SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2012年7月11日

#286 宮本 啓希 『ラグビーに費やす時間を増やしていきたい』

春季オープン戦のリコーブラックラムズ戦でMVPの活躍をした宮本選手。若手と言われてきて早4年目。2年連続でロッカーリーダーも務めることになった。絶対的な成長が期待される中堅としての意気込みを訊きました。

◆コンタクトで勝つ

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—— 春季オープン戦のリコーブラックラムズ戦では、チーム内のMVPに選ばれましたが、自己評価は?

そんなたいそうなことは言えないですが、リコー戦のチームテーマが“コンタクトで勝つ”でした。コンタクトで勝つ、イコール、ゲインラインを切るということだと思うので、フォワードが前に進めてくれたボールを、バックスが下げずにゲインラインを切るというところを、自分の中でフォーカスしてプレーしていました。その部分に関して、ボールを持った時は出来ていたと思うので、チーム内でのMVPに選んで頂けたのだと思います。

パスに関しても継続してターゲットにしていますが、リコー戦が行われた1週間は、直弥さん(大久保監督)がミーティングでもグラウンドでもずっと“コンタクトで勝つ”と言っていたので、チームとして“コンタクトで勝つ”ということが実行でき、それがMVPに繋がったと思います。

—— “コンタクトで勝つ”が実行出来た要因は何だと思いますか?

敬介さん(沢木ヘッドコーチ)から、「ボールのもらい方やキャッチングを意識してやってみろ」と言われていて、そのことを意識してプレーしたら、リコー戦ではボールをもらった時にまともにタックルを食らわなかったので、それが実行出来た要因だと思います。リコー戦は、悪いところもありましたが、良いところも多かったと感じています。

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—— 昨シーズンと比較してどうでしょう?

昨シーズンは公式戦6試合に出場し、日本選手権準決勝という大事な場面でも出場させてもらいましたが、1シーズン通してみたらモヤっとした思いは残っています。2冠を獲得することが出来たので、チームの結果として満足している部分はありますが、個人としては満足出来なかった部分があります。

昨シーズンは12番での出場が多かったんですが、今季の春季オープン戦のキヤノン戦とリコー戦は10番で出場させてもらいました。基本的に10番はボールを触る回数が多いんですが、サントリーは他のチームの倍の数くらい10番がボールを触る回数があると思います。

難しいと感じる部分もありましたが、10番をやることで、試合中の立ち位置が凄く大事と感じましたし、プレー中に今は良い立ち位置だったからゲインラインを切れたと思うこともありました。その部分が、改善される良いきっかけになると思います。

◆冷静さが足りない

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—— 今シーズンは10番をメインにプレーしていくんですか?

そういうわけではなく、引き続き10番、12番、13番でプレーしていくと思います。2年前は、色々なポジションで試合に出させてもらっていて、10番~15番までの全てのポジションでプレーしました。

—— 自分としてはどのポジションが合っていると思いますか?

実は、センターでプレーするようになったのは社会人になってからなんです。サントリーに入ってから、周りに凄い人たちばかりで、その中で何をしなければいけないかと考えた時に、試合に出なければいけないという思いがありました。今はセンターがプレーしやすいと感じますが、当時は試合に出られるのであれば、どのポジションでも試合に出たいと思っていました。

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—— 昨シーズンは6試合に出場しましたが、全試合に出場している選手との差はどこにあると思いますか?

ずっと試合に出ている選手は、安定して同じプレーが出来る選手だと思います。この前、直弥さんが「1試合だけ10点満点のプレーをしたとしても、次の試合で2点のプレーをしていたのでは、信頼されない。波がある選手よりも、常に7点や8点を出している選手の方を試合では使う」と言っていました。レギュラーで試合に出ている選手は、そういう部分がある選手だと思います。

—— 自分にはまだ波があると思っていますか?

昨シーズンまでは波があったと思います。波がある時のプレーは、試合の最初のプレーでミスをしたり、弱気になっていたりということがあって、その思いを引きずったまま試合をしてしまっていました。

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—— エディーさん(ジョーンズ/日本代表ヘッドコーチ)が、「最初からベストを出す勇気を持ってプレーすることが大事」と言っていましたが、勇気という部分ではどう感じていますか?

ずっと試合に出ている選手は、勇気という部分よりも、冷静さがあると思います。例えミスをしたとしても、次のプレーではしっかりと修正出来ています。僕の場合は、1度ミスして、次のプレーの時には立て直したとしても、またミスをするかもしれないという思いがあります。僕はその冷静さが足りないと思います。

そこを改善するためには、まずは最初でミスをしないことですね。気持ちも大事ですが、頭の回転も重要です。なぜミスをしたのか一瞬で考えられれば、次のプレーも考えられると思いますが、僕はその部分が浅いと思います。それと性格的に、冷静ではなく、熱くなってしまうタイプかもしれません。僕はもう4年目なので、そういう冷静に考えられるようにならなければいけないと思います。

◆賢いプレーヤーになりたい

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—— チーム全体が若返っている中、まだ若手選手がなかなか試合に出られない状況で、どのように改善していこうと考えていますか?

敬介さんにも言われましたが、僕は更にゲームの理解度を高めることにフォーカスしてやらなければいけないと思っています。例えば、相手チームのディフェンスを見て、自分たちの攻め方を考えることや、空いているスペースを見つけて、そこにボールを運ぶためには、どういうプレーをしなければいけないかを、自分の中で考えられなければいけないと思います。

練習から考えてプレーして、それが上手くいくと、自分の中での理解度が高まっていきます。昨シーズンはワールドカップの影響で、日本代表選手がいない状況で、考えてプレーし、自信にもなっていました。ただリーグ戦が始まって、少し怪我をしてしまったり、ここでタックルを決めなければいけないというところでミスをしてしまったり、隙が出来てしまっていたと思います。

プレーに自信を持つことや、冷静に考えるということは、経験が必要になります。経験を積むためには、試合に出なければいけないので、練習から考えてプレーしなければいけないと思います。僕は普段はアホですけど(笑)、ラグビーに関しては賢いプレーヤーになりたいと思っています。

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—— サンゴリアスの中で、理想的な賢いプレーヤーは誰ですか?

剛さん(有賀)がいちばんスマートだと思います。熱い気持ちは持っていますが、しっかりと周りを見ていますし、ラグビーに関する発言を聞いても、スマートだと思います。

—— エディーさんからはどういう影響を受けましたか?

ラグビーを教えてもらったと思っています。今まで意識していたとしても薄かった部分を、しっかりと意識させてもらったという思いがあります。例えば、キックの時の1つのリアクションであったり、タックルをした後に次のプレーに行くリアクションであったりと、本当に基本的なことだと思いますが、どこを意識しなければいけないかということが、はっきりと分かるようになりました。今思えば、むちゃくちゃ難しいことは言われていなかったと思います。

◆自分のグループに落とし込む

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—— ロッカーリーダー2年目になりますが、ロッカーリーダーというシステムのどこが優れていると思いますか?

チームの中で、規律を守るということが常に言われていましたが、ロッカーリーダーが出来たことで、規律について自分たちから発言するようになりました。4つのグループがあって、1週間ごとにそれぞれのグループがクラブハウスの色々な場所を分担して掃除をすることで、どの場所が汚いかということが見えてきます。

汚したら綺麗にするということは普通のことですが、それが普通に出来るようになってきました。今まではそれが出来ていなくて、出来ていないことさえも意識していなかったんですが、今は出来てない人がいたら、周りから声が上がるようになりました。

僕が2年目の時にロッカーリーダーが出来て、最初は気づいたとしてもどうアクションすればいいのかさえも分からない状態でした。当時、ヤマさん(山岡俊/2012年引退)や元さん(申騎)が探りながらしっかりと形を作ってくれたので、昨シーズンの1年間でアクションの数が凄く増えたと思います。

こういったインタビューで、汚したら綺麗にするとか、飲みかけのペットボトルには自分の名前をキャップに書くとか、話をしていると凄く当たり前のことだと思うんですが、それが出来ていなかったんですよ。練習終わりに、担当の選手がロッカールームやウエイトルームを掃除しているんですが、どうしても人数が少ないと、その分掃除に時間がかかるので、今は自然と担当じゃない選手も練習終わりに掃除をするようになっています。

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—— ロッカーリーダーとして気をつけていることは何ですか?

リーダー同士で話したことや監督やコーチ、スタッフと話したことは、しっかりと自分のグループに落とし込むことを意識しています。新人選手に対しては、他の選手よりも少し多めに話をしたりしますが、細かいところまで指示するようなことはしていません。そういうことは、自分で気づかないと覚えていかないと思うので、気づきそうもない時に言うようにしています。

—— ロッカーリーダーとして、寮での生活という更にプライベートのことについてはどう考えていますか?

確かに引退などして地方に配属となり、寮を出られた方が多いので、その部分も更に意識していかなければいけないですね。ヤマさんや元さんも、「寮はどうだ?」と気にしていたので、寮の中でも汚かったら言うという流れは出来ています。

—— 今シーズンの目標は何ですか?

個人としては、2年前は日本選手権決勝に出場することができ、昨シーズンも決勝の舞台に立つという目標を持っていましたが、準決勝にしか出場することが出来ませんでした。今シーズンも同じく優勝を決める時にグラウンドにいるということを目標にやっていきたいと思っています。そのためには、先ほど話したことをやっていかなければいけないと思います。

チームとしては2冠を取り続けることを目標にしていて、チーム全体での最初のミーティングでも、直弥さんが「もう2冠を取り続けるしかないから、今年が凄く大事だ」と言っていました。

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—— 今年のチームのテーマが“HUNGRY”ですが、どう捉えていますか?

他のチームからは絶対にターゲットにされていると思うので、サンゴリアスのみんなが、他のチームよりも勝つことや優勝することを求めないといけないと思います。求め続けるということで、“HUNGRY”がテーマになったと思います。

—— 2冠を取った喜びをもう一度味わいたいという気持ちですか?

2冠の喜びは全然違います。

—— 目標達成に向けての意気込みは?

チームのテーマが“HUNGRY”ですし、今シーズンもラグビーが上手くなるために求め続けていきたいと思います。昨シーズンは、2年前よりもラグビーに費やす時間を増やそうと思い、ラグビーを見る時間を増やしました。1年前の春シーズンに、考えてラグビーをやらなければダメと言われて、そこからラグビーを見る時間やラグビーに向き合う時間を増やして、それが良い結果に繋がりました。

今シーズンも継続して、ラグビーに費やす時間を増やしていきたいと思います。敬介さんからは、「社員選手でもラグビーに費やす時間を増やしてやっていける」と言われたので、出来ると思っています。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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