SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2012年5月 2日

#276 成田 秀悦 『トライランキング2位 来シーズンはトライ王を狙う』

2011-2012シーズンのトップリーグでトライランキング2位を獲得した成田秀悦選手。2010-2011シーズンでは3トライだったトライ数が、今シーズンは9トライへ急増したのは何故か?そして来シーズンに向けて"トライ王"宣言が飛び出しました。

◆隙間があれば

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—— 背中を見る機会がありましたが、昨シーズンと比べて、体が大きくなりましたよね

だいぶ変わりましたね。昨シーズンのウイングとしての反省点で、ザワさん(小野澤)や長友と比べてフィジカルが弱かったので、今シーズンはまず体を作ることを心掛けました。昨シーズンまでは試合中にタックルを受けたらすぐに倒れてしまっていたんですが、体を大きくしたことで、かなり改善出来たと思います。

—— 集中的にフィジカル面を鍛えるトレーニングを行ったんですか?

いちばん行ったトレーニングはスピードトレーニングですが、その影響で体も大きくなっているのかもしれません。

—— 体重も増えているんですか?

多少ですが、増えています。ただスピードへの影響はないですね。今シーズンが始まる前に目標体重を決めて、シーズン中はその体重をキープしました。

—— 体を大きくして、試合中に強くなっていると実感する時はどんな時でしたか?

気持ちの面が大きかったと思うんですが、ディフェンスとの間のちょっとした隙間に対して、昨シーズンであればそこに飛び込むということはしませんでしたが、今シーズンはちょっとでも隙間があれば、どんどん飛び込んでいきました。

その影響で、今シーズンにはディフェンスの間を抜けていくシーンもいくつかあったと思います。昨シーズンまでは、「この隙間は少し狭い」とか、「自分が活きる道はここじゃない」と思っていましたが、今シーズンは「ここにも隙間がある」と思うことが多かったので、プレーの幅が広がったと思います。

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—— リーグ戦においては9試合出場して9トライを獲りましたね

僕がトライを獲った試合は3試合しかないんですけどね(笑)。4トライ、4トライ、1トライです。

—— 1試合で4トライを獲ることは大変なことですよね

最初にNTTドコモ戦で4トライを獲りましたが、1試合で4トライを獲ることが初めてで、自分でも驚きました。NTTドコモ戦ではチームの攻撃のオプションで僕に回ってくることが多くなって4トライ獲りましたが、チームで獲ったトライだと思っています。次に4トライを獲ったのがコカ・コーラ戦ですが、コカ・コーラ戦で獲った4トライは、自分でどうパスを受けるかなどを考えて獲ったトライですね。

—— 自身で考えてトライを獲るという部分に関しては、成長した部分だと思いますか?

昨シーズンよりも明らかにトライ数が違うので、体やスピードも成長していると思います。どんどんボールを回してくれるので、ちょっとはウイングとして信頼されるようになってきたとも思います。

コカ・コーラ戦の前日にエディーさん(ジョーンズ)から、南アフリカ代表のジオ・アプロンとウェールズ代表のシェーン・ウィリアムス、そして最後に僕のプレーを1~2分くらいに編集してまとめた映像を見せてもらいました。それで世界で活躍している小柄な選手は、強くて速いという印象を受けたんです。

今まではスペースを探しながら走っていた部分があって、無駄な走りが多かったんですが、エディーさんの映像で、スピードで突破するイメージをつけさせてもらったので、それを意識してプレーするようになりました。その映像は携帯にも入れて、試合前には必ず見るようにして、そのイメージのまま試合に臨むようにしています。

—— 4トライ以上獲れるという感覚はありましたか?

どちらの試合も3トライ目を獲った時には、まだまだいけるという感覚はありましたが、どちらの試合もその直後に足を痛めてしまいました。

◆タックル練習が楽しくなってきた

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—— トライを獲れなかった6試合についてはどう感じていますか?

トライを獲れなかった6試合については、データで見ても、凄く仕事量が少ないんですよ。自分なりに分析をしましたが、フィジカルが強いチームに対してボールタッチが圧倒的に少ないので、これからはその部分を改善していかなければいけないと思っています。チームの戦術にも関わってくることですが、もう少しボールに触れるような動きをしなければいけなかったんだと思います。エディーさんには、「いつもどこにでも顔を出せ」と言われていたので、トライを獲れなかった試合に関しては、その動きが出来なかったんだと思います。

—— ディフェンスに関してはどうですか?

ヤマハ戦でタックルに行かなかった場面があったんですが、その試合のすぐ後にエディーさんに呼ばれて、「なぜラグビーをやっているのに、タックルをしないんだ」と指摘を受けました。その後からは敬介さん(沢木バックスコーチ)にお願いをして、週1回タックル練習をするようになりました。

そのタックル練習は、タックルバッグなどにタックルをするものではなくて、人対人のタックル練習で、大島やツジ(辻本)、小澤に協力をしてもらって、試合に近いシチュエーションで練習をしました。そこからタックルに対する意識がしっかりと持てて、昨シーズンよりもタックルに行く回数も増えて、ディフェンス面でも成長出来たと思います。

—— タックルに行かなかった場面は、どういう心境だったんですか?

昔から体が小さいという理由でタックルに対して苦手意識を持っていました。エディーさんに「体が大きいも小さいも関係ない」と言われたことで、体が小さいことを言い訳にしていた自分に気付くことが出来ました。

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—— 実際にタックルが決まった時は気持ちが良いですよね

毎回、試合後に敬介さんから課題や反省点を言ってもらって、タックル練習を行っていました。最初は、朝起きた時に「今日はタックル練習の日か~」って憂欝になる日もありましたが、敬介さんに教えてもらってタックルのコツを掴んでくると、それを試したくなってくるんです。

それに、最初の頃はタックル練習をした後は、肩が痛いという思いで家に帰っていたんですが、徐々にタックルを受けてくれたツジとかに、その日のタックルについて意見を求めるようになって、タックル練習が楽しくなってきましたね。

—— タックルのコツとはどういうところですか?

最初から低い姿勢で構えていると、相手に態勢を整えられて跳ばされたりしてしまうんですが、タックルをする直前に姿勢を低くすることによって、すんなりと相手の足もとに入れるようになるんです。そのタックルを近鉄やNEC、神戸製鋼戦で試してみて、本当にすんなり相手の足もとに入ることが出来ました。

今まで試合の映像は、自分のアタック部分しか見てこなかったんですが、ディフェンスの部分も見返すようになって、もっとタックルをする直前に姿勢を低くした方が良いとか、ディフェンスについても反省するようになりました。その部分が大きな自信となりましたね。

◆長友のディフェンス

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—— 攻守に渡って自信をつけてきて、リーグ戦での自身の評価はいかがですか?

トライを獲れなかった試合が多くて、トライはウイングの使命だと思っているので、毎試合で結果が残せるように、プレーの波を無くさなければいけないと思っています。

—— プレーの波を無くす改善のポイントはどこだと思いますか?

フィジカルが強い相手に対しても、いつもと同じようにプレー出来るように、この調子で体を大きくすることもポイントだと思いますし、更にスピードをつけることも大切だと思っています。ただ、いきなり体を大きくしてもスピードとのバランスが崩れてしまうので、焦らずに改善していきたいと思います。

ディフェンスに関しては、長友は後輩で、あんなキャラクターですけど、長友のディフェンスは参考になりますし、みんなからの信頼も厚いですよね。昨シーズンまでは、そこにも目がいかずに、ザワさんや有賀さんのアタックを真似したり勉強したりしていました。今シーズンは長友のディフェンスを見返すことが多くなっていて、長友と比べてもまだまだ自分には改善点がたくさんあると思っています。

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—— 来シーズンもウイングとしてプレーしていこうと考えていますか?

サンゴリアスにはスクラムハーフとして入ってきているので、今までは「スクラムハーフ/ウイング」という感覚でしたが、今シーズンは「ウイング/スクラムハーフ」に変化したという感じですね。スクラムハーフが出来るというのも強みだと思っていて、トップリーグの選手の中でも、ウイングとスクラムハーフが出来る選手は、ほとんどいないと思います。スクラムハーフをやっている人が、たまにウイングをやることはあっても、どっちもしっかりとプレー出来る選手は珍しいと思います。

今シーズンの前にウイングでもスクラムハーフでも試合に出るということも目標にして、春シーズンはどちらのポジションでも試合には出られましたが、トップリーグではスクラムハーフでの出場は一度もありませんでした。今でもスクラムハーフを諦めたわけではないですよ。

—— スクラムハーフとしての課題は何ですか?

スピードは強みですが、ゲームメイクや球捌きの部分では、フーリー(デュプレア)や日和佐に比べるとまだまだですね。そもそもスクラムハーフとして先発出場をしたことがないので、経験不足の部分もあると思います。ただどちらのポジションでも、僕の中にはまだ伸びしろがあると思っていて、2つのポジションをプレーするという目標を持っていても良いと思っています。

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—— 普段からスクラムハーフとしての練習も行っているんですか?

今シーズンは、春に日和佐とフーリーがいなかったので、僕と瑞樹(柳原)の2人でスクラムハーフをやっていました。だから逆に春は、ほとんどウイングではプレーをしていませんでした。春は9対1でスクラムハーフの割合が多かったんですが、シーズンが始まったら0対10でウイングになりました。ウイングとしても、春のスクラムハーフの経験は大きかったと思っています。

—— 具体的にはどういったところが大きかったんですか?

味方がどのタイミングでボールが欲しいかということが分かるようになってきたと思います。ウイングをやっていた時に、このタイミングでボールが欲しいという感覚でスクラムハーフをやったり、この場面ではどうやって攻めるという選択肢が広がったと思います。

◆トライランキングで逆転したら、タックルでも違う結果

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—— 今シーズンはコンディショニングの面でも良かったのでは?

細かな怪我はいくつかありましたが、今シーズンはウイングとして、今まででいちばん先発も多かったので、満足はしていませんが、充実したシーズンになりました。

(横を通りかかった有賀選手から「結婚してからスピードが上がった。どういうこと?」と声がかかる)

—— 今の声に関してはどう思いますか?

今年の2月に結婚したばかりで間もないので、関係があるかどうかは分かりませんが、良い支えになっています。結婚の影響は来シーズンに出るかもしれないですね(笑)。

—— 結婚の影響が出るかもしれない来シーズンのターゲットは何ですか?

毎試合結果が残せて、攻守ともに信頼されるウイングになりたいですね。それとチャンスがあればスクラムハーフとしても狙っていきたいと思います。来シーズンもやることはいっぱいあります。

それと、ウイングをやるからには、トライ王を狙いたいですね。今シーズンは1位とかなりの差を空けられちゃいましたけど(笑)。今シーズンの途中からは、ナドロ(ネマニ/NECグリーンロケッツ)を意識しないで、小野澤さんと長友よりもトライを獲るということを目標にしていて、トライ王は獲れなくても、その目標だけは達成しようと思うようにしていましたが、あれだけ雑誌やウェブなどで結果が掲載されるのを見ると、トライ王を獲りたくなりますね。

NEC戦での話で、ナドロは11番で出場して、僕は普段14番なんですけど、NEC戦は11番で出場したので、ポジションはナドロの対面ではありませんでした。けど、相手ボールのスクラムになった時に、ナドロがスルスルって、僕の対面に移動してくるんですよ(笑)。それをアフターマッチファンクションで直接聞いたら、「成田の前にナドロを立たせる」という作戦だったみたいなんです。相手チームにそう思われているということは、僕のディフェンスはまだまだということなんですよね。今シーズンはそれが悔しかったので、来シーズンは対面になった相手から嫌がられる選手になりたいと思います。

あと、その試合でナドロにタックルに行ったんですけど、ぜんぜん僕のことを見ていないにも関わらず、トラックに撥ねられたように跳ばされてしまいました。それが人生の中で最大の屈辱でしたね。来シーズンはトライランキングでも逆転して、もし逆転することが出来たら、タックルでも違う結果になると思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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