2010年11月29日
#215 西川 征克 『ラグビーも仕事も100%』
◆ガチガチに緊張
—— ここ何試合か先発出場していますね
第2節でリザーブに入って、第4節からまた出させてもらっています。
—— 2節で初めて出場した時はどうでしたか?
後半の残り10分位でしたが、負けている状況だったので、「ここでか~」というのが正直な気持ちで、めちゃくちゃ緊張していました。
—— 入ってからはどうでしたか?
入ってからは、とにかく出来ることを思いっ切りやるだけだと思っていたので、緊張しながらも、やることはやれたと思います。
—— オフェンスとディフェンスではどっちが多かったですか?
その時は、最後のホーンがなる少し前に僕がノックオンしてしまい、そこから5分以上リコーの攻撃をゴール前で受ける形になってしまいました。これは自分のせいだと思っていたので、逆転される可能性もあったので、とにかく死に物狂いでタックルしてました。
—— 秩父宮ラグビー場でのプレーは、今回が初めてですか?
大学時代にやっています。観客との距離が近いなと思いました。早稲田大学と東海大学、2試合やったことがありますが、まるで処刑にあってるような試合でした(笑)。社会人になってプレーした今回は、ほかの競技場と変わらない感じで、とくに気にしないでプレーができました。
—— 3節はメンバーに入れず、4節で再びリザーブで出場しましたね
後半20分位だと思うんですが、この時は勝ってる状況と、1戦やったということもあって、落ち着いてアタックも出来ていたと思います。
—— 1戦目に比べて、自分でもしっかり出来た印象ですか?
そうですね。1戦目に比べて落ち着いて出来ました。
—— 6節で初スタメンですね
コカ・コーラ戦でした。ここでまたガチガチに緊張してしまいました(笑)。リザーブとは全然違うんですね。試合が始まって、他のそういうことを考えないようになってから、緊張が解けました。
—— どれくらいかかりましたか?
1回ボールを触ったら試合に入っていけました。でも、初めてのラインアウトとか、場面場面でまた少し緊張してという感じでした。
—— その試合の自分の出来はどうでしたか?
反省が残りました。大学も関西でやっていて、関東に比べたら少しレベルが低かったので、1つのプレーが終わったら少し休んで次のプレーに行く感じで良かったんですが、やっぱり社会人ではそんなのでは通用しなくて、1つのプレーが終わったらすぐ次のポジションに移動しなければいけないということをすごく感じました。やはり練習ではなく、試合に出ないと感じられないところがあって、そういうところが勉強になりました。
—— 大学まで関西ですか?出身地は?
大阪の天王寺ということころです。大学(関西学院大学)は、兵庫県の西宮というところだったんですが、実家から通っていました。
—— 社会人になって初めて東京に出てきたということですか?
そうですね。
◆緊張が解けて
—— オフの時間でもラグビーのことを考えたりしますか?
オフは極力考えないようにしています。仕事は仕事、ラグビーはラグビー、オフはオフです。
—— 7節はもう慣れた感覚でしたか?
そうですね。始めの試合の入りから、自分で緊張が解けているのが分かるくらい、落ち着いて入れました。
—— もう怖いものなしですね
ですかね(笑)?もちろん経験を積んだということは大きいことなので、それをプラスに考えていきたいです。
—— やっていて大学との違いをいちばん感じるところは?
さっきも言いましたが、大学では1つ1つプレーの間に、休んでる間があっても出来るんですが、社会人では、そういう間にすぐ考えて判断して、次に行かなきゃいけないというところですね。
—— パワーやスピードの部分ではどうですか?
速い奴や当たりが強い奴は関西にもいたので、その面は思っていたより上手く出来ていると思います。もちろん、大きい相手に対して真正面からぶつかっても勝てませんから、ステップだったり、練習でやったことを上手く使って、少しでも前に出られるようにやっています。
—— 今年チームではフィットネスに重点を置いて取り組んできましたが、自分で変わったという実感はありますか?
まだ全然ついていけていないです。この前の試合も6分して足がつったりしてしまったので、まだその辺は追いついていかないといけないですね。
—— ここまでで、自分のベストマッチ、ベストプレーは?
分からないです。まだ1つ1つ勉強しながら積み重ねている段階なので、良くなっている途中だと思います。
—— 西川選手のプレーを見ていると、大学とトップリーグの違いをそこまで感じているようには見えないですが
そんなことないですよ。やっぱりコンタクトの部分では強さを感じることもありますし、ブレイクダウンは関西はそんなにレベルが高くなかったので、大学の頃はスムーズに球を出せていたんですが、社会人ではそこで苦労しています。ビデオでチェックしたり、先輩に聞いたりして、自分の立ち位置から全て考えてやっています。サントリーに入って来た頃は、ビデオなんて見たことがなかったので、エディーさんに笑われました(笑)。
—— 目標としている選手はいますか?
特にいないですね。手本となる選手はたくさんいますが、やはり他の人に負けたくないという気持ちもあるので、目標となる人はいないですね。
◆相撲をやっていた
—— フランカーになったのはいつからですか?
もうずっとです。中学からラグビーを始めた時に、勝手に決まっていました。そこから何もなく、いままでやっている感じです。
—— ラグビーを始めたきっかけは?
中学の仲の良かった友達が小学校からスクールでラグビーをやっていて、誘われて一緒に入りました。
—— 小学校の頃は何をしていたんですか?
幼稚園から相撲をやっていました。
—— 相撲の魅力にラグビーが勝ったんですか?
そうですね。相撲をやっている人に怒られるかもしれませんが、太りたくなかったんで、ラグビーを選びました(笑)。
—— ラグビーを始めて面白いなと思ったところはどこですか?
これということよりは、“友達みんなでやっている”ということが楽しかったです。
—— 印象に残る思い出は?
そういうのが全然ないんですよね。いろいろなめぐり合わせもあって、高校も東海大仰星というラグビーの強い高校に行かせてもらって、そこから上手いこと関西学院大学に行けて、サントリーにも入れたという感じです。
—— 高校はどうやって選んだんですか?
最初は公立の高校か近大付属に行こうと思ってました。東海大仰星は全国レベルの高校で、そのレベルに自分は達していないと思っていました。そうしたら、顧問の先生が「東海大仰星どうや?」と言ってきて、僕は「そんなレベルでは無理です」と言ったんですが、「無理かどうかを聞いてるんじゃない。おれは出来ると思うから聞いてるんだ」と言ってくれて、それでやってみようという気持ちになって、やることにしました。
—— 大学は?
こんなこと言っていいのか分からないですが、大学でラグビーをやって寮に入って、ラグビー漬けの生活をするよりは、友達と遊んだり飲んだりしたかったんで、関西にいたいという気持ちがありました。そうしたら、たまたま関学が一部に上がって、タイミングが良かったんで、関学に行きました。
—— 高校や大学ではずっと試合に出ていたんですか?
高校は2年からで、大学は1年から出させてもらいました。
—— キャプテンなどはやりましたか?
何もしていません。ずっとヒラでした(笑)。あまり引っ張っていくタイプではなく、マイペースでのんびりしたタイプです。
◆1試合1試合が大事
—— 相撲をやったきっかけは?
親です。体が大きかったわけでもなかったです。お父さんが大学まで相撲をやっていたので、それでやらせたんだと思います。
—— 兄弟はいますか?
弟がいます。弟も相撲からラグビーに移って、いま関学でやっています。
—— 弟さんのポジションは?
センターをやっていたんですが、今はフランカーをやっています。今3年生です。
—— 弟とラグビーの話はしますか?
全くしないですね。
—— ラグビーの中でいちばん印象に残っていることは?
なんでしょうね。ないですね。やっぱり価値としては1試合1試合が大事なので、これが一番ということはないですね。
しいて言えば、大学1年の時の選手権で、関西を5位で通過して、関東1位の早稲田とやって格の違いを見せつけられて、すごい悔しい思いをしたのは覚えています。
—— その時の早稲田にいたメンバーは?
ハタケさん(畠山)がいましたね。たぶんハタケさんは覚えてないと思います。
—— 大学で一緒にやっていたメンバーはトップリーグにいますか?
トップリーグは僕だけで、トップイーストに2人います。ちょうど僕が入る年に一部に上がったチームなんで、ほとんどはみんな普通に就職活動をして就職しています。
—— そういう中でサントリーから誘いを受けて嬉しかったですか?
そうですね、嬉しかったです。たまたま坂田さん(チームディレクター)の大学の同期が、僕が3年生の時の監督で、いろいろ話をしてくれたみたいです。
◆新宿、1人では行けません
—— 日常の中でラグビーが占める割合は?
今はかなり高いですね。大学の時はラグビー、遊び、勉強を均等にやっている感じでしたが、今はラグビーも仕事も100%です。
—— プライベートはどうやって過ごしていますか?
こっちに来てまだ半年なんで、同期と遊んだりしています。新宿とかに行くと、道がたくさんあって怖いです。1人ではいけません。
—— 同期は仲が良いんですか?
めちゃめちゃ仲良いです。B型が4人いて、みんな自己中なので大変ですが、上手くやっています。
—— 自分の性格は?
負けず嫌いがいちばん大きい要素ですね。ですが、勉強に関しては、負けても仕方ないと思えるんですね(笑)。コンタクトとかでも、やられたらやり返すという気持ちは大きいですね。
—— いま改めて感じるラグビーの魅力は?
やはり多くの人が関わっていて、いろんな人から学べる環境が充実しているので、やっていて楽しいです。そういうことを試合で出来た時は凄く嬉しいですね。例えばまっすぐしかあたれなかったのが、ステップを入れて当たれるようになったり、それで抜けられるようになったりすることです。
—— 今年の目標は?
いちばんはチームに貢献することです。試合に出て、チームが勝つということがいちばんです。まだ1年目なので、先のことよりは、今この時を一生懸命やるだけです。
—— ファンに見て欲しいプレーは?
前に出る意識、倒れそうになりながらもまだゲインするというプレーですね。今年は怪我人の兼ね合いもあって、たまたまチャンスを頂いて試合に出ているので、これからみんな怪我が治って戻ってきますし、これからが本当の戦いです。頑張ります。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)
[写真:長尾亜紀]