2010年5月26日
#196 有賀 剛 バイスキャプテン 『みんな活気に満ちあふれている』
◆しっかりと話し合ってやっている
—— 新しい体制になり、再びバイスキャプテンになりましたが、そのいきさつを教えてください
キャプテン候補の中の一人として名前が挙がっていたみたいで、最終的にタケ(竹本隼太郎)か僕かという状況で、タケがキャプテンに選ばれたので、そのサポートとして僕が選ばれたんだと思います。
—— キャプテン候補に選ばれて、キャプテンになるという意識もあったんですか?
「キャプテンはどうだ?」という話を持ちかけられたのは事実で、それに「任されればチームのためにやります」という返事をしました。詳しいことは分からないですが、タケがキャプテンに就任し、上と話したんじゃないですかね。直接タケから来たわけじゃなく、バイスキャプテンの話は先にチームからありました。
—— 今回はバイスキャプテンがひとりなので、比重が大きくなると思いますが、どうですか?
最終的には去年みたいに、リーダーグループの5人くらいでやると思うんですが、あまり多すぎても、とは思います。春の段階は2人でやっていけばいいと思います。まだ戦術的なこともやっていないですし、まずは体作りというところだけなんで、その分、週1回しっかりとエディー(ジョーンズ/ゼネラルマネージャー兼監督)とタケと3人で話し合ってやっています。
—— それは新しい展開ですね
去年も週1回はリーダーでやっていたんですが、今年は更に密にして、フォワードコーチやバックスコーチとも話したりしています。それにコーチから決めたことを発表されるだけじゃなくて、話し合いの中にも入れてもらっているので、去年よりも自分たちの意見を受け入れてくれていると思います。
◆パワーアップ
—— 竹本選手も有賀選手も5年目で、もう完全にチームの中心世代ということですね
5年目といえばもう中堅ですからね(笑)。
—— チームに入ってからそういう感覚になるまでは早く感じましたか?
早かったですね。まぁ1年間プレーしていない時期もあったので、5年目という感覚もあまりないんですが。
—— 一昨年ほぼ1年間プレーしなかったにもかかわらず、見事に復帰を飾り、去年は抜群のパフォーマンスを見せていたと思います。そこは自分ではどのように分析していますか?
怪我をして帰ってきたときには、怪我をする前よりもパワーアップして帰って来なきゃいけないと思うし、怪我をしなければ気付かないことだったり、JISS(国立スポーツ科学センター)に通わせてもらって新しいトレーニング方法だったり、体の使い方を覚えました。そういうことは怪我をしなければ分からなかったことなので、いまは自分にとって大切な時間だったと思っています。そう思えることがとても大事で、去年は凄く気持ちも入っていて、それが上手く結果に結びついてくれました。
—— 体が強くなって戻ってきた感じですか?
強くなりましたね。今まではトレーニング重視でしたが、柔軟性だったり体の使い方を覚えたことで、パワーアップしましたね。
—— そのプログラムは自分で作っていったんですか?
スタンダードのものは教えてもらって、いまは足りない部分は自分で考えて補っている感じです。
—— 試合感覚はどうでした?
去年は春から全試合出ていたので、その部分は問題なかったですね。
—— 怪我もラグビーのうちという感覚もあるんですか?
それはないですね。怪我をした時を思い出せば、ちゃんとケアしているつもりだったんですが、足りなかったと思うし、怪我した日というのはもの凄く調子が悪かったので、リカバリーにしろぜんぜんダメだったのかなと思います。いまはもう怪我をしない体作りという考え方に変わってきたと思います。
—— 準備の仕方が変わるということですか?
もちろんそうですね。練習の10分前、15分前にグラウンドに来るのではなくて、1時間前に来てケアをしたり、補強をやったりして準備をしっかりしています。
—— 怪我に対する怖さというのはなかったですか?
もうぜんぜんないですね。念入りにストレッチをして、その怖さを取り除くようにしています。
◆チームのために体を張れるかどうか
—— 去年はチームとしてもリーグ戦は無敗で、シーズン通しても1敗しかしませんでしたが、去年のチームを振り返ってどうですか?
正直、やってきたことに間違いはないと思っているんですよ。ただセミファイナルで力を出せなかったというのは、メンタルの部分がまだまだ未熟だったと思いますし、あとはシーズン終わった後にいろいろな選手から出たと思いますが、一体感があまりなかったという部分も勝てなかった理由かなと思います。
—— メンタルが足りなかった部分は、今年はどこで力にしていくんですか?
それは日頃の練習でキツイことをやっていますし、そういったところで鍛えられていると思いますし、あとはみんながチームのために体を張れるかというところだと思います。
—— あれだけリーグ戦では調子が良かったにも関わらず、日本選手権一回戦で敗退した悔しさはチームにありますか?
もちろんあると思いますね。どちらかというと、なぜ勝てなかったという疑問の方が大きいですね。いまサントリーにいちばん求められるのは一体感であったり、チームワークなんじゃないかと思います。
—— 一体感やチームワークを高めるために何か考えているんですか?
新しい試みとしては、グループを4つに分けて日々使う場所の、グラウンド、食堂、お風呂、ウエイト場というところを、自分たちの手で綺麗にしていくことをやっています。それは結局、チームワークに繋がっていることで、本来ならば当たり前のことなんですが、そういうことが出来ていなかったと思います。強いチームは必ずそういうことが出来ていると思うし、クラブハウスの掃除担当者に任せないで、自分たちからやっていこうと思いで掃除しています。
それにその4つのグループで、どういうところが良くなかったとか、ここを直していこうという話し合いも週に1回出来て、それと選手ミーティングも週に1回出来ているので、いい方向にいっていると思います。
—— その4つのグループはどういう分け方なんですか?
リーダーが山さん(山岡俊)、元さん(申騎)、北條さん(純一)、順二さん(高谷)で、ロッカーも4つくらいに区切ってあるんですよ。どういうふうに決めたかは分からないですが、そのリーダーが中心となって、ポジションもばらばらで4つのグループに分かれています。練習以外でも集団で、やるべきことをしようという思いです。
◆自分のペースで前向きに
—— 練習自体も変わってきているんですか?
いまリハビリ中なので、あまり一緒に練習はしていないんですが、去年もこの時期はたくさん走っていましたし、強い体を作るということにフォーカスしています。9月の開幕でアタッキングラグビーをやるために、いま体を作っている状況ですね。これを継続してやっていけばいいと思います。
—— どのようなリハビリをしているんですか?
膝の半月板が生まれつき人よりも大きくて、100人に3~4人の割合だそうです。本当は中学生や高校生くらいで割れてしまうそうなんですが、この時期までもっていることが稀らしく、1年目の時に左の半月板は割れてしまったのでほとんど取り除きましたが、去年の11月くらいから右の半月板も痛くなってきて、これは自然と治るものではないので、この時期に治そうと思い手術しました。実際いつ割れてもおかしくない状況でしたね。だから日本選手権でNECに勝っていても、半月板がもたなかったかもしれないんです。いま右の半月板は少し残してあるみたいです。
—— そこの痛みさえ取れれば、体は万全ですか?
万全ですね。6月上旬くらいに戻れればと考えています。周りは練習していますけど、自分のペースで前向きにやっていきます。考えれば去年も今頃スタートしたわけですから、9月にいい状態にもっていけるようにしたいです。
—— 今年の目標は?
毎年同じこと言ってますが(笑)、全勝で2冠獲得。けど2冠を獲得したことのあるチームは東芝しかいないですから、そこに向かっていかなければいけない集団だと思っています。あとは個人的には11月にジャパン復帰して、来年はニュージーランドでワールドカップがありますから、それに向けてやっていきたいと思います。
—— 有賀選手から見て、いまのチームはどんな感じですか?
みんな活気に満ちあふれていますね。監督も変わりましたし、エディーも選手ひとりひとりを見ているだろうし、練習中からやってやろうという気持ちが伝わってきますね。直弥さん(大久保/フォワードコーチ)も帰ってきましたし、フォワード陣にとっては、いい刺激になっていると思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)