SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2009年10月26日

#177 宮本 啓希 『組み立てるのが好き・考えるのが好き』

◆球を出せ

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—— 第5節でトップリーグデビューを果たしましたが、ここまで長かったですか?短かったですか?

長いと思ってましたね。ずっと出たいと思っていましたけど、Aチームで出てるメンバーとやっていると、「やっぱりまだいろいろ足りんな」と思ってました。そういう中でいきなりチャンスをもらったという感じです。

—— どういうところが足りないと思っていたんですか?

無意識にいろいろなことが出来るという部分で、僕はまだ全然抜けているなと思っていて、上の人はそういったところが抜けずに出来ているなと思っていました。最初は意識してやっているんだと思うんですが、それが身にしみついて無意識にできるようになると思うんです。いま僕は意識してやっている中で、その中でも抜けてしまうところがまだあるなという感じです。あとから「あっ」と思って、抜けてたなと思います。

—— そういうことも減っては来てますか?

減っては来てると思います。なくなるようにしています。

—— ホンダ戦に出場できたことに関して、自分のどこが評価されたのだと思いますか?

ずっとフルバックをやっていて、大学ではスタンドオフをやっていたんですけど、その辺のことを敬介さん(沢木コーチ)と話していて、「ちょっとやってみろ」と言われました。それでサテライトの三洋戦にセンターで出たんですが、結構タックルされてもボールをキープ出来たので、その試合でのプレーがよかったのかなと思います。前に出られていたと思います。

—— 前に出るというのは、自分のプレーで意識しているんですか?

そうですね。高校の頃からずっと「何でもいいから球を出せ」と言われてやってきたので、そういう気持ちはずっと持ってやっています。

—— 途中出場でいざグラウンドに入って行く時の心境はどうでしたか?

あんまり緊張するタイプではないんですけど、出てから上手くいかないプレーが続いたりすると、「あれ、あれ」となってパニクっちゃうタイプなので、それだけはなくそうと、たくさんボールを触ろうと思って入りました。

—— 「あれ、あれ」となってしまうときは?

だんだん歯車がくるってくると、それが重なって大きくなってきちゃうんですよね。僕はそうなると全然だめなんで、エディさん(ジョーンズ/GM)にも「最初はボールを持ったら前に行くだけでいい」と言われていて、トゥシ(ピシ)を見ていても、ダイレクトプレーだったり、自分で仕掛けていくプレーが多いので、自分もそういうプレーをしようと思っていました。実際ホンダ戦では、そういう場面より、スペースがある状況が多かったんで、そういうプレーはなかったんですけど、とにかくバタバタしないようにしようと思っていました。

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◆組み立てる

—— 得意なプレーは何ですか?

感じるものなんですけど、「ここでこう行ったら、次ここにスペースが出来て、そしたらここにポイントが出来て...」という流れの予測の部分は結構できる気がします。その通りに行かないことも多いんですけど、そうやって自分の中で組み立てるのが好きですね。ずっとフルバックをやっていて後ろから見ていたからかもしれませんけど、次どこにボールが動いてというのを考えるのが好きでした。

—— 昔からそうですか?

そうですね。5歳からラグビーをしていて、奈良県の生駒ラグビースクールというところでやっていたんですけど、当時はほとんど何も考えずにやっていましたが、中学校2年生くらいからそういうのを考えるのが好きになってきました。

—— グレーガン選手のポジショニングはかなり参考になるんじゃないですか?

すごいですよね。いつもボールが来そうなところにしっかりいますね。ホンダ戦で相手の外国人選手が抜けてきた時も、ジョージが倒して、それを見たときに「これが世界一のプレーなんやな」と思いました。その後もビデオで巻き戻して何度も見ました。

—— 5歳でラグビーを始めたきっかけは?

祖父がラグビーをやっていました。高校で自分で友達を集めて始めたそうです。そういう話から、母親が「ラグビーの血をひいてるかもしれない」ということで、僕が行きたいと言って始めたのではなく、ラグビースクールに母親に連れて行かれたのが始めです。

—— お父さんはやっていなかったんですか?

お父さんはやってないです。お父さんはいろんなスポーツをやっていたみたいです。

—— お母さんは?

お母さんは運動神経が良いですね。ずっと水泳をやっていたそうで、子供のころに一緒にプールとかに行ったとき、見て上手いなと思ってました。

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◆ラグビーは何でもできる

—— 他のスポーツはやらなかったんですか?

僕はいろいろやりました。ラグビーもやってたんですが、小学校4年くらいで一度ラグビーをやめたくなりました。その時はずっと野球を見ていて、「野球面白いな」と思いました。それからミニバスケをやったり、サッカーをやったりもしていました。

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—— 他のスポーツに転向という気持ちはなかったんですか?

サッカーもすごく面白かったんですけど、やっぱりラグビーでしたね。サッカーだったらボールを蹴りますよね。野球は打つ、バスケは投げる。でもラグビーは何でもできるというところがよかったんでしょうね。当たってもいいし、キックもいいし、ステップもいいし、投げてもいい。「あ。ラグビーってええな」と思ってそれからはラグビーですね。

—— ラグビー選手は相手とぶつかるのが好きで始めたという人が多いですが?

僕はぶつかるのはそんなに好きじゃなかったですね。何でもできるというところが魅力でした。

—— 何でも出来たんですか?

小さい頃は、5歳からやっていましたし、よくビデオとか見るのも好きだったので、その真似をしたりしていました。

—— あこがれの選手はいましたか?

神戸製鋼の平尾さん(誠二/神戸製鋼総監督)がスルスル抜けていくのが衝撃的でしたね。僕が小学校の時は神戸製鋼が7連覇とかしてた時だったので、よくテレビでも見てました。

—— ラグビーをずっと続けようと思ったのはいつですか?

中学校に入るちょっと前です。

—— 早いですね

天理中学に行ったんですが、天理中の先輩に誘われて、そのまま天理高校も行けるし、いかんせん勉強が出来なかったので、ラグビーで行こうと決めました。中学校に入っても数学とかが苦手で、テストの点も良くなかったんですが、先生に「とにかく授業中静かにしときなさい」と言われ、それを言われたときに、「あ、おれ勉強できんのや」と自覚しました。それから「ラグビー頑張ろう」と思いました。自分でノートに字を書いててもしっくりこなかったですからね。なんかちゃうな~って感じで。

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◆ずっと走っていた

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—— 中学校でのラグビーはどうでしたか?

陸上部みたいでした。ずっと走ってましたね。ボールなんてほとんど触らない日もありました。とにかくずっと走ってました。

—— 高校は?

高校もそのまま天理にスポーツ科で入って、スポーツ科というだけあって、普通科と比べて授業も少なく、3年間ラグビーに没頭したという感じでした。

—— 思い出はありますか?

中学校から繋がっている思い出なんですが、中学で啓光学園に負けて、高校でも啓光に負けて、結局啓光に勝てずに終わったんです。それがずっと悔しかったですね。

—— 大学はどう決めたんですか?

関東に行きたいという気持ちもあったんですけど、同志社の試合を見て、関西でやって関東に勝ちたいなと思って、それだったら同志社に行くのがいちばん良いかなと思っていた時に、ちょうど同志社から話をいただいて決めました。

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—— 関西に思い入れがあるんですか?

そうなんですかね。その時はまだ分からなかったですけど、ずっと住んでましたし、ちょっと離れたくないなという気持ちはあったと思います。

—— 大学時代の印象的な出来事は?

1年から試合には出させてもらっていたんですが、肩を脱臼していて、監督に「ディフェンスがだめ」と言われていて、毎日後練でタックルやらされていました。それでもやっぱり強く当たるたびに方が抜けるんで、怖かったですね。3年になるときに手術して、それからは一度も抜けてないですね。

—— 今は全然問題ないですか?

大学の時よりは全然行けています。

—— その後サントリーに入ったんですね

トップリーグに行くか、ひとつ下のリーグに行くか迷っていて、トップウエストのチームから話を頂いてはいたんですが、高校の時にお世話になった先生がサントリーの方と関係があって、その先生に「トップリーグでやりたくないんか」と言われ、「興味はあります」と答えました。

サントリーでは仕事もしながらラグビーが出来るということで、将来のことを考えてもサントリーのほうがいいなと思っていました。それから親にも相談したんですが、そこで親に怒られて「自分のほんまの気持ちとちゃうんやったらそっちを選ぶな」と言われ、それで「あ、やっぱりサントリーに行きたいんや」と思って、決めました。

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◆長い時間ゲームに出たい

—— サントリーに入ってみてどうすか?

最初の1か月か2か月は「ほんとに来てよかったんかな?」と思ってました。

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—— それはレベルが高いということですか?

そうです。大学とかでもずっとテレビで見ていた選手やスターと呼ばれる選手ばかりで、ずっと来てよかったのかなと思ってました。

—— 平選手とは先輩後輩ですね

そうですね、でも大学は入れ違いです。

—— 相談などはしましたか?

入るときに何回か電話をさせてもらったりしました。

—— 何とかなるかなと思いだしたのはいつごろですか?

まだ思ってないです。まだ全然思わないです、いまでも怖いです。

—— 今年の目標は?

長い時間ゲームに出たいですね。

—— 長い目で見た目標はありますか?

まだ見えてないですね。まだ出させてもらった試合で結果を出すことだけですね。

—— 試合の流れやプレーの流れを読むのは得意でも、ラグビー人生の流れを読むのは難しいということですね?

それはあまり大きく書かないでください(笑)。「何を調子のったこと言っとんねん」と言われちゃうので(笑)。

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◆ヒーハー

—— 監督室(清宮監督オフィシャルブログ)やスマイルカフェでも話題に上がっている、"ヒーハー"というニックネームの由来について教えてください。

"帰れま10"(テレビ朝日「お試しかっ!」)というテレビ番組のコーナーがあるんですが、ファミレスの人気メニューの1位~10位までを食べながら全て当てないと帰れないという企画があって、それを見て大悟さん(山下)が「お前、小杉(竜一=お笑いコンビ"ブラックマヨネーズ"のツッコミ担当)に似てんちゃう?」といったところから始まり、その番組で、小杉さんが人気メニューの1位から10位までを当てるまで食べ続けてヒーハー言いながらやっています。そこから"ヒーハー"と呼ばれるようになりました(笑)。

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—— それから他の選手もそう呼ぶようになったんですね?

いったん波が去ったんですけど、隆道さん(佐々木)がまたヒーハーの波を連れてきました(笑)。監督も結構ヒーハーが好きみたいで、この前のホンダ戦のミーティングの時に、「ヒーハーって何だよ?」という話になって、「おれ好きなんだよ~」という話にもなりました。その日はそれから1日ヒーハーのラッシュですね(笑)。似てる似てると先輩たちが言っているのが監督の耳に入って、監督も好きだったということで、「お前ヒーハーTシャツ買ってこい」とか言われたりしました(笑)。

—— その後も盛り上がっているんですか?

その後も、会うたびに誰かに言われます。ほとんどが先輩ですけど。

—— 大食いですか?

僕は大食いではないですね。でもこれからヒーハーがどうなっていくのか、自分でも楽しみなのか何なのか、よく分からないです。今はまだ振られても恥ずかしさが出てるんで、それをなくせと言われるんですが、このキャラでやっていかなきゃいけないのかなという気持ちも少しあります。

—— 最後にファンへのメッセージをお願いします

本当に長い時間試合に出られるように毎日頑張るだけなんで、出る時は是非「ヒーハー」と叫んで応援してもらえたらと思います。応援よろしくお願いします。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)
[写真:長尾亜紀]

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