SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2009年7月 1日

#170 早野 貴大 『9月の開幕の時に100%』

※サンゴリアス最年長選手“ベテラン”早野選手に新シーズンへの意気込みを聞きました。

◆上手く乗せられて

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—— いつ頃から“チーム最年長”選手になったんですか?

坂田さんが引退してからなので、最年長選手になったのは去年からですね。正確には、ジョージ(グレーガン)がいるので、日本人選手最年長、ということになります。

—— 意識するところはありますか?

意識はあまりしてないですね。年齢的には僕が上ですが、去年までいたメンバーも含め、ベテランと言われてるメンバーとは同じ感じでやっています。

—— どちらかというと、選手より監督が早野選手のことを「ベテラン」と言うことが多いですね?

僕以外にも言ってますが、たまに「さん付け」で呼ばれたりもしますね(笑)。上手く乗せられています。

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—— 試合やグラウンドでは関係ないと思いますが、コンディショニングや秋に向かっての調子の持って行き方が、若手とは違うと思います。どう意識しているのでしょうか?

単純に入社5年目くらいまでのメンバーと同じことをやっていたら、途中で止まってしまうので、そういうところはコーチや監督に理解して頂いていて、しっかりと9月の開幕の時には100%の状態になるようにしてくださいと言われています。任されている責任の重さはありますが、自分のペースでやっています。

—— メニューは自分で考えてやっているんですか?

トレーニングメニューは、今の時点では怪我というよりは消耗している部分をメンテしながら100%に近づけていくという段階なので、どちらかというと、リハビリに近い感じでメニューを組んでもらっています。ウエイトに関しては、ここ何年か任せられているんですが、あまりやっていないですね。必要なことをやっているという感じです。

—— オフの間に使わなかったところを、また動かすという感じですか?

厳しいことを言えば、「そんなことはオフの間にやっとけ」という話なんですが、休んで仕事したりするのも大事なので、今やることは、9月からの公式戦に向けて100%に持って行くという段階です。オフがどうだったというよりは、9月に100%の状態でいられるか、その前からチームに合流して試合で戦えるかということを、今いちばん気にしてやっているところです。

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◆去年と似ている

—— そういう春の過ごし方にしたのはいつ頃からですか?

一昨年くらい、33歳くらいからですね。

—— それは自分で自分の体の変化を感じてなんですか?

もちろん自分でも感じていますが、トレーナーの方にもオフ中にメディカルチェックとかをしてもらうんですけど、怪我というよりは、痛いだろうなという膝の状況があったりするので、そういう中で「いつ無理をするか」という話をするんですけど、今は無理をしないでやりましょうということになっています。これは別に珍しい話ではなく、若いメンバーも同じだと思いますが、そういう話をした上で、僕はここ数年、春のシーズンはあまり負荷をかけないようにして、9月に万全になるようにしています。

—— 去年はそのやり方で上手く行きましたか?

そうですね。結局最後には試合にも出られましたし、大事な時期に試合に出られる状態だったという意味では、上手くいったかなと思っています。

—— そうすると、ある程度去年と同じやり方をしているんですか?

そうですね、たまたま膝の状況なども去年と似ている感じなので、そういう面では似ていると思います。

—— 以前インタビューをした時に、こうしてベテランになってもプレーをしているのは「キャプテン時代の罪滅ぼしだ」と言われてましたが・・・

言いましたっけ(笑)?

—— 今もそう思っていますか?

罪滅ぼしかどうかは置いておいて、恩返しではありますね。ラグビーをやらせて頂いている会社に対してもそうですし、会社の社員の皆さん、上司、同僚に対してもそうですし、そういう面では恩返しですね。ラグビーに関して出来ることをしっかりやることが僕の仕事かなという感覚です。

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◆土台をもとに肉付け

—— チーム全体の今年のテーマや目標は、早野選手はどう考えていますか?

ナチュラルにラグビーをするということで、チームも一生懸命練習をしていますが、練習したことがすべて結果につながると思います。それもある意味ナチュラルということだと思うんですけど、今はしっかり練習もできていますし、これをしっかりやらなかったらダメだということもしっかり出来ています。

いろんなことを意識付けできていますし、やるべきことはやってるのかなと思うので、しっかり出来ていると思います。人それぞれチームの中での役目もありますし、怪我してるメンバーもいますし、ジャパン(日本代表選手)は今いなかったりしますが、とにかくラグビーをしっかりやってるのかなと思います。

—— ここ何年か上位の強豪チームという括りには入ってますが、そこから頂点へ抜け出せないという状況ですが、その辺はどうですか?

毎年毎年100%やってるつもりですが、最終的には上手くいかない部分があったり、上手くいく時と上手くいかない時とあったりなので、今は去年足りなかった部分をしっかりやっていて、走ったりもしてるんですが、公式戦が始まったらそれに肉付けしていく感じです。今はそういうナチュラルな部分をしっかり植えつけていて勝負できているなと思います。

最終的に決勝とかになってくると、お互いに手の内も分かっている状況になるので、キープレーもそんなに秘密兵器にはならないこともありますし、そういう意味では今の部分は今後の役に立つと思いますし、いま春にこれだけやっているということが、今後の力になると思うので、それはそれで秋につながってくると思います。

去年は去年でそこが足りなかったというわけではないと思うんですけど、やっぱり練習がどうとかじゃなくて、去年最後走り切れたかというと、全員が自信もって走ったと言えないと思うので、そういう部分を今しっかり明確にして、この土台をもとにいろいろ肉付け出来ていけばいいのかなと思います。

—— いろいろな時代を経験している中で、春の感じがこうだと、シーズンはこうなるということは分かってくるんですか?

春夏だけではやっぱり完全には見えないですね。春夏負けていても、秋に強いなと思うこともありますし、勝ち進んでてもしっくりこないことや、完全に全然負ける気がしないという時代も経験しましたし、今の時点では全然分からないですね。

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◆体力の限界はちょっと前から

—— グラウンドに出たら若手もベテランも関係ないと思いますが、ベテランとしてこういう部分でチームのために貢献しなくてはいけないなという部分はありますか?

グラウンドに出て一緒に練習するという時は、ミスやボーッとしているようなプレーはできないですよね。ベテランなので、練習の中の1つ1つのプレーに、どれだけ神経を使ってやれるか、1つのプレーをどれだけ意識してやれるかというところですかね。

—— 現役を考えるときは、とりあえず1年1年ですか?それとも3年後を考えたりするんですか?

完全に1年1年ですね(笑)。ここ何年か1年ごとに考えていて、まだ状況が変わらないので今年もこうやって現役でやっていますが、どういう状況になったらどっちに転ぶのかがまだ分からないですね。体力の限界はもう割と来てますからね(笑)、ちょっと前から。そういう面で言えば、辞める理由はいつ来るか分からないですね。

—— 体力の面では衰えてくる部分はあると思いますが、逆にこういう面では成長しているという部分はあるんじゃないですか?

去年でという話ではないんですけど、やはりリザーブで出る機会が多くなってきて、怪我人が出た時などにポッと入ることが多くなるんで、そういう時にいち早くどういうプレーをするか、何をするべきか、そこを集中して出来るように、リザーブの時はいつ入っても大丈夫なように心構えは持っています。ここ2~3年はそこに集中して出来るようになってますね。

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—— そういうノウハウを後輩に伝えていく事は出来ないんですか?

それは難しいんじゃないでしょうか?口で伝えるのは難しいと思います。生活のリズムにしても、心構えにしても、俺はこうだということが正解かどうか分からないし、人それぞれの部分もあると思います。プレーにしても、僕がその状況でやったプレーが必ずしも正解かどうかわからないというのはありますからね。

そういうことをいろいろ教えていくのはもちろん教えていきますけど、僕だけじゃなく、コーチがいて監督がいて、それぞれから言われたことを、最終的に判断してプレーするのは本人ですからね。そこが単純に教えるということは難しいところですね。

—— 考える癖を付けるとか、なぜラグビーをやっているかということを意識させるということはありますか?

それはみんなやってますし、監督やコーチもやってますよね。やっぱり僕個人としては、こうやってベテランという立場になって、下にいろんなことを伝えていかなければいけない立場になって、やはり伝えるということの難しさを感じています。

基本的なプレーのことはいいんですけど、感覚的な部分とかは難しいですよね。たまに自分で言っててさっきと言ってることが変わっちゃってるのかな?と思う時もありますからね。難しいです。絶対こうだということって、スポーツではなかなかないですからね。

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◆ラグビーを辞めたらわかる

—— 食べ物や睡眠時間とか、生活面でも気を遣っているんですか? 申し訳ないことに、まったく気を使ってません(笑)。そういうタイプではないんですね。全くと言うと聞こえが悪いですが、普通の人並みだと思います。甘い物を食べるのはやめようかなとか、その程度です。

—— 早野選手の後、3人キャプテンが生まれましたが、佐々木新キャプテンに感じることは?

そうですね、隆道は根っからのキャプテン男なので、先輩後輩というよりは、チームのキャプテンということでしっかりサポートしていきたいですし、キャプテンという一面も後輩という一面もありますが、あいつにはよく茶化されてるんです。

あいつ曰く「年が離れてるから僕みたいな奴が茶化さないとつまらないでしょ?」というんですけど、まぁそれはありがたい話で、それぞれのキャプテンとか毎年若いメンバーが入ってきたりと、いろんな年代がいるのは社会人チームの良いところなので、そういう良さを活かして上手いこと盛り上げていきたいと思います。

—— 13年目というと、ラグビーではベテランですが、社会や会社ではまだまだですが、その辺はどうですか?

そうですね、会社では若手の中のベテランという立場ですね。もう少しすると、ベテランの中の若手になると思うんですが、そういう節目ということで、今後はもっとしっかりしなきゃなという気持ちはあります。

—— ラグビーではベテランですが、ラグビーを続けることのモチベーションは何ですか?

ラグビーが好きなんでしょうね(笑)。自分でもいつ気持ちが切れるのか、切れないのか、体が追いつかなくなるのか、分からないですね。ただ、今34歳にもなって、はぁはぁ言いながらきつい思いして走っているのは、やっぱりラグビーがやりたいからなんですよね。

さっきも言った恩返しということもそうですし、やらせてもらえる環境があるなら、精一杯頑張るというところです。やっぱり仕事とラグビーの両方を頑張るということが、サントリーのプライドでもありますからね。ラグビー部ではベテランとしてそういう姿勢を後輩に見せていかなきゃいけないですね。

—— ラグビーのどこが好きなんですか?

それも、ラグビーを辞めたらわかると思います。生活の一部であり、人生の一部なので、辞めてみないと何が好きなのか分からないですね。今の僕は、仕事とラグビーと家族の3角形で、どれもなくてはならないものなので、全部好きってことですかね。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)

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