SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2008年1月11日

#133 田中 澄憲 『自分たちのためにラグビーをする』

◆戦術とか戦略だけじゃない

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—— ここまでで2敗という成績ですが、選手としてこの成績はどう思っていますか?勝てる試合を2つとも落とした、という感じでしょうか?

1個はちょっと余分でしたよね。もちろん勝てると思って全ての試合をやっているんですけど、コカ・コーラ戦の負けは余分として、2敗目の三洋戦は、僕自身も含めてミスも多かったし、三洋もいいラグビーをしていました……まぁ、言い方とすれば三洋が強かったというふうに思いますけれど……。

うちも良くなかったというのはありますが、やはりゲームというのは、相手のプレッシャーがあってミスも多くなるとか、練習通りに出来なくなるとかあると思うので、一概には言えないですけど、三洋がいいチームだったと素直に思います。

—— 今シーズンは、勝っている時も選手が喜んでプレーしていないようにも見えるのですが

それは選手自身も感じているし、決していいチーム状態とは言えなかったと思います。

—— 過去にもこういうことはありましたか?

ありましたね。やっぱりなかなか勝てない時、一所懸命やってるんですけれど結果が出ないという時というのはこういう状態で、チームの雰囲気もそういう雰囲気になっていますし、何でだろうとも思うし……。

—— それがわかれば……

そう、わかれば苦労はしないし、戦術とか戦略とか、そういうところは監督とかコーチがミーティングでポイントを挙げてくれますし、そういうところを見つけてくれるんですけど、それだけじゃないというところが絶対にあると思うので、それが果たしてどこにあるかというのは、わかっているような、わかっていないような状態ですね。

—— 田中選手も含めて坂田選手、早野選手、大久保直選手ら元キャプテンという人たちがたくさんいるし、昨シーズンずっとゲームキャプテンだった小野澤選手、そして最年少で日本代表ゲームキャプテンをやった佐々木選手、もちろん現キャプテンの山下選手を含めて、リーダー役が出来る人がたくさんいます。こういう状況の中、選手たちで改善していこうという話し合いなどはやってきたりしているのでしょうか?

コカ・コーラ戦が終わった後、一時的にバックスでそういうことはありました。ただ、うちのチームにはそれが欠除しているでしょうね、いま。

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◆チームとしての自立した力

—— どちらかと言うと監督やスタッフ任せという感じですか?

そうですね。でもそれは去年も感じたことであり、去年は新しいことを始めて、僕らもそれまで結果が出ていなかったので、それについていくということに一生懸命やりました。

それで結果がある程度出て、だけどそこで1位になれなかったというのは、何かを突き抜けて殻を破らなければいけないというところがあると考え、それはチームとして自立した力がないと、チャンピオンになることがなかなか出来ないと思いました。

それで今シーズンは、うちのチームにとってそのことが1つのテーマだと始まる前に感じていました。いまもそうしなければいけないというのはありますが、それが出来ているのかというと、やっぱり出来ていないと僕は感じます。選手自身がまだ自立していないという感じでしょうか。

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—— これだけリーダーがいて自立していないというところが、不思議だなぁと思うのですが

そうですね、それがチームの難しいところですね。みんな感じてはいるんですけど、それをどうするの?となった時に、そこに僕らが出て行くというのはどうかとも思うし、僕はいま1選手であって、好きに何でもかんでも言うというのはどうなのかなとも思いますし、たぶんそういうのがなかなか出来ない、いまのチームの状態なのかもしれません。

—— でも何かを変えていかないと好転しないのではないでしょうか?

嬉しくなさそうと見ている人が感じて、それは僕も感じていて、最近、何のためにラグビーをやっているのか?ということを思うことがあって、やはり根本的には自分が楽しいからやってきたスポーツだし、周りの仲間とか、家族とか、スタッフとか、そういう人のためにもやるというものだと思います。

いままではそういうふうに思えていたと思うんですけど、最近はこのチームがそういうふうに思えていないから、こういう結果になってしまってるんじゃないかと思いました。

—— 昨シーズン、清宮監督からチームに対して初のプレゼンテーションがあったキックオフミーティングの時に、サンゴリアスのミッションとして炎のイラストが入ったページ=サンゴリアスから社会までの熱の循環の絵=がありましたが、いまあそこのページが欠けているのかもしれませんね

何か根本的なところが欠除しているのかもしれませんね、いまの状態というのは。それも1つだと思います。ゲームで何が起こっているかというのとは別にして、そういうところも1つの原因だし、そこは大きな部分だと思います。

◆チャレンジャーじゃないといけない

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—— 去年チャンピオンにぎりぎりのところでなれなくて、でも今年他のチームが揃って「サントリーは強い」というコメントを言います。まだ優勝していないのに世の中でそう言われているところも、選手にいい影響を与えていないのでは?と思ったりもします

やっぱりうちのチームは、チャレンジャーじゃないといけないと思うんですよね。まさに優勝してないし、その通りチャレンジャーなんですが、僕がこう言っていていいのかということもありますが、チャレンジャーらしさがないですよね。でもそういうふうに誰もが、とくに試合に出ていないメンバーも、そう感じているのではないかと思います。

—— この間のサテライトの佐合選手のような、プレーする喜びが溢れ出て来るような感じが、あまりない気がします

去年はフレッシュだったし、実際1年目のフレッシュなメンバーも多く試合に出て、僕らも新しいラグビーにチャレンジするというのがありました。今シーズンもフランス遠征までは、そういうことをとくに感じなかったですし、逆にフランスへ行って自信を持って帰ってきた部分もありました。

—— チームとしては昨シーズンからずっと言い続けてきた「大阪のオバはんが見ても勝っているとわかるスクラム」が組めるようになってきて、それなのに結果が伴わないというところが不思議な気がします

そうですね。監督がこの間の試合の後で言った「ラグビーしようぜ」という言葉には、ハッとしたというか、そうだなと思いましたよね。

—— 「ラグビーしようぜ」とはどういう意味なんでしょうか?

スクラムをあれだけ押して、ラインアウトもあれだけいい形で取れて、モールも押せて、それが点に繋がらないというのは、それはラグビーをしていないということで、確かにスクラムを押して、モールを押して、それを活かしていないという僕らのゲームメイクもあると思うし、後はそれでちょっと満足している部分もあるかもしれません。

前はもっと押せと思っていましたし、いまはそこまで押さなくてもボールを出せばいいんじゃないかと思ったり、ですね。それがラグビーをしていないということになると思うんです。やっぱりスコアしないことには、ラグビーというものは成り立たないですから。

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◆選手がしっかり結束すること

—— フォワードとバックスの中間点にいる田中選手としては、なぜ押して行っても点が取れないんだと思いますか?

その優位性を活かせていないのは、僕らにも問題があると思うし、難しいですよね。選手はもちろん勝ちたいですから、負けたらさらに一生懸命やりますよね。

でも失敗を恐れる雰囲気もあります。それは負けたりすると余計に出て来ます。これをやりたいけれど、失敗したらどうしようと思ってしまうこともあります。

いまこのチームの状態を良くするのは、戦術や戦略ももちろんありますが、選手がしっかり結束することが、いちばん大切なことだと思います。

—— 鍵は選手が握っているということでしょうか?

いまいちばん大事なことは、選手がしっかりもう1回、何のためにラグビーをやっているのか?とか、どういう目的でこのチームが始まったのか?とか、そういうことを1人1人が認識して、ラグビーを心の底から楽しんでやること、それをベースにグラウンドでプレーしている選手同士が結束するということが、何よりも大事なことだと思います。

このチームのミッションをもう一度確認し合うことも大切です。この間のサテライトの三洋戦は逆転負けしましたが、皆のプレーを見て感動しましたし、あのような気持ちでプレーするためにどうしたらいいのかといえば、先ず自分たちのためにラグビーをすることだと思います。

個人個人の責任を認識して、すべては自分に返ってくるということをもう一度考えて、自分たちがやるべきことを全うすることだと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)
[写真:長尾亜紀]

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