2007年10月 4日
#109 東野憲照+伊勢田彬人 『おにぎりマン誕生秘話』
◆伊勢田がおにぎりを買ってきた
[まずは単独で東野選手にインタビュー]
—— フランス遠征から帰ってきて、おにぎりマンの反響はどうですか?
結構みんな見てくれていたみたいで、「映ってたよ」とか「それ(おにぎり)ばっかじゃん」という意見と同時に、おにぎりマンはもともと僕と伊勢田の2人のネタなので、伊勢田が嫉妬していたとか、伊勢田が怒ってたという意見も同時に聞きました(笑)。
—— もともとおにぎりの被り物はどこで見つけたんですか?
あれはアライブツアー(※)の司会のネタをどうしようかと伊勢田と考えていて、衣装を伊勢田に任せたら「東野さん、良いのがありました」とおにぎりを2つ買ってきて、「おにぎりマンというのを新しくやってみよう」と言ったのがきっかけです。
※アライブツアー:春に行われるサンゴリアスのチームビルドツアー。今年は台風の影響で大島行きを断念しアライブボウリング&バーベキューを実施。昨年は富士登山。
—— 海外の人は"おにぎり"というものを分かっているんですかね?
そうですね、フランス人はおにぎりを知らなかったかも知れませんね(笑)。フランスの地元紙の1面に僕の顔が載った時も、おにぎり全体は写っていませんでしたからね。多分かなり珍しいものだったんじゃないでしょうか。「何だろう、あれは?」という感じだったと思います。
—— メディアの人々に何か聞かれたりはしましたか?
いや、それはありませんでした。ただ一方的に写真を撮られるだけでした。
—— どの会場でもメディアのターゲットにはなっていましたね。
もともとサンゴリアスの"目立とう軍団"が赤いハッピを着て5人くらいいて、その中で僕だけ違う格好をしていたんで、それで寄って来たんじゃないでしょうか。
—— 日本に帰ってきて、伊勢田選手には何と言ったんですか?
もともとあの被り物は僕のと伊勢田ので2つあったんですが、そのうちの1つを被るのは伊勢田しかいないということで、僕はフランスへ1つしか持って行きませんでした。伊勢田がフランス遠征に行けなかったというのもあって、「伊勢田の分も俺は頑張ってるぞ」という意味でおにぎりを持っていったんです。それを説明したら「大丈夫です、分かってます。」と言ってました。慎さん(長谷川)に「伊勢田が怒ってる方が面白いから怒ってるふりをしろ」って言われていたみたいです。
◆どこで怪我やってん?
—— 慎さんといえば、今回のツアーで出だしからやられましたね。どの辺でホッとしましたか?
最初は「まさかそんなことはないはず、これはドッキリだ」と思っていたんですが、慎さんがパスポートを見せてきたり、機内で楽しく過ごせるような雑誌とかiPodのような物とかを持ってきてると言って見せてきて、だんだん周りのメンバーも「お前の荷物だけはじかれてたよ」とか言いだして、そこらへんから俺は本当に帰るんだと思い始めました。慎さんが最後に「それじゃ、会社行ってきます」と言うまでは分かりませんでした。最後は本当に泣きそうになりながら、会社へどうやって行けなくなった説明をしようかと考えてました。あんなに「フランス頑張ってこいよ」と言われて温かく送り出されたのに、次の日になって戻ってきたらこいつは何なんだってことになりますからね。
—— やられた感想は?
ドッキリだったんであぁいう風に僕をいじって頂いてありがとうございます、という感じですけど、あれがドッキリじゃなくて本当だったら、僕はかなりショックを受けて凹んでいると思います。洒落にならないです。立ち直れなかったかも知れません。
—— 精神的な上下動があったと思いますが、無事にフランスについて、皆が見ていないうちに怪我を?
初戦の当日の試合前のアップですね。最初は軽くふくらはぎが張ってるなという感覚だったんですが、アップをやっているうちにどんどん痛みに変わってきて、さらに痛みが強くなってきました。時間とともに僕の出番がどんどん近付いてくる訳で、体をもっと動かさなければいけなくて、さらにペースを上げると痛みが増していくという悪循環に陥って、最後は引くに引けない状況でした。
—— 中村コーチの反応はどうでした?
失笑でした。「お前どこで(怪我)やってん?」って。
—— 次の試合でも出られないほど重い怪我だったようで、せっかくフランスに来たモチベーションを応援に切り替えたということですか?
このまま怪我したままただ帰るんであれば、怪我をするための旅行だったということになってしまうんで、次の試合に出られないと分かった初戦の次の日から切り替えて応援の方に集中しました。
◆新しいネタ探し
—— いつもやっている応援と変えたことはありますか?
逆にいつもだったら相方の伊勢田が横にいて、2人でワイワイやれたんですけど、今回は伊勢田もいないし、あぁいう競技場という環境で知らない人たちを巻き込んでの応援というものが分からなくて、実際は試合中はただただおにぎりを被ってまじめに試合を見ていただけで、応援らしい応援はできなかったです。
—— おにぎりマンの国内デビューはアジアバーバリアンズ戦でしたね
そうですね。あの時は伊勢田と2人でおにぎりマンの格好をしてバックスタンドの最前列まで出て行って、試合に出ているサントリーの選手に「平~」とか「ザワさ~ん」とか声出したり、両手でおにぎりの形を作って体の上下動と合わせておにぎりダンスをしていただけですね。周りを煽るようなことはしなかったですね。今回のフランスでも規模が違って周りを煽ることはできませんでした。
—— フランスでの日本の応援団では笛を使った応援が印象的でした
やはり直人さん(中村)には、僕の持ちネタで出発の空港でも披露した「応援」を、ハッピ軍団全員でやって周りの人たちを沸かせて盛り上げるように試合中ずっと言われてたんですけど、それだと身内ネタ過ぎて出来ないなと思っていました。そんな中で笛を使って単調なリズムでやっていたあのやり方は勉強になりました。あと笛を吹いていた人は笛を吹くタイミングがうまくて、ちょっと静まり返った時にすぐピーピーピピピと吹いていたんで、あぁいう鳴りものがあればやりやすかったなと思います。次回は鳴りものにも挑戦したいですね。
—— おにぎりマンの再来はあるんでしょうか?
おにぎりマンはもう多分出てこないと思います。今は毎日が新しいネタ探しです。
—— 本業と副業がすり替わっている気がしますが、大丈夫ですか(笑)?
それは僕もそういう流れになっているのを感じているので、そろそろ・・・。そろそろというのもおかしいんですが、本業はあくまでラグビーなんで、応援は副業として頑張っていければと思います。
—— 次回の登場は?
サンゴリアスの試合ではああいうネタ的な応援はしないですね。ジャパンの試合の時などでは登場したいと思います。それからサンゴリアスの行事ごとでは必ず出ますね。また新しいネタを仕込んで臨みたいと思います。
◆ブームが起きてくれれば
—— おにぎりマンを見てご両親は何かおっしゃってましたか?
「最初にお前がおにぎりの格好で出てきたから2人で爆笑した」と言っていました。両親は最初そういうキャラクターの僕を受け入れていなかったんですけど、最近は「面白かった」などと言うようになってきていて、両親も僕のキャラ変更に対応してきたなと思っているところです。
—— あと1か月ほどで開幕です。本業に向けての意気込みをお願いします。
今はフランス遠征での怪我を引きずっていてまだ復帰できていないんですけど、早く直して本業の方もポジション争いに加わって、本業でも目立てるように頑張りたいと思います。
—— 副業の出番はいつごろですか?
今のところ目途が立っていませんね。今シーズンは試合がキツキツに入ってきますからね、小休止です。
—— 最後に言い足りないことはありますか?
このインタビューはスピリッツ・オブ・サンゴリアスですか?
—— そうです。
こんなスピリッツで大丈夫ですかね(笑)?みんなもっとまじめにラグビーのことを語っている気がするんですが(笑)。
—— せっかくおにぎりマンが世界デビューを果たしましたから、最後にもうひとつだけ質問します。ラグビーの試合の応援について、目標となる形はありますか?
やはり会場全体が"東野おにぎり"と"伊勢田おにぎり"によって結成された"おにぎりメン"の音頭に反応して大声援となって、試合が終わった後におにぎりの被り物のグッズが売れて、今後試合会場に僕らじゃないおにぎりマン的な人が現れて盛り上がってという、ブームが起きてくれればいちばん良いですね。
◆おにぎりマンは完全オリジナル
[ここで伊勢田おにぎり(伊勢田彬人選手)が登場]
—— おにぎりマンの生みの親である伊勢田選手からひとことお願いします
伊勢田:あれは伊豆大島で予定していたアライブツアーのネタを仕込んでいた時でした。伊豆ということで、魚を想像し、テレビに出ている"さかなクン"というのを思い浮かべ、"さかなクン"の被り物で司会をやろうとしていました。東急ハンズでいつもネタの小道具を買うんですが、"さかなクン"の被り物が売ってなくて、東野さんに電話して「無いです」と伝えてました。電話を切ったとき、視界の中におにぎりがちょうど2つ掛かってました。「これだ」と思ってすぐにもう一度電話して、「東野さん、おにぎりマンでもいいですか?」と伝えて決まりました。
東野:僕は一任していたんで、すぐにOKだと答えました。
伊勢田:そこからが大変でした。さかなクンだったらテレビでやっているんでコピーすれば良かったんですが、おにぎりマンは完全なオリジナルでした。しかし秩父宮で登場した時も結構ウケました。
—— 自分が選んだおにぎりマンが東野おにぎりとしてテレビや新聞に出ているのを見てどうでしたか?
伊勢田:絶対ウケたと思います。けどしばらくして「俺もそこにいたかったな」と思いました。テレビにおにぎりが映る度にチームのみんなからはネタのように「東野と解散だな」「東野は一人で羽ばたいていった」などと言われました(笑)。
—— さきほど東野選手の応援の理想について語ってもらいました。伊勢田選手の応援の理想は?
伊勢田:僕は追い込まれないと行動しないんですよね。僕はそろそろ引き継ぎたいですね。それを強調して載せておいてください(笑)。
—— 本業の方の目標をお願いします。
伊勢田:とにかく一生懸命頑張って、"サンゴリアス(ワン)キャップ"を目指して頑張るだけです。怪我とかでなかなか満足したシーズンを過ごしてないので、今年は楽しんでプレーできるように頑張ります。
[インタビューの2日後、東野選手に追加インタビューしました]
—— 先日インタビューをしましたが、本業の話がほとんど出てこなかったので本業の話を...。ワールドカップ2試合を見ていかがでしたか?
最初のオーストラリア戦で、隆道(佐々木)を先頭として入場してくるシーンがあったんですけど、やっぱあのシーンは僕も鳥肌が立って、ラグビーをやっている者として、一度はあの場に立ってみたいなという思いが強くなりました。
それからフィジー戦に出た西浦さん(達吉/コカ・コーラ)という僕と同じポジションの選手がジャパンというだけあって、スクラムだけじゃなくて激しいタックルとかフィールドプレーで自分に足りない部分を見せていたので、国内の試合でももっとレベルアップした姿を見せられるようにしないと、あの場には立てないなという刺激を受けました。
—— 前回の話ではほとんど話が出てきませんでしたが、本業の方も刺激を受けていたようで安心しました(笑)。ありがとうございました。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)