2012年9月26日
#297 ティモシー ボンド SOS7人目 『絶対に後ろには下がらないで前に行く』
ニュージーランドから日本の大学へ。そして2年生~4年生の間に大学3連覇。期待のロックがサントリーへやって来ました。「インタビューは英語?日本語?」と聞くと、すかさず「日本語で」。外国人枠を乗り越えてのトップリーグデビューが期待される大型新人です。
◆違うカルチャーを見てみたかった
—— サントリーの練習はどうですか?
帝京大学に入った時は、練習が長くて大変だと感じました。サントリーに入って、約半年経ちましたが、練習時間は短いけど、違う大変さがあります。すごく中身の濃い良い練習をしていて、全ての練習に意味があります。
—— 日本に来るきっかけは何だったんですか?
高校3年生の時に、所属していたラグビーチームのコーチに「留学したい」という話をしました。そのコーチが帝京大学でスポットコーチをしていたので、帝京大学を薦められて、日本に行くことを決めました。
留学したかった理由としては、まずはニュージーランドを出て、違うカルチャーを見てみたかったという思いがありました。帝京大学の話を聞く前に、フランスとアイルランドのチームとも話をしましたが、ヨーロッパとアジアでは、ラグビーのスタイルも違います。ヨーロッパの選手は体が大きいですが試合のテンポはそこまで速くなく、日本は体は小さいけど、テンポがすごく速いイメージでした。今考えると、日本を選んで良かったと思います。
—— ラグビーが強い高校だったんですか?
高校3年生の時に、サニックスワールドラグビーユーストーナメントに出場して、準決勝で負けましたが、ラグビーが強い高校でした。
—— 生まれはどこですか?
クライストチャーチです。高校までクライストチャーチで育ちました。最初、田舎にある高校に進んだんですが、もっとレベルの高いラグビーがやりたいと思い、クライストチャーチ・ボーイズ高校に転校しました。
—— 高校を卒業して、ニュージーランドに残るという選択肢はなかったんですか?
高校を卒業する時点ではその考えはなかったですね。大学に入ってから、ニュージーランドに戻ろうかと考えたことはありました。大学が休みの時にニュージーランドに帰って、クラブチームの試合に出たこともありましたが、日本でチャレンジしていこうという思いの方が強かったんです。そして、サントリーでラグビーが出来るようになって、日本代表の合宿にも呼んでもらえました。
—— いつ頃からラグビーをずっと続けていこうと考えていましたか?
ずっとラグビーだけをやりたいと思っています。将来はラグビーじゃない仕事をするかもしれませんが、今はラグビーが出来る体なので、ラグビーだけに集中しています。
—— ニュージーランドに帰って、ラグビーを続けようとは思いませんでしたか?
大学2年生の時に、エディー(ジョーンズ/現日本代表ヘッドコーチ)と話をして、日本のラグビーでチャレンジすることを決めました。もしエディーと話をしていなければ、ニュージーランドに帰っていたかもしれません。
◆最近はラインアウトが好き
—— 子供の頃はどんなスポーツをやっていましたか?
水泳、スキー、テニス、クリケット、乗馬などいろいろやりました。スポーツが大好きで、ゴルフもします。お父さんとお母さんもスポーツが好きです。
—— 兄弟は?
僕の他に3人いて、姉と兄と妹がいます。兄はいま27歳なんですが、20歳の時にラグビーを辞めてしまいました。
—— ボンド選手はなぜラグビーを始めたんですか?
お父さんもラグビーをやっていて、5歳の時に周りの友達が全員ラグビーをやっていたので、ラグビーを始めました。ラグビーを始めて、すぐにラグビーが大好きになりました。
—— 小さい頃から体は大きかったんですか?
最初のポジションはプロップでした。すごく太っていました(笑)。13歳頃に背も大きくなったので、それからロックをやるようになりました。
—— 運動神経は良かったですか?
僕はずっと足が遅いです(笑)。ラグビー以外にも色んなスポーツをやりましたが、どれも上手くはなかったです。ラグビー以外は遊び感覚です。
—— ラグビーのどこが面白かったんですか?
小さい頃はコンタクトが一番好きでした。最近はラインアウトが面白く感じています。どうやってスペースを取るかとか、どうやってディフェンスするかということを考えるのが面白いですね。頭を使ってラグビーするのが面白く感じてきました。
◆絶対に負けない
—— 大学では選手権を3連覇しましたが、一番印象に残っていることは何ですか?
大学1年生の時に、決勝戦で早稲田大学に負けたことを一番覚えています。大学1年の時は、対抗戦でも1回も負けなくて、大学選手権の決勝で唯一負けてしまいました。絶対に負けないという気持ちを持っていて、100%の力を出して負けたので、本当に悔しかったです。その気持ちを忘れなかったから、3連覇が出来たと思います。
—— 負けず嫌いですか?
大っ嫌いです。どんなスポーツをやっても、負けることは本当に悔しく思います。
—— 今、サントリーでメンバーに入れていないことは悔しいですか?
悔しいです。すごく試合に出たいです。
—— どうすればメンバーに選ばれると思いますか?
毎日の練習でベストを尽くすことだけだと思います。ベストを尽くしてもメンバーには選ばれないかもしれませんが、自分に出来ることはベストを尽くすことだけなので、どんな時でもベストを尽くします。
—— 自分の強みはどこだと思いますか?
今まではコンタクトが強みだったんですが、サントリーに入ってみると、トップリーグと大学ラグビーでは全然違うということが分かりました。まだまだトップチームの選手とのギャップがあります。そのギャップを無くすためには、コンタクトの中でまだ構えが高いところと、ラックの入り方を直していかなければいけないと思います。
—— サントリーのラグビーの良さはどこにあると思いますか?
アタッキング・ラグビーです。僕はもともとディフェンスプレーヤーだったので、ディフェンスに関してはあまり問題はないのですが、アタッキングはまだまだ難しいです。もっとアタックの練習をして、意識もレベルアップしていきたいです。
—— 日本人になる気持ちは?
日本国籍を取るためには、3年間以上日本で働かなければいけません。サントリーにはフーリー(デュプレア)やジョージ(スミス)、ダニー(ロッソウ)、ヒューイ(ピーター・ヒューワット)、ピシ(トゥシ・ピシ)がいて、すごい外国人選手ばかりだから、我慢しなければいけません。
◆自分の弱みを無くしていきたい
—— 自分ではどういう性格だと思いますか?
最初は人見知りであまり喋れないけど、今はチームの中でも太一さん(田原)とかと良く話をします。太一さんは面白くて良い人。あとラインアウト・コールが上手だと思います。太一さんはラインアウトの時に全くペナルティもしないですし、安定していて安心して見ていられると思います。そういうプレーを見て勉強しています。
—— 試合前は緊張したりしますか?
毎試合、緊張します。けど、緊張している気持ちは嫌いじゃないです。たぶん緊張がなければ、ラグビーは出来ないと思います。
—— 今シーズンの目標は?
個人としては、サテライトやトップリーグの試合で、いつメンバーに選ばれるかは分からないので、もしメンバーに選ばれた時にはベストを尽くすことです。あとは自分の弱みをどんどん無くしていきたいと思います。それに、メンバーに選ばれなかったとしても、2冠獲得のためにしっかりとサポートしていきたいと思います。
—— 日本の良さはどこだと思いますか?
食べ物が美味しいです。お刺身と焼き肉が大好きです。あと日本人は優しくて楽しい人が多いと思います。日本とニュージーランドでは、文化が全く違うので、日本での生活は面白いです。ニュージーランド人と日本人を比べると、初めて会った人でもニュージーランド人は気持ちが分かりやすいんですが、日本人はあまり自分の気持ちを言わないので、ちょっと分かりにくいです。
—— ファンの人たちに注目して欲しいところはどこですか?
80分間100%を出すところ、タフなところを見て欲しいです。あと1つ1つのプレーでも絶対に勝ちたい。タックルしてコンタクトプレーになっても絶対に後ろには下がらないで、前に行くところを見て欲しいです。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]