2010年10月 4日
#206 Doubles05 元申騎×成田秀悦 『風呂場で話した話』
◆「ラグビーの話はよくします」(元)
—— 本日はよろしくお願いします
成田:こうやってしゃべることなかなかないですね。
元:ナリ、この企画の相手が俺だって当てたらしいじゃん。霊感でもあるんじゃないの(笑)?
成田:バッチリ当てました。
元:僕は「誰ですかって?」って聞きましたよね(インタビュアーに向って)。やっぱり霊感あるんだよ。
成田:僕は先に「当てていいですか?」って言って当てました。
元:何で俺とだと思ったの?
成田:元さんか山さん(山岡)のどっちかだと思ってて、元さんって言ったんです。
元:なんでその2人だと思ったの?
成田:僕は絶対ベテランとだと思ってたんです。
元:お前、いまいくつ?
成田:僕はまだ4年目です。
—— 元選手は何年目ですか?
元:もう僕11年目です。同期は北條と小野澤です。もともとの同期は6人いて、今3人残ってます。他の3人はトモキ(澤木智之)、拓也(川村)、祐也(斉藤/豊田自動織機)です。
—— この組み合わせになってどうですか?
元:とくに違和感はありませんでしたね。私生活のことを話すことはそんなにないですが、ラグビーの話はよくしますからね。
成田:そうですね。僕はいつも元さんにタイミング良い時に話しかけてもらってます。Bチームに落ちて凹んでる時に励ましてくれたりとか、Aチームに上がって調子に乗りそうな時にも元さんに・・・(笑)。
◆「練習でも身をもって感じてます」(成田)
元:最近もいろいろ話しましたが、やっぱりナリの良いところもたくさんあるんですけど、体格が体格なんで、その辺の話をしました。僕がフランカーをやっていると、やっぱり自分で勝負するところと、誰かに一度預けてその2タッチ目を狙うところを棲み分けしろ、という話をしました。簡単に言うと、ボールをもらって1発目でビッグゲインするよりも、一度誰かに預けてそのリターンをもらって、そこからゲインするのとがあるという話です。やっぱり引っかかってしまうと、体重がないので、サポートも早くいかなきゃいけないし、ある程度フィジカルで踏ん張れるタイプではないので、その辺の話をすることは多いですね。
成田:そうですね、良く言われますね。
元:もちろん、「行くな」ということではなく、行けるところは行って良いんですが、勝負できる状況と勝負できない状況を4年目までの経験である程度分かってると思うので、そこを判断してやろうという話ですね。メンバーから落ちたり上がったりという話は、僕自身もいろいろな経験をしてきたので、アドバイスしています。
—— トヨタ戦で、トップスピードで走っていて真正面からタックルをくらった場面がありましたね
元:ああいうプレーは僕としては「やめろ」と言っています。「そのボールを誰がリサイクルするの?」ということもありますからね。だからああいうプレーは自分勝手すぎるんじゃない?という話をしました
成田:そうですね。僕の中で「行けるところまでは自分で持っていきたい」という気持ちがあるんですけど、後のことも考えなくちゃいけないんですよね。捕まった後にフォローに入らなきゃいけないのは、元さんたちですから。
元:10mとか20mゲインして捕まったということなら全然OKなんですが、ゲインラインを越えられない状況だったり、キックを蹴られて下がっている状況でそれをしちゃうと、ひとりで勝負して負けて、フォワード早く帰って来いってなっちゃうと、ちょっと違うなと思いますね。
成田:いつも言われます。練習でも身をもって感じてます。
◆「凄いと思います」(元)
—— 今年ウイングで頑張っている成田選手はどうですか?
元:凄いと思いますね。9番(スクラムハーフ)からポジションチェンジして、ウイングをやっているんですからね。ただ、いまサントリーがやってるアタッキングラグビーに合っているんじゃないですかね。特に今年はルールが変わって、アタック側が有利になっていますから、その中で自分でどんどん力を出していて、凄いなと思います。
—— ルールが変わって、ディフェンスでのタックルの仕方も変わりましたか?
元:もちろん変わりましたね。だいぶやりにくくなりましたよね。旧ルールだったら上手くいっていたことが、新ルールでは上手くいかないことがあって、まだ僕自身も適応できていないなと思っています。すべてにおいて精度を上げていかなきゃいけないですね、ポジショニングから、タックルコースまで。特にアタッキングラグビーをやっているので、運動量が必要になってくる中で、春から一生懸命やって運動量はついているんですけど、やっぱり体力が消耗して行く中で思考力が低下してきちゃう部分があるんですね。いちばん大事な基本的なポジショニングだったり、ボディーポジションの部分が、疲れてきておろそかになってきちゃうと、パフォーマンスが落ちてしまいますよね。
—— 走って逃げる側としてはどうですか?
成田:僕は今年のラグビーはやりやすいですね。ボールも回ってくるし、タッチ回数も増えて、自分で勝負出来たり、いろんな状況が見えますね。
—— 成田選手から見て元選手の良いところは?
成田:4年間見てきて、自分をしっかり持っているなと思います。監督やコーチが言ったことに対しても、しっかり自分の考えを言えるところですね。アドバイスもいろいろくれますしね。
元:僕も辛い時期も経験しましたし、ナリも落ち込んだりして僕に似ているところがあるので、僕の経験で少しでも役に立つことがあればアドバイスをしています。もちろんウイングのことは僕にはわからないので、そういことは沢木コーチとか小野澤に聞いたりすればいんですが、僕はフランカーとして、こういうウイングは嫌だとか、そういう部分の話をしています。断言はせずに、こうした方が良いんじゃない?というアドバイスをしています。ナリは結構ネガティブになりがちなので、そこをちょっとまぁまぁまぁまぁと言ってます。
成田:元さんもフランカーではなくロックをやった時期とかもあったみたいで、その時のお話とかを聞きました。それに比べたら、僕なんて「こんなことで悩んでたのか」と思うと、少し前向きになれたりしました。
—— 成田選手がベテランになったら、その役割を引き継いでいかないといけないですね
成田:そういうふうになっていかないといけないですね。
◆「元さんと話して考え方が変わりました」(成田)
—— ポジションも違う先輩で、ここまでアドバイスをくれる選手もいないんじゃないですか?
成田:そうですね。元さんと森岡恵二(OB)さんくらいです。恵二さんは僕と境遇が一緒なんで。恵二さんは毎試合、試合前と試合後に連絡をくれます。もっとこうした良いとか、お前ならこういうふうにできるよとか、いろいろ言ってくれるんですが、それを元さんに話したら、「あいつから学ぶのは、ハーフからウイングに移った時の心境とかメンタルの部分だけにしろ」と言われました(笑)。
—— メンタル的に心配なところがあるんですか?
元:いや、そういう訳ではありません。ただ、思い切ってやっているんで、そこを80分間続けられれば問題ないんじゃないですか?
—— 成田選手が一番つらかった時期は?
成田:3年目ですね。3年目の終わりはほとんどBチームにいました。最終的に、最後の日本選手権のNEC戦がウイングに変わるきっかけになって、それだけですね。
元:やっぱり、トップリーグでやるということで、みんなトップ選手が集まっている訳ですし、ましてや自分のポジションに世界で一番有名な選手が来てしまうんですから、辛かったと思います。そこから上手くポジションチェンジして、切り替えて、結果を出せるということは凄いですね。長年9番をずっとやってきたわけですからね。
—— 実際に気持ちの切り替えができたのはいつ頃なんですか?
成田:春はウイングをやりながらもハーフのことも考えていましたし、「いつ戻れるんだろう」と思っている部分もありました。なので夏合宿くらいからですね。
元:見ていて、ハーフに戻るために、ウイングで良いパフォーマンスをしようという感じでしたね。いつでもハーフに戻りたいという感じでしたよね。
◆「結果が出なければ努力の仕方も変えなきゃ行けない」(元)
成田:そうですね。その時に、元さんと話して考え方が変わりました。元さん、覚えてます?あの風呂場で話した話とか?
元:なに?
成田:「明確な夢を持て」っていう話です。それで僕の夢は日本代表に入ることって言う話をして、そのためにはまずサントリーで試合に出ることだと言われて、その話をして気持ちが変わりました。試合に出ることが先決で、そのためには背番号は関係ないと思えるようになりました。菅平から帰ってきて、網走に行く前ですね。
—— 元選手にとって相談するような先輩はいましたか?
元:いなかったですね。ぜんぶ自力で乗り越えてきました。ただ負けず嫌いなんで、その気持ちでずっとやってました。自分に何が足りないかも一生懸命考えましたし、上手くいかないことも受け入れたりしましたね。一生懸命やるっていうのは当たり前で、トップリーグの選手みんながやっていることだと思いますが、それで結果が出なければ、努力の仕方も考えなきゃいけないということですよね。何がいけないんだろうとずっと考えていた時期もありましたが、答えはずっと見つからないんですよね。でもそれでも努力して、考えてやっていくことが大事で、そうしていると誰かがアドバイスをくれたりするんですよね。
—— 自分の良いところを伸ばそうとする姿勢は?
元:もちろんそれもありましたけど、どうしても考え込むとネガティブになってしまって、自分のマイナス面を補っていこうとなっていっちゃうんですね。結局マイナスは補ってもゼロにしかならないんですけど、それも大事なことなんですよね。上手くなりたい、試合に出たいと言って、自分の良いところばっかりを磨いてもダメで、マイナス面を限りなくゼロに近づけて、さらにそれを1とか2にできれば、景色も変わってくると思うんですよね。
—— 以前のインタビューでエディーさんとのコミュニケーションがポイントになっているというような話を聞きましたが、エディーさんが監督になって、変わったことはありますか?
元:いろいろ変わる部分はありましたね。うまくアドバイスをくれたり、厳しいことを言われたりという中で、常に自分の足りない部分を補ってくれます。かといって、エディーに依存している訳でもありません。もちろん僕も人間ですから言われて頭にくることもありますよ。でももう32歳ですし、この先そんなに長くプレーできるわけではないですから、言われたことは素直に聞いて、自分ではこう思うんだけどなぁと思うこともあっても、それを受け入れてやっていった方が、良いのかなと思います。
◆「視界が変わりました」(成田)
—— チームの雰囲気はどうですか?
元:みんな闘争心を出して頑張っていますね。
成田:去年よりAチームとBチームの溝がなく、みんなで頑張ってます。あとウイングになっていちばん気づいたのは、去年までよく元さんとかに「行くとこまで行って困ってパスするな」と言われていたんですけど、ウイングになってそれがすごく分かってきて、去年まで無駄な走りが多かったんだなぁと感じました。今だったらもっと上手くハーフで良い選択ができたんじゃないかと思います。視界が変わりました。
—— 元選手が成田選手に期待することは?
元:スピードを持ってるので、ひっかきまわしてビッグゲイン。そうすればトライチャンスが生まれてくると思うので、もっともっとトライに結びつくようなプレー、ガラッと流れが変わるプレーをしていってほしいですね。そういう力を持っている選手だと思います。
成田:僕いつも試合前に元さんに「今日何トライ?」と聞かれるんですけど、聞かれるようになってから、まだ一度も結果出したことないんですよね。早く結果出さなきゃいけないですね。
—— 最高で何トライまで答えたんですか?
成田:5トライです。
—— 成田選手から元選手に期待することは?
成田:期待することではないんですが、Bチームで一緒にやっていたことが長かったので、元さんがグラウンドに入るとみんな「ついて行こう」という雰囲気になるので、怒られたりもしますが、一緒に試合に出ていると安心します。心強いですし、チームを盛り上げる選手ですね。
—— 今年はみんな体を絞ってますが
元:僕もだいぶ削ぎました。これから少しずつ増やしていきたいんですが、ハードでしたね。
成田:今シーズンの春は4年間でいちばんきつかったです。元さんどうですか?
元:お前がきついってことは、おれはその3倍か4倍きついっていうことだよ。
成田:相当走りましたね。
◆「ナンバーワンのアタッキングラグビー」(元)
—— サントリーのここを見てくれというポイントは?
成田:走ることに関しては、絶対にどこのチームにも負けないので、アタックは一番のものをお見せできると思います。
元:ことしはやっぱりAチームとかBチームとかの壁がなくて、チーム一丸となってやっているので、BチームのメンバーがAチームに入って試合に出ても、Aチームのパフォーマンスが出せるので、チーム一丸となって信じるナンバーワンのアタッキングラグビーを見てほしいですね。
—— そろそろ締めに入りましょう
成田:僕も元さんくらいの年になったら、ちゃんと語れるようになりますかね?
元:別に語ってないじゃん。
成田:いやいや、深いなと思います。
元:Bチームの経験が長いってだけでしょ。
—— 最後に次のダブルスの指名をお願いします
元:山岡と...曽我部。
成田:あんまり一緒にいないですね。
元:どう?山ちゃんと曽我部。
成田:それで行きましょう。
—— ありがとうございました
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)
[写真:長尾亜紀]