2012年6月20日
#283 平 浩二 『キレのあるスピードが大事』
平選手がいない日本代表チームは久々ですが、やはり平選手にはジャパンで活躍して欲しいという思いが湧き上がってきます。果たしてジャパンに復帰する可能性はあるのか?今シーズンのサンゴリアスにどう取り組んでいくのか?様々な質問を平選手に投げかけてみました。
◆キックオフの神様
—— セブンズフェスティバルに出場してみてどうでしたか?
5年半振りくらいに7人制をやりましたが、1試合目ではセブンズの感覚を取り戻せませんでした。合宿の疲れなどもあったとは思いますが、それを言い訳には出来ないです。それでも、1試合目の動きは鈍かったですね。
—— 2試合目以降は良くなりましたね
体が温まってきて、動きが良くなりました。1試合目は自滅で、勝てた試合を落としたという感じです。
—— 3試合やってみて、7人制の感覚は取り戻せましたか?
7人制のための練習はしていませんでしたが、試合をしてみて15人制に繋がるところがあると再認識しました。7人制は1対1の局面ばかりなので、そこでどう相手に勝つかということや、15人制よりもスペースが空いているので、そのスペースをどう攻めるかを考えます。あとはフィジカルも大切になります。
—— 7人制に向いていると思いましたか?
僕はもともと7人制の代表でプロップをやっていました。本当に久しぶりの7人制でした。僕の話ではないですが、セブンズフェスティバルでの2試合目以降の大島は凄かったですね。チームではキックオフの神様と言われていました(笑)。自分たちがキックオフしたボールを、相手チームはリフトして取ろうとするんですが、大島はジャンプでその上をいってボールを何度か取りました。
—— 7人制の魅力は何ですか?
ランニングラグビーです。見ている人も面白いと思いますし、プレーしている選手もスペースが広いので面白いです。
—— 7人制でオリンピックを目指そうとは思いませんか?
もう無理です(笑)。30歳ですし、若くて良い選手がたくさんいますよ。
—— サンゴリアスがコンソレーショントーナメントで優勝したことについてはどうですか?
決勝戦では、NECが後半に外国人選手を3人出してきました。ナドロ(ネマニ)が先発メンバーに入っておらず、僕も後半から出場する予定だったので、ナリ(成田)に「前半で取れるだけトライを取れ」と言っていたら、ナリが1本で長野が2本トライを取ってくれました。後半ナドロに連続で3トライ取られましたが、サンゴリアスもトライを取ることが出来ましたし、前半の貯金があったので勝つことが出来ました。
—— 7人制をやっていて、フィットネスレベルが高いと思ったチームはありますか?
サニックスです。昨シーズンのリーグ戦では打ち合いになりましたが、走り勝つことが出来ました。サニックスとサンゴリアスはラグビースタイルが似ていると思います。
◆早く戻ってこい
—— 昨シーズンが終わってからは少し休めましたか?
みんなと食事に行ったり、実家に帰ったりしたので、ゆっくり休めました。
—— 日本代表についてはどう考えていますか?
5年間日本代表に選んでもらい、ワールドカップに2回出場し、32キャップを獲得しました。エディーさん(ジョーンズ)が日本代表の監督になって、若手中心のメンバーで2015年、2019年のワールドカップを目指すと言っていたので、僕は選ばれないと思っていました。それに結果は良くありませんでしたが、2011年のワールドカップには最後という思いで臨みました。大会期間中にザワさん(小野澤)と一緒の部屋で、そういう話をしていました。
—— 今回はコンディションの影響で代表を辞退しましたが、今後はどうですか?
今年はもう呼ばれないと思います。今の日本代表に僕が必要とされているのかは分かりませんが、これからゆっくり考えたいと思います。ただザワさんからは、怒り口調で「早く戻ってこい」と言われています(笑)。
来年以降、また声を掛けてもらえて、その時にコンディションが良ければ考えたいと思います。自分のコンディションが良くないのに代表に参加したら、代表に参加出来ない人に失礼という思いがありましたし、サンゴリアスと日本代表で5年間ほとんどオフ無しでフル稼働していたので、年齢のこともありますし、ここでしっかりとコンディションを整えて今シーズンに入りたいという思いもありました。
去年の春シーズン、サンゴリアスではスピードトレーニングをやっていて、トゥシ(ピシ)も走り方が変わって、凄く良くなりました。ただ僕のは、春は日本代表に参加していたので、スピードトレーニングがその期間で十分に行えませんでした。そういったこともあり、新田さん(ストレングスコーチ)から「ここでもう1回自分の形を作り直すのも1つの方法だと思うよ」と言われました。
—— 今は順調にトレーニングが出来ていますか?
順調には来ていますが、まだスピードもフィットネスも目標には達していません。これから菅平合宿、網走合宿がありますが、今はまだ60%くらいです。
—— 100%になると、昨年とは違った“新しい平浩二”になるわけですね
少し前までは海外の選手を気にして、体を重くすることを気にしていましたが、これから長く続けていくには、体を重くすることよりもキレのあるスピードの方が大事だと思うようになりました。今は周りから「痩せたね」と言われるようになりましたよ。
—— 大きな方向転換ですよね
昨年のワールドカップで、日本人が世界で勝つためには、スピードで勝負しなければいけないと感じました。それが正解かどうかはまだ分かりませんが、スピードで勝負する方が世界では通用すると思っています。その方向転換が成功して、また日本代表から声を掛けてもらえたら、その時は日本代表に参加したいと思います。
◆ベースが出来上がった
—— 昨シーズン、2冠を獲得しましたが、チームとしてはどこが変わったと思いますか?
エディーさんが監督1年目の時のベースがあったから、昨シーズンは更にレベルアップが出来たと思います。今は1人1人が自分の役割やチームとしての形を理解しているので、試合をしていて凄く面白いんです。一昨年の日本選手権決勝で、ようやくベースが出来上がったと思います。
—— エディーさんが監督1年目のシーズンはかなり厳しい試合が続きましたが、どう感じていましたか?
そのシーズンは開幕から3試合を終えて1勝2敗でしたが、開幕して3試合は春シーズンから取り組んできたことと違うラグビーをしてしまいました。ただそこで負けていなければ、気づかずにそのまま違う形のラグビーをやっていたと思います。
—— 個人的に厳しかったのはいつ頃ですか?
日本代表からチームに合流する時はキツいですね。当時の日本代表とサンゴリアスでは、フィットネストレーニングが全然違いました。
—— 先ほど一昨年の日本選手権優勝でベースが出来たと言っていましたが、具体的にはどういうところですか?
あの時は自分たちがアタックをする時間が長いと感じました。ボールがキープ出来ているし、ミスがないので、長い時間アタックすることが出来ました。
—— 昨シーズンはそのまま行けると思いましたか?
相手チームが本当に研究してきていて、序盤は手こずった時もありました。ただ相手が研究してくることを予測して、更にその上をいくアタックを練習していました。
サンゴリアスはアタッキングラグビーなので、相手チームはラッシュディフェンス(素早く前に出てくるディフェンス)をして走らせないようにしてきました。ただ相手チームは的を絞ってディフェンスしてきていたので、相手に的を絞らせない動きとタイミングを練習しました。
—— 今シーズンは更に研究される可能性がありますね
あれだけ全員がトライラインに向かって一直線で走れば、そうそう簡単に的は絞れないと思います。何パターンもオプションがあるのですが、そのためにはフィットネスが必要になります。
—— 昨シーズン、プレーをする上で気をつけていたことはありますか?
コンディションです。ただ十分に気をつけていたつもりでしたが、怪我でプレーオフトーナメント決勝と日本選手権準決勝には出場出来ませんでした。プレーオフトーナメント準決勝まではフル出場していたので、あの時は本当に悔しかったですね。「ここで怪我かぁ」と思いました。
◆優勝する瞬間にグラウンドにいる
—— 今シーズンの目標は?
チームとしては、昨シーズンと同じことをしていては勝てないと思うので、更に1つ、2つくらい工夫を加えたアタッキングラグビーをすることと、アタッキングラグビーをして2年連続2冠を獲得することです。
個人としては、若い選手がたくさんいるので、負けないようにスピードのレベルをアップさせてフル出場し、プレーオフトーナメント決勝と日本選手権決勝で優勝する瞬間にグラウンドにいることです。
—— 大久保監督が、「浩二は今、リーダーシップを取っています」と言っていましたが、自分では意識していますか?
そんなキャラクターじゃないですが、今シーズンはロッカーリーダーになったので、そういう役割もやっていかなければいけないと思います。
—— ロッカーリーダーの役割は何だと思いますか?
グラウンド以外でも規律ある行動をして、チャンピオンチームに相応しい集団を作ることです。クラブハウスの中を中心として、ロッカーグループ毎に1週間ずつ担当になって、掃除や整理整頓をしてクラブハウスを綺麗な状態に保つようやっています。
他のリーダーは昨年もやっていた人で、僕は初めてなので、まだ他の人を見ながら探り探りやっている感じです。選手会長の元さんがしっかりやってくれているので、問題ないと思います。
ロッカーリーダーが中心となって、クラブハウスが綺麗になったり、規律を守るという文化がしっかりと作り上げられたので、昨シーズンは2冠を獲得出来たと思っています。規律を守るということはラグビーでも同じことで、選手同士の信頼感も増しますし、自分でやらなければという責任感も出てくると思います。
—— 平選手は社員選手で仕事とラグビーを両立していますが、若手選手へのアドバイスは?
サンゴリアスのラグビーを理解するために、サンゴリアスの試合映像を見続けることが大事だと思います。それから細かい技術的なことは、グラウンドで習い、そして最後にフォワードとバックスがリンクするプレーをやっていけばいいと思います。この前の嬬恋合宿でもチームプレーの練習をしましたが、1年目と2年目ではやっぱり理解度が違います。
社業に関しても、自分の目標をどうクリアしていくかになるので、分からないことをそのままにしないで、その都度先輩に聞くことが大切です。ただ若い選手に関しては、仕事もラグビーも怖いもの知らずで、ガンガンやった方が良いと思います。
—— 体力的に厳しくなってきた時はどうしていますか?
いちばんは寝ることです(笑)。あとはストレスを溜めないことです。そのために、僕は寝るようにしています。ストレスを溜めない方法は、人それぞれだと思うので、自分に合ったストレス発散方法を取れば良いと思います。
(インタビュー&構成&写真:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]