2008年10月 2日
#156 山下 大悟 特別編"HISTORY OF SUNGOLIATH" 歴代キャプテンが語るサンゴリアス史 13代目キャプテン 『チームに血を通わせる、みんなの心を通わせる』
◆監督が決めたらやるしかない
—— キャプテンになったのは、サントリーに入って何年目ですか?
4年目です。
—— それまでの大学生から社会人になっての3年間はどうでしたか?
もともと組織がしっかりしているチームだなと学生の頃から思っていたので、サントリーに入ることにしたんですが、入ってみて、ずっと勝ち続けていたチームだったんで、選手1人1人の勝利へのモチベーションが少し薄いかなという感じはありました。
—— そういう中で監督が清宮監督に代わり、キャプテンを任されると思っていましたか?
思ってないです。
—— ではどういう形でキャプテンを頼まれたんですか?
電話がかかってきて、「ミーティング」って言われたのを覚えてます。
—— 心境はどうでしたか?
ミーティング(スタッフミーティング)に呼ばれた時点で、そういうことだなとは思っていました。ただ、それについて特に考えたことはなかったですね。大変になるなとは思いました。
—— 断るという選択肢はなかったということですか?
僕の中では、監督のもとのキャプテンだと思っているんで、監督が決めたらやるしかないと思っていました。
—— その後バイスキャプテンを決めたりしたんですか?
その時にもう決まってました。2年目以降はみんなで話し合って決めました。
—— 怪我をしている中で、「なんでおれがキャプテンなんだ?」とは思いませんでしたか?
最初は夏には復帰できる見込みだったんです。最初はリハビリになりますが、シーズンには間に合うと思っていました。
—— キャプテンとして勝ちに対するチームのモチベーションを先ず始めに考えたんですか?
あんまり考えてないですね。モチベーションというものは、もともとそれぞれが持っているもので、チームとしても持っているべきだし、個人としてもそういうモチベーションがなければ社会人でラグビーをやっている意味がないと思います。大学を出て、ラグビーをやらないという道もある中で、やると決めた人間の集まりですからね。
僕が入って1年目は「これぐらいやっていれば勝てるだろう」というところがあって、結果勝てなくて、2年目は一生懸命やったんですけど結果が伴わなかったです。さっき言った勝ちに対するモチベーションが薄いという話は1年目の話で、2年目3年目はそういうことはなかったと思います。
◆申し訳がない
—— キャプテンとしての役割は何だと思いましたか?
試合でチームを勝たせることですね。
—— グラウンドの中での監督的な役割ということですか?
そうですね。グラウンドでプレーしないと話にならないと思っていました。なので1年目は怪我で試合に出ることもできず、みんなには申し訳なかったと思います。けれどもキャプテンである以上、試合前のミーティングなどで話す機会があるので、同じグラウンドに立っているつもりで話していました。
—— そういう中で1年目、チームがいい方向に向かいつつ、結果的には悔しい負け方をしました
1年目は負けるべくして負けましたね。東芝が築いてきたものがあり、壁が厚かったですね。2年目はそういう面で克服した部分もあると思うんですが、どうしてもタイトルが欲しかった部分があった分、年間を通して勝ちにこだわり過ぎたのもありました。
シーズン序盤は、選手のポテンシャルも高いチームなので、いろんなことができるんじゃないかという期待感も大きかったんですが、逆にそれでチームがまとまらなくなって、選択肢を絞らなくいけなくなったという部分もありましたし、是が非でもタイトルが欲しかったんで、そっちのやり方の方がシンプルで早かったんですね。それで1つはタイトルを取ったというシーズンでした。
—— 昨シーズンは試合にも出られるようになり、そういう面での1年目と2年目の違いは何ですか?
全然違いますね。1年目、よく試合に出ないでキャプテンができたなと思いました。やっぱり、グラウンドレベルの雰囲気だとか、そういう細かいところを感じ取れない状況で、よくやってたなと思いました。
—— 1年目からいろんな選手と話をしたりはしたんですか?
しましたよ。みんなも気を遣ってくれて話してくれましたね。
—— 監督とはどうでしたか?
監督とはあんまり話さないですね。話し合わなくても分かりあっているという訳ではないですが、何と言ったらいいんでしょう、難しいですね。僕は「心が通じ合っている」ということは嘘だと思っていて、心が通じ合うように努力することが大事なことで、僕と清宮さんの関係は上下の関係なので、僕が一生懸命理解しようとすることが大切だと思います。
—— 大学の時と今は違いますか?
ちょっと違いますね。少し自分で考えるようになりましたね。学生の頃はどっちかというと受けていた部分が多かったですが、今はそうでもないですね。
—— 山下選手から見た清宮監督は変わってないですか?
変わってますね。例えを出すのは難しいですが、清宮さんを取り囲んでる環境も全然違いますからね。本質的な部分では変わってないのかもしれないですけど、外に出す、アウトプットの仕方が変わってると思います。見ているところが違うんでしょうね。だから自ずと発想も変わってくるんだと思います。
—— 山下選手としては、どちらが面白いですか?
今の方ですね。「リーディングジャパンラグビー」というチームのターゲットもありますし、その先の野望もあるでしょうしね。何考えているんでしょうね?(笑)
◆グラウンドには匂いがある
—— 早稲田のキャプテンとサントリーのキャプテンと、自分でどこが一番変わったと思いますか?
どうですかね。大学の時から本質的な部分は変わってないと思います。ただ見え方は違うので、キャパシティは広がったと思います。「こうじゃなきゃいけない」ということに関しても、いろいろ捉え方はあるんだという考え方ができるようにはなったと思います。極端な話でいうとそういうことですね。
—— 開幕の三洋戦の後のミーティングで、「今日の負けは僕のせいです」と言った言葉が印象的でした
グラウンドには匂いがあるんです。空気感とか。変に自分を肯定するのも嫌だし、変にチームをポジティブにするのもあまり好きではないんです。ダメな時はダメと言いたいんです。でも、自分の中でどこか「大丈夫だろう」という部分があって、自分としてはもちろんしっかりやったし、自分のルーティンはやったつもりなんですけど、ラグビーは15人でやるスポーツなんで、どうしても引っかかるところはあるんです。
それを無理やり納得させていた部分があったんです。もちろん相手がいるスポーツなので、それが直接勝ち負けにつながるかつながらないかという話もありますが、そういう即席で行っちゃうと良い結果は出てこないと思います。
練習でもいろいろしゃべる機会がありますが、「聞いてるな」「イキイキしてるな」って時と、「あぁまた何か言ってるよ」という時があって、最近後者のような感じの時が多かったです。集中力の無さであったり、やりたいラグビーがまだ掴めていなかったり、そういう葛藤はあるんですけど、そういうことを感じていながらあまり何もできていなかったなというところはあります。
—— 3年目にして更に成長したように見えます
失うものはないですからね。
—— 3年目の今のチーム状態はどうですか?
いいですよ。
—— 今年は練習を見ていても、グラウンドにたくさんスター選手がいるなという感じを受けます
それをひとつにまとめないといけませんね。大変です。グラウンドの雰囲気を感じながらやらなきゃいけないことを、見極めてやっていきたいと思っています。
—— キャプテンとして今年はこれがテーマだということはありますか?
...色々ありますが、チームに血を通わせることですかね。いくら勝ち続けても、選手一人一人が熱い気持ちを持って試合に臨んでいなければ、伝わるものも伝わらないと思うんです。そういう意味でも、みんなの心を通わせて、いいチームにしたいですね。
—— キャプテンをやってきて良かったこと、辛かったことは?
良かったことは、やっぱり結果として去年マイクロソフトカップに勝ったことですね。辛かったことは、細かいことはありますが、基本的にはないですね。怪我してプレーできない時に比べたら、全然です。幸せです。
■サントリー歴代主将 | ■サントリー戦歴 |
---|---|
2006年~ 2005年~ 2003年~ 2000年~ 1999年 1995年~ 1992年~ 1991年 1989年~ 1987年~ 1985年~ 1982年~ 1980年~ |
|
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)