2011年5月13日
#241 小川真也×小田龍司 『やっぱり攻めるって楽しい!面白い!』
『やれることはやっていきたい』(小田)
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—— 東日本大震災について、どう感じて、どういう活動をしていますか?
小田:キャンさん(小川)は実家が東北ですよね。
小川:ハタケ(畠山)や真壁に比べたら被害も小さかったです。ハタケに関しては家が津波で流されたり、真壁は親と連絡がなかなか取れなかった状況でした。僕もなかなか連絡が取れなかったので、1週間くらいは落ち着かなかったですね。今度入ってくる新人で、日体大の後輩がやはり八戸で、同じ青森なんです。そいつもなかなか連絡が取れなかったみたいで、本当にショックが大きかったですね。
—— 地震が起きた時はオフだったんですか?
小田:練習はなかったですね。
小川:まだ自主練も始っていない時でした。
小田:だから各自バラバラで、仕事だったりしました。僕はちょうどお休みをもらっていました。もし仕事に行っていたら、電車が止まって歩いて帰っていたりしたかもしれないですけど、休みだったんで、自宅でずっとニュースを見ていました。なんだか映画の世界のような感じでした。
少し経ってから親からも「大丈夫か?」という電話がありました。親は福岡にいるんですけど、ニュースだけを見ていると、東京も大きな被害があるように感じたのかもしれません。実際は、自宅の物も何も倒れていませんでした。ただ東北地方の津波の被害を見ると、僕たちが何も出来ないことが心苦しいですね。
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—— チームのメンバー同士で連絡は取り合いましたか?
小田:ハタケに連絡しました。親と1回連絡取れたから大丈夫だろうって言っていて、ただ余震が続いていたので、同じ寮の中で一緒にニュースを見たりしていました。
小川:ハタケとか真壁、あと新人の後輩とは連絡を取り合っていて、僕が親と連絡が取れていなかった時に、ハタケが気にして連絡をくれました。本当にハタケに比べたら、僕なんて良い方なんですけど、何て言えばいいのか分からないですけど、辛いですよね。
小田:僕もハタケに「大丈夫?」って声を掛けるんですけど、その後に何て声を掛けていいのか分からなかったんですよ。それにハタケはその次の週に結婚式が控えていたんで、僕らもハタケが親と連絡を取れるのを待つしか出来なかったですね。結局、結婚式は1年延期になってしまいました。
—— サントリー仙台支社の方々とは連絡が取れましたか?
小田:この前、 仙台支社にいる同期が東京に来ていて、一緒に飲んだんですけど、自宅は壊れて、引っ越す人やホテルに住む人もいたみたいです。それに事務所をホテルの一室に移して仕事をしていたみたいですよ。いまは通常通り仕事は再開しているって聞きました。
—— アスリートとして、ラグビーに集中することしか出来ないと思いますが、その辺りはどう感じていますか?
小田:耕太郎さん(田原)や真壁が中心になって、ベンチコートやラグビーグッズを集めて被災地に送ったり、あとは募金活動に参加することですよね。あと慶應大学(小田出身校)もゴールデンウィークに早稲田、明治と試合をして、被災地に義援金を送るみたいです。スポーツをやっている者として、そこは僕らにしか出来ないところなので、やれることはやっていきたいですね。
小川:僕は東北人なんで、何か出来ることがあるならば、いつでも駆けつけたいという思いですし、あとまだ連絡は取っていないですけど、僕の青森の恩師に連絡をして、青森で何かをやるとか、そういう活動をやれればと考えています。僕らの出来ることなんて、微々たるものなんでしょうけど、少しでも被災地の方々の力になれればという気持ちでいっぱいです。
小田:被災地の活動として、いまの段階では、僕らに出来ることはないのかなって思いますけど、避難所などに行って子どもたちと触れ合えるイベントなんかを行うのもいいかなって思いますね。
小川:シーズン前の方がいいと思いますけど、シーズンが始まったとしても、メンバー外の選手であれば、被災地にも行けると思うので、チームとしてサポート出来ればと思います。ただ何がベストかは分からないですね。
『龍司は開幕戦から試合に』(小川)
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—— ここからはいつもと同じダブルスの内容にさせてもらいます。今回の組合せが田中選手と仲村選手の指名ですが、2人にもともと接点はありますか?
2人: 接点ですか?(お互い顔を見合せながら)
小川:長い間、試合の時の「給水」係ですかね。1年目からノンメンバーで過ごした時間が多かったですね。
小田:(笑)。
—— 大学時代は、お互い知っていましたか?
小田: 試合はしていましたが、僕がフルバックで小川さんがプロップ。ポジションが離れているので、意識していませんでしたね。
小川:まったく興味がなかったと思います(笑)。しかも最前列と最後尾のポジションですからね。
—— 普段はチームの中でもなかなか話さない方ですか?
小田:いいえ、寮が一緒なので、話しますよ。
小川:寮も一緒ですし、ロッカーが隣なので、絡みは多いと思います。だよね?
小田:はい(笑)。
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—— サントリーに入社後、後輩の小田選手から見て、先輩の小川選手の印象はどうでした?
小田:黙々と練習をこなしていたイメージが強いですね。リハビリしている姿が印象深いですね。
小川:龍司が入ってきて時は、僕はリハビリ中でした。
小田:リハビリって地道で、練習時間が長いんですよね。 最初にグラウンド来て、最後に帰るんですよ。
—— コミュニケーションは、どうやって取り始めましたか?
小田:1年目はシーズンに入って、サポートでコミュニケーションをとり、自然と話すようになりました。
—— 黙々と練習している先輩を見て、新しい発見がありましたか?
小田:とにかく仕事が真面目ですよね。後輩の僕が、先頭切ってやらなければいけないところをサポートしてくれていました。反省です。
—— 1年遅れて入った後輩を見ての印象は?
小川:リハビリしていたので、最初は絡むことが出来なく、龍司は開幕戦から試合に出ていましたから、正直凄いなぁと思っていました。しかし、時間を重ねると...。なぁ!
小田:そうです(笑)、徐々に一緒にいる時間が多くなりましたね。
『ラグビーってフォワードで成り立っている』(小田)
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小川:僕はあまり話す方じゃないんですよ。
小田:僕もそうなんで!
—— 何か、話すペースがお互い似ていませんか?
小川:お互い、親密に濃い話はしないので...でも普通に絡んでますよ。
小田:そうですよね。
—— それだけポジションが離れていると、あまりお互い気にはしないんですか?
小田:プレーに関しては、お互い口出し出来ない領域ですね。
小川:確かに...ね?
—— 小田選手は過去、小川選手にいちばん近づいたポジションは?
小田:10番(スタンドオフ)です!今の背番号(15番)からだと近づきましたが、プレー中に話すまで発展しなかったです。
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—— それでは小川選手はどこまで近づきましたか?
小川:僕は5番(ロック)です。
小田:えっ!5番ですか?
小川:でも高校の時だからね。
—— 遠くからお互いのポジションの大変さは感じますか?
小田:まぁ、フォワードって激しいポジションなので、練習時間も長いし、凄いなぁと思います。やっぱりラグビーって、フォワードで成り立っているところがありますよね。
小川:龍司に関しては、キックですかね。チームでいちばんと言ってもいいぐらいの成功率です。トライを取った後のコンバージョンで龍司が決めてくれると、やっぱり楽になりますし、どの角度からでも決めてくれる安心感がありますよね。
—— キックを決めると、観客が「ウォ―」ってなりますが、小田選手は逆ですよね?
小田:そうですか?でも昨シーズンは80%位の成功率なんです。でも昨シーズンの方が精度高かったですよ。
—— でも周りから見ると、昨シーズン外している所は5本位しかないんじゃないですか?
小田:う~ん。。。春からトータルで考えると微妙ですが、シーズンインした秋からは...確かに成功してますね。
小川:ほとんど決めている印象しかないよね、龍司の場合は。
小田:数字(成功率)を意識していると、精度も上がりますね。
—— もともと確率は高いですよね?
小田:確かにそうですね。1年目に蹴り方を色々教わりましたから。
—— 素人でも解る「蹴り方」を教えてくれませんか?
小田:僕は、蹴り方が独特なんですよ!見ていても解かると思います。そこの良い部分を変えずに、コーチに指導されたのは、 振り足の落とし方ぐらいですかね。キックは、人それぞれ個性があるので、アドバイスはそんなもんですね。
—— 振り足の落とし方って、もう少し具体的に教えてくれますか?
小田:巻いて蹴らないってことですかね。前に落とすってことです。あとは他のキッカーは、ボールを置いてから何歩下がってなどと、ルーティンみたいなものがあるんですが、僕は感覚でやっている所が独特っていう表現になりますね。
『周りに影響されない』(小川)
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—— 違うポジションの小川選手から見て、小田選手の正確さって何だと思いますか?
小川:何ですかね、周りに影響されないところなんじゃないですか?自分の世界に入り込んでいるし、プレッシャーにも動じませんから(笑)。もちろんキックの時だけですよ!
—— キックのコツって何ですか?
小田:キックって、前日調子が良くても当日の感覚が重要なんですよね。その日の感覚を体に教え込ませるって感じですね。曲がる感覚があれば、それに合わせるし、1本外しても次に調整するってことですかね。
—— 最も緊張したキックは何ですか?
小田:いちばんは、大学4年生時代の日体大戦ですかね。
小川:もちろん、僕はいなかった(卒業後)ですよ。
小田:勝つと思っていた試合で、スコアが同点だったんです。ロスタイムでのペナルティゴールが、ポールから40m以上離れた場所から外したキックですね。そのシーズンは、日体大戦のドローが最終的に影響しましたから。
—— フォワードの小川選手さんは一番緊張するシーンって、やっぱりスクラムですか?
小川:スクラムなんですかね...。
小田:ここいちばんのスクラムって、僕にはわからないですね。
小川:スクラムって押せたらそれで良し!みたいな。う~ん。
小田:バックスから見ていると、フォワードがスクラムからターンオーバーした瞬間は、めちゃくちゃ盛り上がりますよ!
小川:やっぱり、うちはスクラム押してナンボのもんなんで、押せなかった時のショックの方がデカイですね。
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—— しかし、試合全体で押せないことは、あまりないですよね?
小川:全体ですか?まぁ~そうですけど、対戦相手によっては不得意がありますから、なかなか押せないスクラムだったり、停滞したスクラムになる場合もありますね。
—— 不得意を感じさせる要因は、タイミングだったりするんですか?
小川:タイミングもそうですが、距離だったり組み方だったり...。
—— それは実際に組んでみないとわからないですよね?
小川:人によって違うんですよね。同じチームの中で、同じ教わり方をしてもそれぞれ組み方があると思いますので。
—— 苦手が少ない方が、もちろんプレーするには良いですよね?
小川:もちろんです。
—— 苦手意識は、自分に力がつくとなくなりますか?
小川:だと思います。あとは経験値ですね。
小田:結構プロップって年齢が上がってきてからの方が、良いんですよね。聞いているとフォワードなのに、力ではないテクニックなどがあるらしいんですよね。
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—— 新人は大変ですね
小川:やっぱり、僕の時まではOBの長谷川慎さんや中村直人さんだったり、ものすごい経験者がマンツーマンで教えてくれていましたが、今は個々のスキルよりも全体の練習になります。やっぱり一緒にスクラムを組んでいるメンバーとのコミュニケーションを取らないといけませんよね。だから例えばジャンボ(仲村慎祐)はちょっと...あまり話さない方なんで。
小田:そうなんですか?プレーに関してですか?
小川:もちろんプレーに関してだよ。最後の方になって、みんなでジャンボと練習するようになって、アイツも練習後に「ちょっといいですか?」って相談してきてくれるんです。
—— お互い選手同士で教え合いますか?
小川:そうですね、教え合うんですけど、一定のラインまでですね。それがある程度強くなってくると、チーム同士で組む時に評価もあるので。相手が強くないと自分も強く押せないですし、その場合は引っ張っていきますよね。プロップってそういうポジションなんですよね。
小田:チーム内で組むと落とし合いになるって聞いたんですけど。
小川:落とさないね。純粋に押して、押されるかの世界だよね。
—— 最近のサントリーは、落ちることがないですよね?
小田:どうなんですかね?
小川:コーリー(フォワード臨時コーチ)が来てから、だいぶ組み方が変わりましたね。その組み方をしてから落ちなくなりましたね。今の状況で言うと、ジャンボは個人的指導を受けていない分、基礎的なものがまだないのかなぁって。僕らは強制的に指導受けていたので(笑)。まだまだですけどね。
『リハビリの大変さを痛感』(小田)
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—— トップリーグでは準優勝、日本選手権優勝、昨シーズンのチームの雰囲気は違いましたか?
小田:そうですね、春の段階からですね。
小川:本当に春から全く違っていましたね。
—— どの辺が選手として変わりましたか?
小田:まず春の段階から凄く走らされました。それと一緒にチーム間で「ワン・チーム」を重要視して、チームビルドとか多かったです。
—— そういう状況だと小川選手も体重が凄く落ちたりしたんじゃないですか?
小川:僕は春に色々あったので(笑)。それからの体重は落ちたのですが、もともと1年目にガァーと増やしたので。怪我も多かったですし、エディー(GM兼監督)さんにも言われていました。僕自身も体重を落としてみる意識があったので。そのおかげで昨シーズンは大きな怪我もなく、年間通してプレー出来たので良かったです。今ぐらいでちょうどいいのかな?
—— ちなみに、いま何キロですか?
小川:108kg位ですかね?
小田:うぉ~凄い!10kg減かぁ。
小川:でも108kgと言うと「ダメ!」って言われるので。「もう少し増やせ!」って言われてます。110kgを維持しろと言われますが、僕は今の体重くらいがちょうどいいですね。いや、もうちょっと減らしても良いのかな?なんせ最も体重が重かった時よりマイナス10kg強ですからね(笑)。
—— 10kg違うと何か身体の反応が違いますか?
小川:そうですね、動きが楽になりますね。その分、周りからも良くなったと言われますし。パワーも維持出来てますし。
—— 小田選手はどうですか?
小田:体重はあまり増減しませんね。フィットネスは嫌いではないですし、走ることは苦ではないです。しかし昨シーズン大きな怪我をしてしまいました。初めてです。今までは捻挫ぐらいしかしてなかったので、色々あったシーズンでした。タックル行っての怪我じゃなく、されたものですから。自分は怪我をしないと思っていたので、初めてキャンさんの気持ちがわかり、リハビリの大変さを痛感しました。
『蹴らないラグビー』(小田)
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—— 昨シーズン、走ったこと以外に変わったことは?
小田:アタッキング・ラグビーをチームとして掲げていたので、昨シーズンほど蹴らないラグビー人生はなかったですね。僕は蹴ることが多かったので。スキルを磨くためには、体脂肪を落としてスピード強化だったり、アジリティを上げていった1年間でしたね。
小川:やっぱりいちばんは怪我がなかったことが大きいですよね。
小田:フォワードは、たぶんしんどかったと思います。
小川:普段は蹴るところを蹴らないでアタックして、春からやってきたフィットネスが活きましたね。やっぱり攻めるって楽しいですよね!
小田:日本選手権決勝を見ていても、面白かったです!「サントリーは攻めるラグビーしているね」と周りからよく言われます。面白いって!
—— 自分たちに馴染んできた瞬間は、どのあたりですか?
小田:僕らは、サテライトでずっとやってきましたけど。
小川:いちばんはNECに負けて、クボタ戦(サテライト)です。
—— 2人ともクボタ戦は出場しましたか?
小田:僕は、怪我する直前だったので出場しました。
小川:龍司も僕も出てましたね。
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—— その試合(クボタ戦)は、誰が見てもサントリーのターニングポイントだったですよね?
小川:NECは遠征に行っていなかったので、なんとも言えませんが、TVを観ていても「自分らのラグビーじゃないな」って試合中に思ってました。
小田:確かに、試合中にみんなで言ってましたね。「自分らのラグビーを信じよう」って。
小川:昨シーズンBチームが最初の試合だったからかな?
小田:そうでしたっけ?たぶん9月終わり頃でしたよね?
—— 自分たちのスタイルが体感出来た試合だったということですか?
小田:そうですね、全員が全員、信じてやりきらないと今のスタイルにならなかったので。どっかで蹴ったりとかしちゃっていたかもしれませんね。
—— さて、来シーズンはどのような展望がありますか?
小田:昨シーズンは怪我もして、治って自分なりに向上した感覚が自信になったので、もう一回春、いや明日から頑張りたいです。
小川:僕も昨シーズンは、自分なりに納得のいくものでした。来シーズンはメンバーに入ることですかね(笑)。メンバーに入らないと試合にも出られないので、春からアピールしたいですね。それが今のところの目標ですかね(笑)。
—— さて、次の人たちはどうしましょうか?残り4人ですが。
小田:同期同士じゃない方が良いんじゃないですか?
小川:西川は先輩と喋らせた方が面白いんじゃないかなと思いますよ(笑)。殆どタメ語で喋るから(笑)。
—— 最後を考えて、最終的には次の人たちはどうしましょう?
小川:西川とアオ(青木)さん?
小田:そうですね、最後はシノ(篠塚)さんと日和佐が面白いですよね(笑)。
—— 2組決めてもらい、ありがとうございました
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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]