2007年8月14日
#100 小野澤 宏時 小野澤スペシャルvol.1 『2度目のワールドカップ★自分の走りが試される』
◆今の今は一番
—— 2度目のワールドカップがいよいよですが、調子はいかがでしょうか?
調子はいいですね。体の調子も上がるところは上がっていますしね。ここまで4年間やってきたことを出しきってチャレンジするだけです。
—— 合宿ではすごく走ったみたいですが
いや、今回はそんなに厳しくなかったです。
—— 前回のワールドカップに出てみて、次出る機会があればこういうことをやりたいと思っていたことは何ですか?
フィジカルの部分でひと回りもふた回りもでかくなっていたいと思っていたし、ただでかくなるだけではなく、スピードもアップした状態でコントロールできるように体重もアップしていたいと思いました。今回はその中で自分の走りがどれくらい上がっているのかが試される機会でもありますね。
—— 4年前に思ったことはできましたか?
時間の許す限り自分の中で妥協しないでやってきたつもりです。
—— 4年間の間に新田(博昭/フィットネス&ストレングス)コーチのクリーンに出会いましたね
見つけたかったものに合致したという感じでした。やり始めてすぐにそれを感じました。
—— そういう意味では今がいちばん良い状態ですか?
「今の今は一番」の状態です。来年の今は分かりません。引退するまで良くなり続けるというのが理想ですね。
明日は今より良いですよ。今あるものをどうこうするというよりも、体対体でどうするかという部分で、1週間前より数値を上げたい、4年後というより、そういう近い先を見てやってきました。
◆相手に近い所でステップを踏める
—— たとえば体の大きさだったり、走るタイムだったりは数字で分かりますが、ラグビーのプレーで前できなかったことができるようになったことはどんなことですか?
アタックの時にこういう形でボールを回して来いっていう時に、ここだったら絶対自分に回して来いと思えるような形ができたというか、自信がついてきたという部分ですね。ディフェンスでは今までだったらただ抜かれないようなディフェンスをしていたんですが、今はプレッシャーをかけられるようなポジションをとれるようになりました。オフェンスに関しては、踏み込む力が強くなってより相手に近い所でステップを踏めるようになってきました。そういう感覚があります。
—— 踏み込む力が強くなったということは、初速が速くなったということですか?
そうですね。全力で走っていてもピタッと止まれるような感覚もあります。自分の走っているスピードとその推進力をコントロールできるようになってきています。昔よりもその部分が強くなているんで、全力で走っていても一気にステップを踏めるという感じです。
—— パシフィックネーションズカップなどをやってみて、海外のチームにも通用する手応えはありますか?
そういう場面ではミスボールしかもらってないという感じで非常に残念なんですが、ちょっと分かりませんね。でもその辺は相手が誰でも変わらないと思うので、タックルする瞬間やっぱり一瞬腰が落ちるというか、そういう相手が一瞬止まるときにステップを踏んで、かわせるという感覚はあります。
◆自信を植え付けてくれた
—— カーワン(日本代表ヘッドコーチ)の良さは?
雰囲気あるし、勝ちを意識づける監督でいいと思います。今までの監督はどちらかというと良い試合をしようというタイプの人が多かったですね。ワールドカップで勝ちに行くんだということをカーワンほど強く言う人はいませんでした。それをカーワンは「勝ちに行くんだ」という姿勢を見せてくれるので、そういう部分で日本代表が失っていた自信のようなものを植え付けてくれたというか、取り戻してくれたというか、「勝つためにやると」いうことをずっと言ってくれているんで、そういう部分では非常にいい監督だと思います。
—— カーワンももともとウイングでしたね
そうですね。外のステップの踏み方とか、間合いがある時のディフェンスのしかたとか、足の運び方とかは教えてくれます。近場のディフェンスで結構抜かれなかったり、そういう結果は出ているんで良いと思います。それから試合前と試合後には必ず個人ミーティングがあります。週半ばの午前中がオフの日とかを使って、試合のフォーカスの話や、試合を終えての反省などの話をカーワンが選手それぞれとします。そういう新しい試みは良いと思います。
—— チームの雰囲気はどうですか?
前回と比べて、あまり違いを感じないですね。前回は前回で僕が初めてのワールドカップということで舞い上がっていて、あまり他のことに気を向けられていなかったというのもありますが、今回は今回で出られたり出られなかったりなので、チームの雰囲気云々よりも、個人でチャレンジしようと思っています。
—— 出た時のプレーにかかってきますね
ウイングなんで、なかなか難しいですけどね。チャンスが来るか来ないかにもよりますからね。
◆楽しみ感が強い
—— どんな楽しみを持ってフランスへ行きますか?
楽しみは楽しみなんですけど、楽しみ感が強すぎて、4年に1度、1生に1度出られるかどうかとも言われる大会ですからね。
—— 前回大会はどうでしたか?
トライを取られるまでの時間を稼ぐというような感覚でしたね。その辺は今も残ってしまっている部分もあるんですけどね。だから楽しみ感が強い分、ダメだった時はがっかり感も強いんですね。
—— 仲間や家族からメッセージは届きますか?
智之(澤木/今年からサントリーフーズ)からも代表入りが決まった日にメールが来ました。あいつ結構熱いんですよ。その他には、母校の中学校から色紙を頂いたりしましたが、そういうのがあると、日本代表なんだと実感しますね。
ワールドカップへ行けるチケットは手にしましたが、行ければ良いのか?ということではないので、ポイントはこれからのイタリアでの2試合への臨み方になってくると思います。個人をアピールして常に使われるようにしなくてはならない。ウイングとして何をすべきか、そういうことを常に考えています。
—— 8月10日の壮行試合は先発フル出場しましたね
メンバーに新しく入った人がいるとはいえ、チームとしては少しバラバラでした。自分の調子は良かったですよ。これからいろいろと新しいムーブに、チャレンジしていく必要性があると思います。この壮行試合のメンバーでワールドカップを戦うことは可能性としては充分あると思うので、このメンバーを軸に戦っていくと考えると、今後は崩したフェイズの中で行き当たりばったりにならないような形で、どうボールをゴールラインより向こうへ運ぶかということを、共有するための練習をしていく必要があると思います。
今回このメンバーで試合をしたらこうなる、ということが分かった訳ですから、あと3週間、練習をたくさんしていかなきゃいけないと思います。前回ワールドカップに出た時に、声が届かないということがありました。凄いたくさんの人が見ているから、2人向こうまでが限界なんです。端から端まで声が届かないということは、こういう時にはこうするというチームが共有するノームを表として持って、そこに裏としての個人の力を加えていくということが大切だと思います。それを練習する時間はまだありますので、期待していてください。
(続く)
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)
[写真:長尾亜紀]