2011年6月14日
#243 Doubles19 青木佑輔×西川征克 『自分で100%コントロールする』
『相手をずらすこと』(青木)
—— いま日和佐選手が西川選手を待っているようですが
西川:日和佐は、飯の好みが一緒ですね。「だんだん」というお店が寮の近くにあります。日和佐が日本代表合宿から帰ってきて、食べたいと言っているので、いま日和佐を待たせているところです。
—— どんなお店なのですか?
西川:定食ですかね。和食系です。
—— 青木選手は行きますか?
青木:いまはあまり行かないです。ハタケ(畠山)が1人で行っているらしいですよ。昔、僕も寮に住んでいた時は、よく行きましたね。
西川:最近は「だんだん」に行く選手が増えてきましたよ。
—— 今回の2人の関係を聞かせてください。
青木:あまりないですが...。
西川:去年は一緒のチームでした。
青木:そうそう、ロッカールームが一緒だったしね。でも普通だよね。
西川:普通ですね。
—— 普段のコミュニケーションは無いんですか?
青木:そんなことないですよ。話はそれますが、もっと2人の気まずさを出した方が良いんじゃないですか?
西川:アオさん(青木)の気まずい人は誰ですか?
青木:言えないけど...(横を通りかかる成田選手を見ながら)ナリとか。
(成田):なんでだよ!
青木:気まずいというより好きじゃない(笑)。
(成田):だったらご飯誘うなよ!(笑)
—— 2人の普段は、どちらかというと普通の間柄なんですね
青木:普通ですね。あんまり話し込んだりしないので。
西川:そうですね、普通っていえば普通ですね。
—— 青木選手から見て、西川選手のことをどう見ていますか?
青木:1年目からあんなに激しくプレーして、ランナーとしても素晴らしいですし、凄いなぁと思いますよ。
西川:いやいや、そんなことないですよ。
青木:そう言いながらも「もっと言え!」って思っていると思いますよ(笑)。でも凄いですよ!ボールをもらった時のステップなど、相手をずらすことは、とにかく素晴らしいですね。
—— それは西川選手の得意なプレーですか?
西川:得意といいますか、社会人に入って真っすぐ行っても通用しないので、自然と体が相手を避けていきました。前に出るためには、この方法が良いかもしれませんね。
—— そのプレーは、社会人になってから身につけたのですか?
西川:そうですね。
青木:へぇ~、そうなんだ。
西川:はい!でもそんなこと全然気にしてなかったですね。
青木:ニシ(西川)の真似をしたいと思って、1回練習でやってみたら、うまくいったよ。
西川:マジですか!ありがとうございます!
青木:ニシにもやったことあるよ。
西川:僕1回、アオさんに抜かれたことありますよ。
青木:たぶんその時だね。俺、パッって横に行ったろ?
西川:そうそう、あれは動けなかったです。
—— 西川選手は自分でやっているイメージでいけば良かったのでは?
西川:相手にされるとイメージ出来ないですね。
青木:ニシが凄い勢いで前に突っ込んできたんで、ボールをもらってからパツって横に出て。
西川:横に1個切られて「あっ!」ってなってしまって。
青木:ニシの真似しただけだよ。
西川:あれは凄かったです!
『自分を追い込んで』(西川)
—— 西川選手はサントリーに入る前から、青木選手のこと知っていたかと思いますが、入ってみてどう思いましたか?
西川:怪我と戦いながらだと思いますけど、きっちり自分でリハビリして、シーズンに向けてしっかりベストな状態に持って行くのが凄いと思います。人以上努力しています。
—— 青木選手は、怪我は去年だけですか?それまでは、ずっと出ていましたよね?
青木:そうですね。
西川:へぇ~そうだったんですね。そんな中でもしっかりリハビリもして、自分を追い込んで...ねぇ?
青木:なんで俺に「ねぇ?」なんだよ!
西川:ヤバいです!ヤバいです!(笑)
—— 去年のシーズンを振り返って、自分のこととチームのことはどうでしたか?
青木:やっぱりチームも上り調子ですし、その分雰囲気も良かったんじゃないですか?結局メンバー同士が仲良くしていても、勝利を積み重ねないと雰囲気も悪くなります。周りもチーム作りに力を入れて、勝利も積み重ねたから良かったと思います。
—— 青木選手は、首の怪我からの復帰は、かなり順調に来たと思いますか?
青木:精神的には恐かったんですが、いつも「順調」って言い聞かせていました。周りのチームメイトにも痛くないって言い続けていましたが、正直不安だったんですよ。シーズン始まっても不安だらけでしたが、11月辺りからですかね。府中のグラウンドの中に、狭い「ブレイクダウンピット」があるんですよ。そこでガチガチ体をぶつけていたら、恐怖心は無くなりましたね。
—— 久々に感覚が戻った感じですか?
青木:そうですね。
『自分は波だらけ』(西川)
—— 西川選手の1年目はどうでしたか?
西川:1年目ということで、気持ち的に波がありましたね。良い時はすごく良いんですが、気持ちが沈んでいた時はダメでしたね。自分のペースを掴むところが一番苦労した部分です。チームは上り調子だったんですが、自分は波だらけでしたね。
—— その原因は自分の中では、どう思っていましたか?
西川:新しい環境に慣れるのに大変でしたね。そこが一番の原因です。大学時代はヌルい環境で、時間管理もそんなにしていませんでした。社会人になって、仕事もそうですしラグビーの質も当然変わりました。環境の変化が一番苦しんだところです。
—— 青木選手は1年目から自分のリズムなど、しっかりしていましたね
青木:大学時代からルーティンを作っていました。入社当初から出来ていましたね。
—— 青木選手が一番安定感あったと思いますよ
青木:安定感もあったと思いますけど、徐々にですが、やることは年々変えてきていますね。常に良い感じで試合に向けて準備が出来ています。
西川:安定感かぁ。
—— 西川選手は、青木選手の良いところを見習おうと思ったことはありますか?
西川:ありますね、確かに。間違いなくあるんですけどね...。
青木:1年目は難しいですよ。僕とニシは寮も違いますし、頻繁に寮にも行ってあげられないしね。自分なりのものを見つけていけたら良いですよね。
—— 見つかりましたか?
西川:はい!何となくですが。ペース感覚はだいぶ掴んだ感じです。
青木:さっきも波があったと言っていましたが、ニシは凄く期待されていましたし、言われることが多かったんですよ。それで言われたことを全部受けとめちゃって、気持ちが落ち込んじゃって、見ていても悪循環だと感じました。でも、そこが難しいところですね。怒られた時に、全部受け止めちゃうとパフォーマンスも下がっちゃいますし。受けとめなくなって「もういいよ」ってなると、そこから伸びなくなるし。そこもうまくルーティンにすれば良いと思います。
西川:確かに、去年は最後の方から悪循環でしたね。何もかもが嫌になるくらいでした。
『指導者になりたい』(青木)
—— 今年2年目にそこをどう克服しようと思いますか?
西川:2年目は考えて行動することですかね。何もかも突っ走りすぎると、どっかで崩れていく部分は出てくると思います。自分のスケジュールを管理していくことが、継続していくためには必要なところだと思います。
青木:そうそう。まわりに言われないようにするためには、自分で行動しないとね。
—— 青木選手はプロになったのは、いつからですか?
青木:一昨年です。
—— プロになった動機は何ですか?
青木:もともと教師になりたかったんです。ラグビー選手より、教師になりたい気持ちが強かったんですが、ラグビーを続けようと決めた時に、教師の夢は諦めました。だから大学時代は、教員免許も取りませんでした。でも社員で働き続けていたら、プロになれるチャンスが出てきたので、もう一度教師を目指そうと思いプロに転向しました。
—— では学校に通っているんですか?
青木:はい、通っています。
—— 学校は順調ですか?
青木:順調ですよ。1年目からいっぺんに単位を取ってやろうと思って、授業カリキュラムを詰めまくったんですよ。でも、そう上手くはいかないですよね。プロとしてラグビーをしていても、勉強にも力を入れたくなります。両立は難しいので、10単位ぐらいでもいいから少しずつ取っています。
—— 高校の教師を目指しているんですか?
青木:中高どちらでもいけるので、わからないですね。
—— やはりラグビーを教えたいんですか?
青木:そうですね、指導者になりたいですね。
—— 西川選手から見て、青木選手には指導者としての資質はあると思いますか?
西川:絶対にあると思います。プロになると教える機会が多いですよね?
青木:多いよ。この間も子供たちに教えたんです。素質みたいなものはないと思いますが、教えていると楽しいんですよ。
—— 楽しいと思えることは、教える素質を持ち合わせていると思いますよ
西川:そうですよね、向上心がありますから。
—— 西川選手も、青木選手から教わってみたらどうですか?
西川:是非!教わりたいです!
青木:絶対思っていないですよ(笑)。
『色んなチャレンジ、色んな世界』(西川)
—— 西川選手は、プロを目指していますか?
西川:いまは考えていないですね。社会人でいきたいと思います。
—— 社会人の良さは何ですか?
西川:良さですか?そうですね、プロって非常に厳しい世界だと思うんですよ。怪我すると後もない状態になるので、正直、社員で充分なのかなと思います。安全策ですかね(笑)。
青木:確かに社員の方が安定していますよ。社員はラグビーがダメでも、守られているものがあると思うんです。サントリーってすごく良い企業だと思いますけど、ラグビーだけに集中出来るのは、やっぱりプロだと思います。けどラグビーが終わっても会社に残れるという心のゆとりで、プレーに集中出来る選手もいると思います。本質は自分にプレッシャーをどれだけ与えられるかじゃないですか?
—— プレッシャーは、あまり受けたくないものですよね?
西川:プレッシャーは後々考えると、受けていた方がいいと思いますが、僕のいまの生活にラグビーだけって考えると精神的に耐えられないですよ。仕事があるからラグビーが楽しめるし、逆にラグビーが終われば仕事があるからって考えると、結構楽しかったりするんですよね。
—— 今後もそのような形が良いですか?
西川:はい、自分としては何かに没頭するよりも、色々なことにチャレンジしたり、色々な世界を見てみたいですね。
—— 将来サントリーにいられる安定感があれば、ラグビーだけに集中出来るとも思いますが、その辺りはどうですか?
西川:非常に難しいですね。ラグビーだけでは、精神的に耐えられなくなると思います。仕事の付き合いがあったり、ラグビーも試合が終わった後に、みんなで集まったりしたり、両方ともしんどいこともありますけど、それ以上に楽しいこともあったりするんですよね。
—— 人それぞれタイプが違いますよね
青木:僕はずっとラグビーに携わる仕事がしたくて、教師になりたいという夢もラグビーの指導者になることが大前提ですね。もし社員に残るなら、キヨさん(田中)のようにリクルートしたり、イベントで裏方の仕事をしたりしてみたいですね。マネージャーも裏方なので、やってみたいですね。
西川:人によって全然タイプが違いますね。
『へこんだまま練習に来ないこと』(青木)
—— 今シーズンの目標を聞かせてください
西川:今シーズンは、自分をコントロールすることがいちばんの目標です。昨シーズンは浮き沈みが激しかったので、そこを改善すれば、高い位置で安定したラグビーが出来ると思います。
—— コントロールするためには、どのようなことを行おうと思っていますか?
西川:リズムを作ることです。朝起きて、仕事して、練習して、休日は楽しく遊んで、というサイクルを作ることですかね。そうすれば、いま以上に成長できると思います。同じことをやるにしても、気持ちを50にするのか、100にするのかという感じですね。常に100で行えば自分自身の成長を感じられますし、維持するのは心のコントロールが必要だと思います。
—— それは、先ほど青木選手が話した「ルーティン」ですか?
西川:そうですね、ルーティンですね。
青木:1、2年目ってみんな試行錯誤しながらだと思いますよ。その当時の清宮さん(元監督)によく怒られたりしました。それを坂田さん(チームディレクター)に相談したりして、「全て受け止めてへこんだりするなよ!」とアドバイスもらい、自分の中でも消化していました。聞き流すとは違うんですよね。毎回言われたことに対して、一喜一憂しないようにしていました。僕だって浮き沈みしていましたよ。
—— それは経験とアドバイスで変えられましたか?
青木:そうですね。聞き過ぎず、捨て過ぎない。特に捨て過ぎないことを意識していますね。
—— 2年目を迎える西川選手に、アドバイスはありますか?
青木:いろいろ聞いていて、僕のイメージ的には、言われて沈んで、そしてまた更に言われて沈むというダメメなサイクルがあるんですよね。
西川:確かにあります(笑)。
青木:去年のニシを見ていると、言われたことを100%受けとめて、へこんだまま練習に臨んで、その結果良いパフォーマンスが出せなくなってまた怒られる。いちばん良いのは、周りに言わせないくらいに、自分でコントロールして100%コントロールすることだと思います。もし言われたとしても、練習にその気持ちのままで来ないことですね。
—— アドバイスを受けて西川選手はどう思いましたか?
西川:すごく見てくれているなぁと思います。言われた通りなので、常に100%で持っていけるように頑張ります。
—— 青木選手も工夫していたことがありますか?
青木:僕は3、4年目に日記を書いていました。嫌なことも良かった事も書き記して、1週間を振り返っていました。
西川:むちゃくちゃ良いこと聞きました!僕もその方法を使ったら、心の部分でコントール出来るようになると思います。参考にさせてもらいます!
青木:1つ大切なことは、ネガティブなことを書き過ぎると、どんどん気持ちが落ちていくんですよ。だから良いことも書く必要がありますね。1回反省ばかり書いていたんですけど、これじゃダメだって分かりました。
—— 最後に青木選手の目標は?
青木:今シーズンは、しっかり春からチーム練習をこなして、今まで開幕戦に出たことないので、今シーズンは開幕戦から出場したいと思います。
—— ありがとうございました
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:小宅崇)
[写真:長尾亜紀]