SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2011年3月22日

#235 Doubles17 田中澄憲×仲村慎祐 『目立つプレーに繋がるプレーを1人1人が頑張っている』

いまの新人はみんなタフ(田中)

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—— 菅藤選手と田原耕太郎選手のご指名で、今回の組合せになりましたが、感想をお願いします

仲村:今日、こっそり会社のパソコンでハタケさん(畠山)と賢二(宮本)のダブルスを見ていたんですけど、今まではあまり接点がない人同士でやっていたのに、今回は同じ高校同士の組み合わせになったので、ちょっと意外でした。

田中:この組合せについては、ぜんぜん問題ないです。

—— 普段はよく喋っていますか?

田中:ロッカーが向かい同士なので、喋りますね。基本的にあまり喋ったことがない人はいないですよ。

仲村:どこですれ違っても、キヨさん(田中)から声掛けてくれるんです。

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—— 教育的指導は受けていますか?

仲村:「ロッカーを綺麗にしろ」って言われています(笑)。ただ寮の部屋はめっちゃ綺麗ですよ。

田中:ホンマか?なんで?

仲村:部屋のインテリアにハマってきたんです。

田中:それだけじゃないだろ(笑)?いつでも...っていう。

仲村:イヤイヤイヤ(笑)。

田中:親が一緒にいるわけじゃないし、いつ何があってもいいように綺麗にしているんだと思います。

—— 初めての1人部屋ですか?

仲村:大学の時は4人部屋だったので、初めての1人部屋です。やっとプライベートが持てて、めっちゃ嬉しいです(笑)。

田中:部屋が綺麗なのはめっちゃ意外だわ。

—— 田中選手は部屋が綺麗そうですよね?

田中:どうなんでしょう。めちゃくちゃ清潔好きというわけじゃないですけど、汚くはないと思いますよ。

—— そんな田中選手から見ていて、仲村選手のロッカーはダメですか?

田中:ロッカーは汚いっすよ。

仲村:気をつけます。

—— その他に気になる所はありますか?

田中:頑張っていると思いますよ。大学の時から日本代表で、体も大きくてポテンシャルが凄く高いと思います。ただ社会人になって、フィジカルだけじゃなくメンタルもタフじゃないとやっていくのは難しいので、チームに入ってきた時は大丈夫かなって思ったこともありました。けど、いまの新人はみんなタフですよ。シーズン中は朝グラウンドで練習してから会社へ行って、それを毎日やっているわけですからね。僕には出来ないですよ(笑)。

ちょっとずつ成長していると実感(仲村)

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—— 会社で眠ったりしていないですか?

仲村:会社で眠りかける時はありますけど、ギリギリ大丈夫です(笑)。

—— 学生時代よりも成長したと感じますか?

仲村:夏場で体脂肪率とかが落ちて、体がかなり変わってきて、動けるようにはなったんですけど、それがプレーに結びついていなかったんです。それが最近になって、スクラムやブレイクダウンで、ちょっとずつですけど、成長していると実感しています。

田中:ジャンボ(仲村選手ニックネーム)は変わってきていて、タフになったと思います。タフになったと言うか、新人たちはタフですよ。本当に感心します。

仲村:ありがとうございます。

—— 仲村選手は優しそうな感じがして、人が良すぎるということはないですか?

仲村:それはよく言われます。性格変えろって(笑)。

—— 試合では鬼になったりしないんですか?

仲村:自分ではよく分からないですね。

田中:それはこれから絶対にやっていかなきゃいけないところですね。まだ1年目で、指示されて怖いからやっているという部分があると思うんですよ。その意識が変わって、自分からやるとか、自分をもっと出していくとか出来ると変わってくると思います。それは辻本も同じですね。1年目はそれでいいと思うんですけど、2年目、3年目になったら、自分を出していかなければ生き残っていけないと思いますよ。

—— 2年目以降の選手でも、自分を出せない選手もいますよね?

田中:そういう選手は、そこで終わってしまうので、2年目は凄く大事だと思います。

仲村:頑張ります。性格は高校の時から言われ続けているので。

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—— 気は優しくても、力持ちタイプですか?

仲村:力持ちですけど、発揮できていないですね(笑)。

田中:こんな体が大きくて、ポテンシャルは高いんですけどね。

—— 社会人ラグビーの中で、1年目、2年目、3年目はどの辺が大切なんですか?

田中:1年目、2年目は自分を出していって、3年目になるとチームの中心になってくるので、リーダーシップを出していかなければいけないですよね。後輩が出来て、後輩とのポジション争いもありますけど、ラグビー面や仕事面での教育もしなければいけなくなります。そういうことが出来れば、自分の成長にも繋がるし、ラグビーも絶対変わると思います。

—— 3年目になると、仕事でも後輩が出来るようになるんですか?

田中:普通は後輩がつきますね。3年目になるとコーチャーという立場になるんです。お前もコーチャーがいるだろ?

仲村:キャンさん(小川)です。

田中:そういう立場になるので、仕事でもそうですけど、ラグビーでもそういう立場じゃないといけないと思うんですよ。そういう風にならないと、ずっと良いチームで居続けられないと思うんです。後輩たちがずっと子供だったら、その後輩たちもずっと子供のままですからね。

—— いままでキャプテンの経験は?

仲村:ないんです。ずっと平社員なんです。

田中:タイプ的にはそうなんですけど、小さなリーダーシップというか、チーム全体をまとめるリーダーシップじゃなくて、それぞれがリーダーシップを発揮できるチームになった方が、良いチームになっていくと思います。

素直でちょっと物足りない(田中)

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—— サントリーに入ってみて、チームの印象はどうですか?

仲村:入るまでのイメージは、高校と大学で活躍した有名な選手が多くて、スター選手の塊みたいなイメージがあったんですけど、目立つプレーだけじゃなくて、目立つプレーに繋がるプレーをちゃんと評価してくれるし、1人1人が頑張っているチームだと分かってきました。

田中:凄いな~(笑)。大学の時から日本代表で、スター選手だったもんな。僕は社会人1年目でそんなこと思わなかったな。

仲村:謙遜しすぎっすよ(笑)。

田中:僕は社会人1年目の時は、そんな出来た大人じゃなかったですよ。

—— 逆にいまの若い選手たちが、出来過ぎていると感じるところはありますか?

田中:最近の子たちは素直だと思いますよ。どんどん吸収しますからね。けど優しいなとも思います。

仲村:聞いた話ですけど、キヨさんが新人の時や2、3年目の時、めっちゃ自分を出して殴り合いをしていたって聞いていたんで、その時の人たちは自分ことを出して、自分の思ったことをぜんぶ言っていたと思うんです。けど僕らの代は思ったことをそこまで言えなくて大人しいので、それもどうかなって思い始めているんです。

田中:僕とジャンボは一回り違くて、スポーツ自体の世代も変わってきていると思うんです。僕らの世代は、自分をどんどん出していくような感じで、そのかわり言ったことはやらなきゃいけないとも思っていましたね。

たぶんジャンボの世代は、気づかないようにコミュニケーションを取るというところがあると思うんですよ。ただラグビーはそういうスポーツじゃないから、2年目、3年目になった時には、どんどん自分を出していって、そのかわりに、言うんだからちゃんと責任持ったプレーをして、後輩たちに態度で示せるようになっていけば、もっと良いチームになって行けると思うんですよ。

時代はいろいろ変わりますが、ラグビー自体は変わらないので、そういうラグビーの魅力を、プレーしている僕らが伝えていかなければいけないと思いますね。それにエディーさん(ジョーンズ/GM兼監督)が練習中、疲れた時とかに下を向いたり、膝に手を突いたりしている選手に、ボディランゲージってよく言うんですけど、そういう状況って相手に伝わってしまいますよね。そういう状況になった時に、僕らの代の選手からじゃなくて、後輩たちから声が出てくるようなチームになっていかなければいけないと思います。

仲村:勇気出します。

田中:お前がもし疲れていて、膝に手をついている状況で、ヘッズアップとかボディランゲージとか言われへんやろ?もし言うとなったら、疲れているということを絶対に態度に見せへんやろ?そういうことだと思うんですよ。

いま隆道(佐々木)やタケ(竹本)の世代が声出したりしていますけど、あいつらだってもう中堅なんで、若い世代がそういうことが当たり前になってくれば、もっともっとレベルアップ出来ると思いますよ。いまの若い世代には良い選手が多いんですけど、凄く素直で、逆にちょっと物足りないかなって感じますね。

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100年続こうが今の流れで成長してほしい(田中)

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—— 2年目からはこうしていこうという思いはありますか?

仲村:試合に出たいですね。まだ今シーズンは1試合だけなんですけど、その試合でパフォーマンスが発揮できなくて、それ以降試合に出ていないんですよ。ただポジティブに捉えて、1年目で1試合チャンスをもらって試合に出て、そこでダメだった部分がいまは改善されているんだから、絶対に大丈夫と思って練習していて、次に試合に出た時はしっかりとチャンスを掴みたいと思います。

—— 怪我とかは大丈夫ですか?

仲村:ぜんぜん大丈夫です。怪我しにくくなってきていると思います。それはみんなに言えることだと思いますよ。このまま怪我せずに練習を続けたいです。

—— 田中選手がチームを見ていて、チームがこういってくれたらいいなと思うことはありますか?

田中:いま本当に良いチーム状態で、選手1人1人の中身が変わって、その影響でチームに凄く大きな変化が出たんだと思います。あとは結果を出すだけなので、この良い流れをずっと続けて、このチームが何年続くか分からないですけど、100年続こうが今の流れで成長していってほしいです。だから若い世代が次の世代に引き継いでいってほしいです。

—— いちばん変わったところはどこですか?

田中:チーム自体がタフになったことと、1人1人がチームを意識していることですね。前までのチームは、優勝もしたし常に上位にいる強いチームでしたけど、1人1人がチームを意識するというよりは、個人がどうするかだったんです。そこがいちばん変わったと思いますよ。

—— タフになったというのはどういうところですか?

田中:練習内容が凄くタフで、合宿の時は3部練をやったり、若い世代は毎日朝練をやったりしていて、最初は「なんでやらなあかんねん」っていう気持ちになると思うんですよ。それに慣れてきて、当たり前の状況になっていますからね。

仲村:辛いは辛いすけど(笑)。

田中:辛いけどね。それをどう捉えるかだと思うんです。「やらされているからやる」のと「やるんだったら自分のプラスになるようにやろう」って思ってやるのでは、自分に返ってくるものが違ってくると思うんですよ。そういう意識でやれるかどうかが、ジャンボが試合に出る近道だと思いますね。試合に出たいという気持ちが本当に強ければ、絶対に何かを変えようとしますよ。

「何が足りないのか」「なんで試合に出られないのか」って考えるはずなんですよ。そこで変えられれば試合に出られるようになるわけですよ。ようは自分のマネジメントが出来るかどうかだと思います。そこを勉強していかなければいけないと思います。

仲村:その通りだと思います。足りないところは分かっているんですけど、いっぱいあり過ぎて...

田中:ホンマか(笑)?

仲村:ほぼ足りないです(笑)。

田中:それはネガティブすぎますよね。逆に自分の強みは?

仲村:プレーで言ったら、フィジカルや近場の強さですね。ラックでボール持ったら、絶対にゲインするとか、そういうところが強みなんですけど、その前にプロップとしてのスクラムが課題ですね。徐々に成長していて、スクラムで勝つことも出来ているので、少しずつ自信をつけてきています。プロップとして、今いちばん足りないところはスクラムです。

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◆自分が考えていることを平気で言えるように(仲村)

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—— 大人しいイメージが2年、3年とついてしまうと、その殻を破るのが大変ですよね

田中:そうなんですよ。試合に出るか出ないかって、信頼関係だと思うんですよ。変にマイナスのイメージがついてしまうと、その信頼関係を勝ち取るのが凄く難しくなるんですよ。人間って、性格とか根本的に変わらないんですけど、ラグビーにその性格を出す必要はないんですよ。

まず何のためにラグビーをやっているかを考えたら、勝ちたいとか試合に出たいとか、そういう思いがあるはずなんですよ。試合に出たいんだったら、自分の本質を変えるんじゃなくて、いままでやってきたこと変えなきゃいけないんですよ。

僕だって性格だけでラグビーをやっていたら、試合に出られなかったと思いますよ。やっぱりターニングポイントがあって、そこでガラッと変わったことで試合にも出られるようになったんですよ。

僕は勝気な性格なので、「なぜ自分を試合に出さないんだ」って思っていたんです。ただそこで「なんで出られないんだ」というように考えられなかったんですよ。そこで当時、監督だった土田さん(現強化本部長)に言われたことが、「洋司(永友/現キヤノンイーグルスヘッドコーチ)は信頼があるから試合に出ているんだ。それだけだ」って言われたんですよ。

そこで「じゃあ、その信頼関係を勝ち取るしかない」って思って、そこから洋司さんがどういうプレーをしているか、なぜ洋司さんは信頼されているのかを見るようになったんです。練習には100%の力で望んでいたんですけど、選手間のコミュニケーションだったり、フォワードとのコミュニケーションの取り方について、素直になって勉強しましたね。そこからは試合に出られるようになりました。

—— 試合に出たいという思いが、そこを乗り切らせたんですか?

田中:ずっと同じ状況でやっていたら、何のためにラグビーをやっているのか分からないので、試合に出て勝ちたいという思いでラグビーをやっているんだったら、自分を変えなきゃいけないですよね。

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—— それは1年目ですか?

田中:いやいや、3年目、4年目くらいでしたよ。プレー自体もそこで変わったと思います。そこで受け入れたということも、成長したからだと思いますけどね。人間は成長しないとダメってことですよ。僕なんかヤバかったですよ。こいつらの方が優等生ですからね。

—— 優等生の殻を破るのも大変ですよね

田中:そうですね。どんどん新しい自分を出していってほしいですね。

—— じゃあ、最後に一言ずつお願いします

仲村:今日はホンマに勉強になりました(笑)。

田中:来年に向けて、何か宣言しろよ。

仲村:まずは勇気出して、自分から声出して、人に言えるようになりたいです。

田中:勇気なんかいらんわ。

仲村:自分の考えていることを平気で言えるようになりたいです。それがまず第一歩ですね。

田中:そのためには、そういうプレーをしなければいけないだろ?

仲村:自分で見せないといけないですよね。

田中:「試合に出ます」って言えよ。

仲村:あ、試合に出ます。

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—— 声が大きい方じゃないですよね?

仲村:声が小さいって言われます。会社でも声が小さいって言われていて、電話を取る声も小さいって言われるんです。

田中:自信がないように聞こえるもん。

仲村:そうっすね~。あ、また声が小さくなってましたね(笑)。大きい声出します。

田中:挨拶から変えていけよ。クラブハウス来たら、大きい声で「こんちは~」って言えよ。

仲村:クラブハウスの玄関で、一人で「こんちは~っす」って言います。

—— 次の人たちはどうしましょうか?

田中:もうバックスはほとんどやっていますよね...。あ、龍司(小田)やっていないですね。

仲村:じゃあ、小田さんと誰にしましょう?

田中:龍司だったら、普段あまり誰とも喋ってないだろ?

仲村:それはないっすよ(笑)。

田中:キャンは?キャンと龍司って喋るの?

仲村:あまり喋っているところ見たことないですね。どうしましょう?

田中:俺の顔見んなよ。そういうところから変えていけよ。

仲村:そうっすね。じゃあ、僕が面白そうって思うので、キャンさんと小田さんで。

田中:いや~、引退前に12歳も下の高校(報徳学園高校)の後輩と対談が出来て良かったですよ。

—— ありがとうございました

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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