2010年11月 1日
#210 Doubles07 池谷陽輔×平浩二 『輪』
◆「平ファミリーは異質な存在」(池谷)
—— 今回のこの2人の組み合わせになってどう思いましたか?
池谷:どうなんだろう。
平:やっぱりみんなふだん絡んでなさそうな組み合わせを選んでるんじゃないですか?
池谷:イメージはそうなんでしょうね。僕のイメージでは、こいつはいつも曽我部とか成田とか、長友とかと一緒にいるイメージがありますね。若いメンバーの中でも、平ファミリーは異質な集団です(笑)。
—— 平ファミリーは自然と集まったんですか?
平:自然とですね。
池谷:同じ匂いのする奴らがね。
—— よく一緒にご飯に行ったりするんですか?
平:曽我部とは練習の後にお茶をしにいったりします。ヤス(長友)は練習が終わってからも個人練習が長いので、あまり行きません。
池谷:なぜかそのメンバーは異質なんですよね。あとお前たちの同期もどうかなと思うよ。
—— 平選手の同期は誰ですか?
平:太一(田原)、順二(高谷)、イセ(伊勢田)です。あとは俊平(伊藤/OB)と仰(林/OB)がいました。
池谷:本当に個性的な、良い世代ですよ。
—— 池谷選手は?
池谷:僕は尾崎(章)です。
平:ガヤさんは、いつもザワさん(小野澤宏時)と自転車の話ばっかりしてます。
池谷:そうですね。僕がお茶しに行くのはザワさんと尾崎くらいですね。
◆「『ガヤサンは強い』という人いっぱい」(平)
—— 改めて、この組み合わせになってどうですか?
池谷:なんの問題もないです。良いバランスだと思います。
—— 池谷選手から見て平選手の存在はどうですか?
池谷:センターの、チームの軸ですからね。どちらかというと、よく喋るタイプではないので、プレーでチームを引っ張っていくタイプですよね。それが良いところだと思います。
平:もう6年目なので、そういう役割を自覚して、やっていきたいです。
池谷:おれは7年も8年もずっとそうやって来たよ。何にも喋らない(笑)。
—— 最近喋るようになってきましたね
池谷:自分が上の立場だということを、やっと自覚して来て話すようになりました。上の方が数えるだけになってきましたからね。自然とそういう行動が出るようになりました。責任感とか、感じるようになってきました。
—— 平選手から見て池谷選手は?
平:やっぱりスクラムのスペシャリストですよね。僕はスクラムのことはぜんぜん分からないですけど、「ガヤさんは強い」という人が周りにいっぱいいます。普通相手チームだったりすると、自分のプライドもあって、「あの人強い」とか言わないんですけど、「ガヤさんは本当に強い」という人が結構います。
池谷:全然聞いたことない(笑)。
—— 2人で同時期に代表に行ったことはありますか?
池谷:ありますよ。アジアネーションズとパシフィックネーションズに一緒に行きました。
—— 印象に残ることは?
平:マリカー(マリオカートというゲーム)です。
池谷:そうだね。やったね。
平:移動でサモアに行ったり、ニュージランドに行ったりする間で、任天堂DSを持ってる選手が8人くらいいて、それで皆でひたすら通信対戦をしていました。ホテルに着いてもやってましたね。
池谷:それでみんな仲良くなった部分も大きいですね。
—— サントリーでやる人はいないんですか?
池谷:シノ(篠塚公史)ですね。ぜんぜん勝てないんですよ(笑)。全然成長しないです。
平:ジャパンに行くと、合宿ではなく、試合のための遠征なので、練習も1日3時間くらいですし、ミーティングだけの日とかもあって、結構時間があるんです。
池谷:DVDを見るやつもいれば、本を読むやつもいます。
—— ジャパンで一緒に遠征したメンバーが、リーグ戦で対戦する時はどういう感じなんですか?
池谷:僕は高校が広島で、大学で東京に出てきたので、広島出身の選手手がなかなかいません。アフター・マッチ・ファンクションとかでは、みんな同郷の選手とかで集まって話したりするんですが、ぼくはぜんぜん喋る人がいないです。社会人になって、やっと同じ大学がいるというくらいで、高校までの知り合いはほとんどいません。だからそういう時に、ジャパンでの知り合いがいると嬉しいです。
—— 法政の同期は?
池谷:NECの浅野良太と、近鉄の佐藤幹夫です。他はいないですね。
◆「平はまっすぐ走って相手をふっ飛ばしてトライ」(池谷)
—— ふだんは2人で緒にお茶に行ったりはしないんですね
池谷:ないですね。ポジションもぜんぜん違いますから、ラグビーの話もほとんどしないですね。パスをすることもほとんどないですよ。
—— 同じラガーマンでも、違う人種という感じですか?
池谷:そうですね。フォワードとバックスで大きく分けても違いますが、その中でもプロップとセンターでぜんぜん違いますね。
—— センターはどういう人種ですか?
池谷:センターはバックスの中でもいちばん体を張りますよね。中でもこいつの当たる強さは凄いですよね。走り方を見ていても、強そうという感じはしないんですけど、抜けたり当たり勝ったりしますよね。本当に強い奴はそういう感じなんだろうなと思います。平がサントリーに入ってきて、最初はウイングをやっていたんですが、ウイングっていうのは普通、走って外に逃げてトライするんですが、平はまっすぐ走ってそのまま相手をふっ飛ばしてトライしました。それが印象に残ってます。みんな大笑いしてました。
—— 今はそういうプレーは?
平:まっすぐはあまりないですね。ちょっとずらして次のオプションを考えるようにしています。当時は慣れないウイングでしたからね。ザワさんとか、純さん(北條純一)のプレーを見て、真似してやろうと思ってたんですが、全然うまくきれいに走れなくて、これじゃぁダメだから自分のプレーをしようと思って、まっすぐ突っ込んでました(笑)。
池谷:あのプレーがなかったら、ずっとウイングだったかもしれないしね。
—— 池谷選手は?
平:ガヤさんは、ボールを持つ場面は少ないですけど、見えないところでの仕事、例えば僕がボールキャリアの場面でのフォローだったり、セットプレーだったり、見えない仕事をたくさんしています。
池谷:分かってくれてたんだ(笑)。
平:それがあって、僕らが自由にできるんで、感謝しています。お互いの信頼関係ですよね。
池谷:信頼を勝ち取らないと、試合には出られないですよ。信頼できる奴が試合に出ていますよ。
◆「ちょっと見れば...ちょっとコミュニケーションをとれば...」(平)
—— 平選手が入ってくる前の3年間のことで、伝えてきたいことはありますか?
池谷:ベテランと呼ばれる人種になってくると、ただ自分だけが頑張っていればいいというのではなく、チーム内での役割が求められてくるので、下の世代に声をかけるとか、上に立っていることを自覚して、発言したりすることが大事かなと思います。
—— ベテランとはだいたい30歳くらいから意識しますか?
池谷:そうですね。オーバー30ですね。昔は慎さん(長谷川)がいて、直人さん(中村)がいて、プロップはずっと若手だったんですけど、今は違いますね。
—— 池谷選手のいちばん印象に残っているプレーは?
平:僕が2年目の時の東芝とのマイクロソフトカップの決勝で、マクラウドにトライされたシーンなんですが、ディフェンスに僕とガヤさんがいて、僕はガヤさんだということが分かってなくて、味方がいるということしか分かってなくて、任せてしまったんですね。それで僕が前に出てしまって、僕と池谷さんの間をスコーンと抜かれてしまいました。その時に、ちょっと見ればよかった、ちょっとコミュニケーションをとれば良かったというのがありました。悔しい思いがありました。
—— それからプレーが変わりました?
平:そうですね。意識するようになりました。
—— 他に印象に残ることは?
池谷:平はもうラグビー界の中での立場も上がってきていますから、求められるプレーも高いですし、出来て当たり前という部分がありますよね。ワールドカップでのトライシーンが放送の中に入りきらなくてカットされていたり、わりと損するというか、そういう星の下に生まれてきたんですよね。
平:そういう何かを持っているんですよね。
池谷:あのシーンが映っていれば、そうとう盛り上がったでしょうね。
◆「あのプレーがまた見たい」(池谷)
—— 今年のチームはどうですか?
池谷:3節が終わって負けが先行して、実際、一度は「あれ?」という雰囲気になりましたが、ミーティングで「Believe」という言葉が出てきて、信じてやりきるということを再確認して、みんなでやって行こうということでまたまとまりました。
—— 9年間良い時期も悪い時期もあったと思いますが、今は大事な時期ですね?
池谷:そうですね。早いうちに立て直して、リズムに乗っていかないといけないですね。
—— バックスの方はどうですか?
平:もっとボールにたくさん触りたいですね。13番以降みんなそう思ってると思います。相手は嫌だと思いますよ。ザワさん、剛、長友。この3人に走られたら嫌でしょう。そのためにもやってきたことを信じてやるしかないですね。
—— サントリーで誇りに思うクラブカルチャーは?
池谷:「輪」ですね。うちの親父も人を家に呼ぶのが好きだったので、チームメイトをよく家に呼んでましたが、平ファミリーにしてもそうですが、チームの輪ですね。後のことは、今年からのカルチャーをいま築いてる部分もあるので、それを誇れるようにしていくのがこれからの仕事かなと思います。
平:強くないといけないことですね、常に。僕も強いからサントリーに行きたいと思って入社しましたから。
—— そのための役割は?
平:やはり6年目ですし、思ったこと、気づいたことを言うようにしています。いろいろ考えると難しくなっちゃうので、思ったことを言うようにしています。
—— 今シーズンお互いに期待することは?
池谷:良いプレーヤーだということは分かってますから、自信もってどんどん縦に行って欲しいですね。あのプレーがまた見たいです。
平:これだけの体があるので、スクラムはもちろんのこと、ボール持ったら少しでもゲインして突き進んでいくプレーを見せて欲しいですね。
—— 次回のダブルスの指名をお願いします
池谷:どうしよっか、誰が良いかな。
平: ザワさん太一で行きましょうか?
池谷:いいねいいね。それ間違いない。
平:じゃぁそれで行きましょう。
—— ありがとうございました
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)
[写真:長尾亜紀]