2010年8月31日
#201 Doubles01 有賀剛×佐々木隆道『アタッキングラグビー』
◆リスペクト
—— 今回で5回目の対談になりました。その間に2人ともワールドカップに出たり、大きな怪我をしたり、いろいろなことがありましたが、5年目のシーズンを迎えるにあたって、率直な気持ちは?
有賀:あまり変わりはないですけど、監督も変わりましたし、そこでまた違ったエキスをもらって、自分自身が成長というか、良いプレーが出来るようになるんじゃないかという予感はあります。清宮さん(克幸/前監督)とは違ったことを教えてくれるんじゃないかという楽しみも、もちろんあります。
佐々木:去年僕はキャプテンをやって、結果が残せなくて、残念だったんですが、今年エディー(ジョーンズ/)が監督になって、また新しい自分になれるというか、今までずっと清宮さんの下でやってきたものにプラスして、エディーの求めることを一生懸命やって、少しでもチームの力になりたいという思いで、春からやってきています。上手くなりたいとか、そういう気持ちはもちろん持っているんですけど、エディーの求めるものを必死に食らいついてやっている感じです。
—— 有賀選手から見て、エディーの求めるものとはどういう部分ですか?
有賀:バイスキャプテンも3年目になりますし、またやり方も清宮さんとも代わりましたね。今までの感覚では、「そこまで選手に言っちゃっていいの?」ということもリーダーミーティングで言われたりしますね。
—— 例えばどういうことですか?
例えばですが、「優勝するチームは全部員のうち、何人くらいが試合に出ているか」とか、「このくらいの人数が試合に出て戦うチームが勝つんだ」とか、そういうことも話をします。経験が多い監督なので、そういう視点というかそういう情報も持っています。あとは「どうやって皆を変えていけばいいか?」とかですね。今までコーチだけが考えていたことを、「こういうことも選手が考えてラグビーをしなくちゃいけないんだよ」と教えられます。
—— 佐々木選手も同じですか?
佐々木:チームのスピリッツで「リスペクト」という言葉があって、リスペクトをするために、いろんな新しいことをみんなで乗り越えていくということをやっています。厳しい練習を一緒に乗り越えていくのももちろんなんですが、グループに分かれたコンペティションでチームワークを作るという取り組みもしています。それは試合に出られなくても、チームメイトを応援する気持ちだったりという部分につながっていると思います。例えばそれは、僕が試合で途中交代する時に、「あとは頼むぞ」という気持ちが、今まで以上に強くなっているということにも表れています。
—— それは選手として心地よい感覚なんですか?
佐々木:チームとしてすごく一体感が出てきたなと思います。僕個人としても、1人のラグビー選手としてそういう部分が欠けていたのかなとも思います。
—— お2人の間はどうですか?
有賀:まぁ普通です。(隆道は)頑丈だなといつも思っています(笑)。
佐々木:まだ1日も練習を休んでいないですからね。僕と耕太郎さん(田原)2人だけですね。剛は春から古傷のリハビリで大変だなと思いますが、また来年ワールドカップがありますし、それが剛にとって必要だったかと言えば、いらないことかもしれないですけど、剛だからなんだかんだ帳尻合わせて、ワールドカップに出るんだろうなと思います。
◆変われるヒント
—— 社会人になってこれまでの4年間はあっという間でしたか?
佐々木:いろんなことあったな。
有賀:うん。1年1年違うし、それぞれ違う濃い年を過ごしてきたなと思います。
—— いちばん記憶に残ってるのは昨シーズンですか?
佐々木:いや~、僕は違いますね。僕はしんどかった時期が長かったんで。今となればそんな大したことなかったなと思うんですけど、苦労したなという感じですね。去年、怪我もして自分が思い描く絵の中に追い付いていかない感じでしたね。そういう中で「なんでだろう?なんでだろう?」と思ってるうちに怪我をしてしまいました。
今年の夏合宿での1プレーで、その変なモヤモヤが消えて、「あ、これだ」という感じでした。「こうしたら抜けるわ」と感じた瞬間ですね。いろいろ考えていたんですけど、どれもダメで、試合の中で「これだ」とひらめいた感じです。去年の最後くらいから小野澤さん(宏時)に、「ステップしてる時に上下の動きも出てきて良いよ」と言われていたんですが、そうこうしてるうちにシーズンが終わってしまったんです。
—— 有賀選手は、怪我から復帰する時に、パワーアップして戻ってくるイメージがありますが
有賀:運良くその時々に変われるヒントを与えて教えてもらっているんだと思います。トレーニングしていると、なかなか時間を割けないことも、リハビリ中だとそれに集中して出来たりするので、そういう部分もあります。
佐々木:意外と剛の方が理論的なんですよ。俺の方が感覚的にやってたんだなと感じます。
—— そういう話を2人でしたりするんですか?
佐々木:「これいいよ」とか「剛はこんなことしてんのか」ということを僕はチラチラ見てますけど(笑)。
有賀:僕は今シーズンはリハビリで合宿にも行っていないので、隆道のプレーもまだあまり見てなくて何とも言えません。
◆一体感
—— 今シーズンの目標をお願いします
有賀:個人的には開幕戦には間に合いませんが、やはり優勝ですよね。去年も最後の最後に負けてしまったので。新しいことにチャレンジして行きます。プレシーズンマッチでは東芝にちょっと残念な負け方でしたが、自分たちのやってきたことをしっかり信じて、やっていくだけですね。
佐々木:(東芝戦は)ボールを継続するラグビーをしていて、あれだけボールを落としていたらそりゃ負けて当然ですよね。目標は、サントリーの7番のジャージを着続けることです。その中で自分ができることを精いっぱいやって、チームメイトから信頼される選手になることですね。
—— だいぶ体を絞ったように見えますが?
佐々木:体脂肪率9%まで落としましたからね。去年は12.5%くらいでした。食事にも相当気を使っています。これから少し大きくしていきたいので、より意識的に栄養を取るようにしていきたいです。
—— チームとして優勝のためのポイントは何だと思いますか?
佐々木:やりきることですね。
有賀:それから一体感ですね。昨シーズンが終わって「一体感がない」と言われたので。小さなことですが、ウォーミングアップに向かうのもバラバラだったり、試合後の食事もしっかり食べている選手が少なかったり、試合以外の部分でもっとチームがひとつになっていかないとだめですね。それがやりきれなくて、個人として戦っている原因なんだなと思います。その辺の意識の問題ですね。みんなが同じ方向に向かっていくようなチームになれば、優勝できると思います。
◆超攻撃型ラグビー
—— お互いを見ていてどうですか?
佐々木:あんまり気にしてないですね。気づいたらちゃんとやってるので。なんだかんだ毎年やってますからね。
有賀:今まではそうでしたし、今年もそうしたいですが、成田(秀悦)も育ってきたし、ヒューワット(ピーター)も入ってきて、居場所がないなということはしっかり受け止めています。隆道は春からずっとやっているし、身心ともに問題ないと思うので、あとはそれをしっかりと試合で出すだけだと思います。
—— 個人として、そしてチームとして、ここを見てほしいというポイントは?
佐々木:自分のここを見てほしいというのはあまりないですね。言うなら全部見てほしい(笑)。タックルもランも。全体的に見て「あの子のプレーは良いな」と思ってもらえたら良いですね。チームとしては、超攻撃型、日本No.1のアタッキングラグビーをやろうと言っているので、明らかに変わったサントリースタイルを今後何十年も続けていくので、その始めの1年目のサントリースタイルを見てもらいたいです。
有賀:アタッキングラグビーということで、たくさんボールも回ってきますし、たくさん走りたいと思います。今までこういうスタイルというものがなかったので、これで勝つという誰にも負けないアタックを春からずっとやって来たので、三洋電機とやるときはアタック対ディフェンスで面白いんじゃないでしょうか?
—— 今回から、スピリッツ・オブ・サンゴリアス・ダブルスということで、次の2名を指名して下さい
有賀:普段から仲が良い奴じゃない方が良いな。平(浩二)と長友(泰憲)とか、成田とかはダメだね。
佐々木:イチャイチャして終わりだもんな(笑)。
有賀:純さん(北條)とか良いんじゃないですか?人気あるし。
佐々木:俺の中では辻本(雄起)が来てるけど、さすがに1年目新人とベテランはキツイか。じゃぁ、純さんがバックスだから、フォワードから金井(健雄)を指名します!
—— ありがとうございました
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)
[写真:長尾亜紀]