SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2007年7月12日

#96 有賀剛×佐々木隆道 社会人2年目インタビュー 『いろんな面でプラスになっている』

佐々木隆道、有賀剛。学生時代、大学ラグビー日本一を競う早稲田大学と関東学院大学の、それぞれキャプテンとしてライバル関係にあり、去年からの社会人ラグビーでは、トップリーグ・サントリーサンゴリアスのチームメートとなって日本一を目指している同期の2人。サンゴリアスでの活躍が認められ、ともに日本代表に選出され、9月のフランスワールドカップへ向けて、練習と試合を重ねる日々を過ごす。ワールドカップまであと約2か月、トップリーグ開幕まであと約4か月となった社会人2年目の夏のある日、練習を終えた2人に心境を語ってもらった。

『一緒の感覚でラグビーをしている』(剛)

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—— 去年の5月に2人にインタビューしたときには、「同じチームになれて良かった」と言ってましたが、さらに1年が経って、その点いかがですか?

有賀:すごくお互いにいい刺激になっていて、いろんな面でプラスになっています。当時は「有賀までサントリーか」という声もありましたが、1年終わってサントリーに来て良かったと思えるので、選択は間違ってなかったなと思います。

佐々木:今はもうそこにいるのが当たり前というか、仲間という意識が強いです。あとは剛が言った通り刺激になる存在だし、すごくいい関係が築けているんじゃないかと思います。

—— もともと早稲田と関東学院でライバルだった存在が、今ではサントリーでも日本代表でも同じチームとしてやっているんですね。

佐々木:僕が思うのは、一緒の感覚でラグビーをしていると思います。

有賀:そうですね。ジャパン(日本代表)へ行って感じていることは、たぶん一緒なんだろうなと思います。チーム(サントリー)だったらこうなのにな・・・みたいな感じで。そういう意味で当たり前かもしれないですけど、2人が同じ考えでラグビーができているんじゃないかなと思います。

—— ここまでジャパンでも何試合かありましたが、ジャパンのチームの雰囲気はどうですか?

佐々木:良いんじゃないですか。僕個人的にはチーム云々とか全く考えていません。自分がどうやってレギュラーのポジションを獲得するかとか、出たらどういうプレーをするかとかを考えていて、その先に価値があると思っています。ひとつになって向かって行ってると傍からは見えるかもしれませんが、そういう意識ももちろんありますが、やっぱり僕個人として勝負していますね。まだ自分の存在を確立できていないですからね。

有賀:チームの雰囲気は良いと思いますが、チームとしてひとつになっているかというと、やはり違うチームからきた人の集まりなんで、考え方も違うし、この時はこうだとか話し合うことが少ないので、同じミスをしてしまったりするところがあります。

—— 同じサントリーで代表に入っている小野澤・平・青木選手にも話を聞きましたが、試合前に課題を何個か紙に書いて提出し、試合後にそのことについてコーチと確認したりマンツーマンでミーティングをするということがあるみたいですね。

佐々木:こういうプレーを求められてるとか、こういうプレーがしたいとか、そういう意思表示はコーチに対してしっかりできています。

有賀:もちろん目標を書くわけですけど、僕の場合はあまりそういうことを試せるチャンスが無かったので、書くには書くんだけどそれを出せる場面がないまま終わってしまったりというところです。

『良い悪いが明確でやりやすい』(隆道)

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—— ジャパンではどうやって点を取ろうとか、こういう方向性で行こうというのは、かなり決まっているんですか?

有賀:大雑把なところはチームとして持っていますが、細かいところは個々の判断です。もしこうなった場合はどうしようとかそういった細かい部分は決められていなくて、要求はすごく少ないですね。例えばパスが欲しかったのにスタンドオフがキックを選択した後でも、何も言わなかったりということがあります。そういう意味でチームとしてまだひとつになっていないと思ったので、そのことについて僕らリザーブという立場から最終戦の前にひとつのプレーに対して言ってみたりしました。

佐々木:それは外の意見ですね。レギュラー外の選手はみんなそう思っていると思います。

—— ジャパンやジョン・カーワン(ヘッドコーチ)のいいところは?

有賀:僕は代表から一度外されましたが、追加召集されたときもJK(ジョン・カーワン)はちゃんと理由をこと細かく話してくれました。今こういうところができていないとか、足りていないとか。確かにそこが出来ていないと思っていましたし、そこを頑張ろうと思うところでした。JKとはもっと細かいところまで話したいんですが、いかんせんカーワンはニュージーランド人というのもあるし、なかなか難しいですよね。言葉の壁じゃないですが・・。

佐々木:そんなところですね(笑)。本当に求めるところが高いというのと、彼自身がいちばん勝ちたいと思ってる。それに対してみんながついていってる感じで良いリーダーだと思います。あの人(カーワン)は世界一になったことのある人間で、このレベルの練習をしてたら絶対勝てないとか、今日の練習は良かったという、良い悪いが明確で選手はやりやすいと思います。

—— 代表からチームに持って帰りたいものはありますか?

佐々木:何でも「抜かない」ということですね。何でも「激しく100%」でやっています。サントリーの練習ではそういうところが欠けていると思います。しんどい練習とかコンタクトフィットネスをするにしても、いちばん激しい練習をしてないといちばんにはなれないというのをすごく感じて、マーシュ(グレン/NEC)を見ていてそう思いました。

—— 対戦した選手で印象に残っている選手は?

有賀:個人的に言うと、オーストラリアのヒューアットというフルバック、リザーブだったですけど、動きを集中的に見てすごく参考になりました。JKに僕が言われていることにすごく一致する部分があって、ボールを持つ前だったり、ラインに入るタイミングだったり、その辺の動きを見ていいフルバックだなと思いました。

佐々木:誰というわけではないですが、相手のフランカーを良く見てました。タックルしてからボールに触るまでの時間がすごく速いですね、良い選手といわれている人たちは・・・。そういうことをしようと意識して練習してここ2試合ぐらい、すごくいい形でボールを取ってこれるし、球出しを遅らせることがちょっとずつ出来始めているから、そういうところが参考になっています。カーワンにはこういうプレーをして欲しいといわれることが多いんですが、新しい7番というポジションで毎試合、どんどん出来てきているんじゃないかと思います。

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日本代表には昨年、まず有賀選手が招集され、ワールドカップ・アジア予選を勝ち抜く原動力となった。今年に入って両選手が選ばれたが途中の選考で有賀選手がはずれ、途中追加招集という形で代表に復帰した。有賀選手はフルバック、佐々木選手はフランカー(7番)として強化試合に出場しキャップを重ねているが、レギュラーの座はまだ獲得できていない。

 

『監督は大学の頃より楽しそう』(隆道)

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—— サントリーの話に移ります。清宮監督は学生時代と変わりましたか?

佐々木:基本的には変わらないですが、社会人はできるプレーの幅が違うから、やっぱり求めることは高いし、やろうとすることも学生の頃より面白そうなプランを立ててるなと思います。これが出来たらすごくいいラグビーができるなと思います。あとは1人1人のスキルですね。色々な選択肢を学生に与えるとできない人間が多かったんですが、「これだけ」と言われてそのスペシャリストにはなれる選手は、学生でもいました。サントリーの選手はいろいろ引き出しがあって、それを自分でチョイスしていく力があると思います。

有賀:学生時代は自由奔放にやらせてもらってたので、最初の頃はチームとしての決め事があるということに戸惑ったりもしました。ただそれも出来るようになれば必ずいい方向にいくことがわかったので、今はそれが良いんだなって思います。

清宮監督はいろんなところに気を配れるんだなと思います。試合に出られない選手のことだったり、選手に何かある度にその選手にみんなの前で喋らせたり・・・。代表に追加招集されてオーストラリアに行ったときは、「はい、今日有賀来ました」みたいなのも何もなく普通に練習に入っていきました。それが当たり前なのかもしれませんが、そういう面をサントリーでは大事にしているということがわかりました。

佐々木:監督は大学の頃より楽しそうにやってると思いますよ!

—— 社会人1年目の昨シーズン、2人とも大活躍でしたが、個人的にはどう自己評価していますか?

有賀:もっと出来たなという気持ちがすごくあります。あとは膝のせいにはしたくないんですが、自分の中でスピードが落ちたなと感じました。最近はスピードが戻ってきて、そういうのもあってアグレッシブにいけるようになってきました。前は奇麗にラグビーをしようとしすぎていたのかなと思います。

佐々木:僕の場合は最初の前半戦スタートが悪かったんで、よく持ちこたえたなという感じです。それを乗り越えて少し強くなったかなと思っていたんですが、最近また・・・しんどいでしょ(笑)。それでもまた自分にとってプラスに転じていくと信じてやっていきますし、去年についてまったく後悔はないです。

—— 佐々木選手は昨シーズン、試合前のコメントが試合を重ねるにつれてリーダーっぽくなっていきましたね

佐々木:大事な試合だからですよ。自分にプレッシャーをかけるためにもでかい口たたいて、やらなきゃいけない環境を作ったという感じです。

有賀:ほとんど納得いく試合はなかったといってもいいんじゃないかなと思います。ワールドカップも出たいですけど、トップリーグの開幕戦も出たいという気持ちも強いです。

『一言で雰囲気を変えられる人が必要』(剛)

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—— 有賀選手は社会人になってまだ納得いく試合ができてないということですか?

有賀:ん~、昨シーズンは三洋電機戦だけですね。これからです。自分の中では昨シーズンが最低ラインだと思ってます。

—— 昨シーズン最後の最後で勝てなかったサンゴリアスに足りなかったものは?

佐々木:選手自身が自分たちで考えてラグビーしていなかったです。清宮さんに言われたことだけをやった結果、出来なくなったときに修正できない、という感じです。シーズン通してそうだったと思いますが、自分たちで考えて自発的に何かを変えるということをしなかったですね。

ヤマハに負けた後もアライブしてないってなったときに、それを言ったのは清宮さんだけ。選手の中からそれが出てこないと勝てないと思いません?清宮さんはこう言ってるけど、こうの方が良いんじゃないとか、僕らはこうしたいとか、一度もありませんでした。

そういうことがないと圧倒的に勝てないです。僕自身もシーズン終わって振り返って思いました。あの負けがなければ、このことに気づかなかったかも知れないですね。

有賀:自分のことでいっぱいいっぱいだったということもあったんですが、上手くいかない時にみんなをまとめるリーダーがいないなと思いました。一言で雰囲気を変えられる人が必要でした。ヤマハ戦の時も、ザワさん(小野澤宏時)はまとめようとしてるんですが、みんながワーワー言っててまとまらないままいってしまいました。

—— 今年はその辺が改善されていますか?

有賀:自分自身も2年目になって意見を言えるようになりましたし、まだ分からないですけど、これから良くしていかないといけませんね。

佐々木:受け身になるなっていうことです。否定しろということじゃなくて、自分たちで考えているかどうかというところなんです。考えないとだめです。与えられすぎて考える時間がないなんていうのは言い訳です。例えば練習後の時間、ビデオ見て研究したりすればいいわけですから。リラックスすることも必要ですけど、頭でラグビーする時間も必要だと思います。

有賀:比較したくはないですが、その辺は海外の選手とやったりすると、日本の選手は貪欲さが足りないなと思ってしまいます。そういう点でプロの選手は引っ張っていかないといけないと思っています。

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『ずっとトゲトゲしていたい』(隆道)

—— 同期の繋がりは強いですか?

佐々木:そうでもないですね(笑)。けど他の代と比べてみんなハングリーさはあるかもしれないですね。ずっとトゲトゲしていたいですね。他の人はどうかわかりませんが、僕はできると思って入ってますし、ずっとトゲトゲしてたいですし、「あの代おかしいよ」と言われるくらいになりたいですね。

—— ふたりの友情は深くなりましたか?

有賀:そうですね、朝一緒なんで一緒にいる時間は長いですね。

佐々木:剛は朝早いですよ!

有賀:僕は午前中の練習が終わったらいったん帰りたいんですけど、隆道はクラブハウスに残ったりしてますね。僕は9時過ぎには来て、早くやって早く帰りたい人です。昼前には帰りたいです。午後の練習までずっとクラブハウスにいるのは休んでる気がしなくて嫌なんですよ。外国人の選手も9時くらいに来てますね。けど逆にみんなが来てしまってもウエイトトレーニング場がギューギューになってしまうんで・・・。

佐々木:僕は10時に来てます。時間をずらして優雅に使ってます(笑)。プロメンバーの正式な練習スタートは10時なんですよ。けど人数が多くなってきた関係で剛たちは9時からやってるんです。

僕はもともと1人でいるのがあまり好きではないんです。1人でいたいときもあるんですが、帰ってもしょうがないし、ザワさんたちとお茶しに行ったりしてますね。あと大悟さん(山下キャプテン)とかですね。

有賀:僕は1人が好きなんですよね。大阪の試合とかも行くときは絶対1人で行きますよ。みんなでワイワイして行くのって好きじゃないんです。行きはホテルに何時までに入れっていうことが多いので、自分で行ってます。帰りはだいたいみんなと一緒ですが、多少ずらしたりしていますよ。

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『大悟さんの次はもう決まり』(剛)

 

2人へのインタビュー第1回は、昨年5月に行ってサントリー・サンゴリアス「イヤーブック」に掲載された。本インタビューはそれに続く第2回。2人が選手でいる限り、毎年必ず1回ずつ2人へのインタビューを続けていこうと約束した。

 
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—— お互がお互いの良いところを教えてください

佐々木:またそれですか(笑)。

—— これは毎年聞きますよ(笑)

有賀:ジャパンでもキャプテンをやったっていうぐらいなんで、すごいリーダーシップを持ってますね。大悟さんの次(のキャプテン)はもう決まりなんじゃないかって僕は思ってます。

佐々木:良いところというか、うらやましいところですが、自分の時間を作ることが上手いところですね。リラックスする方法とかもすごく持ってるんですよね。僕はすごくダダっ子なんですよ。一緒にいたくない時もあればいたい時もあるんで、自分の感情のまま動きたいタイプなんですよ。彼女は大変ですね(笑)。

有賀:隆道は寮に帰りたい時もあったり、お茶したい時もあるんですよ。でも、先輩との付き合いだったり、毎日してることによって、今日は疲れてるからちょっと帰りたいなって時も、お茶しに行ったりしなくちゃいけなくて大変なんですよ。そういう面でどちらかというと僕の方がわがままなんですよ。行きたくない時は行かないって言いますから。

佐々木:僕も飯はみんなと一緒に食べたいんですけど、そのあとお茶はしないで「帰ります」っていうことはありますね。剛は飯も1人で食べちゃうんですよ。

有賀:すぐ帰りたいんですよ。早く寝たいんです。一刻も早く家に帰りたいですね。

佐々木:帰って何やってんの?

有賀:今日は帰って洗濯して、シーツとか洗って...

佐々木:主婦やん!

有賀:最近暑くなってすごく寝汗かくから、シーツ汚れたかなと思ったんで洗って、パソコンに少し向かって友達にメール送ったりして、そのあとDVD見ながら時間まで過ごすみたいな感じでしたね。

佐々木:僕は1人の時は音楽聴いたりしてますね。寮に一度帰ると絶対外には出ないですね。帰りにコーヒー買って帰ったりして、少し優雅に過ごしたりしています。昼間は絶対1人ではいませんね。

—— 2年目になりました。将来の夢は?

有賀:今はあまり遠く目標は考えてないですね、今は目の前のことを1つ1つやっていこうと思ってます。

佐々木:海外でも通用する選手になることで、まずは日本でいちばんのナンバーエイトになりたいですね。それプラス、サントリーで優勝することです。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)

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