2011年10月25日
#256 宮本 啓希 『1つのパスを正確に』
◆今回はどんな感じ?
—— 宮本選手は3年目で、若いロッカーリーダーですね
よく言われます。あまり深く考えたことはないですが、去年からチームソーシャルやそういう会の司会をやっているので、ロッカーリーダーもあるのかなって思っています。
—— いままでリーダーの経験はありますか?
中学、高校、大学とずっとバイスキャプテンをやってきましたが、キャプテンはないですね。バイスキャプテン型なのかなって思っています。
—— バイスキャプテン型というものをどう感じていますか?
嫌と感じた時もありますけど、キャプテンは前に出て行くことが多くて、僕も前に出たがりなところはあるんですが、キャプテンが監督に言えないことをバイスキャプテンに言ってくるので、いま思い出すと中学の時から“言われ役”をやっていたと思います。ただそれを嫌とは思わないですよ。
—— いまのロッカーリーダー役は、過去のバイスキャプテンの経験をもとにやっているわけですか?
いま周りの選手に「これをやってください、あれをやってください」と言うのは違うと思いますし、自分たちで考えてやる選手ばかりです。僕のグループは歳が近い選手が多く、ヤマさん(山岡)はいますけど、その下が曽我部さん(佳憲)になるので比較的やりやすいですね。ただ若いからカーッとなっちゃう部分があるので、そこはなり過ぎないように注意しています。僕もそういう部分があるので、僕自身も気をつけています。
—— 司会などをやることは好きなんですか?
昔から話すことは嫌いじゃなかったので、中学、高校くらいからそういう役回りは多かった気がします。ただチーム内でこれだけ司会役をやるのは、社会人に入ってからですよ。これだけ司会をやっているので、そういう会がある時は、僕が司会ということで話が進んでいます。だから最初は「誰が司会ですか?」って聞いていたんですけど、最近は「今回はどんな感じでいきますか?」って聞きますね(笑)。
—— 司会をする時に、気をつけていることはありますか?
1度踏み外す前までは、決まっていることがあってもアドリブで盛り上げてみたりすることがあったんですが、ゲームだとしてもみんなは勝負事って考えてシビアにやるので、最近はあまり踏み外さないということを意識しています。
1度踏み外した時は、ゲームをしている時にアドリブでいろいろと入れ込んでいったんですけど、「それはおかしいやん!」って言われて、そこからいろいろと言われたらテンパってしまってしまいましたね。その会はなんとか治めて終わったんですけど、やり過ぎたと反省しました。僕もやっていておかしいなって思っていたんですけどね(笑)。
◆時間が過ぎるのが早く感じる
—— ロッカーリーダーとして、難しいと思うところと面白いと思うところは?
去年までのリーダーはヤマさんや元さん(申騎)で、ベテランの人たちは今までのサントリーを知っている分、しっかりしたことが言えると思うんですよ。僕はまだ若造なんで、どこまで言えばいいのかとか、どう言えばいいのかと考える時があります。ただ僕のグループは若いので助かっている部分はあります。あとみんな頭が良いので、言ったことを理解してくれるんですけど、言い方は難しいですね。
それとヤマさんが要所要所で「お前それはちゃうで」とか、「それは言っとかなあかんやろ」とか言ってくれはるので、凄く助かっています。ただ言われるたびに勉強になると感じているんですけど、あまり頼り過ぎたらあかんなって感じるところもあります。もしかしたらヤマさんに聞いたら、「頼り過ぎで、全然あかんでしょ」って言われるかもしれないです(笑)。
—— ラグビーについてはどう感じていますか?
1年目は大学の延長線上でやってしまった部分があったんですが、2年目の春で体質が大きく変わって、やれるという実感がありました。そして3年目の今年は、継続しつつ何を変えなければいけないかと考えた時に、敬介さん(沢木/BKコーチ)に「もっとラグビーを勉強しろ。何でこうなるのかを考えてプレーしろ」って言われたんです。
たしかに2年目の時は「行けー、行けー」って思って行っていただけでした。だから2年目よりも考えるようになったし、それで更にラグビーが面白くなって、80分間試合をしていても時間が過ぎるのが早く感じるようになりました。
—— 具体的に体質が変わったとは、どんなところが変わったんですか?
体脂肪を減らさなければいけなくて、夜は炭水化物を食べないとか、外で食べることを少なくしたりしていました。去年の3月からそういう食生活にしたら、6月くらいには体の見た目も変わったし、80分間通しても動きやすいと感じましたね。1年目の体脂肪率は13%くらいだったんですが、去年の網走合宿の時は、体脂肪も9%くらいになっていました。
—— 考えてプレーするということは、何か映像を見たり、本を読んだりすることもあるんですか?
去年も見ていましたけど、今年は更に海外のラグビーをよく見るようになりましたね。敬介さんと映像を見ていて、ひとり言のように「あのプレーは上手いな」とか言っているので、その後に僕もその試合の映像を見たりします。そういう機会が増えましたね。
—— これまでも映像は見ていたわけですよね?
見ていましたけど、偏っていましたね。自分が出場した試合の映像を見て、ここがあかんなとか思うのはありましたけど、人のプレーを見ることは少なかったですね。
◆文化を創っていく役割
—— 3年目の開幕を迎えるこの時期の自身の状況は? コンディションは良いですし、個人としては上がっている感じです。
—— リーダーとしての目標は何ですか?
なぜロッカーグループがあるかというと、チームを活性化させてチーム全体に浸透させる役割と、ラグビー以外でも文化を創っていく役割があると思います。去年日本選手権で優勝して、だいぶ浸透したとは思うんですが、去年のリーダーから引き継ぐ時に「今年が大事で、2年目で本当に値打ちがあるのかが分かる」と言われたんです。
だから今年は今まで浸透している部分を更に深くしていかなければいけないと思っています。そのためにロッカーグループのリーダーとして、何をしなければいけないのかを考え、しっかりやるということがリーダーとしての目標です。小さいことでも、その時に言わなかったから、後で大きなことになってしまうということがあるので、ロッカーリーダーのミーティングで毎回「気づいた時に言おう」って話しています。
—— 個人としての目標は何ですか?
日本選手権優勝の時にグラウンドにいさせてもらい、ラグビー人生の中で日本一が初めてだったので、こんだけ気持ちいいんだと感じました。今年もその場所にいるということと、長い時間試合に出るということですね。春からこの2つを目標にしています。
—— その目標を達成するための課題は何だと思いますか?
ずっと言われているのが、1つのパスを正確にやることですね。エディーさん(ジョーンズ/GM兼監督)にも「そこにフォーカスしろ」って言われているので、そこを意識してやっています。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]