2009年6月 4日
#166 佐々木 隆道 新キャプテン 『このチームを勝たせる』
◆"熱く""ひたむき"に
—— まずは第14代キャプテン就任おめでとうございます。
ありがとうございます。
—— キャプテンとなって率直な心境は?
心境は本当にこのチームを勝たせる、それだけですよね。もちろんそこに不安だとか、期待感だとかが入り混じっているんですが、最終的にこのチームの結果を出す、そこを強く考えています。
—— ひとことで言えば使命感ということになりますか?
そうですね、自分の色をしっかり出して、僕がリーダーをしているというチームらしさを出していきたいですね。
—— その"らしさ"とは具体的にどういうことですか?
"熱く""ひたむき"にですね。
—— 最初にキャプテンを任すと言われた時はどういう状況だったんですか?
監督に呼ばれて言われました。その時はちょっと考えさせてくださいと答えました。
—— なぜ即答ではなく、答える時間が必要だったんですか?
自分の気持ちをしっかり整理しないとできない仕事なので、一度考えてから決めようと思いました。
—— どのくらいの期間で返事をしたんですか?
たぶん2週間くらいだったと思います。
—— その間はどういうことを考えていたんですか?
メリットとデメリットです、それだけですね。
—— デメリットもあったんですか?
はじめデメリットと思っていたことが、メリットと思えるようになるまでに、2週間、時間がかかったということですね。
◆グラウンドに立ち続ける
—— そしキャプテン就任を一番初めに発表したのは、昨シーズンの納会の時ですか?
そうですね。納会の前日に監督に返事をしました。
—— 最初の納会の挨拶を見ていて、すごくキャプテンらしいキャプテンだなという印象を受けました。キャプテンが似合うとか、そういうまわりの声はありますか?
みんなのそういう意見は全然聞いてないです。
—— 自分自身の居心地はどうですか?
去年よりはチームのことや雰囲気をより考えるようになりましたし、自分がグラウンドに立ち続けることが大事だと思うので、コンディション維持にはすごく注意をはらってます。
—— リーダーシップメンバーにも4年目のメンバーが多いですが、この3年間はリーダーシップを取るまでに必要な期間だったんでしょうか?
3年が必要だったかどうかは分からないですね。結果4年目にキャプテンになったわけですが、3年も必要なかったかもしれません。
—— では感覚的には遅い感じですか?
いや、いいタイミングだと思います。
—— この3年間、自分自身はかなり変わりましたか?
変わったと思います。
—— どういうところが?
トレーニングに対する姿勢であり、人との接し方であり、チームの空気をより意識できるようになったと思います。以前はどちらかというと自分自分でしたね。
—— 早稲田でキャプテンを務めた時も同じような心境でしたか?
早稲田の時は自分がなると思っていたので、ちょっと違いますね。学生の時は同い年かしただけなので、結構自分のわがままを言えばついてくると思ってました。実際そうではなかったですが...。
—— そこで学んだことは?
チームメイトのことを見て、もっとこうすれば良かったなと思うことは、みんなが胸を張って「自分たちはここで頑張った」と言えるチームにすれば良かったなと思います。
—— そうなったと思いますが、選手たちは違ったんですか?
結果は出たんですが、やっぱりみんなが試合に出られないメンバーのこととかを分かっていなかったなと思います。
—— それは社会人になって気づいたんですか?
いや、学生の時に分かりました。そして、自分も怪我で試合に出られない時期があったり、代表で試合に出られない時期があったので。
—— そういうことも含めいろいろなことを考えた2週間だったんですね?
ちょっと違うんですね。2週間は自分の気持ちの整理でした。
—— 最終的にネガティブな要素がポジティブになったのはどういうところですか?
キャプテンをする期間が今後の自分にとって大事だと思えたということです。自分はサントリーでまだそんな結果も残してないですし、みんなに認められる存在になれる、そしてキャプテンとしてチームを優勝に導ければ、もっと自分の自信もつくし、パフォーマンスも上がると思いました。
去年自分が試合に出られない時にチームのためにいろいろなことをして、試合に出られない辛さを知りました。それでもひとつのチームになれると思いました。やはりお互いに練習でチャレンジできていなかったし、チャレンジして負けて試合に出られないのなら、試合に出ているメンバーに対して応援する気持ちも違うと思うのですが、僕はチャレンジもできなかったので、ただ悔しいというだけでした。僕ですらそう思ったってことは、みんなはもっとそういう気持ちだったと思います。
いろんな奴と話をしたら、もっと競争する機会やアピールする場面が欲しいという話も出てきて、ぼく自身はそれは違うなぁと思ったりもしたんですけど、だから今年は最初から勝負だと口に出していますし、自分もメンバーになるために頑張っています。
◆両方100%
—— 自身の中でキャプテンとしての比率と、1選手としての比率はどうですか?
別物ですね。僕の中では両方100%ですね。
—— 今回のリーダーシップメンバーを選んだ基準はどういうところですか?今回はバイスキャプテンをおかずに、リーダーシップメンバーというひとくくりにしましたね。
うちのチームの奴は結構引っ込み思案な奴が多くて、例えば副キャプテンを置いてその下にリーダーシップメンバーだと、どうしても副キャプテンを立てるんですよ。そうすると発言が減ったりして、そいつの影が薄くなってしまう。それが嫌だったんですね。みんな素晴らしいリーダーシップの持ち主なので、その色を出してほしかったし、僕のサポートもして欲しかったんです。
—— そのメンバーを今回の4人にしたのはどういう理由からですか?
チームを引っ張っていけるメンバーということですね。みんなの先頭に立ってやってほしいと思ったからです。練習に対する姿勢、ラグビーに対する姿勢ですね。
—— リーダーシップメンバーとは今後どうコミュニケーションを取っていくんですか?
いろんなところで先頭に立ってやってもらうイメージですね。いまは青木が代表でいないですが、竹本とはよく話しますし、有賀はバックスを引っ張ってくれています。
—— 代表のゲームキャプテンになった経験は?
いろんなところで活かせると思います。全部につながってくる話ですが、自分たちが納得できる練習を100%し続けないと結果は出ないということですね。代表でもサントリーでも僕のスタンスは変わらないですね。
—— 去年までの山下キャプテンも、ことあるごとに練習がすべてと言っていたのが印象的です。
そうですね。ただそれをすることはすごく難しくてすごくしんどいんです。去年までは大悟さんがそう言っていても、練習内容は「練習がすべてだ」と言っているチームの練習ではなかったです。
—— そうすると、ファンが見ても、今年の練習は激しいということになるということですね?
去年も激しいのは激しかったんですが、こだわる部分、集中する部分をもっとレベルアップしているんです。
—— 監督とのコミュニケーションは?
今まで通りで大丈夫です。もう長いですから。
—— これまでよく佐々木選手が言っていることが、監督が言っていることと一緒だなぁと感じることが多々ありました。考え方がシンクロしているんですかね?
そうですね、ほとんど清宮さんの下でやっていますから、似てくるんでしょうね。もちろん清宮さんの方がいろいろ考えていると思いますが。
—— ファーストミーティングで今年の目標は全勝という話が出ましたが、そのことに関してはどうですか?
もちろん全勝ですよ。全勝を目指さないと無理ですよ。負けを肯定するようなチームにはしたくないです。たとえば13分の1負けたとして、次に切り替えようというのは当然ですが、その1敗を認めたらだめなんですよ。負けるということに対して、恥じるというか、プライドが傷つけられないとだめなんです。その気持ちを僕はチームに作りたいんです。
「こんだけやってもまだ負けるか」とか「もっとしんどいことせなあかんか」とか「何が足りてないんだ?」とか、もっと目の色が変わらないとだめなんですよ。だから僕が思う良い練習を続けていけば、負けることはないです。
◆まだ今は強くない
—— キャプテンの任期は決まっていないんですか?
そうですね、1年1年が勝負です。今年結果が出せなかったら来年は違うやつがやっているでしょう。僕はそんなに長期的に物事を考えないので、今年が勝負です。
—— 今年のサントリーは強いと思いますか?
強くなると思います。まだ今は強くないです。
—— キャプテンになって、辛いことはありますか?
辛いことはそんなにないですね。
—— 逆にやって良かったと思うことは?
いつもより練習中に頑張っています(笑)。
—— 「ナチュラルラグビー」についてはどうですか?
それを可能にするために今やってますし、自然に体が動くというのは最終的な到達点で、いまはまだ意識をしてやっている状態なので、これからですね。
—— ファンに向けて今年の佐々木キャプテン率いるサンゴリアスの"ここを見てくれ"というところはどこですか?
強くなる過程ですね。練習を見て、試合も見てほしいです。5月30日にNTTと最初のオープン戦がありましたが、それと最後のオープン戦では全然違うチームになっていると思います。さらに網走ではもっと強くなっていると思いますし、1戦1戦成長していくと思います。トップリーグが開幕してからもどんどん強くなっていきますよ。
—— 春シーズンから全試合出場しながらリーダーシップを取っていくんですか?
そうですね、先は長いのでコンディションも考えて状態を見ながら無理をせずにやっていきますが、できるだけ試合に出て、みんなと同じ目線で自分の感じたことを伝えていきたいと思います。
—— 背番号は?
7がいいですけど、何でもいいです。バックスの番号でもいいですよ(笑)。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)
[写真:長尾亜紀]