2010年1月 6日
#185 小野澤 宏時 トライ王!三洋戦で決着!! 『全部勝ちたい』
■トライ王ランキング(12節終了時点)
1位 小野澤宏時(サントリー)14トライ
2位 北川智規(三洋電機)13トライ
3位 有賀剛(サントリー)10トライ
3位 長友泰憲(サントリー)10トライ
3位 廣瀬俊朗(東芝)10トライ
◆もっと行ってみよう
—— いよいよリーグ戦最終節ですが、トライ王を争う三洋・北川智規選手と直接対決を前に1トライ差で1位です
そうですね、そうなんですね。毎年狙っているんですけどね。今の時点でトライ1つ勝ってるということで、変に意識しないで試合に臨めるかなという感じです。
—— 9試合連続トライも続いていて安定していますね
ついていたのか分からないですが、そういうチャンスを増やそうという意識はここ最近ずっとしています。自分が忘れていたわけじゃないんですが、エディーさん(ジョーンズ/GM)にもボールタッチを増やすように言われたり、土田さん(強化本部長)にも「いつトライするんだ」と言われたりしていて、とにかく「ボールタッチを多くして仕事を多くしろ」ということを言われるので、ポジションから離れるというか、ウイングの位置から離れて、ターンオーバーした時にすぐに反応できるようにだったり、プレーに保険をかけてるというわけじゃないですが、いちばん基本的な"ボールをたくさん触る"ということで、仕事量を増やせていると思います。
本当に初歩の初歩のことなんですが、それを今はある程度リスクを背負って自分の持ち場から離れてでも出来るようになっています。言葉で説明するのはすごく難しいんですが、とにかくボールにたくさん触れば、トライするチャンスも増えるという感覚かなと思います。
—— そこが今年いちばん変わったところですか?
変わったというか、「もっと行ってみよう」という意識になったというところですね。もらう形とか、ここでこうもらおうということより、どこでもいいからボールをもらおうという感覚です。どこでもいいからボールをもらうということに関して、怖さが抜けたという感じです。
—— オフェンスとディフェンスのバランスが昨シーズンより変わったということですか?
チームのブレイクダウンが安定してきて、クイックボールが出るということも関係していると思うんですが、自分の意識だけじゃなく、チーム力という部分でも思い切ったポジション移動で、オープンサイドに回れるということもあります。自分の意識も、"もっとボールを触ろう"という風に変わっています。
—— ポジションミスで大ピンチを招くようなことはないですよね?
今年はないですね。たぶんこれまでもそんなに大ピンチになるようなことはほとんどなかったと思うんですが、どうしてもそうなった時のことを考えてしまうんですよね。それで思い切って行けないというのが、今まででした。
◆忘れてたな~
—— 考え方、やり方が変わった中で、自分自身はどうですか?
自分自身は今、こういう感覚を「忘れてたな~」と思うときもあるし、ボールをどうもらうにせよ「そうだよな~」という感覚もあります。社会人1年目の頃の、何も知らなかった頃のような感覚があります。
—— 脚力はどうですか?
全然問題ないですね。感覚として落ちてるという感覚もないですし、上がっているという感覚もないですね。正直なところ、そこまでやりこんでいないという感じです。
—— サイドにステップしてそのまままわり込んで、ライン際を走りきってトライというシーンが今シーズンは多いように思いますが、去年よりボールをもらった時のスペースがあるということですか?
そうですね。
—— チーム全体の得点も失点も上位を争っていますが、チーム全体の感じはどうですか?
どこの要素かというよりは、全体が良い方向に転がっているということだと思うので、得点だけ多い、失点だけ少ないということではなく、全体が良いのだと思います。
—— 個人的にトライが多いのは、去年はフルバックも多かったということもありますか?
それもあるでしょうね。
—— 北川選手とは代表で一緒の時に話をしたりするんですか?
まぁ普通には話しますよ。プレーに関してはタイプも違うので、何かを教えたりということはないですし、ウイングの選手はみんな自分がいちばんのランナーだと思っていますから、お互いに気に食わないと思います(笑)。以前、大介さん(大畑/神戸製鋼)ともそういう話になったことがあって、同じチームでも逆サイドがトライを取ってたら面白くない(笑)という話をしました。トライ王を取りたいということは、そういうことなんですよね。
—— 逆サイドの方がトライを取りやすいということなんかもあるんですか?
それはなんとも言えないですね。スクラムなどのセットプレーとか、スクラムのハーフの位置とかを考えると、そういうこともあるかもしれませんが、僕がトライを取ってるシーンを考えると、セットプレーからではない部分も多いので、なんとも言えないですね。不確定要素が多くて分からないですね。
—— いまチームの状態が良い要因は何だと思いますか?
ブレイクダウンじゃないですかね。ブレイクダウンの競り合いで勝っていたり、人数を少なくして球を出せたりというところでしょうね。ただブレイクダウンと一言で言っても、良いブレイクダウンのためにはまずボールキャリアが良く入らなきゃいけないですし、そのためには前のサインプレーが上手くいかないといけないですし、いろんな要素に関係しているんですよね。やはり何かひとつに重点を置いてやるのもいいですけど、今年は部門ごとにしっかりミーティングをして、突き詰めてやっているのが、良い結果につながっているんだと思います。
◆1試合に1つは取りたい
—— あとトライ1つでトップリーグ70トライですが、後ろを振り返ったらそうだったという感じですか?
そうですね、数えてないですね。
—— 現在12試合で14トライですが、当初の目標はあったんですか?
やっぱりトライを取れなかったらウイングとして寂しい気持ちになるんで、1試合に1つは取りたいと思っていました。
—— 今後1シーズン20トライは可能な範囲という感覚ですか?
行けるんじゃないですか?けどやっぱりいちばん大事なのはチームが勝つことですから、そのためのプレーにはなっちゃいけないと思います。
—— 13節の三洋戦はチームのリーグ戦1位とトライ王の両方がかかっています
そうですね。プレーヤーである以上はまずは勝ちですね。トライ王を意識しないと言ったら嘘になっちゃいますが、まずは勝ちですね。どうあれ勝ちたいです。
—— 三洋とはプレーオフでも日本選手権でもまた当たると思います
全部勝ちたいですね。自分の仕事がボールキャリアとしてチャンスを作って少しでもボールを前に出すことですし、その結果がトライになればいちばん良いですね。勝ち負けに関しては、負けることなんてイメージして試合に臨むことはないので、そこは勝ちに行くのが当たり前です。
—— 不安な材料はありますか?
なんでしょうね、今年は体調管理じゃないですかね。ウイルス性の風邪とかはやっぱり怖いですね。インフルエンザはもちろんですが、それ以外にもいろんなウイルスがいますからね。見えない敵は怖いです。自分で免疫が低下するようなことはやめよう、ということくらいしかできないじゃないですか。うがい、手洗い、体を冷やさない、そういうことしかないと思うんですけど、そういうことがいちばんチームとしては怖いと思います。
—— 東芝戦ではキックも良かったですね
あれはまぐれです(笑)。フルバック1人だったら勝負していたと思うんですが、2人いましたし、中からライアン(ニコラス)の声も聞こえていたので、蹴ってみたら上手く行っただけです。1人だったら勝負して、最低でもライン際でオフロードでトライという感覚は持っているので。
—— 今年はトライ王を取りますか?
とにかく取ります!
—— 今まではあまりそうやって宣言していませんでしたよね?
そうですか?
—— 「取れたら取ります」ぐらいの印象でしたが
昔から取りたいとは言ってるつもりですよ。もちろん「取れたら取りたい」ですが、僕としてはいつもと一緒で、取りたいです。やっぱりラグビーはチームスポーツですから、個人として最大限の準備はしますが、その準備や努力が必ず報われるわけじゃないというのが、このチームスポーツとしていちばん人数が多いラグビーだと思います。
自分としてはいつでも取りたいです。そう思うのはさっき話したように、プレーがそう変わっているからかもしれません。今まではボールを待って待って待ち過ぎていたところを、今年は自分からボールをもらいに行って、とにかくボールを触るようにしているので、そういう部分での感じ方かもしれません。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)