2012年4月11日
#272 ジョージ スミス リーグ&プレーオフ"MVP2冠"『楽しんでいるということは良いサイン』
トップリーグ、そしてプレーオフトーナメントにおいてMVPを獲得したジョージ・スミス選手。Mr.ジャッカル(ジャッカル:ブレイクダウンでボールを奪うプレー)と呼ばれ、今シーズンのトップリーグでも最多ジャッカル数41回を記録。チームに加入して1年目から大車輪の活躍を見せたジョージ・スミス選手に、トップリーグでのプレーについてや、日本のラグビー、日本での生活について語ってもらいました。(本インタビューは日本選手権準決勝前に行いました)
◆ダイナミックに動く
—— トップリーグMVPとプレーオフトーナメントMVPのダブル受賞、おめでとうございます
ありがとうございます。チームにとっても良いシーズンを送れたと思いますし、個人としてMVPを頂けることは気持ちが良いことです。チームのパフォーマンスが良くなければ、個人賞も受賞することが出来なかったと思いますし、コーチ陣やスタッフが良い準備をしてくれたからこそ、こういう結果になったと思います。
—— プレーオフ決勝で3つ目のトライを獲った時は、珍しく喜びを表現していましたが、どういう気持ちでしたか?
私が獲った3つのトライ全てが、セットピースからのトライで、2つはモールから、もう1つはスクラムからのトライでした。3つ目のトライを獲った時は、無意識ではありましたが、これで完全にリードしたと思い喜んだのだと思います。そして、そのトライ後のゴールで、ライアン(ニコラス)が成功した時には、これで勝ったと思いました。
—— これまでに1試合で3つのトライを獲ったことはありましたか?
6歳や7歳くらいの時はあったかもしれませんが、それ以来は記憶にありません(笑)。
—— これまでのMVPは?
スーパー14でも何度かMVPを獲得したことがあります。今回も努力したことが実った結果だと思うので、自信になっていますし、良い方向に進んでいるという証拠だと思っています。
—— Mr.ジャッカルと呼ばれていて、トップリーグでもジャッカル数1位に輝きましたが、自身の力を発揮できたと思っていますか?
ターンオーバーの機会を作ることが、自分の強みだと思っています。ジャッカルをするということは、試合の中の一部にしか過ぎず、チームの一員としてはバックスと連動して機能すること、ボールキャリアになることが重要な役割だと思っています。一部だけにフォーカスしてプレーするのではなく、全ての場面においてしっかりとプレーが出来るようにしています。サントリーの全ての選手が、そういうことを考えてプレーする必要があると思います。私はこれまでの経験をもとに、試合中には360度の方向に神経を働かせてプレーしていますが、練習中からもそういう意識を持ってプレーすることが重要だと思います。
—— ジャッカルの秘訣は何ですか?
ターンオーバーをするチャンスがあるかないかを見極めることが必要です。日本人の体形はジャッカルしやすい体形だと思うので、その部分では強みだと思います。ただ、他の選手を見ると、毎回ジャッカルしようとチャレンジしているように見えるので、チャレンジをするかしないかの見極めをしなければいけないと思います。ブレイクダウンに誰よりも速く入ることでチャンスは生まれます。ただセットピースからジャッカルするのは難しいので、アンストラクチャー(崩れた局面)からのブレイクダウンやキックリターンの方がジャッカルしやすいと思います。
—— タックルの時にジャッカルする秘訣はありますか?
起き上がる時にダイナミックに動くことです。まずは激しいタックルをして、その後のリアクションスピードが重要になります。
—— インゴール内でトライを阻止する場面を今シーズン何度も見ましたが、そのプレーについてはどう思っていますか?
ボールが地面に着いて初めてトライとなるので、それまでに阻止できるところは阻止しようと思っていて、それが何度か成功しました。サントリーは試合終了間際であっても、最後まで諦めないという気持ちを持っていますし、リアクションスピードが良いチームだと思います。
◆常にチャレンジ
—— 日本の暮らしには慣れましたか?
慣れてきたと思いますし、日本人の選手や文化についても理解してきたと思います。今でも日本人の選手からいろいろと教えてもらっています。どこの国に行ってもそうだと思いますが、時間をかければ慣れてきますし、今は日本を楽しみながら生活しています。
—— 困ったことはありませんでしたか?
日本人の選手は話すのが速いので、それを理解することが難しいですね。ラグビーの用語は英語に似ているので、試合中や練習中は理解しやすいのですが、ラグビー以外の話になると理解することが難しく感じます。
—— 日本に来ることはチャレンジだと思っていましたか?
新しい国に行くということは常にチャレンジで、そこでどういう姿勢でラグビーに取り組むかが大切だと思います。そしてその国に慣れると、生活もしやすくなります。チームのみんなが親切で、そしてリスペクトしてくれているので、何のトラブルもありませんでした。
—— 日本のラグビーのレベルはどう感じましたか?
思っていたよりもレベルが高いと感じました。サントリーだけではなく他のチームでも、高いスキルを持っている選手が多くいるので、トップリーグはレベルが高いと思います。サントリーの選手は向上心を持って取り組んでいるので、とても良いチームだと思います。
—— ジョージ・グレーガン選手からは何か教えてもらいましたか?
アドバイスやいろいろなことを教えてもらいました。ジョージ・グレーガンも日本の生活を楽しんでいたので、ジョージからは「僕と同じように素晴らしい経験をすることが出来ると思う」と言われていました。私もジョージも同じような道を歩んでいるので、その国に行った時は、その文化を受け入れた方が良いということも言われました。
◆学ぶ精神を忘れない
—— 日本のラグビーの改善点はどこだと思いますか?
良い方向に進んでいると思います。サントリーについて言えば、新しいスキルなどを学ぶ精神を忘れないことだと思います。
—— これから日本でやりたいことは何ですか?
このまま引き続き向上していきたいと思っていますし、バックローの他の選手に、これからもテクニックの部分でいろいろと教えていきたいと思っています。ラグビーの面でも楽しむことが出来ていますし、楽しんでいるということは良いサインだと思っています。
—— 今シーズン残りの試合についてはどう思っていますか?
もちろん全部勝つつもりでいます。東芝にはリーグ戦で負けてしまいましたし、あの試合はサントリーがシーズンを通していちばん良くない試合だったと思います。チーム全員が良い準備をしていますし、勝ちたいと思います。
(通訳:松平貴子/インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]