2012年2月 9日
#268 竹本 竜太郎 『ステップを磨きサンゴリアス50キャップを目指します』
トップリーグ第9節NECグリーンロケッツ戦(1月9日)で、試合2日前のメンバー発表後、試合前日になって体調を崩した小野澤宏時選手に代わって、22人のメンバーに入っていなかった竹本竜太郎選手が急遽今シーズンのルーキー初先発、そしてフル出場を果たしました。ルーキー2人目の登場です。竹本選手はこのインタビュー後、自身2度目の試合(第12節vs福岡サニックスブルース/リザーブでの出場)で、初トライを挙げました。
◆やるしかない
—— もともとメンバーには入っていなくて、いきなりトップリーグデビューすることになりましたが、それを聞いた時にはどう感じましたか?
もう突然すぎて、荷物の準備をして、すぐに移動しました。緊張するような時間がありませんでした(笑)。月曜日が試合で、日曜日に連絡が来て、すぐに移動しました。その日は厄払いのために大國魂神社に行っていて、16時くらいに連絡が来て、18時15分からホテルでエディーさん(GM兼監督)とのミーティングがあると言われたので、まごまごしている時間もなく、すぐにクラブハウスに戻って、ホテルに向かいました。
今年、僕は本厄で、もともとリザリザ(リザーブのリザーブ)にも入っていなかったので、1人で厄払いに行ったんですけど、参拝するのに並んで待っている間に連絡がきて、すぐに準備するために帰ったので結局厄払いは出来ませんでした。
—— 18時15分のミーティングには間に合いましたか?
間に合いました。そのミーティングは個人ミーティングで、春からフルバックとして良くなってきているということと、自信を持ってやるだけということ、それと大切なことは基本プレー、チームプレーということを言われました。沢木さん(敬介/バックスコーチ)からは「責任は俺が取るから、思いっきりやってこい」って言われました。かっこよかったです(笑)。
そういう言葉をかけて頂いたので、もうやるしかないという気持ちになりました。
—— それから試合に入る前までの心境は?
試合に入る前までは凄く緊張していたんですけど、試合が始まったらプレーのことだけしか考えませんでした。
試合前は、ふだん練習でやっているチームプレーと、しっかりとコミュニケーションを取ること、あとは新人ということもあって、ワークレートを上げることを考えて試合に臨みました。考えたことは、チームプレー、コミュニケーション、ワークレートの3つだけです。
—— その3つをやることは大変だと思いますが、その試合はフル出場でしたね
それは予想外でした(笑)。ただ途中で疲れ切ってしまうということはありませんでした。
—— やっている途中で手ごたえは感じましたか?
試合中はふだんやっていることの繰り返しだと感じました。練習でやっている断片的なフェーズアタックであったり、チームでのアタックディフェンスなど、練習でやっていることをやればチームプレーが出来ると思いました。それが自信になりました。しっかりと練習を本気でやっていれば、通用すると感じました。
—— 逆に課題はありましたか?
ビデオを見返してみて、基本的な判断のところとコミュニケーションです。
◆まだ視野が狭い
—— 大学時代のデビューは?
2年生の春です。その時も緊張はしましたが、試合が始まったらプレーに集中していました。
ふだんはスタンドオフをやっていたんですけど、いきなりセンターで出場しました。
—— どのポジションがベストだと思いますか?
サントリーに入って、春からずっとフルバックでやっているので、いまはフルバックですね。
—— 大学時代と比べて、感覚は違いますか?
セットプレーであったり、コミュニケーション、あとラインの速さは違います。ただ練習でやっているので、体は馴染んできていると思います。
—— どのくらいの時期から馴染んできましたか?
夏が終わるくらいですかね。試合で完全ではないにしろ、納得のいくプレーが出来始めたのがそのくらいです。
—— 自分の強みはどこだと思いますか?
ステップであったり、タックルなんですけど、社会人になってその部分もまだまだということを実感しました。
—— スピードはどうですか?
良くなってきてはいますが、ナリさん(成田)に比べるとスピードがないので、あまり強みだとは感じていません。
—— 大学時代のポジションと比べて、面白さなどはどう感じていますか?
自分に余裕が出てきたら、チャンスでボールが回ってくる機会もあるので、面白いポジションだと思いました。いまはまだ余裕がなくて視野が狭いと思います。それに、基本的なプレーは出来るんですが、アンストラクチャーになった時に、まだピーター(ヒューワット)や剛さん(有賀)、ザワさん(小野澤)にみたいに、周りを活かすプレーが出来ていません。まだ1試合しか出場していませんが、そういうところの判断が良くないと思います。
◆1つの目標に向かっていく過程が好き
—— ラグビーはいつから始めたんですか?
幼稚園からです。兄と一緒で、長崎ラグビースクールで始めました。兄がやっていたので、僕の意識が付く前にラグビーをやっていました。もう自然とラグビーをやっていましたね。
—— 小学校も中学校でも同じスクールですか?
そうです。中学校の時はラグビー部にも入っていました。中学あたりから、これからもラグビーは続けていこうと考えていたと思います。
—— ラグビーの面白さに気付いたのはどの辺りですか?
ふだんの練習で過ごす時間が楽しかったですね。
—— 他のスポーツは経験ありますか?
たしか小学3年生の時だと思うんですけど、1年間バスケットをやりました。ぜんぜん楽しくなかったです(笑)。朝練もあって、きつかったですね。その頃はタフじゃありませんでした。
—— 他のスポーツと比べて、ラグビーの魅力はどこですか?
仲間がたくさんいて、ワイワイ出来るところですかね。そして、1つの目標に向かっていく過程が好きです。
—— ラグビーを嫌になったことはありますか?
そこまではないですね。小さい時にスクールに行きたくないということはあるかもしれませんが、そのくらいだと思います。
—— 高校はどこですか?
長崎北高校です。その頃、兄はもうサントリーに入っていました。
◆足りないところがたくさんある
—— お兄さんを意識したことはありますか?
そこはないですね。偶然、同じ学校になりました。ただ慶應大学も、兄の試合を見ていて、慶應のラグビーに惹かれたということはあったかもしれません。
—— 実際に慶應大学に入って良かったですか?
良かったです。僕が1年生の頃に林監督も入ってきて、凄く勉強になりました。
—— 大学時代にいちばん覚えていることは何ですか?
練習で走りまくったことです(笑)。いまも凄く走っていますが、別のキツさがありました。10kmや3kmなど長い距離を走っていたので、それがキツかったですね。
—— どのくらいのタイムで走っていましたか?
10kmはアスファルトの上を走るので、あまりタイムも良くないんですが、3kmはベストが10分20秒くらいだったと思います。山中湖で走った時だったと思います。
—— これまでに大きな怪我などはありますか?
高校の終わりくらいから怪我がありました。それで大学1年の夏に復帰してからは、各年代で小さな怪我はありましたが、大きな怪我はありません。大学時代に比べると、いまの方がタフになっていると思います。
—— 準備の仕方は大学時代とは違いますか?
かなり変わりました。例えば、練習に入る前に、自分で出来るキックであったり、スピードトレーニングなどを行って、練習後はしっかりリカバリーをするようにして、体調管理に気を付けています。
—— そこまでしっかり準備をすると、楽しいんじゃないですか?
楽しいです。キツい時期もありましたが(笑)。
—— 大学の時の試合の思い出はありますか?
大学4年の対抗戦で、いい流れで早稲田と帝京に勝って終わったんですが、いざ大学選手権になったら2回戦で帝京に負けた試合ですね。いちばん嬉しかったのは早稲田に勝ったことです。
—— 大学ラグビーが終わって、そこから新たなラグビーの目標は出来ましたか?
サントリーに入って出来ました。それはシンプルに"試合に出る"ということです。そして、ラグビーが上手になることです。自分には足りないところがたくさんあって、どんどん成長できると思いました。
◆自由奔放
—— サントリーに入ることを決めたきっかけは何ですか?
大学の練習にエディーさんが来ていたということもありますし、良い会社だと思います。そういうことを考えて、サントリーに入りたいと思いました。
—— お兄さんと話をする機会は多いんですか?
ちょくちょく話します。この前のNEC戦の前には、ぜったいに緊張するだろうから、リラックスしていけという話をしてくれました。あとはちょくちょく助言などをしてくれて、気にかけてくれているのかなって思います(笑)。
—— お兄さんはサントリーのキャプテンをやっているわけですが、どう感じていますか?
別に気になっていません。兄だろうが、兄じゃなかろうが、キャプテンはキャプテンです。
—— いちばん喜んでいるのはお父さんじゃありませんか?
NEC戦は両親とも見に来たかったと思いますよ。突然決まりましたから、飛んでくるのかと思っていました(笑)。
—— 何か言われましたか?
嬉しいんでしょうけど、特に何も言われていないですね。
—— 他の兄弟は?
4兄弟の末っ子ですが、いちばん上が医者で、二男が隼太郎、三男が来年の4月から社会人です。
—— 甘えん坊なんですか?
それは分からないです(笑)。みんなには可愛がられたと思います。
—— 自分の性格はどんな性格だと思いますか?
わがままだと思います(笑)。真面目にする場面では、もちろん真面目になりますが、ふざける場面ではふざけるような感じです。説明するのが難しいんですけど、自由奔放です。
—— リーダーシップはあると思いますか?
高校も大学でもキャプテンをやりましたが、自分では分からないです。ただキャプテンをやることに対して、苦にはなっていないです。
—— どういうキャプテンでしたか?
僕は態度で引っ張っていくタイプでした。言葉は下手なので、そこはバイスキャプテンの小澤(直輝)がカバーしてくれていました。
—— 将来はそのリーダーシップを発揮する場面があるかもしれないですね
分からないですけど、あるかもしれないですね。
◆常に準備を
—— いまのラグビーの楽しさは何ですか?
昨シーズンの日本選手権で、なぜ優勝したのかが分かるチームの姿勢を感じています。例えば、1人1人の朝練であったり、ラグビーに対する意識の高さ、リカバリーもそうですし、常に準備をしていますし、学ぶべきことが凄く多いです。
—— 仕事をしながらラグビーをするということについてはどうですか?
他のチームがどうかはわかりませんが、凄くいいことだと思います。仕事が上手く回せない時もありましたが(笑)、支店の方々に温かく見守っていただいています。
—— 仕事の楽しさは?
新年になって、去年良くなかったところを良くしていこうと頑張っています。まだスケジューリングがしっかり出来ていなくて、長いスパンで見て、計画的に仕事が出来ていないので、そこを良くしていこうと思っています。
—— 仕事、ラグビー、プライベートと切り替えはどのようにしていますか?
オフの日でも、次の日に練習があれば、早く寝ようと思っています。ラグビーと仕事の両立については、まずはラグビーで早く結果が残せるように頑張っています。
—— 今後、どのようなラグビーをしていきたいですか?
チームプレーをしていく中で、個人でもしっかり貢献できるようなプレーをしていきたいと思います。ステップについても、更に磨きがかかるようにトレーニングもしています。お尻のトレーニングだったり、走り方のトレーニングを新田さん(ストレングスコーチ)に指導を受けてやっているところで、大学時代とはキレが違うと感じています。あと走っていても持続力というか、走っていてもそこまで疲れないようになりました。
—— 今シーズンの目標は何ですか?
やっぱりどこにチャンスが転がっているのか分からないので、練習に向かうための準備をしっかりして、練習では最大限のパフォーマンスを発揮できるよう頑張りたいと思います。そしてサンゴリアスで50キャップを目指したいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]