2007年12月19日
#128 尾崎 章 『調子いいっす!』
◆立つ意識
—— 九州電力戦、後半から出場してフォワードが良くりましたね
ハーフタイムにもみんなで「もっと良くしよう」と話していて、たまたま自分が後半から出ただけです。僕じゃなくて、前田(航平)でも圭太(長谷川)でも、うちのプロップなら誰が出ても、流れを変えられていたと思います。
—— 前半と後半はどこが変わったんですか?
やっぱり、前半はフォワードがダメだったとみんな思っていて、ハーフタイムにリセットして、「後半はフォワードで仕掛けよう」ということを話しました。モールでもっと絡んでいったり、個人個人のことで言えば、簡単に寝ないということです。隆道(佐々木)や元さん(申騎)は当たってもすぐに倒れないですよね。立つ意識が出るようになってからうまく回り出したと思います。最後には大悟(山下)のトライもあって、後半は完璧でしたね。
—— 忘れていたことを思い出したような感覚ですか?
そうですね。大悟も言っていましたが、この試合が分岐点になると思います。九州電力戦の前までは、いろいろやろうと思いつつも、しっくりこない部分があったと思うんですが、今はいちばん良い状態ですね。練習でも今までにないくらいみんな気合が入っています。
—— 神戸、三洋と最初の山場を迎えますね
フォワードはまだ練習でも細かいミスが出てくるので、ひとつひとつ修正しています。九州電力戦は、前半やられてから気づいて、後半修正して圧倒したということなんですが、前半から圧倒して、精神的にも優位に立ってバックスがどんどんトライを取るような形が理想だと思います。それを可能にするためにも、試合の序盤からフォワードが"痛い仕事"をして、頑張らなきゃいけないですね。それを前半10分でやりきれないと、逆にリズムを持っていかれちゃうかもしれません。
—— 調子はいいですか?
僕はいつも言っているように、調子いいっす!
—— いつでも使ってくれという感じですね
それはみんな一緒だと思います。
◆やるしかない
—— フロントローはポジション争いが激しいですが、やりがいがありますね
ここのところ僕がリザーブで試合に出ていますが、やはり圭太も林(仰)もそうですが、2人とも怪我で、直接対決で勝って僕が出ているわけではありません。だからこそ頑張らなきゃいけないなという部分もあるし、でもやっぱり直接勝ったわけではないですからね。「これ林だったら押せてたなぁ」とか「相手が圭太だったら今のは押せなかったかなぁ」なんて考える時もあります。
—— 今年で6年目です。今、チャンスですね
チャンスですね。やるしかないです。個人的には今年の春の時点では怪我ばかりで全然ダメで、林と同じくらいスクラムが組めるというのを抜きにしたら、1番なんて全然無理だったんですが、今は自分で成長しているのを実感します。慎(長谷川)さんも、いいスクラムを組むとすごく褒めてくれます。
—— ラグビー人生の中で、今がいちばんいい状態ですか?
それは分からないですね。でもとりあえず、いまはプレーできているから楽しいです。東芝戦のスクラムを清宮さんが「林は人の人生を変えるスクラムを組んだ」と言っていましたが、僕にはまだそれができません。かといって、「来年頑張ります」という歳でもないですから、毎日の練習からコツコツやって、結果を出していきたいですね。若い小川(真也)や圭太たちとは違うんで、自分にプレッシャーをかけながらやっていきたいです。
—— 今年の目標はやはりスタメン出場ですか?
もちろんそうですけど、やはり林ほどいいスクラムは組めていないので、試合に出られるのであれば、どこでも、何分でもやります。
—— 林選手のスクラムとどこが違うのですか?
飛び出して、チェイスして、そこから自分の態勢に持っていくのが速くて上手いんです。態勢を取るのはアズ(東野憲照)も上手いですね。それから林は下半身の使い方がすごく上手いんです。
—— 体重は増えていますか?
体重は依然とあまり変わらず120kgですが、以前はメタボリックな120kgでしたが、今はラグビーで使える筋肉がついた120kgという感じです。
◆スクラムの戦いを見てほしい
—— 開幕戦のメンバー発表の時の"泣き"は今年のサンゴリアス史に残りますね
本人としては、あそこで泣くべきではなかったと思っています。あのミーティングの後の練習も、ちょっと変な感じになってしまったんです。僕があそこで泣いてあぁいうことを言ったことによって、みんなが気になって「尾崎そうなんだぁ」って、多少は気にしながら練習をすることになってしまったんで、練習中にミスが増えたりしました。
本当はダメですね、あそこで泣いちゃ。東芝に勝ったから良かったですが、反省しています。でも、言ったことや思っていたことは本当なんで...。優勝するまでは言わないでおこうと思っていたんですが、つい言ってしまいました。
—— 練習に向かう気持ちの上では良くなかったかも知れませんが、チーム全体としてシーズンを通して考えると、良かったんではないかと思います
だから本当に東芝に勝って良かったです。
—— 開幕戦前のフランス遠征に行けたメンバーと行けなかったメンバーがいて、その辺の気持ちの部分がみんなに伝わった気がしました
残ったメンバーは6人対8人でサントリーフーズと練習をしたりしました。普通はあり得ないです。けれど、慎さんが残ってくれた気持ちとかをみんな分かっていたんで、みんなで頑張ろうと思ってやっていました。
—— ひと皮むけた感じですね
間違いなく、あの時の僕よりは今の僕の方が強いです。けどまだ林よりは強くないです。
—— ファンへ、試合ではここを見てくれというところは?
スクラムです。ラグビーをスタジアムへ見に来る人は、スクラムの時はバックスのラインを見ていると思うんですが、その時スクラムの中でどういう駆け引きがあるか、プロップがどういう戦いをしているのかを見てほしいです。
—— 九州電力戦、スクラムでの認定トライの感想を聞かせてください
みんな僕が強かったと言いますが、池谷も押してましたし、サントリーのプロップ誰が出ていても取れていたと思います。
◆初先発 神戸製鋼戦を終えて
—— 初先発、いかがでしたか?
マネージメントということでは、あまりペナルティがなかったと思いますが、最初にフォワードがノリノリじゃなかったのは、最初のラインアウトでモールをしっかり組めなかったのが原因なんです。
—— イメージ通りのプレーが出来ましたか?
やろうと思ったことは、出来たところとまだ甘いなと思うところがあります。林(仰)や圭太(長谷川)にまだスクラムで追いついていません。やるべきことをやって、またメンバーに入れるように頑張ります。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)
[写真:長尾亜紀]