2012年8月29日
#293 真壁 伸弥 『開幕!ラグビーは今の日本に一番合っているスポーツ』
いよいよ開幕。新しい監督のもと、新しいキャプテンとして開幕に臨む真壁選手。開幕直前の心境を聞きました。
◆カバーしてくれる人がたくさん
—— キャプテンになって、いよいよ開幕ですね
実際にキャプテンとして活動し始めて、まだ1、2ヶ月ですが、あっという間でした。これまでキャプテンらしい事をしてきたかと聞かれたら、まだ出来ていないと思います。僕の中で、試合で一番体を張っていくことがキャプテンとしての役割だと思っていますが、プレシーズンマッチの東芝戦でペナルティーを犯してしまいました。体を張ることは出来ましたが、ディシプリン(規律)の部分でキャプテンがしっかりしていかないとチームは勝てないと思うので、ディシプリンをしっかりと意識して試合に臨まなければいけないと感じています。
—— 開幕すれば毎週試合が続くので、キャプテンシーを発揮する場はたくさんありますね
1試合1試合が本当に勝負で、自分の信頼を勝ち取る場所は試合だと思っているので、試合に出られるように、練習からしっかりやっていきたいと思います。いちプレーヤーとしてレギュラーを獲得出来るように一生懸命取り組み、キャプテンという形で試合に臨みたいと思います。
—— キャプテンとしていろいろな場面で前に出ていかなければいけないことが多いと思いますが、そういう役割には慣れましたか?
慣れないですね。メディアの前に出ることには緊張しないんですが、試合前にチームメイトの前でひとこと喋る時は緊張します。そもそも試合前は緊張するタイプなので、キャプテンどころじゃないですよ(笑)。
キックオフ直前になれば、やることは決まっているので、緊張はなくなるんですが、試合前のチームミーティングや円陣を組む時などは、緊張で何を話そうとしていたのか分からなくなります。プレシーズンマッチの東芝戦では、試合に対して緊張しすぎて、チームミーティングでは「行こう」しか言えませんでした。今のところ、それが一番の課題です。
—— 慣れそうだという感覚はありますか?
それはあります。少しずつ「慣れってこういうもんだな」という実感があります。それでも試合前は本当にキツイです(笑)。
—— 真壁選手のその部分は他の選手が分かっていて、みんながカバーしてくれるんじゃないですか?
カバーしてくれる人がたくさんいて、このチームで本当に良かったと思っています。これまでにキャプテンをやってこられた方もいますし、剛さん(有賀)は何年もバイスキャプテンをやっていて、一番サポートしてくれます。
◆精度と態度
—— いよいよトップリーグが開幕しますが、チームの状態は?
プレシーズンマッチで東芝に2連敗しましたが、ネガティブになる内容ではなかったですし、ポジティブに考えるとサントリーのアタックも出来ました。ブレイクダウンの部分でも気持ちの入ったプレーで前に出ることが出来たと思っています。ただセットプレーの部分でまだ課題があるので、その部分をしっかりと修正すれば問題なく開幕戦を迎えられると思います。
開幕戦の相手のNECさんは気持ちの入ったプレーをしてくるチームなので、もっともっとハングリーになって勝ちにこだわっていかないといけないと思います。勝ちたいという気持ちを毎日持って、練習していかなければいけません。
—— キャプテンがチームを引っ張っていかなければいけませんね
そこはチームに対して言い続けなければいけないことだと思っています。
—— 春シーズンから練習試合を重ねてきて、他のチームもレベルアップしていると感じますか?
昨シーズンは、ランニングスキルやフィットネスなどでアドバンテージがあったと思いますが、今シーズンは他のチームもその部分がレベルアップしていると思います。あとは精度と態度の部分で、サントリーらしいプレーをすることを武器にしていかなければ、勝つことは難しいと感じています。
—— 開幕を迎えるにあたって、楽しみなところはどこですか?
2冠に向けて、新しい監督と新しいキャプテン、そして若いメンバーがたくさんいるので、どんどん成長していくことが楽しみです。選手1人1人のフィットネスやウエイトなど、数値としてレベルアップしていることが分かっていますし、成長していると感じるので、それをいかにグラウンドで表現出来るかということが大切だと思います。成長しているということを表現することが勝つことに繋がると思うので、そこが凄く楽しみです。
—— 以前のインタビューで若手の成長が課題と言っていましたが、その部分はどうですか?
開幕前になってもトップチームで出場出来ているのが数人なので、若手のみんなは危機感を感じていると思います。プレシーズンマッチの東芝戦でも、ミスは多かったんですが、若手選手は気持ちの入ったプレーをしていましたし、そういうところが見え始めているので、良い方向に向かっていると思います。
◆自分たちがどういうラグビーをしたいのか
—— ロンドン五輪もあり、日本代表の活躍で盛り上がりましたが、ラグビーが社会に与える影響などについて、何か考えていることはありますか?
ラグビーを見てみようと思う入口は狭いと思いますが、見たらハマる人が多いスポーツだと思います。だから、いかにラグビー場に足を運んでもらえるようにするかだと思います。ラグビーは体を張るスポーツで、仲間意識が強いスポーツですし、ボールを持っている人が一番前を走らなければ成り立たないスポーツです。だからこそチーム力を感じることが出来るスポーツなんです。
これまでラグビーを見ていない人にとって、ラグビーを見るきっかけがなかなかないと思うので、そこをどうしていくかを考えなければいけないと思います。今シーズンから竹本さん(隼太郎)がキャプテン会議の代表になったので、竹本さんもいろいろと考えて行動をしていくと思います。僕はまだ具体的に何をしなければいけないかというアイデアはありませんが、ラグビーは今の日本に一番合っているスポーツだと思っています。
—— 会社員であり、ラグビー選手であり、キャプテンでもありますが、自分の時間はどう過ごしていますか?
最近は、あまり自分の時間もないですね。大好きなお酒も飲んでいないので、飲もうと思っていたお酒が家に溜まり過ぎてしまい、この前吉田さん(一郎/ヘッドトレーナー)にプレゼントしました。
—— 2年前のシーズンでは、開幕後もなかなかチームの調子が上がらないことがありましたが、そういう時の心構えはしていますか?
上手くいかなくなることは必ずあると思います。そうなった時に立ち返るベースが今のサントリーにはあって、自分たちがどういうラグビーをしたいのかをもう一度考えることが出来れば問題ないと思います。1点取られたら2点取り返せばいいわけで、竹本さんがこの2年でそういう気持ちを作り上げてこられましたし、そのDNAはしっかりと引き継いでいます。
アタッキング・ラグビーをするという考えのもと、朝から練習に取り組んでいて、そこで試合に負けたからと言って、何か新しいことをしようとしても上手くいきません。試合に負けたということは、これまでやってきたことを発揮出来ていないから負けたのであって、何か新しいことをやるべきではないんです。
—— 開幕戦は緊張して迎えそうですか?
緊張すると思います。だって緊張をしなかったことがないですもん(笑)。
—— 開幕戦のイメージはありますか?
ないですね。このインタビュー中も今日の練習のことしか考えていません。昨シーズンも1日1日をどう過ごすかということを考えていたら、2冠が獲得出来たという感じです。
開幕戦に勝つことはシーズンの流れを掴むという意味でも大事だと思います。その開幕戦に向けて、どれだけ良い準備が出来るかだと思います。そのために開幕戦までの練習で濃密な時間を過ごしたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]