SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2010年12月14日

#217 Doubles SPECIAL 成田秀悦×長友泰憲 『アジア大会7人制ラグビー金メダル』

◆「弱い相手なんていなかった」(成田)

—— 人生の中で金メダルを獲ることはなかなか出来ない経験ですが、金メダルを獲得していかがですか?

長友:人生の中で獲れるか分からない金メダルを獲ることが出来て、最高です!

成田:作ってる、この文章(笑)。どこでも言ってるじゃん。もう2、3回聞いてます。

長友:いや、最高です!は今まで言ってないです。

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—— 勝った瞬間はどんな気持ちでした?

成田:やっとプレッシャーから解放されたという感じでした。あのメンバーが集まって獲れないというのはね。

—— ディフェンディング・チャンピオンでもありましたよね

成田:前回のメンバーが1人しかいないので、そんな感じはしなかったですね。けど15人制で香港にあんな大差で勝ったり、アジアの各国にすごい大差で勝つじゃないですか。だから、どうしてもアジア各国が相手だと、ああいうイメージになってしまいますよね。

—— 7人制の方が、アジア各国のレベルの差はないということですか?

成田:差がないというか、試合時間7分という状況で、日本だってセブンスだとニュージーランドに勝つ可能性があるわけですよ。

長友:ちょっと手を抜いたらやられますからね。

—— 最初の試合からフルスロットルという感じでしたか?

成田:そうですね。弱い相手なんていなかったですね。

—— インドとの対戦はどうした?

成田:インドは苦戦しましたね。インドは中国に61対0で負けているんですよ。だからそういうイメージを持ってしまうじゃないですか。

長友:61対0だったの?

成田:そうそう。それなのに、日本と対戦したら前半終わって5対5でしたからね。セブンスって、本当に何があるか分からないんですよ(笑)。

長友:7分だけですし、何があるか分からないですね。

—— 試合が終わるとグッタリという感じですか?

長友:ポジションによって違いますけど、フォワードはキツイと思います。端にいるのはまだ楽ですけど、真ん中にいる人はどっちにも行かなきゃいけないですからね。

成田:セブンスって、前に6人いて後ろに1人だけいて、15人制で言えばフルバックみたいなポジションです。僕は前のポジションをやる時もありますけど、本職は後ろの1枚なんです。なので、前の人が頑張ってくれたら、声を出すだけで仕事がない感じになります。だからディフェンスに関しては、疲れない試合は本当に疲れないですね。

—— 逆に最後1枚で守るのも大変ですよね?

成田:15人制と同じスペースで、1対1やるわけですから大変です。怖いですね。

◆「まったく別スポーツ」(成田)

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—— 同じ7分間を15人でやった時と、感覚的にどのくらい違いがありますか?

長友:微妙なところですけど、セブンスは1人1人の役割が大きいですからね。

—— 何かセブンスのコツは掴みましたか?

長友:僕は10日間しか参加しなかったので、多少は15人制と変わらない感覚でやりました。

成田:僕はまったく別スポーツだと思います。僕は久しぶりに15人制の練習をして、使うテクニックも違えば、使う筋肉も違うので、改めてまったく違うスポーツだと感じましたね。セブンスだと抜くにしても、タイミングをずらして走ることもありますし、後ろに走ることも、真横に走ることもありますし、止まることもあります。15人制だとある程度スピードを持って、プレッシャーを掛けて抜くんですけど、セブンスはそれだけじゃないんです。僕がセブンスで好きな抜き方は、止まってディフェンスが来るのを待つんです。そしてディフェンスが痺れを切らして来たとところをかわしていくんです。

—— 成田選手は15人制でも横に走る時があるので、合っているんじゃないですか?

成田:そうなってますか?

長友:そうなってる。バーって横に走って、バーンってやられるじゃん。

成田:やられちゃってんのかよ(笑)。

—— セブンスで得たコツは15人制にフィードバックは出来ますか?

長友:ディフェンスは出来ますね。タックルしてすぐに起き上がるということは15人制でも使います。セブンスではそれがすごく大切になってくるんですよ。

—— セブンスだとターンオーバーが多いわけですね?

長友:多いです。だから1人サボるとすぐにターンオーバーされますね。

—— セブンスでは何試合やりましたか?

成田:アジア大会では7試合です。それと僕はマレーシア、シンガポールとやっています。ただシンガポールは怪我人が多すぎて途中棄権でしたけど、全部合わせて20試合くらいやりましたね。

—— マレーシア、シンガポールでの経験は活きましたか?

成田:こうやったらヤラれるというのが分かったので、活きましたね。香港とはマレーシアとシンガポールでもやったんですけど、同じ負け方をしたんです。マレーシアでは僕はシンビンしちゃったんです。それは故意ではなかったんですけど、トライした人を蹴ったように見えてしまったんです。それでシンビンで退場している間に点を獲られて負けました。

長友:故意かな~(笑)。

◆「とっさに、ココ行けるかな」(長友)

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成田:シンガポールでも、1人シンビンで退場している間にトライを獲られて負けました。どちらも3点差くらいで負けているんです。2試合やって香港の攻め方も分かりましたし、反則をしたら負けるという思いがありましたね。けど決勝で日本がシンビンで退場者を出してしまって、その瞬間同じ光景になったと思いました。

長友:あれは痛かったです。ラスト5、6分でしたからね。

—— けど、その後に逆転しましたよね?

成田:コイツ(長友)がトライしました。

長友:たまたまでしょうね。

成田:ずっとボールをキープして、最後は力で持っていった感じでしたね。

長友:とっさに、ココ行けるかなって思って行きました。

—— 6人でボールがキープ出来た要因は何ですか?

長友:その時は21対21で、ボールがキープ出来れば負けないので、遠くにボールを出すとそこに人数を掛けられてやられるから近場で行こうという空気になったんですね。そこからずっとキープしました。

成田:ずっとキープして日本もバテたんですけど、香港もバテて、最後に長友が振り切ったんです。

長友:バテバテでしたよ。

—— チームワークはどうでした?

長友:チームワークは良かったですね。

成田:僕が年齢的に真ん中くらいでした。なので、別に上下関係もなかったですね。まずココ(成田と長友)が上下関係ないんで(笑)。

長友:ないんですよね~。

成田:お前はもうちょっと気を遣えよ(笑)。

—— 長友選手は初めてのセブンスだったんですか?

長友:2回目です。1回目はサントリーに入ってシーズンが終わった3月でした。

—— そのキャリアは活きていましたか?

長友:活きているでしょう!

成田:毎回、忘れるんですよ(笑)。

◆「キツイ鬼ごっこ」(成田)

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—— 成田選手がいちばん最初にセブンスやったのはいつですか?

成田:僕も長友と同じで、1年目のシーズンが終わった時でした。僕はそれからちょくちょく呼ばれているので、セブンス代表の選手の人の中でも長い方だと思いますね。

—— 今後はまた同じメンバーで集まることはあるんですか?

成田:オリンピックに向けて強化したら、世代交代もあると思いますね。

長友:学生を強化していった方が良いと思います。

—— 今回の経験で、若い世代の人たちに伝えたいことはありますか?

成田:オリンピック競技にもなって、今回の金メダルで「オリンピックでも金メダルを獲りたい」と思ってくれる子どもたちが出てくれたら嬉しいですね。その子たちが大きくなって、あの試合見てましたと言われたいです。

—— セブンスの魅力は何ですか?

成田:スピード感ですね。

長友:個人技力ですね。

成田:楽しいですよ。鬼ごっこやっている感じですし。

長友:好き勝手出来ますからね。

成田:けど、キツイ鬼ごっこです(笑)。

—— キツイ時にどうやって頑張るんですか?

長友:気力です。

成田:キツイからと言って休んだら、周りに迷惑がかかりますからね。

—— ラグビーの技術よりも持久力が必要になってくるわけですか?

長友:その方が大事だと思います。あとそこそこスピードがあった方が良いですね。

—— 2人にとっては初めての金メダルですか?

成田&長友:初です。

成田:何か賞をもらうことはありますけど、全然重みが違いますね。

長友:表彰台も初めてでした。

成田:表彰台に上がった時に、1人1人名前が呼ばれるんですけど、ちょうど長友の後が僕で、その並びで首にメダルをかけられたんです。

長友:しかも、あんな大きい大会で。

◆「エディーさんからおめでとう」(長友)

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—— 日本に帰ってきて周りの反応はどうでした?

成田:すごかったですね。けど残念なことに、僕の携帯のメモリーが全部消えてしまって、誰から電話が来たのか分からないんです。あと、帰りの飛行機も長友と隣だったんですよ。

長友:マジッ!?

成田:マジってなんだよ(笑)。長友と隣の席で、一緒に携帯の電源入れたら、めっちゃメールが入っていました。

長友:嬉しかったですね。

—— 宮崎では盛り上がっていないですか?

長友:盛り上がっていることでしょう!まぁ、親とかからは新聞に載ってたよって連絡がきましたね。

成田:早くメダルを実家に送ってあげたいんですけど、なかなかまだ送れないですね。会社でも見せましたし。

—— チームには見せましたか?

成田:チームにはいちばん最初に見せました。

長友:エディーさんからは、一応「おめでとう」って言われました。

—— あまり盛り上がっていなかったですか?

長友:盛り上がっていたと思いますよ。

成田:これから落ち着いていくと思います。

長友:もう落ち着くでしょう。

成田:もう落ち切っているかもしれません(笑)。

◆「(五輪に)行けるのであれば行きたい」(長友)

—— 今回、7試合やって、プレッシャーの中、優勝して、それぞれトライも獲りましたが、どんなアジア大会でしたか?

成田:なかなか経験出来ないことですし、僕は1ヶ月くらい合流していたので、いろいろ辛い思いもしました。海外の環境で、本当に体もキツかったですね。いま思うと良い思い出ですけど、本当にハードでしたから、これがこれからプラスになれば、最高な大会と思えますね。

—— オリンピックには出たいですか?

成田:オリンピックの時は32歳なんで、何とも言えないですけど...

長友:俺は出たいね。

成田:言いきっちゃいます?

長友:行けるのであれば行きたい。

成田:チャンスがあれば出たいですね~(笑)。

—— 長友選手にとってはどうでした?

長友:他競技の選手もたくさんいましたし、選手村に初めて入りましたし、新しい発見じゃないですけど、いろいろなことが経験出来た大会でしたね。

—— 具体的にはどこが良かったですか?

長友:選手村が良かったですね~。めっちゃ広いし、選手しかいないし、そういうとこ(笑)。

成田:訳わかんねぇよ(笑)。

長友:プールもありましたし、ウエイト場も。

成田:もう選手村だけ行けよ(笑)。

長友:完全に自分の種目だけに集中できる環境がありましたね。更に大きい大会で、お客さんもたくさん入っていて、アジア大会だなぁって感じでした。

—— 日本人の応援はどうでした?

長友:少なかったですね。アウェーを体験できたことも良かったです。あと決勝戦もあまり体験したことがなかったので、それが経験できて良かったですね。

—— 決勝戦で勝ちきることが出来たということは、15人制でも活きますか?

長友:気持ちを作るとか、そういう部分で活きると思います。

—— 勝てた要因は何ですか?

成田:僕らのテーマが「絆」だったんですけど、トライした後に必ず胸の前でハートマークを作っていたんです。みんなで決めて、トライした後にさりげなくやっていました。家族であったり、大切な人であったり、チームであったり、全ての人に感謝しようという意味を込めてやっていました。このグラウンドに立っていることに対して、感謝の気持ちを忘れないということですね。そういうことを決めたことで、気持ち的に盛り上がりました。けど、決勝での長友のトライの後は、疲れ過ぎてやらなかったですけどね。

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長友:疲れ過ぎて無理だったもん(笑)。

—— 応援してくれた皆さんにメッセージをお願いします

成田:行く前のプレッシャーが凄かったんです。それで皆さんに応援してもらって、金メダルも獲れたので、本当に有難かったですし、嬉しかったです。

長友:日本国民の皆さま、応援して頂きありがとうございます!結果、金獲れましたー!!ありがとうございます。

成田:スケールが違うね(笑)

(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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