2010年10月25日
#209 Doubles06 山岡俊×曽我部佳憲 『ラグビーのカルチャー、クラブのカルチャー、仕事のカルチャー』
◆「ファンタジスタだなぁ」(山岡)
—— 元選手のセレクトで今回の2名になりましたが、感想は?
山岡:曽我部に聞いてみてください(笑)。
曽我部:「よっしゃ~」という感じです。結構いろいろな組み合わせがありますが、いろいろ想像してた中では良かったと思います。基本的に僕はあまり話さない人はいないので問題ないんですが、例えばライアンと佐合みたいな組み合わせはちょっときつかったと思います。山さんで良かったです。
—— 一緒に飲みに行ったりはしないんですか?
山岡:夏合宿の時ですね。
曽我部:めちゃめちゃ楽しかったんですよ。今日も山さんから「今日は敬語なしな」って言ってくれるから、めちゃくちゃ楽ですね。夏合宿の時の飲みは、いつも飲みに行くメンバーが一緒にならないように、くじ引きで飲みに行くグループを決めてみんなで行きました。そうしたら僕のグループだけ、僕と耕太郎さん以外みんなフロントローになってしまいました。その時は、「どんな会になるんだろう?」と心配だったんですが、その時も山さんが「今日は敬語なしな」と言ってくれて、楽しく飲みました。
山岡:めちゃくちゃ楽しかったですね。そのせいもあって、ちょっと飲み過ぎてしまいました。そういえば、ジャパンのフランス遠征でホテルの近くのバーに飲みに行った時に、まだ学生だった曽我部と矢富(勇毅/ヤマハ)と前田(航平/ヤマハ)と会ったのが最初に飲んだ時だね。
曽我部:その時は僕から見たら明治の大先輩ですし、大学生の僕らが近づいちゃいけないみたいな感じでした。結構僕らが自分たちで壁を作ってしまってました。緊張しましたね。たぶん山さんとは一言二言しか喋れなかったと思います。
—— イメージはどうでしたか?
山岡:直接はそんなに知らなかったですが、テレビでプレーとかは見ていたので、「ファンタジスタだなぁ」と思っていましたよ。「どうやったらそんなパスできんの?」っていうプレーが多かったですよね。
—— ジャパンで一緒に試合は出たんですか?
曽我部:たぶん一緒には出てないですね。僕にとっては過去最悪の試合でしたけどね(笑)。ちょっと調子に乗ってたところだったんですが、しっかり鼻を折られました。
山岡:当時はフランス人の監督だったんですが、言うことはキツく言う人で、結構みんなボロカスに言われてましたね。「そんなんじゃダメだ」って。
曽我部:当時は監督に「くそ~」とか「ほんまムカつく~」とか思ってましたけど、今思えば良い経験をさせてもらったなと思います。
山岡:外国人監督の難しいところでもあると思いますが、当時の監督はJK(ジョン・カーワン/現日本代表ヘッドーコーチ)とは違うタイプで、あまりコミュニケーションの取り方が、日本人と合わない部分があったんだと思います。多分当時の選手としては、噛み砕かれて言われるんじゃなく、はっきりと言われちゃうので、大きいことを言われてるんですが、イメージが湧かなかったりした選手もいたと思います。特にバックスでゲームを作るメンバーですから、ニュアンスの部分とかは余計に難しかったでしょうね。
曽我部:そうですね、遠征に怒られに行っただけという感じでしたもん。
—— 早稲田に帰って考え方とかが変わりましたか?
曽我部:そうですね。悔しさで、見返してやろうと思って頑張ってました。でも良い経験でしたよ。
◆「これが社会人なんだなぁ」(曽我部)
山岡:高校は(花園)優勝?
曽我部:はい(啓光学園)。
山岡:大学は?
曽我部:自分が出て優勝したのは3年の時です。
—— 曽我部選手から見て、山岡選手は?
曽我部:どうしても、入ってすぐの頃は先輩ってだいたい怖く見えるんですけど、サントリーの人はそういう人が少なくて、しっかり仕事もしていて、ラグビーのことも仕事のことも、ひと言ひと言に重みがあるなと感じます。山さんもそうですが、今の若手と山さんたちの世代では、何か違う部分がありますね。仕事の面でもラグビーの面でも、「あ、これが社会人なんだな」といういい先輩です。
山岡:やはり僕らは勝った時期も、負け続けた時期も経験して今やってるので、経験の差があるのは確かでしょうね。また仕事を17時半までやってそれから練習していた時期も経験していますから、今の曽我部を含めた若手とは違うというのは分かりますね。昔はよく先輩に飲みにつれていかれてという機会も多かったですからね。経験はだいぶ違いますよね。
—— 最近は昔に比べてラグビーの比率が大きいですか?
山岡:そうですね。仕事は午前中に集中してやって、午後からラグビーをやらせてもらっているので、他のチームではもっとラグビーだけに集中しているところもありますけど、サントリーとしていま最大限にラグビーに集中させていただける環境を与えてもらってると思います。今シーズンも凄く厳しいトレーニングもしているので、環境に関しては申し分ないですね。
仕事ではみんなそれぞれ得意先を抱えてますし、他の社員の方に比べたらボリュームは少ないかもしれませんが、そこに会社としてのノルマがあって、それぞれ考えてやってますから、ボリュームが少なくても練習が終わってから行かなきゃいけない時もありますし、朝行ってからそのまま練習に来たりしてますね。
曽我部:この前の9月の祝日なんて、みんな仕事でしたからね。ウイスキーの新商品が出たんで、スーパーの担当とかは朝から店行って、夜帰ってきてという感じでした。僕は7店舗抱えてますが、20日に納品で21日から発売だったんで、20日のうちに売り場を作る作業がありました。山さんは練習終わってからとか行くんですか?
山岡:それは部署によるからね。酒屋さんと飲食店の担当があるので、店が開くのが17時とかなので、昼間には行けないんだよね。だからどうしても夜に時間を作らないといけない場合も出てくるね。
—— ラグビー部の中で仕事のアドバイスをしたりもするんですか?
山岡:それも部署によるので、同じような仕事をしてるやつにはしますね。今は曽我部と成田と賢二(宮本)と伊勢田とかにはしますね。けど最近はみんな自分の売り場の写真を撮ってきて、それを見てアドバイスし合ったりしてるので、しっかりやってるなって思っていて、僕の出番も少なくなってきました。
◆「いつもと一緒、いつも通り」(山岡)
—— ここのところずっと試合に出ている山岡選手を見ていてどうですか?
曽我部:去年からずっと調子よさそうですよね?
山岡:おれあまり調子良いって言わないんだよね。「いつもと一緒、いつも通り」という状態をずっと続けていきたいんだよね。もちろん良いか悪いかで言ったら良いんでしょうけれど、それをずっと維持していきたいですね。
—— 「いつも通り」のレベルが高いんですね
曽我部:そうなんですよね。波がないですよね。それと僕これずっと言いたかったんですけど、みんなフォワードってガツガツ行くプレーが多いんですけど、山さんのプレーはサッとかわして行くようなプレーも多いじゃないですか。ターンしてホップしたり、フォワードの中でもガツガツ7割テクニック3割みたいなプレーをするので、良いなと思います。
例えばポイント周辺で、みんなフォワードがガーって入っていくところを、山さんはちょっと後ろにいて、そこからボール持って次のフォワードに行かせて、そこからスイスイ行くようなプレーですね。そういうセンスというか、無駄がないプレーは凄いなと思います。たぶん体に染みついているんですね。
山岡:それはよく言われます。フォワードのミーティングでもよくそういう話が出るんですが、無駄に人数かけないところは残って、足りないと思ったら行く、その判断が出来るようになってきましたね。けど最近フォワードはみんなその辺のことは言われるから意識していると思いますよ。
—— それは最近意識するようになったんですか?
山岡:たぶん大学の時からですね。周りがみんなガツガツ行ける人が多かったんで、自分の中ではそういう人が行った後のプレーでリンクできればいいと思っていたんで、そういうプレーは意識してやっていましたね。自分のプレースタイルですね。周りの選手がみんな体が大きいので、自分の役割は違うところで探していました。
◆「チームのために自分のプレーを選択」(曽我部)
—— 普通の状態をキープするコツは?
山岡:今はコンディショニングの管理を若井さん(正樹/フィットネスコーチ)や新田さん(博昭/ストレングスコーチ)を中心にしっかりやっているので、そのリズムが今も続いているんですね。ピークの持って行き方や体のケアのイメージがしっかりできるようになってきましたね。曽我部も今シーズンは調子良いよね?
曽我部:僕は全然です。
山岡:いやいや、自分ではそう言うけど絶対良いって。入ってきた当時もすごくセンスあるなという感じだったんですけど、自分の感覚とかペースが大きくて、ちょっと違うところが来ちゃうと「あれ?」という部分があったのかと思うけど、今はそこのバランスを上手くとって、チームにフィットしてきていると思います。
チームに求められることもやってるし、体も変わってきたし、いちばん変わったと思うのは、練習中でも試合中でもたくさんしゃべるようになって、バックス同士は当たり前なんですけど、フォワードにも声をかけるようになって、いろいろ気持ち的なことも言いますし、プレーのことも言うようになって、上手くリードしているので、変わったなと思います。きっと自信が出てきたから出来るようになってるんですね。
—— それは自分でも自覚してるんですか?
曽我部:してますね。去年は悪い言い方したら、自分は自分という感じだったんですが、今年は自分のプレーより、キック1つにしてもパス1つにしてもチームのために自分のプレーを選択するようになったんで、今年いちばん大事なチームワークも含めて、変わったと思います。
今までは勝手なプレーと言われることが多かったんですが、今年はしっかりコミュニケーションをとって、確認して、それを踏まえてスタンドオフとしてプレーするように心がけてます。コミュニケーションを大事にするようになりました。
—— 何か変わるきっかけがあったんですか?
曽我部:特に何かあったという訳ではないと思うんですが、去年のシーズンに怪我をしていない状態で試合に1試合も出られなくて、そういう経験が人生で初めてだったんで、シーズンが終わって新シーズンが始まるときに、気持ちを一回リセットして、1ラグビー選手としてもう1回ゼロから取り組もうと考えた時に、高校と大学で今まで試合になんで出られてたんだろうと考えました。
今まで自分がおろそかにしていた細かいこと、例えばボールをもらうときはハンズアップするということから含めて、全て考え直しました。パスしたらそこで終わりじゃなくてすぐフォローに行くとか、そういう当たり前で基本的なことに、もう一度振り返ってやるようになって変わったんだと思います。ラグビーの基本中の基本をもう一度やってる感じです。
—— ラグビーをしていてもずっと楽しくなったんじゃないですか?
曽我部:そうですね。試合のあとの疲労感も全然違いますし、そういう部分を意識してやってると変わってきてますね。
山岡:ひと言で言うと、みんな変わって来てて、自分たちでやってるという自信が持ててきてると思います。個々で見たらみんな良くなってるし、自信もってやってるので、後はチームとして結果を出して、波に乗れればいいと思います。
◆「カルチャーをしっかり受け継いでいかないといけない」(曽我部)
—— 曽我部選手はもう4年目で、そろそろ中心選手の年代ですね?
山岡:そうですよ。どこのチームを見ても、やっぱり25~28歳くらいの選手が中心になってやってますからね。もちろんうちのチームもその年代が多く試合に出ていますしね。その世代がレベルアップして行かないと、クラブとしてもその先に繋がっていかないですからね。僕らベテランはそのサポートをするのが役目だと思ってます。試合に勝つことももちろんそうなんですが、サンゴリアスとして今後成長して行くためにも、その世代には頑張ってほしいですね。
曽我部:でも今もし、山さんとかキヨさん(田中澄憲)とか元さん(申騎)とかの世代がいなくなったら大変ですよね。その世代の皆さんのおかげで僕らの世代がやれている部分も多いので、本当にいなくなったら大変だなと思います。
山岡:そうですね。やっぱりただラグビーをしているだけじゃなくて、サンゴリアスのクラブカルチャーを引き継いで行ったりしなければいけないので、まだまだベテランとして僕らのやることはたくさんあるのかなと思ってます。僕らだけじゃなくて、僕らがいなくなっても、今の年代が下の世代に継いでいけるようにならないといけないですね。
曽我部:そうですね。僕らがしっかり勉強して、ラグビーのカルチャーと、クラブのカルチャーと仕事のカルチャーをしっかり受け継いでいかないといけないですね。
◆「力の出しどころの見極めの技術」(山岡)
—— 曽我部選手から見て今年の山岡選手に期待していることは?
曽我部:飲みに誘ってください(笑)。
山岡:俺の行きつけに?今度な(笑)。
曽我部:というのは冗談で、本当に山さんには今の状態を維持してもらって、僕らが学ぶ姿勢を持っていろいろ吸収して行きたいですね。なのでしばらく現役を続けて頑張ってほしいですね。僕が入社してから4年経ちますけど、全然衰えてないですよね。そういえば、「敬語なし」が出来てなかったですね、ヤマ(笑)。
山岡:(笑)。体と気持ちといろいろ相談して、なるべく長くやれるように頑張ります。
曽我部:やっぱり30歳を超えると体が変わってきますか?
山岡:変わると思うよ。
曽我部:逆に30歳超えてからキレが出てくるという人もいますよね。
山岡:バックスとフォワードでもちょっと違うと思うけどね。表現が難しいですが、いろんな経験も関係してきますが、力の出しどころの見極めの技術がついてくれば、30歳を過ぎても全然できると思います。特に1列のプロップとフッカーは特にそうですね。そういう話を坂田さん(正彰/チームディレクター)としたことがあります。
—— 山岡選手から曽我部選手に期待することは?
山岡:プレーはさっき言った通り自信を持ってやっているので、それをシーズン通して続けてほしいです。自分でイメージは出来てると思うので、それを続けてやっていくことと、チームを上手くリードして、バックスもフォワードもコミュニケーションをとってやっていってほしいですね。
あとは今年からロッカーグループというのを作って4つのチームに分けていろんなことに取り組んでますが、来年以降そのリーダーになるような人材だと思っているので、そういう面でもチームを引っ張るメンバーになっていってほしいと思います。
曽我部:分かりました。頑張ります。
—— 次回のダブルスのご指名をお願いします。
山岡:どうしよっか?
曽我部:僕は山さんが1人決めてくれたら、そのパートナーを決めようと思ってます。
山岡:誰だろうなぁ...。聞いてみたい対談という観点で決めていきましょうか。結構悩みますね、これ(笑)。とりあえずハタケ(畠山健介)はやめておこう。あいつにしちゃうと対談にならずに1人でずっと喋っちゃうから(笑)。フォワードとバックスで考えると...。
曽我部:小川(真也)と平(浩二)さんが喋ってるのとか見たことないですね。果たして小川は平さんの下の名前知ってるのかな(笑)?
山岡:尾崎は?
曽我部:尾崎さんは誰とでもフレンドリーに喋ってるイメージありますけど。
山岡:池谷(陽介)は?池谷と浩二もあまり喋ってないよな?
曽我部:そうですね。
山岡:その2人で話が弾むか?という問題はあるよな(笑)。とりあえずフォワードは池谷にするか。
曽我部:じゃぁガヤさんだったら...、平さんにします。
—— ありがとうございました
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)
[写真:長尾亜紀]