SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2011年1月18日

#227 Doubles12 辻本雄起×ピーター・ヒューワット 『白いラインを超えた瞬間に違う人になる』

◆これがピーターかぁ(辻本)

スピリッツ画像

—— 初めてヒューワット選手を見た時にどう思いましたか?

辻本:高校の時とか海外ラグビーを良く見ていたんです。マニアに近いくらい見ていました。それでいちばん最初にびっくりしたのが、ロッカーに「ピーター・ヒューワット」って名前があって、「うっそー!」って思いました。ワラターズでプレーしていた時も見ていましたし、ロンドン・アイリッシュでプレーしていたのも知っていたので、そういう人と一緒にプレーできることに驚きました。

—— 本人を見てどう感じました?

辻本:これが「ピーター・ヒューワット」かぁって(笑)。タカさん(松平貴子/通訳)に手伝ってもらって、チームバーベキューの時に話しかけました。

ヒューワット:辻とはサントリーの中でいちばん最初に話しました。

—— 偶然で、凄い組合せの対談ですね

ヒューワット:それがあったから、この対談になったのかと思っていました。ロンドン・アイリッシュでのプレーが終わって、オーストラリアに帰る途中にパートナーのアリーシャと一緒に日本に来て、サントリーの様子を見ました。そしたらバーベキューをやっていて、そこで辻に素晴らしい英語で話しかけられました。

辻本:タカさんに「こういうことを言いたいんですけど」って言って、手伝ってもらいながら話しかけました。

—— 積極的なんですね

辻本:憧れの選手だったので、その時は積極的でした。

ヒューワット:それからはアリーシャも「辻君は元気?」って、いつも聞いてきます。

スピリッツ画像 スピリッツ画像

◆継続して一生懸命やること(ヒューワット)

スピリッツ画像

—— 辻本選手のプレーを見てどう感じました?

ヒューワット:才能があると感じました。1年目で大変な環境の中、上達していると感じています。

辻:ありがとうございます。

ヒューワット:シーズン前の東芝戦に出場して、そこからどんどん上達していますね。

—— いま辻本選手がいちばん気をつけるべきことは何ですか?

ヒューワット:一生懸命やらないということはしてはいけないです。私は若い頃、メンバーに選ばれなかったことがあり、スーパー14のデビューが遅くなったことがありました。若い選手にとっては継続して、一生懸命やることが大事だと思います。それをやることによって、必ずチャンスは来ます。夢や目標を信じているのであれば、誰が何と言おうとも信じてやり続けるべきです。落ち込んだりすることもあると思いますが、頭の中でその目標を目指してやり続けて下さい。

辻本:その通りだと思います。いま自分なりに上手くいっていないと感じているので、そういう時こそ信じてやり続けるべきなんだと改めて思いました。

ヒューワット:メンバーに選ばれなかった時は、その時のコーチを見返そうと思って、更に頑張ってトレーニングしました。

スピリッツ画像

—— 若い時からそういう熱い思いを持ってやっていたんですか?

ヒューワット:ラグビーをクリケットをやっていて、どちらかのスポーツ選手になりたかったので、その思いをずっと持ち続けて頑張っていました。

—— 辻本選手はラグビー以外にも得意なスポーツはありましたか?

辻本:僕は逆にラグビーしかやってこなかったので、違うスポーツもやりながらラグビーをやってこれば良かったと思っています。それが間違いとは思いませんが、中学の時にラグビーに役立つかと思って、陸上をやったんです。けど中途半端になってしまったので、今になってもっといろんなスポーツをやれば良かったと思っています。

スピリッツ画像

◆ヒューイはいつも笑顔が優しい(辻本)

スピリッツ画像

—— いま一緒にプレーしていてどうですか?

辻本:ヒューイ(ピーター・ヒューワット)はいつも笑顔が優しくて、良い人だなって思います。ただプレーの時は表情が変わって、いつものヒューイとは違うんです。アグレッシブなプレーになりますし、キックも上手で、こういう人が世界の一流なんだと感じました。

ヒューワット:ありがとうございます。(日本語で)

—— ヒューワット選手は慌てたりするんですか?

ヒューワット:いまは無くなりましたが、若い頃はありましたね。若い頃はどうしても忍耐力がないので、すぐに結果を求めていました。昔を振り返ってみると、プロのラグビー選手になるために努力をしてきたので、それは良かったかなと思います。簡単になれてしまっていたら、いまの自分はないと思います。ラグビー選手として生活をさせてもらっている環境に凄く感謝しています。

—— 辻本選手も普段は大人しそうですけど、試合では切り替えてやっているんですか?

辻本:そこをもって改善しろって、エディーさん(ジョーンズ/GM兼監督)に言われているんです(笑)。グラウンドに入ったら、もっと気持ちを出せ、人が変わるようなプレーをしろって言われています。そこはもっと意識してやっていかなければいけないと思っています。

—— スイッチを入れ替えるコツはありますか?

ヒューワット:そこがいちばん難しいですね。大らかな人にとって、いきなり変えることは難しいと思います。やっぱりフォワードの人は大らかな人が多いと思いますが、グラウンドに入ったら切り替えが必要です。バックスとしては、フォワードほど激しくならなくても大丈夫なので、その切り替えはそこまで難しいものではありません。フォワードはコンタクトが多く、激しくなければいけないですし、競争もしなければいけません。ジョージ・スミス(FL/ブランビーズ)もグラウンドの外では凄く大らかなんです。それが白いラインを超えた瞬間に違う人になるんです。

—— ジョージ・グレーガン選手もそうですよね

ヒューワット:やはり経験が必要です。すぐにはできるようにならないかと思いますが、小さいステップを踏みながら頑張ってもらいたいです。

スピリッツ画像 スピリッツ画像

◆サントリーの練習は試合よりも激しい(ヒューワット)

辻本:僕から質問ですけど、世界で戦ってきて日本のラグビーって独特と感じますか?

ヒューワット:凄く独特ですね。サントリーのプレースタイルも独特です。キックも最少限で、ペースも凄く速いです。日本のラグビーは展開が速く、外国人選手に対しても激しく当たってくるので、驚きがありました。サントリーの練習は試合よりも激しい時があります。凄く良い環境でラグビーができています。辻が成長するにも良い環境だと思いますね。良い環境、良いトレーニングプログラムの中で成長できます。私はバックスなので、アドバイスも難しいかと思いますが、もし手伝ってほしいことがあれば、トッド(クレバー)やウェイン(ファンニエルデン)に聞けば、よく教えてくれると思います。それとラグビーについて分からないことがあれば、お手伝いしますよ。スクラムはアドバイスできませんが(笑)。

—— 辻本選手がこうなっていってほしいという思いはありますか?

スピリッツ画像

ヒューワット:まだ6カ月くらいしか見ていませんが、凄く上達していると感じています。初めは自分の場所を見つけるのが難しいと思いますが、ベテラン選手に臆することなく自分のポジションを取っていってほしいです。トレーニングでも、他のチームと対戦する時でも、プレッシャーを感じることなく堂々とプレーしてほしいです。ベテラン選手として若い選手を見ると、プレッシャーを受けているか受けていないかということが分かります。私が若い頃の話ですが、ジョージ・スミスと対戦した時も堂々とプレーしました。それをやることでリスペクトされるようになります。けど辻は上達していると思います。

辻本:Thank you very much(笑)。

—— 他に聞きたいことはありますか?

辻本:ピーターは先輩からアドバイスされたことや、苦手なベテラン選手がいたことはあるんですか?

ヒューワット:ネイサン・グレイ(元九州電力キューデンボルテクス)が凄く良くしてくれました。初めてシドニーのマンリークラブというチームで一緒にプレーし、サポートしてくれたり、良い方向へ指示してくれた人です。間違いがあれば指摘してくれたりもしてくれました。サントリーでは逆にそういう存在になりたいですね。

辻本:ピーターが尊敬している人がネイサン・グレイなんですか?

ヒューワット:今でも仲良くしていますし、連絡も取り合っています。

—— 次の2人はどうしましょうか?

辻本:ジョージとタケさん(竹本隼太郎)でどうですか?

ヒューワット:良いと思います。タケも色々と勉強中だと思いますし、ジョージは色んな事が分かっていますからね。

スピリッツ画像 スピリッツ画像

(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

一覧へ