2007年10月23日
#112 平 浩二 『ワールドカップ しびれました』
◆トライを決めた瞬間は
—— 2か月ぶりに日本に帰ってきた時はどんな感じでしたか?
帰って来て言われたのは「トライ、映ってなかったぞ」。結構、みんなに言われましたね(笑)。
—— その映っていなかったというのを知ったのはいつですか?
知ったのは、試合が終わった日に知りました。日本からいろいろと情報が入って来るので、それで、俺映ってないらしい、とわかって(笑)。 エーッッッッ!って感じでした。でも....しょうがないかなと(笑)。
—— トライを決めた瞬間はどうでしたか?
真っ白でした。
—— 決める前は?決めてやろう!って思ってましたか?
いや、そんなことは思っていなかったです。アップしている時にザワさん(小野澤)が、「俺が絶対、逆転トライを取ってやる」と言っていたので、じゃあザワさんに行かせてあげようみたいに思ってました。ですから自分がトライをとかは考えてませんでし、僕は自分の仕事をしようとだけ思っていました。
—— ラックに対して最初左側へ行こうとしていたけど、右へ変えたと言っていましたが
クリスチャン(ロアマヌ)とか、みんな左へ行ったんですよ。だから左へ行ったら絶対にポイントが出来ると思っていたら、ハーフが右に持ち出したんです。それでハレ・マキリも右に来ていて、これは絶対に右に来るなと思ったてたら、マキリがいいところで活かしてくれました。
—— ほんとに瞬間的な判断ですよね
あっ、危ない、と思って、パッと行った感じですね。
—— で、行ったらボールが来たと
はい。みんな左へ行ったので、相手も回り込んだと思うんです、そこまで見えてはいませんでしたが、それで右へ行ったから相手がいなかったと思います。取りあえずノックオンとかしないように、そして回り込もうと思ったんですけど、タックルされたので、もう後は将太郎さん(大西)を信じて、トライしました。
—— これでラストプレーという緊張感はあったんでしょうか?
最後のプレーは緊張も何もないですね。興奮しているし、絶対に同点に追いつきたいという気持ちだったので。
—— 緊張よりも凄く集中していたという感じですね
はい、10分しか出ていませんが、10分経つのはすぐでした。
—— そしてトライを取った瞬間は真っ白?
やったぁーっと思いましたね。それまであまりいい見せ場もなかったので、モヤモヤモヤモヤしてきたのが、バッって弾けた感じでした。
◆人気沸騰?
—— ゴールも決まって同点になって、その時の気持ちは?
嬉しかったですね。勝ち!みたいな、勝ってないですけど。カナダの方が世界ランキングが上ですし、カナダの選手はみんなガクーッて来てましたので、まぁ、勝ちに等しい引き分け、ですかね。
—— 客さんがジャポンコールをしているのは、聞こえていましたか?
聞こえてます。試合に出ていても、最後は聞こえていましたね。フィジー戦の時もそうでした。あの時もずっと「ジャポン!ジャポン!」は聞こえていました。カナダ戦でも聞こえていました。
—— やったよーっというのは、いちばん最初に誰に連絡しましたか?
いや、連絡が来てました。試合が終わったら20件ぐらいメールが入っていました。
—— その中で印象に残ったメールはありますか?
やはり家族からですね。父、母、兄貴、妹、みんな別々にメールをくれました。
—— そして日本に帰って来ました。人気沸騰かと思いきや...?
いや、変わらず(笑)。
—— ファンレターが増えたとか
ないすよ。有賀にはあるんですけど、僕にはないです(笑)。
—— それはTVに映ってなかったせいではないですよね?
いや、関係ないっす(笑)。もともとです。
—— サンゴリアスのメンバーには何と言われましたか?
「ナイストライ」ですね。
◆電気が走る
—— 今回、代表に初めて入って、どうでしたか?
まだ、出し切ってないですね。出ていた短い時間の中では、自分の仕事を何回かは見せることができたかなと思いますが、やっぱりまだまだ、時間が足りないというか、パシフィックネーションズから考えたら、ぜんぜんまだまだ、もっとやれます。
—— 代表チームの感じはどうでしたか?
最初は違和感がサントリーに比べたらありましたけれど、最後はチームプレーにしても、合わせやすくなりました。
—— 直前に怪我人が出てチーム状態に少し不安があったと有賀選手が言っていましたが
やっぱりそうでしたね。スタンドのブライス・ロビンスも、最初センターで、次にフルバックで、最後はスタンドオフという感じで、メンバーも代わりましたから。でもオーストラリア戦のメンバーは、そんなに変わってないんですね。
—— 2つのチームに分けられたことに対してはどうでしたか?
純粋にワールドカップに出られることが嬉しかったので、それは問題ありません。あの舞台でラグビーできるってことが嬉しかったですから。
—— 最初の試合、佐々木隆道を先頭に入場しましたが、どうでしたか?
しびれましたね。もう電気が走る感じです。歩いて入場して行く時、凄い歓声で皆立っているし、拍手しているし、音楽もいいし、君が代あたりまでずっとしびれていました。
—— その感激は今までの何かに匹敵するような感じですか?それとも初めての体験ですか?
今までにない感じです。
—— それは何試合目かになると、慣れてくるものなんですか?
慣れないです。いつもあの瞬間は、しびれてました。
—— いざグラウンドに立った後は?
もう思いっきりやろう、それだけです。中途半端な小手先だけで、勝てたり張り合えたりする相手ではないので、もう自分のすべてをぶつけるつもりでいました。
◆“WHO ARE WE?”
—— WHO ARE WE?” を最近よく聞くようになりましたが
いや、同志社大学にいた時は、試合の時にキャプテンが掛け声する時に言う言葉なんですが、サントリーに入ってからは、直人さん(中村コーチ)が安売りしてます(笑)。
—— “WHO ARE WE?” と言ったら、同志社では何と答えるんでしょうか?
ラララ、です。
—— 「われわれはラララです」ってこと?
そうですね(笑)。
—— では、平選手にとっての、“WHO AM I ?” つまりプライドを賭けているところは?
“WHO AM I ?” 難しいですね(笑)。やっぱり、自分のトイ面に絶対負けないことです。アタックでもディフェンスでも。抜かれたら凄い悔しいし、試合中でもやり返したいと思うし、そこですかねやっぱり。相手の自分と同じポジションの選手には、絶対負けない。
—— 去年のトップリーグでそれは出来ましたか?
ある程度は行けたかなと思います。
—— ワールドカップではどうでした?
モートロックでしたからね、オーストラリアの13番は。僕がアタックできませんでした。ボールが回って来なかったし、セットプレーにしても、ターンオーバーされたりしました。
—— いよいよトップリーグが始まりますが、課題は?
まず試合に出ることです。そして出られたら、自分のいいところ、前に出るところをもっと出せるようにして行きたいと思います。
—— 自分自身で成長したなと思うところは?
フィジカル面ですね。ワールドカップで成長したと思います。日本に帰って来て練習とか試合とかをしても、ワールドカップではつかまっているなぁってところで抜けたりしています。ワールドカップでは骨格の違いとかを感じましたが、日本に帰ってきたらもっとできるかなぁという感じです。
—— 試合には13番で出ることにこだわりますか?
やるなら13番です。
—— 開幕戦は?
僕が出られるかどうかはまだわかりませんが、今までやってきたことをやれば、チームは勝てると思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]