速い方だったと思います。中学は12人制で、当時はローバーというポジションがあって、そのポジションをやっていました。
—— 仙台育英高校に行こうと思ったきっかけは?
中学3年生の時に東北大会で、創部4年目の僕たちが優勝することが出来たんです。その大会をたまたま仙台育英の監督が見に来てくれていて、「仙台育英に来ないか?」と誘っていただきました。僕もその時は地元の高校に行こうという考えはありませんでしたし、ラグビーを続けていくうちに、レベルが高いチームでプレーしたいと考えていた時に誘っていただいたので、仙台育英に行くことを決めました。
—— 高校時代の一番の思い出は?
ラグビーに集中出来たことが思い出に残っています。あと僕らの代の時に選抜大会でベスト4になることが出来て、嬉しかったことを覚えています。
—— 高校でのポジションは?
1年生の時はずっとプロップをやっていたんですが、1年の終わりからはフッカーになって、そこからはずっとフッカーです。僕はあまりスクラムが強い方ではなかったので、プロップをやっている方はすごいと思います。シーズン前のNECとの練習試合で、1番で出場しましたが、スクラムがぜんぜん組めませんでした。
—— フロントローの楽しさは何だと思いますか?
スクラムが一番楽しいと思います。フッカーになってからは、スローイングをしなければいけないというプレッシャーはありますが、最前列でプレーすることが面白いですね。
—— スローイングは得意ですか?
大学までは自信があったんですが、社会人では相手チームのプレッシャーも違いますし、もっともっと練習をしなければいけないと思っていて、今は全体練習が終わった後は、スローイングの練習しかしていないです。たぶん100本近くは投げていると思います。
—— スローイングのコツは何ですか?
まだまだ上手くないので、そんなことを言える立場ではありませんが、練習で狙ったところにしっかりと投げ続けることだと思います。投げ続けていると感覚的に分かるようになります。
◆体が強くなっている実感
—— 大学は明治大学に進みましたが、明治大学を選んだ理由は?
明治大学はフォワードで戦うチームなので、高校時代からずっと試合を見ていましたし、フロントローとしては、フォワードで激しく攻める明治でプレーしたいと思い、明治大学に進むことを決めました。元さん(申騎)や澄憲さん(田中)がいた頃の明治は、大学の中で一番強いチームだったと思うんですが、どんどんレベルも下がってきてしまっていて、僕らの代の時も、選手権ではベスト8で終わってしまい不甲斐ないという気持ちがありました。正直、昔の明治に比べると、今の明治はレベルが落ちてしまっていると思います。
—— その原因は何だと思いますか?
僕らの代の時は、春から激しい練習を積んできて、これだけ練習をすれば勝てるだろうという自信もありました。リーグ戦の最初の頃は勝つことも出来て、調子が良いと思っていたんですが、帝京大学に負けて、まだまだ足りないんじゃないかと思い始めた時にはもう手遅れになってしまい、負けることが多くなってしまいました。勝てないということは、もっともっと練習をしなければいけなかったということだと思います。
—— サントリーに入ることを決めた理由は?
大学3年の時に怪我をしていてまったく試合に出ていなかったので、どのチームからも声が掛かりませんでした。怪我が治って大学4年の時には試合に出ていましたが、社会人でラグビーをするには大学3年で試合に出ることが重要と聞かされていたので、大事な時期に怪我をしてしまったと思っていました。このまま声が掛からなければ、地元に帰ろうかとも考えていたんですが、大学4年の時にたまたまサントリーから声を掛けていただき、社会人でチャレンジしようという気持ちになりました。けど、甘い気持ちで日本一のチームに入ることは出来ないとも考えていて、やるからには真剣に取り組み、試合に出るという気持ちを持って取り組もうと思いサントリーに入りました。
—— 同期の中では最初にトップリーグデビューしましたね
必死で練習をしていますが、まだまだ足りないところが多いと思いますし、これからも努力していかなければいけないと思っています。同期の中で最初に試合に出たというところは、特に気にしていません。
—— 自分の中で何が良くて試合に出られたと思いますか?
自分で言うのもなんですが、日々練習でやっていることを、次の日の練習でも出すことができ、そして練習試合などでも出すことが出来たことが良かったと思います。それがメンバーに選んでもらうきっかけになっていると思います。チームに入ったばかりの頃は、フィットネスもなくて、足も遅かったんですが、走っていくにつれてコンディションも良くなっていって、直弥さん(大久保)からも「フィットネスが良くなっている」と言われていました。ただまだまだフィットネスも足りないので、これから更に上げていきたいと思います。そして練習中に同じミスを繰り返してしまうところがあるので、同じミスを繰り返さないようにしていかなければいけないと思います。
—— 高校や大学とは違うラグビーの面白さはありますか?
高校や大学と比べると、練習はすごくキツいんですが、練習が終わったとの充実感はぜんぜん違いますね。練習が終わった後に、また次も頑張ろうという気持ちになれるんです。これだけ激しい練習をして、今日もやり切ったという充実感が楽しいです。
—— 今の自分の中で、「心・技・体」では、どれが一番自信を持っていますか?
コーチ陣からも体が出来てきていると言われているので、「体」だと思います。まだまだ技術も足りないですし、心も弱いところがあるんですが、体が強くなっているという実感はあります。
—— 「心」を鍛えるには、どういうことをしていこうと考えていますか?
入ったばかりの頃は、コンタクトの強さが学生とは全く違っていて、「怖いな」と思ってしまうことがありました。怖いと思っていたらラグビーは出来ないと思いますし、やるしかないと気持ちを切り替えて、経験を積んでいくことによって分かってくる部分もあると思います。それが体に染みついてくると気持ち的にも前向きになり、自信に繋がっていくと思います。
◆選ばれないかもしれないというプレッシャーが怖い
—— 普段はよく笑いますか?
よく笑います。1人でいる時は大人しいですが、みんなといる時は笑いますし楽しいですね。
—— 仕事をしながらラグビーをしていて大変だと思いますが、リラックス方法はありますか?
部屋に帰った時は、朗さん(浅田)からいただいたラグビーの試合映像やポイントのプレー映像を見ながらリラックスしています。あとは部屋でストレッチをしたりします。
—— 家族構成は?
実家に両親と祖母で済んでいます。僕は一人っ子なので、兄弟はいません。両親は僕が大学の時、観光がてら車で東京まで毎試合応援に来てくれていました。社会人になってからはまだ応援に来てもらってはいませんが、第4節のキヤノン戦では応援に行くという話はしていました。
—— (隣にいた小野澤選手に)鈴木選手は真面目なキャラクターですか?
小野澤:真面目ですよ。けどこの後、モノマネするかもしれないですよ(笑)。果敢に元(申騎)のモノマネとかするんですよ。
鈴木:果敢とかじゃなくて、ヤバいっす、ヤバいっす(汗)。
—— モノマネの練習はどこでやっているんですか?
練習とかは一切したことないです。チームに合流したばかりの頃に新人がチームのみんなに自己紹介をすることがあって、そこで大学の大先輩である元さんになりきって自己紹介をしたんです。それ1回きりにしたかったんですが、その後もリクエストなどがあり、少しやり過ぎました。ちょっと良くないっす(汗)。元さんは大先輩なので、悪ふざけになっちゃいけないと思います。
—— サントリーの中で、他に怖いことはありますか?
メンバーに入ったとしても、次の試合にはメンバーに選ばれないかもしれないというプレッシャーが怖いですね。「今回のメンバーには選ばれたけど、次の試合は選ばれるかな」ということを考えてしまいます。
—— どんな選手になりたいですか?
体を張れる選手になりたいですし、ならなければいけないと思います。同じポジションの青木さんもあれだけ体を張っていますし、だからこそ「サントリーには青木さんがいなければ」と言われるんだと思います。まだまだ体を張っていないと言われているので、体を張ってチームから信頼される選手になりたいと思います。それに信頼がなければ、試合に出続けることも出来ないと思うので、まずは体を張ることが大事だと思います。怖がらずにタックルをするとか、怖がらずにボールを持って前に出るとか、そういうところが強くならなければいけないと思います。
—— 今シーズンの目標は何ですか?
メンバーに入り続け、試合に出続けることです。直弥さんからも「青木さんと僕との差は大きい」と言われているので、その差を縮めていくことを目標にやっていきたいと思います。
—— 長期的な目標はありますか?
今は目の前のことにいっぱいいっぱいですが、将来的にはサントリーの2番をつけて試合に出たいです。
—— ファンの方にメッセージをお願いします
まだ名前も顔も知られていないと思うので、サントリーには鈴木亮大郎という選手がいるということを知ってもらえるように頑張りたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]