2010年12月21日
#218 特別編 『フッカーには3つの見せ場がある』-1
ポジション別インタビュー第3弾は「フッカー」。最前列中央でスクラムを組み、スクラムハーフからのボールを足でコントロール、ラインアウトではボールを投げ、フィールドプレーにも参加するフッカーとは、さてどんな人たちなのか?
【Q1】足も使いボールも投げるポジション、もともと器用ですか?
【Q2】フッカーになったきっかけは?
【Q3】両隣のプロップとはどんな人たちですか?
【Q4】フッキングのときに気をつけていることは?
【Q5】スローインのときに気をつけていることは?
【Q6】スクラム最前列中央は責任重大ですね?
【Q7】腕力は鍛えていますか?
【Q8】最も頭を使うプレーは?
【Q9】あなたにとってセットプレーとは?
【Q10】リーダーシップがある方ですか?
【Q11】フッカーの楽しさ、ラグビーの面白さは?
【Q12】自分の性格は?
まず1回目は山岡選手、伊勢田選手、そして2回目に青木選手、金井選手のインタビューをお届します。
『1人目◇山岡 俊』
◆山岡 俊(やまおか たかし/1976年4月24日/175cm・97kg)
【Q1】足も使いボールも投げるポジション、もともと器用ですか?
まぁ、1列目の中では器用な方じゃないですかね。
【Q2】フッカーになったきっかけは?
高校から本格的にフッカーをやったんですけど、もともとはNo.8をやりたかったんですよ。監督に「No.8やりたいです」って言ったんですけど、「フッカーね」って返されました。それからフッカーですね。監督の中でNo.8はもっと大きいヤツが良かったんだと思います。あとバスケットをやっていたので、投げるのも上手いんじゃないかと思ったんじゃないですかね。
【Q3】両隣のプロップとはどんな人たちですか?
いろんな人と組んできましたけど、1番は「俺が俺が」じゃないですけど、表に出てくるタイプが多いですね。逆に3番は我慢強くないとダメだと思うんです。これはスクラムだけの話ですけど、1番は右側しか当たらない訳で、左側がいない状況で相手の3番を苦しめるんです。3番は1番と2番がいて、両方から苦しめられるわけです。極端な言い方ですけどね。
【Q4】フッキングのときに気をつけていることは?
足が短いので(笑)。他に当たらず、No.8まで直接いくようにしています。違う場合もありますけど、足の間に入ってきたボールを9番までダイレクトで通せるように、タイミングに気をつけていますね。9番に対しては、ボールを入れるタイミングをこっちからサインを出しています。9番のタイミングでボールを入れられたら足が出せないので、どのチームもフッカーがサインを出していると思いますよ。
【Q5】スローインのときに気をつけていることは?
真っすぐ投げることです。持論ですけど、スローインってセンスです。もしかしたら、バスケットで培われた部分もあるかもしれないですね。野球のピッチャーと同じとは言わないですけど、フォームであったりリリースポイントって一定で、その中で微調整をするんです。それが基本で、その中で相手のプレッシャーがあって、相手が前にいるとか、ずれて飛んでいるというところを見て、速いボールであったり、浮かせたボールであったり、変化をつけて投げます。そこの部分に関してはセンスになりますね。
【Q6】スクラム最前列中央は責任重大ですね?
スクラムに関しては舵を取らなければいけないですからね。要は良い方が悪いかもしれないですけど、デカいエンジンが後ろにあって、それを上手く使えないといけないんです。スクラムがひとつになっていないと、自分が良くないと思う時もあります。3番は前に出ろ、だから1番は少し待て、という指示を出したりしますし、それをするためには後ろが来てくれなければいけないので、瞬時に後ろに伝えます。それで組みながらも、自分で肩使ったり、少し寄せたりもしています。だからサントリーでは、スクラムのリーダーはフッカーになって、責任は大きいですね。
【Q7】腕力は鍛えていますか?
あるに超したことはないです。そのためにというわけではないですが、みんな鍛えています。
【Q8】最も頭を使うプレーは?
セットプレーがいちばん大きいと思います。ラインアウトもいろいろなバリエーションに合わせてやらなければいけないですけどね。スクラムで安定してしっかり出すとか、良い方が悪いかもしれないですけど、ここはグチャグチャでも良いからプレッシャーをかけて球出しを狂わせるとか、その時の状況を判断してやっています。経験も大きいと思いますし、その状況になったら皆がイメージ出来ていると思うので、それをひとつにまとめるよう舵を取ります。そこはもう専門職ですから。
【Q9】あなたにとってセットプレーとは?
良い意味でリズムが作れて、逆に悪い意味ではリズムを崩しますよね。安定させることが第一条件です。例えば、ラインアウトからのプレーもラインアウトが取れてからのプレーを練習でもしますが、そこで取らなければいけない訳ですよ。スクラムも取ってボールを出すという、きっかけとなる最初のプレーがセットプレーですね。そこを安定させないと、次はないという思いでやっています。試合前に青木とかに、相手チームがサントリーはスクラムが強いというイメージを持っている時に、そこで押されれば相手に勢いを与えるから、まずそこで叩こうぜって話すんです。分かりやすいのがスクラムで、少しでも自信になる芽を潰せって話しますね。
【Q10】リーダーシップがある方ですか?
自分ではそう思わないですけど、そうしなきゃいけないポジションだと思います。
【Q11】フッカーの楽しさ、ラグビーの面白さは?
専門職ってことですね。他のポジションが悪いということではないですけど、1つしかないポジションで、より専門性であったり、よりリーダーシップを取らなければいけなかったり、スクラムでも一番前で、皆の気持ちを背負いながら組むポジションですから、面白いですね。それが面白くないとラグビーもやってないですよ。
【Q12】自分の性格は?
一言では言えないですけど、気を配らなきゃいけないポジションで、もともとそういう性格なのか分からないですけど、よく周りを見ていますね。皆で何かをやる時も、バランスを見ながらやったりします。
『2人目◇伊勢田 彬人』
◆伊勢田 彬人(いせだ あきと/1982年10月1日/184cm・105kg)
【Q1】足も使いボールも投げるポジション、もともと器用ですか?
器用?まぁ、そうですね。もう高校生からやっていますからね。
【Q2】フッカーになったきっかけは?
もともとバスケットとか、野球とか、狙うスポーツが好きで、高校のラグビー部に入部して、いきなりスクリューで投げることが出来たんですよ。それからフッカーをやっています。イメージが大切で、頭の中で3Dで考えることが出来ると良いんです。ただ単に狙うポイントだけを見て投げているんじゃなくて、一回頭の中でイメージしてから投げています。けど、相手がいることですから、そのタイミングが全て合った時は上手くいきます。あとリフトをする人の動きも見えるので、「あいつ遅れてんな」とか見えると、そこは3Dとかじゃなくて微調整ですね(笑)。遅らせたりして投げます。
【Q2】両隣のプロップとはどんな人たちですか?
スクラム組む人(笑)。まぁ、なくてはならない人ですね。スクラムは8人で組むんですけど、最終的に最前列3人の信頼関係がないとスクラムは組めないと思います。スクラムはちょっとでも動いたり、下がったりすると、全然違うものになってしまうんですよ。そこの意志の疎通が大切ですね。色んな人と組まないと分からないことで、皆それぞれ特徴があります。
【Q4】フッキングのときに気をつけていることは?
ハーフがボールを入れる時のタイミングですね。ボールをかくときは足が1本なくなるので、その時に相手が押してくるんですよ。プロップに対しては、フッキングする時はタイトに組んでくれと言っています。そこで崩されないのはコミュニケーションがしっかりと出来ているからだと思います。山さん(山岡)とか青さん(青木)のスクラムワークは随一だと思いますよ。
【Q5】スローインのときに気をつけていることは?
さっき言ったことの他に、フォロースルーを綺麗にと心掛けています。それは僕が綺麗だからです(笑)。僕のフォロースルーが綺麗な時は、必ず上手くいっています。ズレたり、不安があるとフォロースルーどころじゃなくなって、綺麗ではないですね。ただスローインには自信があります。
【Q6】スクラム最前列中央は責任重大ですね?
重大ですね。前は僕からズコーンで当たりにいくスクラムだったんですけど、今は後ろからの力を感じて当たりにいくので、難しくなりました。僕は前のズゴーンって当たりにいくスクラムが好きなんですけど、今はスクラムが落ちなくなったんですよ。近めで膝を下げて、全部の力で押しているので、皆のコントロールも上手くなっています。悪く言えば先制攻撃が出来なくなりましたけど、絶対に押されることはないんですよ。
【Q7】腕力は鍛えていますか?
腕力は必要ないんです。コツがあって、肩を合わせた後にバインドするので、そこがしっかり出来れば腕力は必要ないですね。
【Q8】最も頭を使うプレーは?
フィールドですね。スクラムやラインアウトは長年積み重ねてきたものがあるんですけど、フィールドはもっと感覚的な部分だと思います。山さんや青さんはフィールドが得意だと思うんですよ。僕はフィールドが難しいですね。
【Q9】あなたにとってセットプレーとは?
攻撃の起点になるプレーなので、絶対に負けちゃいけないですね。スクラムで言えば、一歩も引いてはいけない状況で、かつコントロールして良い球をいかにバックスに出せるかに尽きます。まぁ、人生ということでしょうか(笑)。けど、いちばん大切だと思いますよ。悪い球が出ちゃったら攻められなくなりますからね。
【Q10】リーダーシップがある方ですか?
時たま。役割があって、スクラムでは僕がリーダーで、ラインアウトだったら、Bチームで言えば太一(田原)がリーダーですからね。そこに助言をしたりしますが、色々な役割があるので、そこはその人に任せています。
【Q11】フッカーの楽しさ、ラグビーの面白さは?
ボールに触れることです。ラインアウトでも、スクラムでも必ず触れますし、フィールドでもそういう役割がありますからね。言ってみれば、大きな見せ場が3つあるということですから。それがラグビーの楽しさでもありますね。
【Q12】自分の性格は?
僕の性格は明るいと言われますけど、最近は「伏兵のように虎視眈眈と狙っている人間」って表現しています。6年間やってますけど、あまり試合に出ていないので、狙っていかないといけないですよね。だからラグビーに関しては、そういう性格になりますね。前までは色んな不安があったんですけど、それをクリアしていって、今は落ち着いた感じにはなりました。だから今年は自分のことをコントロール出来ているんですよ。落ち込むことも前よりも少なくなりました。
(つづく)
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]