2009年10月20日
#176 高谷 順二 『反骨精神』
◆どんどん発言
—— 今年、Bチームのキャプテン役をやっていますね
今年の6月くらいに、TT会(高野貴司コーチ主催の定例食事会)をやってる時にそれらしい話をされました。京王線の聖跡桜ケ丘のお店に僕と佐合と太一(田原)など、当時Bチームのバックローのメンバーで集まっていました。そこで高野さんが「このチームはBチームのメンバー、特にお前たちバックローのメンバーが元気でいてチームを引っ張っていかないと、チームが良い方向に進んで行かない。Bチームのメンバーが力をつけてAチームのメンバーに圧力をかけ、試合に出られるチャンスを掴んだりすると、チームが活気づいてくる」という話をされたんです。
高野さんがBチームの監督をやっているので、そういう話をされて、その時に「今年はBのキャプテンを佐合か順二にするよ」と言われたんです。僕らは驚いて2人で「え?僕たちしゃべりも上手くないし…」という感じだったんですけど、そこから練習の時でも少しずつ意識するようになってきたという感じです。
夏合宿から本格的にAとBが分かれてきて、Bの試合の時にキャプテンを務めるようになったという流れです。
—— TT会はAチームで試合に出るチャンスをつかんでメンバーは卒業して行くんですか?
卒業はしないです(笑)。あくまで“TT会”であって、“Bチームのバックロー会”ではないので。佐合とか太一とかがどんどん発言するようになったりして、僕のサポートをしてくれるようになってほしいと思います。そうすればBチーム全体の底上げになりますからね。チームにとってもプラスになります。スクラムに関しては伊勢田(彬人)がうまくまとめてやってくれていますし、ラインアウトに関しては太一に任せっきりですから、ブレイクダウンのところは、僕と違う考えとかを佐合が言ってくれていますし、すごくありがたいです。それから精神的な部分ではハレ(ティーポレ)がすごくいいスピリットを持っていて、みんなにいい影響を与えてくれています。
—— 名前の出たメンバーを聞くと、外から見ているとあまりしゃべらず、おとなしい感じの選手が多いですね
そうですね。やはりみんな意識してやってくれているということだと思います。
—— そういうポジションなんですかね?
黙々とやるタイプは多いですよね。今まではあまりしゃべる機会もなかったし、去年までは元さんが圧倒的な存在感で引っ張っていてくれましたから、みんなそれについていくという感じでした。その元さんがAチームに定着して、ポジション柄、僕がしゃべらなくてはいけなくなったという部分もあります。
—— ポジション的に体を張ってプレーで示すということも多いですよね
そうですね。それを求められているとも思っています。体を張ったタックル、低く入るタックル、そういう地味なプレーを頑張ってプレーで引っ張れというところは、いちばん初めに高野さんにも言われました。また、バックスのことは僕はあまり分からないんですが、曽我部とかが、「バックスのことは僕らがゲームプランも考えてやるんで、順二さんはフォワードのことと、体を張るプレーを頑張っていてください」と言ってくれています。
—— 心強い後輩ですね
本当にそうですね。
◆ストレスをいい方向に
—— そういう状況の中で、ここのところ試合ではいい結果が出ていませんね
そうなんですよね。夏合宿の1発目のヤマハ戦がすごく良くて、その後、先日のサテライト三洋戦までですが、何が良くないかというと、やっぱり気持ちの面では、上にAチームがいて、何で入れないんだろうというメンバーもいて、そういった不満やストレスが悪い方向へ向いてしまっているメンバーもいるんだと思います。
—— 今年は例年よりトップリーグに出るメンバーがあまり変わらないですね
そうですね。けが人が出なくてチームとしてはいいことだと思うんですけど、やはりまだBチームのメンバーの力が足りていないんでしょうね。もっとストイックにやっていって、Aチームで出られるように頑張っていかないといけないですね。
—— そのためにも、サテライトリーグで結果を出したいですね
みんなストレスは感じていると思うし、Aチームに入れなくてストレスを感じないようではダメですからね。そこの葛藤をいい方向に向けられたら、変わってくると思います。そういう環境、雰囲気をつくらないといけないですね。
—— そういう話はグラウンドの外でもしますか?
よく話しますね。普通にご飯食べに行っても、自然とそういう話になっちゃいますね。
—— 話はどういう風になるんですか?
最終的にはみんな頑張ろう、やるしかないという話になります。もちろん練習などはAチームの試合に合わせて組まれるわけですから、サテライトの試合ではコンディションが万全でなかったり、遠征の試合でも日帰りだったリしますが、それは乗り越えなくてはいけないですね。それを乗り越えたところで、何かが得られるんだと思ってやっています。
—— 今の雰囲気はまだストレスのコントロールが上手く出来ていないというところですか?
そうですね、前回の三洋戦が終わって、ミーティングでエディ(ジョーンズ)さんにも監督にも結構厳しいことを言われました。それを言われてすぐの練習では、みんなすごく気持ちが入っていて、すごく良い練習が出来たんです。それはみんな「そんなこと言われたくない」という反骨精神だと思うんですけど、そういう気持ちをいつも持ってやることも大事ですよね。そういう気持ちをずっと持ち続けることって難しいことなんですけど、持ち続けてやっていけたらいいなと思います。
◆Bチームではなくサンゴリアス
—— 大学や高校ではリーダーのポジションはやっていたんですか?
高校はキャプテンで大学ではバイスキャプテンでした。
—— 社会人と比べてどうですか?
社会人はぜんぜん違いますよ。それぞれがやっていることもみんな分かってますし、やはり大人ですから、考えていることもある程度理論がありますし。
—— 感じるストレスも高度なストレスなんですね
そうですね。ただのわがままなストレスではないですね
—— Bチームの目指すところに対して、いま何号目という感じですか?
まだまだですよね。Aチームとやっていても、違うなと感じますからね。
—— 練習ではどうですか?
練習で僕が感じるのは、去年、一昨年よりもかなり激しくなりました。それはすごくいいことだと思います。僕はBチームが長いので、ずっと感じていたのは、例えばアタックディフェンスの練習の時、Bチームは「台」みたいなものでした。それが高野さんが監督になって、去年から徐々に変わってきたのは、「どんどん噛みついて行け」と言われて、それをみんなが分かって、本当に激しい練習ができるようになりました。
—— ほかに気をつけていることは?
基本は僕も含めて僕らはBチームではなくて、あくまでサンゴリアスというチームの一員なので、目標というのは、トップリーグに出て優勝することですから、やっぱりBチームがチームとしてまとまっちゃいけないんです。上手く伝わるかどうか難しいんですが、BチームはBチームとしてまとまるというのは良くないことなんです。サンゴリアス全体としてまとまって、AチームとBチームが違うチームになってはだめなんです。
そういうことも含めて、僕自身もBチームのキャプテンとしてAチームに噛みついていくのではなくて、個人としてAチームで試合に出られるように噛みついていく意識でやっていますし、ちょっとメンタルが落ちている選手を見かけても、そういう選手に関しても、声をかけるようにしています。
—— 次のサテライトの試合はいつですか?
11月1日にリコー戦、その後11月7日にNTTコミュニケーションズ戦です。
—— その試合には出ない状態になっているのがいちばん良いですね。
それを言うと難しいですが(笑)、そうですね。Aチームに入ることが目標ですからね。
◆声が返ってこない時は辛い
—— サンゴリアス全体を見て、今年はどうですか?
エディさんと清宮監督とコーチ陣の役割分担がすごく明確化されていてるなと感じていて、フィットネスなら若井さん、ストレングスなら新田さん、セットピースは慎さん(長谷川)、ディフェンスは敬介さん(沢木)、そういうことが分かれているので、選手としてはやりやすいです。「ここがちょっと分からない」という時に、誰に聞けばいいのかがはっきりしていますから。選手はすごくやりやすい環境です。選手からの意見も言いやすくなっていて、次の練習から試したりもできます。
—— 選手側はどうですか?
今はある程度メンバーが固定されているので、やはり毎週試合をしている選手のモチベーションと、Bチームのモチベーションにはどうしても差が出てきます。もちろん体調に関しても同じことが言えると思います。でも、いつ試合に出られるか分からないですし、チャンスが巡ってくるか分からないので、常に準備をしておかなきゃいけないなと、僕は思っています。それはみんなしっかり思っていると思います。
—— キャプテン役で辛いこと、面白い事は何ですか?
辛い事は、僕が声を出して引っ張ろうとした時に、声が返ってこない時ですね。これは辛い(笑)。試合中にしても、練習中にしても、「おい、ここ頑張ろう」といった時に、声が返ってこない時ですね。やはり先ほども言いましたが、おとなしいタイプが多くて、闘志を内に秘めて頑張るタイプが多いので、そういうことがたまにあります。そういう面では青木とかがいてくれると嬉しいです。自分から声をどんどん出してくれるので、感動しちゃいます。
Aチームのメンバーを見てると、逆にそういうタイプが多いですよね。しっかり自分でアピールして、声を出して盛り上げるのも上手いですし、そういう部分でも長けてるメンバーがAチームにはいるんですよね。Bチームはコツコツ型が多いんです。まじめにコツコツしっかりやっているんですけど、やはり最後のそういう部分というのは、自信がないとできない部分なんだと思います。僕も社会人1、2年目は自信もなくて、発言なんて全然できなかったですからね。3年目でようやくリザーブに入れるようになって、決勝でも出る機会を与えてもらえて、本当にその辺からですね。ようやくその辺から自信が持てて、自分の役割もわかってきたという感じですね。そこがいちばん違うところじゃないですかね。
—— 嬉しかったことは?
逆ですね。僕の声に反応してくれる時です(笑)。曽我部にしてもそうですが、どんどん入ってきてくれて、どんどん発言してくれて、うるさいくらいの時があるんですが、そういう時って良い時なんです。
—— 今年の目標は?
まず、絶対に怪我しないことです。これまで怪我が多くて、それで試合に出られないことも多かったですから、まずは怪我をせずに、試合に出るチャンスを失わないというところですね。そしてチャンスがあれば試合に出て、結果を出して、それがチームの勝利に結びつくように頑張っていきたいですね。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)
[写真:長尾亜紀]