2007年12月 4日
#123 ジャック タラント 『家族のために頑張る』
◆フォワードのお陰
—— 第4節までの「サンゴリアス・バックスMVP」受賞おめでとうございます
ありがとうございます。
—— こういった賞を受けるのは何回目ですか?
日本では初めてです。何年か前にウェリントンで「プレーヤー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたことがありますが、それ以来です。
—— ウェリントンでは何か賞金などをもらったんですか?
トロフィーと、賞金を少しもらいました。少しね(笑)。トロフィーはもらえるものではなくて、毎年受賞した選手が受けついで回されるもので、今は僕の手元にありませんが、歴代の受賞者の名前が刻まれています。もちろん僕の名前も。確か1928年から続いていると聞いています。
—— 今回のMVPでも賞品を?
リコー戦(11/17三ッ沢)の後にチームで中華街に行って、そこでの発表だったので、商品は“中華料理のたくさん入った袋”でした(笑)。
—— 自分ではどのようなところが評価されての受賞だと思いますか?
フォワードが前で頑張ってくれていて、それでスペースが出来てバックスとしてはやりやすかったので、フォワードのお陰だと思っています。
—— 4節までのMVP受賞ですが、試合に出たのは2試合だけでしたね
2試合しかプレーはしなかったですけど、そのチャンスをものにできたから選ばれたと思っていますし、僕が試合に出なかった2試合は、チームも崩れてしまっていて、僕が出た2試合はチームも良い形で試合が出来ていたし、自分もチームと同様にいいプレーが出来ていたと思います。
◆スピード・判断力・理解
—— やはり12番(インサイド・センター)で出たいという気持ちが強いですか?
チームのためならどこでもプレーします。他のポジションでは、15番(フルバック)も好きですね。ボールをたくさんもらえるポジションが好きです。
—— 去年と比べて日本には慣れましたか?
コミュニケーション面でもラグビーの面でも、日本のスタイルに慣れてきましたし、去年より自信を持ってラグビーを出来ているので、楽になってきました。
—— 去年と比べて、プレーで向上したところは?
スピードはもちろん上がりましたし、自分からチャレンジしていく判断能力も良くなってきたと思います。後はサントリーのラグビースタイルを理解するという点でも、良くなってきたと思います。
—— スピードは今まででいちばん速いですか?
そうですね。自分でスピードの評価をするのは難しいんですが、練習では自分のスピードをそこまで感じません。でも試合になると、速く動けているという感覚があります。おそらく試合ではアドレナリンもたくさん出ていて、そういったことも作用しているんだと思います。
—— 特別にスピードアップのためのトレーニングはしているんですか?
クリーンのトレーニングが走りに生きているんだと思います。ニュージーランドでのウエイトトレーニングは主にスクワットをやるんですけど、クリーンは足全体のパワーやテクニックを利用してやるので、それが活きています。
—— 監督からも「ハンドオフができる12番」と褒められていましたが、もともと得意なんですか?
今年は敬介コーチ(沢木)とよく1対1のハンドオフのトレーニングをしているので、常にそういう意識が頭にあるのが大きいと思いますし、僕は腕が長いので、日本人の選手にとってはハンドオフされると届かなくて嫌な相手だと思います。
◆ウエイトも上がってきた
—— シーズンが始まる前の奥さんの出産時、大変だったそうですが、それを乗り越えてきましたね
出産後、妻の体調が悪くなり、医者に「命にかかわるかもしれない」と言われました。シーズンが始まった段階では精神的に苦労していましたが、今は赤ちゃんも元気でやってきてます。妻も徐々に元気になってきてますし、僕も自信が持てるようになってきて、それがプレーにも出てきました。今はラグビーを楽しめる状況になってきたので、そういう状態であればプレーにも良い影響が出ると思っています。
—— 去年より逞しくなった気がします
首の怪我もあるんですが、だんだん回復してきていますし、ウエイトも上がってきました。
—— 子供が生まれてからやはり何かが変わりましたか?
はい。去年は自分のことだけでしたが、今年は家族のために頑張るという気持ちが強くなってきました。
—— 次に家族と会えるのはいつですか?
家族は今は日本に来ています。シーズンが終わるまでずっと日本で暮らします。
◆今年は優勝するために戦っている
—— 今年のチームの状況をどう感じてますか?
去年と同じく、ベースとしては強いチームだと思います。去年と違う点はトップリーグで優勝することを前提に1試合1試合臨んでいるという気持ちが強いところですね。去年は目の前の試合を1試合1試合戦っていったら、マイクロソフトカップ決勝までたどり着いたという感じでしたが、今年は優勝するために戦っていると思います。
—— 優勝するためにも、今後個人的に強くしていきたいところは?
スピードをもっと上げて、パワーももっとつけて、試合では相手のディフェンスに勝つ。もっと自分からチャレンジしていって、必ず相手に勝つということをやり遂げるように練習していきたいと思います。
—— キックもかなり練習していますね?
キックは自分にとって新しいチャレンジなんですが、与えられた仕事なので、出来る限りのことはしたいと思っています。
◆次のレベルに達するまで
—— ”カメラマン“ジャックとして、フランスワールドカップの映像はどうでしたか?
カメラが引き過ぎていた場面が多かったです。モールの場面が映っていて、何が起きているかもっとアップで見たいのに、引いて撮っていたので誰が何をやっているかというのが見られませんでした。ワールドカップの中継なので、何台かのカメラで撮っていたでしょうから、ディレクターの人にもっとラグビーというスポーツを知ってもらいたいと思います。
—— 今シーズンの目標は?
優勝することがいちばんです。チャンスが来てメンバーに選ばれた時には、必ずチャンスをものにして結果を出すことです。自分がいいプレーをして、周りの選手もいいプレーをすれば絶対に勝てるので、みんなで優勝したいです。
—— 今シーズンだけではなく、少し長い目で見た目標は?
日本でラグビーを続けていきたいので、日本に長く居られるように、日本での知名度を上げることもありますし、次のレベルに達するまで頑張っていきたいと思っています。
◆家でもグラウンドでも
—— 家族はまたニュージーランドに帰るんですか?
シーズンが終わったら帰りますが、来年度も契約をすることができれば、シーズン前に日本に来ます。
—— 家族が日本にいてくれると心強いですね
練習が終わった後、帰る楽しみがありますからね。去年は帰っても誰もいませんでしたから、モチベーションの維持も難しかったです。今は家でも幸せですし、グラウンドでも楽しく出来ています。
—— 奥さんと息子さんのお名前は?
妻の名前がイングリット、8か月になる息子の名前がハンターです。
—— ジャックと奥さん、どちらが名付け親ですか?
好きな名前だったので決めました。5つの候補があって、妻は別の名前が良かったみたいなんですが、ハンターに決まりました。
(インタビュー&構成:針谷和昌/通訳:ジェフリー・カトラー/編集:植田悠太)
[写真:長尾亜紀]