SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2012年2月 2日

#267 佐々木隆道×有賀剛 恒例スペシャル対談 『ラグビー以外のところも繋がっている』

◆無駄がどんどん削ぎ落とされてくる

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—— ようやく2人が出そろった感じがしますね

佐々木:いつも剛が遅れているからです(笑)。

有賀:調子が戻ってきたので、これからですね。

佐々木:去年くらいからは自分の好調不調の波が分からなくて、エディーさん(ジョーンズGM兼監督)に良いと言われたら良いんだろうし、頑張れって言われたらもっと改善していかなければいけないと思っています。けど周りから好調と言ってくれる回数は増えましたね。

—— 試合後には必ずエディー監督と話をしているんですか?

佐々木:エディーさんとの個人ミーティングがあるんで、みんな話しているんじゃないですか。

—— 自分が良かったと感じた時と、エディー監督からの評価は合っていますか?

佐々木:自分の中では練習したプレーが出来たかという評価は持っていますけど、全体的な評価というのは毎回不安でしょうがないですね。

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—— 有賀選手から見て、佐々木選手は調子が良いと思いますか?

有賀:調子が良いんじゃないですかね。1つの目安としてワークレートのシートが出てきて、みんなそこを大事にしていると思います。あとトライを獲った獲らないとかじゃなくて、ワークレートの数値がどうなのかの方が気になっていると思います。

—— 佐々木選手は合宿でMVPも獲得していますし、みんなからも評価されているということですよね

有賀:調子が良いってことだと思います。

—— みんなから評価されている原因は何だと思いますか?

佐々木:昨シーズンからのベースがあって、今シーズンの初めにも体を作ってきましたし、準備がしっかり出来たことだと思います。それとホーヘ(ジョージ・スミス選手)が来て、自分の無駄がどんどん削ぎ落とされてくるという感覚はあります。例えば、昨シーズンまではたくさんのラックに入ろうとして、ラックに寄っても何もしていない時があったんですけど、ラックに入るか入らないのかということが、よりチームのアタックにリンクしていけるようになったと思います。

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—— ラックに入る入らないというのは自分で判断しているんですか?

佐々木:自分で判断しています。誰かが抜けて、もちろんフォローには入るんですけど、そこでラックに入るか入らないかというのは、自分の目で見た時の感覚です。

—— そこが熟練してきたんでしょうか

佐々木:ボールがここに出ると感じたところにボールが出るようになりましたし、僕がラックに入らないでバックスラインに入って、パスをする回数も増えました。トヨタ自動車戦で小野澤さんがトライを獲った場面でも、僕から剛にパスをして、小野澤さんがトライを獲りました。そういうところでも、昨シーズンまでだったらラックに寄っていっていたと思います。

—— 試合を見ていても、前に行く距離とスピードが上がったと感じますが、自覚はありますか?

佐々木:自覚はありますけど、プレーに迷いがないというか、その時その時の状況判断がしっかり出来るようになったと思います。

—— その状況判断が出来るようになったのは何故だと思いますか?

佐々木:練習からガムシャラにやっているからじゃないですかね。あとはチームには良いバックローがたくさんいるので、その選手の動きを見習いながらやっています。

◆ぶれなくなりました

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—— 有賀選手はとてもスムーズに復帰したと思ったら、落とし穴が待っていましたね

有賀:調整不足と、不運なことが重なりました。いま調子が戻ってきたので、これからはエンジン全開でいきたいと思います。

—— 以前怪我をした時に、怪我をしたのであれば、怪我をする前よりも1つステップアップした状態にしたいと話していましたね

有賀:隆道も言いましたけど、春からの合宿で、俺は鍛えられていないので、そういった部分では少し難しいかなと思いますね。貯金がないので、上手くトレーニングして、良い状態を作ることにフォーカスしたいと思っています。

—— プレーオフ前や日本選手権前には試合が空く期間がありますが、そこで鍛え直すという考えはありますか?

有賀:そこで鍛え直すのは無理なので...。

佐々木:それを許されているのは、剛だけです(笑)。

有賀:みんな痛いところはあるだろうし、どちらかと言えばリカバリーに時間を充てたり、コンディショニングに充てると思うので、そこでトレーニングをガンガンにするというイメージはないですね。

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—— この前のインタビューで、今シーズンのサントリーを体験したいということを言っていましたが、その体験具合はどうですか?

有賀:開幕も勝っていますし、リコー戦も危なかったですけど勝ち、なんだかんだ全勝でいるので、昨シーズンよりは地力がついてきていると思います。

—— 昨シーズンと比べて、良くなっているところはどこですか?

佐々木:フィジカルが更に強くなっていますね。

有賀:他のチームはサントリーを見る目が違って、日本選手権で優勝したことで、どのチームもサントリーをターゲットにしているし、どう止めるかということを研究している中で勝っているので、地力があると思います。

佐々木:あとみんな試合中にぶれなくなりました。ミスしたとしても、みんながサントリーのラグビーをやればいいということを分かっているので、パニックになることもないですね。それはトップリーグの試合だけじゃなくて、サテライトの試合でもそういう感じになって来ていますね。

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—— 昨シーズンは有賀選手が出場したサテライトの試合からチームの調子が上がってきましたが、今シーズンは最初から調子が良かったですか?

有賀:最初はそこまで出来は良くなかったと思いますけど、徐々に良くなってきているし、トヨタ自動車戦ではアウェーの中、ああいう勝ち方が出来たので、自信がついてきている証拠だと思います。

—— いまチームの強さは、フィジカルであり、メンタルの部分ですか?

佐々木:あとはベースがしっかりしていることだと思います。フィットネスやストレングスの部分ですね。昨シーズンもかなりやりましたが、更に上げてきたかって感じです。春に剛はいなかったので分からないかもしれないですけど、こんなん何年も続けられへんわって思いました(笑)。朝から晩まで内容が濃いですね。

◆食わないと痩せていく

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—— 佐々木選手は結婚をされましたが、変わりましたか?

佐々木:家に帰っても落ち着きますし、料理も休みの日には作ってくれます。僕は楽ですけど、向こうも働いているので、しんどいと思いますよ。精神的なところで、凄く安定しています。依存しているわけじゃないですけどね。

—— 有賀選手から見て、佐々木選手が結婚して良くなったと感じますか?

有賀:結婚してって感じではないですけど、普通に良くなっているなって感じます。その原因が何なのかは俺には分からないですよ(笑)。

佐々木:それは結婚が原因じゃないですよ。春から頑張っているからです。頑張る以外に、オフの時間にリラックス出来るというのは、また頑張る気力になるので、そういうサイクルが凄く良いんだと思います。ただ決して嫁のお陰ではないですよ。僕が悪くなったら、嫁のせいみたいになるじゃないですか。

—— 有賀選手のリラックス方法はどうですか?

有賀:僕はずっと変わらずに、家に帰ってゆっくりするだけです。1人でいるのが好きなんです。

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—— 2人で一緒に何かをするということはあるんですか?

有賀:青木も含めて3人で飯に行ったりしますよ。ただ基本的にバックスとフォワードでトレーニングの時間が違うんですよ。

佐々木:剛はぜんぜん飯を食わないんですよ。それでいて、食った顔をするんですよ(笑)。

有賀:いっぱい食わないというか、そういう歳じゃないし(笑)。隆道はタケ(竹本隼太郎)とかと焼肉に行っていますけど、俺は行かないですもん。

佐々木:俺は雰囲気が好きなだけです。

—— フォワードとバックスの違いはあるんですか?

佐々木:僕らは食わないと痩せていくんですよ。気を抜いたらすぐに体重が落ちていきます。

有賀:俺はあまり食事制限をしないので、好きな物を食べるって感じで、甘いものも食べますけど、ガツ食いはしないですね。昔から腹いっぱいというのはないです。

◆ジャパンでやってみたい

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—— 6年目のシーズンはいかがですか?

佐々木:歳取ったよな。

有賀:もう中堅。

佐々木:剛とのこの対談も6年目ですよ(笑)。

—— 意識は変わりましたか?

有賀:変わらないですね。

佐々木:変わらないですね。試合に出たいだけです。あとは前よりもチームメイトを尊敬するようになりました。

—— 2人とも大学時代はキャプテンで、もともとチームメイトに目配せをするということはあるんじゃないですか?

有賀:自分はそういう立場にいるので、全体を見ていますけど、もう何年出来るんだろうというカウントダウンを考え始めていますね。そういう歳になってきたのかなって思います。

佐々木:早くね?まあ、俺も考えてはいますけど、そこまでは考えていないですよ。周りのことは全く考えていないです。

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—— 佐々木選手は、前にも自分のことしか考えられないと言っていましたね

佐々木:あの時は自分だけにフォーカスと言っていましたけど、いまは周りの人と自分は違うし、真似してもしょうがないという思いもあります。本当に凄いと認めた上で、自分も更に頑張らないと自分の居場所はなくなると思っているので、そういう意味で自分にしか矢印を向けられないという感じです。僕は周りのことをどうこう言えるレベルじゃないので。自分のことを一生懸命やることが、チームに貢献することだと思っています。

—— それはこの1年半くらいでそういう思いになったんですか?

佐々木:そうですね。厳しい環境になったので、自分も変わらないとチームにいる資格はないと思います。

—— 何年出来るか分からないという話が出ましたが、自分の3年後をイメージするとどういう感じですか?

有賀:3年後だったら31歳なので、ラグビーを辞めて次に何をするかということに動き出していると思います。具体的にはイメージしていないですけどね。

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—— ラグビー選手としてはどうなっていたいと思いますか?

有賀:エディーさんがジャパンの監督になるので、またジャパンでやってみたいという気持ちが出てきましたね。

佐々木:僕はジャパンとか言える立場じゃないのですよ。

—— 佐々木選手の3年後はどうですか?

佐々木:どうなっていたいか分からないですね。けど、ジョージ・スミスみたいになっていたいですね。ちょっとでも近づけたらいいなという思いがあります。

—— ジョージ・スミス選手が入ってきて良かったですか?

佐々木:最初はもう俺はいらないのかなって、居場所なくなるわって思いましたよ(笑)。けど、一緒にいて本当に勉強になりますし、ジョージが来たことで、自分のプレーも変わっていったと思います。例えば、評価基準が自分の中で出来たと思います。

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—— ジョージ・スミス選手の凄いところはどこですか?

佐々木:全部凄いです。例えば、コンタクトスピードとか、ゲームを読む力とか、動き出しも早いですね。だから自分も練習中から、ジョージだったらこう動き出すだろうなって考えながらやっています。僕の方がフィットネスはあるんですけど、キックを蹴られた時に、ジョージ・スミスの方が先に走っていたりするんですよ。1秒くらい早いですね。

—— ジョージ・スミス選手とは、よく話をするんですか?

佐々木:自分があまり良くなかったと思う時は、試合の映像を見てもらいます。以前見てもらったんですけど、そんなに悪くなかったねっていう話になった時があったんです。前に出たワークレートのシートには出ない動きってたくさんあって、それが出来ているか出来ていないかを凄く見てくれていますし、この動きはゲームによるし、ここに走っていれば得点が上がる時もあれば、低い時もあって当然だからって言ってくれて、だからこの試合は、そんなに悪くないよって言ってくれましたね。初めて一緒に試合をした時に、ジョージの動きを見てから、自分の動きを見たら、なんて下手くそなんだと思いました。

—— その時に気がついたんですか?

佐々木:その時は何でだろう、何が違うんだろうって思って、ただただレベルの違いに愕然としましたね。夏の自分よりは、いまの自分の方が良いと思います。けど、ジョージだけじゃないですよ。元さんのプレーを見て刺激を受けるし、西川のプレーを見て、もっと頑張らないといけないと思います。同じポジションの選手がみんないて、頑張れるんです。

—— いまこれだけいろいろなポジションに世界的なプレーヤーがいれば、みんな刺激を受けているということですよね

佐々木:サントリーがいちばん若手が伸びるし、中堅も伸びると思います。外国人選手がみんな人が良いので、凄く良い関係が出来ていると思います。

◆落ち着いてプレー出来る

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—— 有賀選手は、外国人選手でお手本にしている選手はいますか?

有賀:サントリーにいる外国人選手はみんな真面目で、凄い選手ですよ。トゥシ(ピシ)は、シーズンが終わった後は、スーパーラグビーに行くっていう噂もあって、それくらいのレベルの選手ってことですよね。それにピーター(ヒューワット)は10番も15番もどこでも出来て、あれだけどこでも出来る選手は日本人にはいないですよ。それぞれ刺激をもらってやっています。

—— 怪我に悩まされた日々だと思いますが、自分なりには成長していると思いますか?

有賀:成長と言えるかどうかは分からないですけど、落ち着いてプレー出来るようにはなりました。

—— それはどうしてそうなったと思いますか?

有賀:それは場数だと思います。しっかり落ち着いて判断が出来るようになりましたし、さっき隆道が抜けるとか、俺がトライを獲るとか話が出ましたけど、個々の力も上がっていますし、サントリーのシステムは、ミスをしなければ止められないと思いますよ。それぐらい良いラグビーをしています。

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—— 具体的にはどこが良いと思いますか?

有賀:簡単に言うと、たくさんオプションがあるんです。その分ディフェンスが的を絞れないわけです。それを止めるために相手は変わったディフェンスをしてくるだろうし、ブレイクダウンで凄いプレッシャーを掛けてくると思います。そこでフィジカルで勝って、1人1人が前に出られたら、止められないと思います。みんなが仕事をしてトライが生まれるので、トヨタ自動車戦でトライを獲りましたけど、みんなが獲らせてくれたトライだと思います。

—— 6シーズン目の目標は何ですか?

佐々木:1試合でも多く試合に出て、2冠を獲りたいです。

—— いろいろなスキルが伸びていて、いろいろ面白いと思うことがあると思いますが、いちばん面白いと思うところはどこですか?

佐々木:必死にやっているんで、面白いと思うことはないですね。しんどいでもなくて、やりたいという意欲は凄くあるんですけど、やることに精いっぱいです。

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—— そのやりたいという意欲のモチベーションは何ですか?

佐々木:やらなきゃいけないんです。ラグビーでもっと認められたいし、自分をアピールできるのは、ラグビーしかないから、もっと上手くなりたいですね。

—— ラグビーが上手くなったという自覚はないんですか?

佐々木:それはないですよ。自分は1つとして周りの選手より秀でたところがないと思っていて、ボールを持って前に出るのは元さんの方が強いし、西川の方が粘るし、自分は何で試合に出ているんだろうってくらいですよ。ただ6年目の中で、いまがいちばん良い状態だと思います。

—— 有賀選手は、プレーヤーとしてやっていて面白いラグビーと感じますか?

有賀:ボールをもらう機会も増えてきますし、面白いですよ。ただ自分の仕事をしっかりしないと、そのラグビーにはついていけないので、たくさん動いて、ワークレートを意識するようにしています。最低限、対面には勝ちたいと思いますし、毎回そのワークレートの自己新を狙ってやっています。

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—— 有賀選手の今シーズンの目標は何ですか?

有賀:シーズンは半分過ぎましたけど、まだ3試合しか出ていないので、これから全部の試合に出ることが目標です。レギュラー争いも熾烈なんで、怪我で離脱とかしたら、すぐに居場所がなくなっちゃうと思っています。そういうことがないように、試合に標準を合わせてやるだけだと思います。

—— チームとしてはどうですか?

有賀:チームとしては、2冠という目標があって、周りからはぜんぶ勝てるんじゃないのかって言われますけど、そういう先を意識しすぎないで、その週の試合だけを見て、しっかりやらなければいけないし、そういう方向にチームを導いていければと思います。

—— 規律が厳しくなって、クラブハウスがより綺麗になるなど、選手として気持ちが良いものですか?

有賀:いままでが甘え過ぎていた感じはあると思います。やらなきゃいけないことだと思いますし、実際に関係あるのか分からないですけど、チームの移動でもチームとしての一貫性を持たせる意味でも、細かく設定された格好で移動もしています。移動にはスーツを着る、アフターマッチファンクションにはみんなが出る、エディーさんには、そういうことがチームに関係してくるということを教わりました。ラグビー以外のところも大事で、結局は繋がっているんですよね。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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