2009年11月12日
#180 山岡 俊 『シンプルに強みを出して思いっ切り』
◆シンプルにやれるようになった
—— 開幕戦から前半戦の7試合、全て2番で出場しましたが、好調ですか?
そうですね。体も気持ちの部分も調子いいです。
—— 振り返ってみて、調子が良い要因は?
大きく去年と変わったことはないんですが、プラスされた部分として、ブレイクダウンに注目してやってるというところですね。もともと「自分の強みは何だ」って考えたときに、そういうところでの仕事だったり、ディフェンスの部分なんですが、今までももちろんやっていたんですが、30歳を超えて、そこをシンプルにやれるようになりました。
求められる仕事に対して、まだまだなんですが、より質を求めてやっているところが評価されているのかなと思います。後はセットプレーで、よりリード出来るようになったかなと思います。
—— フロントローの両サイドは若いメンバーですが、その辺のリードはどうしていますか?
組み方云々の部分では、2人とも能力がある選手なので、「こうやって組め」というのは多少ありますけど、ほとんどないですね。そういうことよりは、相手へのプレッシャーのかけ方だったり、試合の中でポイントとなる場面で声をかけてリードしています。それはプロップ2人だけにではないですね。ベテランとして、そういうところで声をかけるようにしています。スクラムというよりは、もっと全体的な部分ですね。
—— 今年調子の良い長谷川選手はどうですか?
あいつも、このインタビューで10数キロやせたと書いてありましたが、圭太も自信を持って出来ていますね。もともとは器用で走れるプレーヤーだったので、今回オフからしっかり管理してやった結果が出ているので、自信を持って出来ているんでしょうね。
僕が言う立場ではないですが、今フロントローの5人の仕事量が求められている中で、求められていることに対して全て応えられているかと言ったら、まだまだな部分はありますね。それでも自信をもってやっているなという部分は感じます。
—— 顔つきが違いますか?
そうですね、痩せてちょっと締まってますね(笑)。「こうしてほしい」ということも言ってくることがありますが、それがもっと増えると、より違ってくると思います。スタメンを狙っている奴らはいっぱいいますから、そいつらにアピールする意味でも、もっともっと積極的に来たら、もっと仕事が出来るんじゃないかなと思います。
—— 今シーズンのスクラムに関してはどうですか?
練習時間が限られているので、去年よりは組んでる回数は少ないと思いますが、試合毎に相手を見て、こういう風に組んで行こうというのは、長谷川コーチと話しています。それをゲーム前に両プロップと話してやっているので、まだ100%ではないですが、それで出せる部分は出せています。練習でイメージを持って、質の高いスクラムを組んで試合に臨んでいます。
—— ラインアウトはどうですか?
どちらかというとまだまだ、もっとレベルが上げられるなという感じですね。試合での獲得率やプレッシャーをかけているというのは数字上では上がっているみたいですが、テンポだったり、質をもっと上げていきたいです。今のラグビーの流れとして、キックが増えてスクラムが減ってきているので、ラインアウトがベースになってきますから、もっと質を上げていきたいです。タイトなゲームになれば、ラインアウトの数も増えてくると思うので、後半戦のカギになると思います。
—— 新人や新外国人とのコミュニケーションはどうですか?
リーダーとスローワーと話しながら組み立てるんですが、最近ではウェイン(ファンニエルデン)が入ってきたりとか、真壁が1年目で入ってきているので、ウェインが来たときのバリエーションを持ったり、メンバーが変わる中でリフトもスローもちょっとずつ調整が必要になってきます。それが狂うとテンポもおかしくなってきちゃうので、そういうちょっとのことを気にしながら、誰が入ってきてもいいように準備しています。
—— この1か月で再調整ということですね?
そうですね。やらないと作っていけないので、良いタイミングですね。
◆いつも通り
—— 昨シーズンの出場試合数をすでに超えていますが、去年は悔しかったですか?
誰でも試合に出たいと思っています。昨シーズンが終わった後に慎さん(長谷川コーチ)と飲みに行って話した時に、「ベテランとかそういうことではなく、もっと自分を出せ」と言われました。元とかが良い例で、しっかり自分を出してやっていますが、それがベテランの仕事かどうかは置いておいて、ベテランとしてシンプルに自分の強みを出して、思いっきりやって行こうかなと思いました。
—— おととしのシーズンは、前半戦のチーム内のMVPでしたね
そうでしたね。
—— そういうことはあまり気にしていないですか?
どちらかというとそうですね。去年はこうだったとかいうところは、多少は考えますが、今年は今年ってことで割り切って、今のことをしっかりやろうと思っています。
—— 肉体的に良くなった部分はありますか?
大きい怪我をしないことがないのが取り柄ですし、今年は試合に向けてコンディションをコントロールできているので、調子が良いなと思うときの方が多いですね。もちろん疲れているなと感じる時もあります。
去年まではあまりトレーナーにマッサージしてもらったりお世話になることは少なかったんですが、今年はしっかりコミュニケーションをとってやるようにしていますし、その時に体のことを確認できているので良いですね。
—— 怪我が少ないというのは体のバランスが良いんでしょうね?
そうなんですかね?新田コーチに言わせると、体のバランスはそんなに良くないそうです(笑)。
◆お前もやれや
—— 試合前に決まってやっていることはありますか?
生活のリズムとしては大きく変えませんが、試合前に元とお茶したりとかっていうくらいです。リラックスしています。
—— どの辺から緊張していきますか?
僕は試合の日に朝食を食べて新聞を見ながら他の試合の情報とかを見たりして、それからストレッチをしたりという流れですが、寝ないようにしています。気持ち的に高めているわけではないですが、体を試合に向けて起こして行って、ジャージ授与の時にはいいイメージになっているようにしています。
—— 試合前でもペースをあまり変えないんですね?
「調子良い?」って聞かれて「調子良い」というふうに答えたくないんですよね。「いつも通り」でいたいですね。
—— 去年まではジャージ授与にはスーツで出ていましたが、今年は違いますね
スーツで行っていたことに特に意味はなかったんです(笑)。他のみんなは練習できる格好で行って、スーツはケースに入れて持って行く人が多いですが、僕はケースが荷物になるのが嫌でスーツを着ていただけです。
昔、洋司さん(長友/前監督・現キヤノン監督)が現役の時にいつもそうしていて、その時に「ラグビーは紳士のスポーツだろ」と言ったことがあったんです。別にそんなに深い意味はなかったと思うんですが、それで「お前もやれ」と言われてそこからそうしていたというのもあります。
—— 当時は2人だけスーツでしたか?
だったと思います。別にルーティンではなかったんですが、たまに着ない日があると、慎さんとかに「あれ?着ないの」とか言われて茶化されてました。今シーズンの前半はナイターが多くて、ホテルから会場に行ってホテルに戻るということが多かったので、それでスーツを着ていなかったというのもあります。要するに、別に特別こだわっているわけではありません。
◆エンジンを大きくした上でシンプルに
—— 今年のチーム全体の勢いは感じますか?
いちばん最初に言ったように、去年をベースに、やることをシンプルにやっているので、そのターゲットに向けて皆が動くようになりましたね。シンプルにみんなが同じことを同じように捉えているから良いんだと思います。
—— コーチの役割が明確化された影響ですか?
それもありますね。それぞれがそれぞれのパートについてシンプルに選手に落としてくれるので、コーチも明確、選手も明確という状態で分かりやすいですね。
—— メンバーがこんなに固定されるのは珍しいですね?
そうですね。試合に出ているメンバーはまだ良いですが、僕もそういう時期がありましたが、出られないメンバーが上に行く気持ちを持って、このウインドウマンスを過ごしていかないといけないですね。それがないとチーム全体の底上げになりませんからね。Bのメンバーがもっとチャレンジして必死にやることで、チームはいい方向に向かっていくと思います。サテライトの試合がありますが、そこに出る選手には頑張ってほしいですし、僕も出たらそこで言っていきたいですね。
—— 後半戦の目標は?
前半戦と変わらずというイメージはありますが、シンプルにしっかりとやるということと、その中で質を高めて、ブレイクダウン、ラインアウト、セットプレーの制度を上げていきたいと思います。それをこの1か月で意識してやって、後半戦はシンプルにより質の高い仕事をしたいと思います。
—— 優勝したシーズンも経験していますが、今チームが強いという感触はありますか?
まだまだ行けるとは思いますが、良い感触はあります。去年より走って、エンジンを大きくした上で、シンプルに皆が考えて動いている感じですね。良い方向に向かっていると思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)