SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2010年3月25日

#193 畠山 健介 "BEST 15" 『今日もハタケは頑張るかなぁ~』

◆体重を絞った

スピリッツ画像1

—— ベストフィフティーンおめでとうございます

ありがとうございます。嬉しいですし、個人的にベストフィフティーンに選んでいただいて、感謝しています。ただやっぱり、いろんな人が口にしていますが、チームとして今年は結果が良くないので、素直に喜べないということは、確かにあります。

—— ベストフィフティーンは去年から2年連続で、新人王も含めて、取れるタイトルはすべて取っているという活躍ですね

去年に関しては、自分の実力だけではなく、いろいろな巡り合わせもあったと思いますし、運もあったのかなと思います。今季は2年連続でジャパンにも呼んでいただいて、これもいろいろな人の支えがあり、試合にもたくさん出させていただきました。チームでも全試合出させていただいて、そういう結果が、ファンの皆さんや協会関係者の皆さんに評価をしていただいて、この賞に繋がっていると思っています。その部分に関しては、本当に嬉しいですね。

—— 去年と今年で、自分自身のレベルが上がったと感じるところはどこですか?

シーズン中盤くらいから、若井さん(コンディショニングコーチ)や新田さん(ストレングスコーチ)、あとエディーさん(ジョーンズGM)の言葉が大きかったんですが、体重を絞った方が良いんじゃないかというアドバイスを受けて、食事制限などで約10kg絞りました。そのおかげで、ゲーム中の仕事量に関しては上がったんじゃないかなと思います。

スピリッツ画像2

—— 体重を絞って、パワーは変わらずにフィットネスが上がったという感じですか?

パワーに関しては落ちていないと思うんですが、でも体重が10kg減っているので、どこかでパワー不足があったとは思うんです。それを感じないためにもウエイトトレーニングも更にやるようになりましたし、来シーズンに向けてパワー負けしないように、今の段階からウエイトトレーニングを重視してやっています。

—— 10kg違うとやっぱり走りやすくなりますか?

自分ではあまり分からなかったんですが、数値としていい数値が出ているとフィードバックしてもらっています。いちばん身近に感じたことは、私服がブカブカになりました(笑)。やっぱり10kgって凄いんだなって感じました。

—— 試合中に走る距離も伸びていますか?

伸びていますね。けど伸びていても更にその上を目指すというのがサンゴリアスのスタンスなので、「良いけど、前の試合よりは良くないよ」とか、レベルが上がったところよりも、更に上を求められるので、結局しんどいことには変わりはないというか(笑)。

◆ディフェンス時のターンオーバー

スピリッツ画像3

—— 体重が変わったことの他にはどのようなことを感じますか?

今年もですけど、結構、夢中にやっていたんですよ。スクラムに関しては、終盤にかけてですけど、怒られることが多くなってしまって、不甲斐ない試合をしてしまったと反省しています。体重が落ちたからスクラムが押せなくなったということではなくて、技術の部分でも、心の部分でも、長谷川慎さん(フォワードコーチ)から指摘されていた部分を、シーズンの終盤の勝たなくてはいけない試合で露呈してしまいました。

やっぱり気持ちの部分で「スクラムだけは負けないんだ」とか「プロップの責任はまずスクラムで勝つことなんだ」という、サンゴリアスの3番を背負って出るからには、そういう姿勢や気持ちが凄く大事なんだということを、慎さんに言われました。

別にスクラムを投げやりにしていたわけではないんですけど、シーズンが終わってからそういう話し合いをしましたね。シーズンが終わってからだったので、シーズン中に自分自身で気づけていればと思います。

—— それが来シーズンの課題でもあるんですね?

スクラムに関しては、投げ出してたわけじゃないんですが、まだまだ未熟で、池谷さんや小川さんにスクラムで勝てない部分があるということを、自分自身で勝手に決めつけていたんだと思います。実際に技術などでは及んではいないと思いますが、そういう「スクラムでは負けない」という気持ちを出す部分を、フィールドのプレーでカバーしようというか、別にスクラムから逃げていたわけではないんですが、スクラムもして、更に自分の長所であるフィールドでアピールして、試合に出たいという気持ちが強くなっていました。

フィールドでのプレーはいろいろ考えたんですが、スクラムではそこを疎かにしてしまったことが、態度や試合の結果にも出たのかなと思います。特に東芝戦で出てしまったかなと。

スピリッツ画像4

—— スクラムに対して、大学時代から"自分のもの"にしているという感じはありましたか?

こだわりもありましたし、理論もありました。それに大学の中では体重も重い方でしたから、なんとかなっていた部分があったんですね。けれど社会人になると、ベテランの方から体が大きい人、小さい人とタイプがそれぞれいて、自分よりも大きい人もいれば、自分よりも小さいけど強い人もいたりと、技術面で社会人と大学ではレベルがぜんぜん違うんです。

試合数とか試合での疲労度とか、単純に相手の技術であるとか、そういう部分が根本的に違ってくるので、いまでも苦労している部分です。それが1年目からずっと続いているんです。

—— そういう中で、スクラムをやっていて面白いところはどこですか?

やっぱりスクラムから、オフェンスであればボールが出せて、ディフェンスであればターンオーバーして、そこからトライに繋がったりとか、スクラムが押せた結果バックスがいいボールを出せて、トライに繋がったりというところが、やっていて嬉しいですし、凄い気持ちいいと感じますね。特にディフェンスの時のターンオーバーが気持ちいいですね。

◆悩んだ時期がありました

スピリッツ画像5

—— 先ほどフィールドプレーの話が出ましたが、試合を見ていても「前へ行こう、前へ行こう」というのを感じます。そういうところは意識してやっているんですか?

まずボールを良い位置でもらおうというのがあります。けど、体重が減って少し走れるようになってから、ボールがもらえなくなる回数が少し増えたんですよ。サポートとしてプレーする回数が増えて、普通ならボールをもらえる位置に走っているのが、前よりも走れるようになったので、ボールをもらう位置よりも前のポイントに入るようになったりすることが少しずつ増えていました。

だから終盤に関しては、ボールがもらえない回数が増えてきたので、「何でボールがもらえないんだろう」っていう思いで、凄くフラストレーションを感じていた部分はありました。

結果チームとしては良くなったことなんですけど、自分としては前はボールがもらえていたタイミングで、 ボールがもらえなくなっていたので、凄く悩んだ時期がありました。シーズンを振り返ってみれば、チームとしてはプラスにはなっていたと思います。

—— それはそれでOKという感じですか?

シーズンを終えて、チームの結果は別として、プレーを振り返ってみて、そう思いますね。

スピリッツ画像6

—— 試合中に反則を取られることが結構ありましたよね

やっぱり前に行きたいというか、特にアタックの時は前に行きたいですし、ディフェンスの時はターンオーバーはできなくても、少しでもボールを出すタイミングを遅らせたり、あとジャッカルをすることも好きというか、できると思っているので、どんどん絡んでいきたいですが、ペナルティーマネジメントの部分でまだまだ未熟ですね。

意識することは凄い大事なことと思っているので、そこで怯えてしまってできなくなるよりは、どんどんアグレッシブにやって、その中でタイミングや思考とかを身につけていければと思います。

—— ジャッカルのコツはありますか?

まずはボールに絡みに行くことと、絡んでからしっかりと自分の方へ持ってくることですね。ノット・リリース・ザ・ボールなど反則を狙おうとすると、相手に対して緩くなるんですよ。ボールが取れなくても、ノット・リリースなどを誘発させられたりできるんです。ノット・リリースはおまけで、いちばんの目的はボールを奪い返すことで、それを常に意識すれば、自ずとボールに絡む力などが変わってくるんじゃないのかなと、僕はそう思いますね。

だから常にターンオーバーするということを意識に置いて、ジャッカルをするようにしています。けどトップリーグはレベルが高いので、東芝や三洋、トヨタ、神戸製鋼はなかなかターンオーバーさせてくれないですよ。あと外国人が多い、ヤマハやリコーもそうですね。ブレイクダウン周りが凄く強いチームが多いですし、学生の時みたいになかなかさせてもらえないですね。それでもターンオーバーはもっと狙っていきたいなと思いますね。

◆英語も勉強

スピリッツ画像8

—— 入って2年間指導してもらった監督とフォワードコーチが退任となりました

サンゴリアスに入る前に、清宮監督から勧誘を受けましたし、長谷川慎さんにも大学の時からお世話になっていました。いろいろとご指導いただいていたので、寂しいと言えば寂しいですよね。もっともっと一緒にやりたかったですし、もっともっといろいろと教えてもらいたかったです。

あと高野さんのブレイクダウンの指導もすごく有難くて、近鉄のタウファ統悦さんから「サンゴリアスのブレイクダウン周り技術の激しさが凄い。どういうふうに教えてもらっているのか、うちに教えに来てほしい」ってアフターマッチファンクションで言ってくれて、それを高野さんに伝えたら、ニヤニヤと嬉しそうにしていました(笑)。

相手チームにそういうふうに言ってもらえるというのはすごいことだと思います。自分たちがちゃんと意識できているというのは、コーチたちのお陰だとも思っています。だから寂しいと思いますし、正直な話、もっともっと教えていただければと思いますね。

—— 新チームに期待していることはありますか?

期待というよりは、初めてになるので、どういった指導方法なのかというところはあります。ただエディーさんは世界一に2度もなっている監督で、何かしらのものを持っていると思うので、しっかりそういう部分を与えられるだけじゃなくて、自分から聞きに行ったり、どういうことを伝えたいのかということを、前以上に考えていきたいと思っています。

清宮監督の下では、学生の時に2年、社会人でも2年やらせていただいたので、どういうことを求めているのかという部分は、理解できていたと思っているんですが、エディーさんになって、日本語で言うことも、通訳を通じて言うこともあると思うんですが、何を伝えたいのかをしっかり考えて、受け止めたいと思います。英語でも勉強しようかなとも思っています(笑)。

スピリッツ画像9

—— では外国人の日本語教室も兼ねて(笑)

たまに早くグラウンドに着くと、外国人選手が日本語教室を受けているところを見るんですが、その時の外国人選手の姿勢が凄いと感じますね。日本語って難しいと思うんですよ。ライアン(ニコラス)は凄い喋れるようになっていますし、ジョージ(グレーガン)も2年で喋れるようになっていますからね。それに積極的に日本語で喋りかけてくるので、あぁいう姿勢というのは見習わなきゃいけないと思いますね。

だから少しぐらい英語を勉強したってバチは当たらないと思いますし、どんどんやった方が良いとは思うんですけど、なかなかできないんですよねぇ(笑)。外国人選手と英語で話し合えば上達も早いと思いますけど、日本語で話しかけてくれるので、甘えちゃって日本語で返しちゃんですよ(笑)。けど、つたない英語でも、コミュニケーションは取れていると思いますよ。

—— 4年間、監督と選手として共に戦ってきた清宮監督の良いところはどこですか?

ファンの方やメディアの方からどう思われているかは分かんないんですが、凄い熱くて、僕らのことを凄い考えてやってくれます。清宮さんの良いところは凄い情熱を持っているところだと思います。

◆ラグビーがもっと上手くなりたい

スピリッツ画像10

—— 新しいシーズンからプロになろうと思ったのは?

いろいろ考えたんですが、ラグビーが好きで、単純にラグビーがもっと上手くなりたいという思いですね。いまの社会人の実情とか、辞めてからのビジョンとかを土田さん(雅人/強化本部長)や夏山さん(真也/部長)と話し合って、意志を汲んでいただきました。スポーツをしていく上で厳しい時代じゃないですか。

いろんなチームでプロ化をやめたり、廃部になったりとしている中で、ラグビーは凄い恵まれている方だと思うんです。その中でプロになるというのは、チャレンジだと思っています。ただサントリーは凄く良い会社で、ラグビーを辞めてからのことを考えれば、会社に残る方が賢い選択というか、親も安心すると思います。

けどその部分を考えても、もっとラグビーに携わりたいということと、もっともっと上手くなりたい、あとは自分のことだけじゃなくラグビーの普及発展に力を注ぎたいという思いがあるので、そのために100%ラグビーのために割ける時間が作りたかったんです。

—— プロになるということは退路を断つということであると思いますし、退路を断つことでこれまで以上の力が出ることもあると思います

将来的には高校や大学の指導者になることもありだと思いますし、社会人のコーチとしてやるということもありだと思います。これからは生活も変わりますし、プロのレベルを求められるので、まずは一生懸命頑張って、これから3、4年は競技に集中していこうと思います。

これからワールドカップもありますし、僕がサンゴリアスに入ってから優勝をしていないので、日本代表とサンゴリアスでしっかり結果を残すことだけを考えてやっていきたいですね。そうすると自ずと視野が広がって、いろんな可能性も見えてくると思っています。

◆ワールドカップに出たい

スピリッツ画像11

—— 日本代表としても目標は?

まずはワールドカップに出たいですね。ワールドカップに出たいという目標がまず大きくあって、そのために高いパフォーマンスを出して、怪我をしないようにしっかりとケアをしていくことを、いままで以上にやっていかなきゃいけないと思います。

—— 社会人になってスクラムのレベルが違うと感じたように、外国のチームとやるときはどう感じましたか?

単純にパワーが強いですし、僕はアメリカやカナダの選手とは組んでいますが、まだヨーロッパの選手とはまだ組んでいませんし、オールブラックスやワラビーズ、南アフリカとは組んでいないので、なんとも言えないんですけど、それに経験もまだ豊富じゃないので、まずは経験を積むことですね。

—— 体が丈夫なんですよね?

そうですね。怪我をしない方で、順調には来ているんですが、ここからはどうなるか分からないです。その部分で、体重を落としたことは、体への負担も減りますし、良いことだらけだと思います。

—— プレーオフで東芝に負けたこと、日本選手権1回戦でNECと引分けたという、その部分は選手として原因はどこにあったと思いますか?

東芝戦に関しては、前半は勝ってましたから、要所要所のところで流れが変わってしまって、そこを変えられなかったことがいちばん大きいですね。ライアンが出ていなかったですけど、そこに頼っちゃいけないですし、いなければいないで代わりに入った選手も、周りの選手もしっかりプレーしなきゃいけなかったですよね。

東芝戦に関しては気持ちの部分じゃないですかね。気持ちの部分と、ギアを入れ替えるのが遅すぎたかなと思います。NECに関しては、みんな攻めることに対して、臆病になっていたかなと感じますね。僕もやっちゃったんですけど、パスミスが多かったり、取れるシチュエーションで取り切れなかったですよね。気持ちがなかったわけじゃないですし、やってきたことがぬるかったということは一切ないですし、シーズン中でいままでにないくらい激しい練習をしてきていましたから。

けど、みんな普段なら行くところをパスしてしまったり、普段ならやらないようなプレーをしてしまっていました。ただ悪いことじゃなくて、得点しよう、得点したいという気持ちが、そういうプレーをさせてしまったんだと思います。一緒に試合をしていて、プレーを気持ちがかみ合っていない感じがしました。

スピリッツ画像12

—— 何に対して臆病になっていたんですか?

普段ならもっとゲイン切って、縦に抜けたらパス放らずにそのまま当たりに行ったりしていたのが、例えば、3対2のシチュエーションでも、パス回すことは定石ですけど、ちょっとでもスペースが空いていたら行くところを変にパスしたり、なんかいつもと違う感じがしたんです。

それは時間も点差も影響したと思うんですが、「早く点を取りたい」、「早くトライを取りたい」という思いが、空回りしてしまって、僕を含めて、そういうプレーの選択をしてしまったんだと思います。NEC戦に関しては、取り切れなかったことが本当に大きかったですね。

—— プレーオフの前のリーグ戦最終節の三洋戦も悔いが残りますか?

あそこで三洋に勝てなかったのも悔しかったですね。これだけ負け続けていて、一時期リードしたんですけどね。そういうところで、まだまだ勝ちに値しないというか、まだまだ勝てない要因があるのかなとも思いますね。

—— ファンの方へのメッセージをお願いします

チームとして体制がガラリと変わりますが、サンゴリアスそのものは変わらないと思いますし、来季こそしっかりと強いチームになって、まずは優勝という結果を残して、ファンの方のこの2年間の悔しさが晴れるくらい、気持ちいい優勝をしたいですね。

個人としては、意外とプレッシャーに弱かったりするので、あまり期待をせずに見ていただければと思います(笑)。「今日もハタケは頑張るかなぁ~」くらいの気持ちで見ていただければと思います。

スピリッツ画像7 スピリッツ画像13

(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

一覧へ