SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2012年8月 8日

#290 日和佐 篤 SOS2人目 『ボールキャリアー、スピード、キック』

今シーズンは春のフランスへの短期留学からスタートした日和佐選手。フランスから持ち帰ったものを、その後の日本代表、そしてサントリーの練習にも活かしているようです。進化を続けるスクラムハーフが今、何を考えているのか?さまざまな抱負を語ってもらいました。

◆悔しい思い

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—— フランスに武者修行に行ってきましたね

3月25 日 ~5月5日までで、約1ヶ月半行ってきました。エディーさんとも話をして、フランスに行ってみたいという気持ちを伝えて、実現しました。

—— フランスに行くことを希望した理由は何ですか?

エディーさんから「チャンスがあるかもしれない」と言われて、「チャンスがあるならば行きたいです」と答えました。そういう話をしていたら、フランスに行くチャンスをいただけたので、迷わず決めました。

—— ジョージ・スミス選手と同じチームでしたね

スタッド・フランセというパリのチームに、ジョージと一緒に行ってきました。

—— フランスでの生活は?

面白かったです。満喫出来たと思います。チームに合流したときはシーズン中で、例えば日曜日に試合があった時は、月曜はオフという生活でした。試合の次の日は休みで、その他の日は午前中にウエイトをやり、午後からチーム練習をしていました。16時くらいには練習が終わり、それから家に帰るという生活でした。クラブハウスの近くにご飯を食べるところがあるので、お昼はそこでみんなでご飯を食べていました。

—— 練習はどうでしたか?

練習自体はサントリーの方がキツイと思いましたが、試合数が多いので、練習を重視するよりも、試合でどうだったかというとことを重視していました。

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—— フランスではどのくらい試合に出たんですか?

毎週試合があり、5試合くらいありましたが、僕は1試合も出場することが出来ませんでした。

—— チームでの目的は、試合よりも練習に参加することだったんですか?

エディーさんからは、良ければ試合にも出られるかもしれないと言われていました。

—— 他の選手が9番として試合にしている姿を見て、どう感じましたか?

ジュリアン・デュピュイというフランス代表の選手が試合に出場していましたが、良いプレーをしていたと思います。プレースタイルは僕とは違っていたので比較は出来ませんが、キックが凄く上手だと思いました。プレースキックも蹴っていて、どの場所からでもゴールを決めていました。

—— 試合には出たいと思いましたか?

出たかったですね。アピールはしたつもりでしたが、出場することが出来ませんでした。

—— スクラムハーフとしてリザーブには入っていたんですか?

リザーブにも入れませんでした。ジョージは合流した後は、全ての試合に出ていたと思いますが、僕は悔しい思いをして帰ってきました。

—— またチャンスがあったら、プレースタイルが違うチームでも試合に出られるようになりたいですね

そうなりたいですし、通用しないと思われるのは悔しいです。

◆8万人

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—— フランスで得たことは何ですか?

ゲームをコントロールすることだと思います。9番で出場していた選手が上手くて、キックでエリアを広げて、そこからフォワードで押し込んでいくスタイルでした。そしてリズムを大切にして、その9番がゲームをコントロールしていましたね。日本では9番と10番で組み立てていきますが、スタッド・フランセでは9番が試合を組み立てているという感じです。

—— そのスタイルは日本でも出来ると思いますか?

出来ると思いますが、やっぱり9番と10番で組み立てた方が良いと思います。フランスでは9番が7割、10番が3割くらいの割合で試合を組み立てていますが、日本では9番と10番が半分の割合で組み立てます。

—— 試合の雰囲気はどうでしたか?

パリでの試合では、8万人収容のスタジアムが満員になります。試合の日は、街中がお祭りのような雰囲気でした。ワールドカップでの試合でも2万~3万人の観客だったので、8万人の中でプレーしてみたかったですね。

—— 日本がそうなるためにはどうすればいいと思いますか?

日本代表が強くなることだと思います。

—— これまで海外で生活したことはありましたか?

ワールドカップで1ヶ月間くらい海外に行きましたが、今回のフランスよりも長い期間、海外で生活することはありませんでした。

—— もし今後もチャンスがあれば、海外でプレーしたいと思いますか?

もちろんチャンスがあれば行きたいですね。僕は展開の速いラグビーをしたいので、スーパーラグビーでプレーしてみたいと思います。

◆ゲームコントロールとキック

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—— フランスから帰ってきて、新しく試みようと思っていることはありますか?

ゲームコントロールとキックです。フランスでもキックの練習はしていましたし、日本ではフーリー(デュプレア)にキックを習っています。今まではあまりキックを蹴ったことがなく、フォームもグチャグチャだったんですが、やっとフォームが安定してきたと思います。

ただキックを蹴ることが出来れば良いわけではなく、蹴る場所であったり、蹴るタイミングが大事になってきます。そこはまだ勉強中です。パシフィックネーションズカップの時は、3回くらいキックをしましたが、相手の裏に転がすキックを練習しています。

—— 感触はどうでしたか?

狙ったところに蹴ることが出来るようになってきたので、良くなってきています。あとはもっと精度を上げることと、状況判断をしてタイミングよく蹴ることです。

—— 今までよりもキックの回数が増えますか?

昨シーズンでは開幕戦でのハイパントくらいしか蹴っていないので、今シーズンはキックの回数が増えるとは思います。

—— 今シーズンはそこに注目ですね

あまり注目されても(笑)。たまに蹴るくらいだと思いますよ。

◆自分から聞くこと

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—— ジョージ・グレーガン選手、フーリー・デュプレア選手と世界のトッププレーヤーと一緒にプレーしてきましたが、そのことについてはどう考えていますか?

こういう環境でラグビーが出来ていることを幸運だと思っています。

—— 2人の良いところをどんどん吸収していますね

単純にジョージにもフーリーにも負けたくないだけです。見習うべきところはしっかりと見習い、チャレンジ出来るところからチャレンジしているという感じです。

2人に勝っている部分はテンポだと思いますし、そこが僕の生命線だと思ってやっていて、そこに更に足りない部分をどんどん吸収していかないといけないと思っています。同じ土俵で勝負しても勝てないと思うので、勝っている部分をいかに伸ばしていくかだと思います。

—— 日和佐選手は教えられ上手だと思いますが、そのコツは何ですか?

自分から聞くことですね。ジョージはどんどん教えてくれたんですが、フーリーの場合は習うという感じです。フーリーに「キックの練習を一緒にしましょう」ということを話して、そこから一緒にプレーしながら教えてくれます。

—— 日本一恵まれているスクラムハーフですよね

それは間違いないと思います。

◆自分には何が足りないのか

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—— 2人に負けたくないと言っていましたし、1年目の時のインタビューで、開幕戦に出られなくて悔しいと言っていたことが印象に残っています。そう思える裏付けは何ですか?

1年目の時は、ただただ悔しかっただけです。当時はそのただ悔しいということがエネルギーになっていましたが、今はただ悔しいだけではダメで、自分には何が足りないのかなどを考えてやるようにしています。

—— 他の選手と悔しがり方が違うのでは?

他の選手はまだ上がいるからしょうがないと思ってしまうこともあると思います。ただ僕はそういう考えは一切ありません。試合に出たいですし、負けるのが本当に嫌なんです。それともっと上手くなりたいという思いがあります。

僕は5歳からラグビーを始めて、兵庫県のラグビースクールで練習をしていました。僕が3年生くらいの時から、チームが凄く強くなってきたんです。兵庫県ではキヨさん(田中澄憲)がいた伊丹ラグビースクールが強くて、県大会の決勝で毎年負けて泣くということを繰り返していました。負けることが悔しくて悔しくてたまりませんでした。大学では僕が1年生の時、4年生に成田(秀悦)さんがいて、その時は試合にも出ることが出来ず、もの凄く悔しい思いをしました。

それからサントリーに入るまで日本一になったことがなくて、2年前の日本選手権で優勝して初めて日本一になりました。日本一になって凄く嬉しかったですし、やっぱり勝たなければ面白くないと思いました。そしてまた優勝したいとも思いました。

◆50%、0%

—— 今の自分のプレーの満足度はどれくらいですか?

50%くらいです。今は球出しのテンポがただ速いだけだと思っていますし、このままでは通用しないと思っているので、これから試合やチームをどうコントロール出来るようになっていくかだと思います。

—— どうコントロールしていくのでしょう?

自分自身もランナーになるということと、どの試合でもミスをしてしまう時間帯があると思いますが、そういう時間をいかにコントロール出来るかが重要になると思います。フーリーの話で言えば、昨シーズンの日本選手権セミファイナルの東芝戦で、キックを5本くらい蹴っていると思います。苦しい時間帯に、そういう余裕を持ったプレーが出来る力を身につけたいと思います。

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—— 今までボールを持ってランナーになる回数は?

試合中にボールを持って走ることを1回もやらない試合の方が多かったと思います。そこをもっと増やしていきたいと思います。

—— 試合中にボールを持って走るチャンスがあるということですか?

試合中に120回くらいボールを持っているんですが、120回ボールキャリアーになれるチャンスがあるということです。ボールキャリアーとして、100%抜ける時だけ走るということではなく、少しでも隙間があれば走りたいと思っています。

—— 練習から取り組んでいるんですか?

練習でも取り組んでいますが、海外のチームと試合をした時に、片腕だけで止められてしまったこともあったので、まずはもっとフィジカルを強くしていかなければいけないと思っています。体を大きくして、更に走れるようになりたいんですが、簡単なことではありません。

—— 今の段階で、どれくらいの達成度ですか?

まだ0%に近い状態です(笑)。開幕までに100%にすることは難しいと思うので、少しでも成長できるようにしていきたいと思います。

—— 120回チャンスがあるうちのどれくらいボールを持って走ろうと思いますか?

今までは120回のうち110回パスを出していて、1回走るという感じでしたが、5回くらいは走ろうと思います。

—— グレーガン選手やフーリー選手は走る回数が多いんですか?

ジョージ(グレーガン)よりはフーリーの方が走る回数は多いと思います。フーリーは体も大きいので、少しでもギャップがあれば仕掛けていけると思います。タックルをもらいながらでもパスが出来ますし、相手チームの小さい傷を大きく広げるというプレーをしています。

◆絵に描いた夢は達成

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—— フーリー選手が先発し、後半から出場することが多かったと思いますが、それについては?

先発で出場出来ないということは、もちろん悔しいですが、試合を見ることで学べることもあると思えるようになってきました。試合に出場して得るものは大きいですが、フーリーのプレーを外から見ていると、良いプレーをしていると感じることが出来ますし、良い時と悪い時の差がないと感じます。フーリーはずっと良い判断が出来て、良いプレーが出来る選手だと思います。

—— 良い時と悪い時の差については、自分ではどう思っていますか?

良い時と悪い時の差が激しいと思います。1試合の中で、10分~20分くらいは悪い時間があると思います。その悪い時間の中でも、本当に悪い時もあれば、そこまで悪くならない時もあります。

—— 日本代表での課題はありますか?

サントリーでの課題と同じです。より強く、より速くならなければいけません。

—— 自分のラグビー人生は、イメージ通りに進んでいますか?

小学校の時に、将来の夢を絵に描いたんですが、当時のラグビー日本代表のジャージを着ている姿の絵でした。その夢は達成することが出来ました。

—— 今の構想は?

日本代表としては、まずは2015年を目指してやるということですね。サントリーとしては、1年1年を大事にしていくことです。今シーズンについては、徹底的にフーリーについて勉強しようと思います。

—— 今シーズンのターゲットは?

ボールキャリアーになることと、ボールを持った時のスピードを上げること、そしてキックですね。ボールを持った時のスピードは、パスやラン、判断のスピードを上げたいと思っています。スピードを上げるには練習しかないので、しっかりと練習に取り組んでいきたいと思います。

(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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