2011年6月29日
#245 宮本 賢二 『恩返しできるのはラグビー』
◆すぐ行動
—— ご出身は?
福岡県中間市出身です。
—— 2シーズン目に突入しました。改めて昨シーズンと比べての違いはありますか?
ミーティングの前に合宿があったので、今シーズンのファーストミーティングについては特に意識はしませんでした。
—— 学生から社会人になり、1年間で意識は変わりましたか?
意識は本当に変わりました。練習にしろ、考え方にしろ、生活にしろ、ほとんどラグビーに対することは変わりました。
—— 具体的にどんなところが変わりましたか?
ウエイトトレーニングの仕方にしても、走ることにしても、パスする意識にしても、ちゃんと頭で考えるようにしました。
—— 今までは本能でやっていた感じですか?
本能というか、そこまで気にしていなかったですね。
—— どうして意識が変わったんですか?
みんなと一緒にラグビーしたいし、それを続けるには、もっと上手くならないといけないし、強くならないと続かないと思います。
—— それはどのタイミングで感じましたか?
サントリーに入ってすぐですね。雰囲気ですぐわりました。
—— 思ったら直ぐに行動する方ですか?
そうですね、思ったことはすぐ行動しています。でも僕は飽きやすいんですよね(笑)。
—— 飽きやすい自分対して、継続させるコツは何ですか?
ダラダラやらないことです。時間をかけてまでやらなくていいことは、時間をかけずに効率よくやることですよね。短時間で密度の濃い練習をするように心掛けています。本当に出来ているか分かりませんが(笑)。なるべく短い時間で行うことですね。
—— それは昔から変わりませんか?
変わっていませんね。これは性格だと思います。
—— 最小の努力で、最大の効果を生み出すということですか?
努力というよりかは、練習にしても話すにしても、長い時間ゆっくりすることが好きではないですね。でも話すことは好きですよ(笑)。
—— 気が多いってことですか?
そういう訳でもないですが、今までやってきた慣れだと思います。
◆熱しやすく
—— ラグビーはずっと続けてきた訳ですよね?
20数年間やってきました。
—— 長い間ラグビーは続けてきましたが、1日単位など短い時間で考えると、1つのことにあまり時間をかけないということですか?
長時間を同じことをやるのはキツイですね。
—— 気分転換ということですか?
気分転換もあります。でもその前に飽きているんでしょうね。熱しやすく冷めやすいのかもしれません。
—— かなり集中して練習に取り組んでいるんですね
最初から時間を決めてやりますね。
—— そのような性格で、良かったことと悪かったことは?
良かったことはないですね(笑)。逆に悪かったことは、こんな性格だからその場の雰囲気を壊してしまったりしたことですかね。
—— そのような行動は、自ら意識しているんですか?
そうじゃないですけど、そうせざるをえないという感じですかね。
—— 1つのことにこだわったり、集中しているのが、かっこ悪いと思うことはありますか?
そういうことはなくて、逆に集中出来ている人を見ると、凄くうらやましくなりますよ。僕の場合は一定の時間を過ぎると、フワッてなりますよ。集中力がなくなってしまいます(笑)。
—— 練習では、どのくらい集中出来ますか?
練習の場合は、そこまで意識したことはないですね。
—— 仲間との会話とかは?
みんなで集まって話をする時は、2~3時間後には飽きていますね(笑)。最初は楽しいんですけど、徐々に飽きてしまうんです。
—— 一人っ子ですか?
3人兄弟の真ん中で、上は兄貴で、下は妹です。基本的に1人でいることが多かったので、家では僕がいちばん自由でしたね。
—— 自分の性格をどのように分析していますか?
それの性格を周りに分からせないようにしないといけないなぁって思ってます。でもみんな分かってしまうんですよね(笑)。「ケンジ、帰りたいんだろうな!」って思われていると感じます。
—— サントリーではどうですか?
楽しいですよ。でも時間が経つにつれてと...(笑)。
—— みんなと一緒にいる時より1人でいる方が楽しいですか?
外からみんなを見ている時が楽しいって思う時がありますね。性格の問題だと思いますけど、みんながワイワイやれているところを見ているのが楽しかったりします。
—— インタビューは好きではないですよね?
いえ、話すのが好きですよ。けど、1時間続くと嫌になると思います(笑)。
—— その性格とラグビーは、あまり関係ないのですか?
ラグビーとは全く関係ないですね。ラグビーになると別人になると思います。
◆一瞬のキレ
—— 何歳から誰の影響でラグビーを始めましたか?
たぶん親の影響で、3~4歳くらいからラグビーを始めました。福岡の少年ラグビースクールに入って、河川敷を拠点にしていました。そんなに大きいスクールではなかったです。
—— 子供の頃は、ラグビーのどんなところが楽しかったですか?
子どもの頃、理由は忘れましたけど泣いていましたね。ただスクールで1番か2番くらい足が速かったので、走るのが楽しかったんじゃないですかね。
—— 他のスポーツに興味は持ちましたか?
全くなかったですね。1回中学の時にラグビーをやりながらサッカーもしようと思ったんですが、土日に参加出来ないと試合出られないよって言われて、諦めました。
—— 蹴ることが好きなんですか?
特にそんなことはないですけど、スクールに通っていたので、帰宅部でも良かったんですけど、他の競技も何かやりたいって思っていました。
—— ラグビーを続けることに対して、疑問を持ったことはありますか?
思った時期もありますし、辞めたいと思ったのは2回くらいありました。
—— 辞めたいと思った理由はなんですか?
色々です。遊びたいと思った時と、嫌な事情もあった時の2回です。
—— どういう風に克服しましたか?
小さい頃から、スクールでたくさんのコーチに巡り会えましたし、良い人に出会えました。その方々のおかげで、ここにいるなぁと思いました。こんなことを思えてきたのは、大学2年、3年くらいの時だと思います。
—— 中学、高校と当たり前のようにラグビーを続けたんですか?
そうですね。その時は「やりたい」と言っていましたね。
—— その時は自分のラグビーの長所はどこだと思っていましたか?
一瞬のスピードですね。一瞬のスピードのキレがあるって言われていました。
—— 先ほど言っていた一瞬の集中力と、一瞬のスピードって共通していますね
そうかもしれませんね(笑)。
◆だから白髪が
—— 法政大学を選んだ理由は?
本当は早稲田に行きたかったんです。高校2年の時に、いまの状況を考えると早稲田は厳しいなぁと思いましたので、進路希望アンケートに法政と書きました。
—— その時の自己分析はどうだったんですか?
体が小さいし、あのときのレベルだと早稲田でなく法政だと思いました。この2つ以外は何も考えてなかったですね。
—— 大学選びは正解でしたか?
正解だったと思います。大学の時は、2年生から試合に出場していましたけど、体の違いで悩んだこともありました。かといってトレーニングした訳ではないですが(笑)。
—— 高校時代にはどうでした?
高校生って、みんな体が小さかったですよ。スピードで押していました。
—— そのスピードで、全国大会常連だったんですね
毎年全国大会に出場していましたし、選手としては2年生から試合に出ていました。
—— その時にキャプテンやバイスキャプテンなどしていましたか?
3年生の時にキャプテンをしていました。
—— キャプテンは自分に合っていましたか?
いや、合ってなかったです(笑)。
—— どこが合っていませんでしたか?
どこが合っていないというより、自由にしたかったですね。みんなに協力するのはいいんですが、自分から全体を見てまとめるというのは、頑張りましたけど出来てなかったですね。
—— 3年生の時は大変でしたか?
大変でしたね。だから白髪が増えました(笑)。もちろん今の方が多いですが、その時からですよね。でもこの白髪に対して賛否両論で、おしゃれと言ってくれる人もいます。いまのところ否はあまり聞かないので、どっちかというと賛の方が多いかもしれないですね。
◆悩んでの人生
—— 大学では、自分のプレーに専念出来ましたか?
基本は、悩んで悩んでの人生だと思います。
—— その悩みとは?
まず、生活に必死でしたね。家のこと、大学のこと。ラグビーを続けられるのかで悩んだこともありました。
—— 既に大学生からいろいろ考え、自立していたのですね
そうですね。高校までは親と一緒に生活していましたから。
—— 大学時代は充実していましたか?
3年生からは、ラグビーが楽しく充実した生活を送れていましたが、その反面、もっとやっていれば良かったという後悔があります。その当時の環境を考えると、もっと自分達でやらなきゃいけない世界でした
—— 突っ込める時間があったのに?別のことに使っていたということですか?
そうですね。
—— でもその分、今はやっていますよね?
その時の倍はやっています!いや5倍くらいしてますね(笑)。
—— 大学時代に今ぐらいのことしていれば、どうなっていましたか?
振り返ると、いま行っていることをやるのではなく、もっと集中してラグビーに打ち込みたかったですね。さっきも言ったように、あまり時間を長く使うことはしたくなかったので、有効的に時間を使いたかったですね(笑)。
—— 大学時代は、やることがわからない時期では?
いや、分かっていました。1時間半の練習だけだったんです。でも学校へ行って、練習して、家に帰って、寝てみたいな...。何か面白みのない大学生活ですよね(笑)。だから今はもの凄く充実していますよ。
◆自分のペース
—— どこが楽しいですか?
今の生活は切り替えが出来ていますね。ラグビーはラグビー、仕事は仕事、遊びは遊び、飲む時は飲む(笑)。それがちょうどよく分かってきて、ここはこうして良いと自分で決められるペースがいいです。
—— サントリーに入って、試合に出場出来ると思っていましたか?
全く思っていなかったです。自分が通用するのかって、すごく不安でしたね。
—— サントリーに入ってウエイトトレーニングを始めたんですよね?
はい。すんなり意識の切り替えができました。だから日を重ねるごとに成長している自分の体を感じられました。徐々にですけどね。
—— 昨シーズンいちばん印象的だったことは何ですか?
あまりないです。頭の中にいろいろなシーンが思い浮かびますが、印象的だったことは...ないですね。
—— 昨シーズンは自分にとって、どんな年でしたか?
甘かったです。精神的なところがいちばん大きかったですね。それと、今までの後悔がどっと乗っかってきた1年でした。出来ない歯痒さより「なんで今までやってこなかったんだろう?」と思う気持ちがありました。だからいま必死に練習していますよ。
—— 自分で感じているギャップは埋まりつつありますか?
埋まってきたかどうかは、試合してみないと分からないです。だいだい練習中は、動きの中で感じられますけど、いちばんは試合で感じることですよね。
—— ノートを活用していたことはありますか?
最近は書いていないですけど、日記をつけていた時期はありますね。思ったことを書いて、それはそれで終わりにします。たまに振り返ることはしますけど。
—— それは社会人になってからですか?
高校でキャプテンになってから始めました。いちばん書いていたのが大学時代です。そういえば社会人になって書いたことないですね。言葉みたいなものは書き記しましたが、でも若干ですよ。日記って辛くなると書きたくなるんで、昔に比べるとぜんぜん辛いことがないです。いまは楽しくてしょうがないです。
◆引退
—— しかし今はもどかしさもあるんですよね?
もちろんありますけど、見えないですね。ラグビーの世界観は、みんなも分からないと思います。これは、フィジカル的な部分で分かることはあっても、その先に何があるかなんて、誰にも分からないですよ。ゴールが分からないから、もどかしいんですよね。自分はどこまで出来るんだろう?って限界が分からないんですよね。限界まで来たら僕は引退しますね。多分、引退ってそういうもんだと思います。
—— 見えないものを追いかけている感じですか?
確かに見えませんね。見えないところにチャレンジして、自分自身が次のステージに上がると思えて、ステップアップしていって、また見えないものを追いかけての繰り返しだと思います。でも未だ先があるって思えると楽しいですよね。無限です!その世界を極めて行きたいですね(笑)。
◆イメージを共有化
—— 社会人で見えたことは沢山ありますね
大学時代よりだいぶ見えてきていますね。
—— ラグビーのプレーはイメージ出来ていますか?
出来ています。そこには、自分一人ではなく周りの方が絡んでくるので、そこが難しいですね。例えば、僕の頭にあるイメージと、他のプレーヤーのイメージは多分違うじゃないですか?それを敬介さん(沢木バックスコーチ)が合わせてくれているんですけど、それだけでは面白くないですよね。敬介さんは、もっと自分が欲しい時にもらって良いって言ってくれますが、それをどう伝えるか...。でもちゃんと、チームのベクトルに合わせないといけないと思っています。まぁそこまで深く考えてはいないんですけどね(笑)。
—— 今年は、どういうところにターゲットを持っていっていますか?
自分のやりたいこというか、欲しいタイミングでもらえるように、コミュニケーションをとらないといけないし、スピードもあるし...。イメージを共有化することを、今年やってみようと思いますね。
—— いままでは自分のことだけでしたが、周りのことも考えないと行けないのですね
そうですね、日和佐は大学時代から知っていて、やりやすいですし分かります。日和佐も自分の良さをわかってくれていると思います。
—— 今シーズンの目標を聞かせてください
今シーズンは、半分以上試合に出ることですね。昨シーズンは1試合しか出られず、1試合しか出られていない選手が、今シーズンからは全試合出られる訳ではないですからね。高望みはしないです。
—— すごい世界観があるので、これを見ているファンがどう感じるかですね
大丈夫です!この世界観が賢二だと思ってくれればまとまります(笑)。
—— 宮本選手って一言でどんな選手ですか?
一言で言うと自由奔放、好奇心旺盛、飽きやすい。
—— 最後に何かメッセージはありますか?
今までラグビーで支えてくれた方には感謝の気持ちで一杯ですし、今まで迷惑かけた方にもテレビで見てもらいたいです。恩返し出来るのはラグビーだけなので、やっぱり自分が楽しんでいる姿を見てもらいたいですね。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:小宅崇)
[写真:長尾亜紀]